2026年06月10日

『転生武神 天寿を全うする気はないので強者を求めて旅をする 2 〜いずれ再び武神と呼ばれる最強少女の無双録〜』

平成オワリ 先生が贈るバトル×錬金ファンタジー。第2巻は「心の声が聞こえる」という
フローマ王国の伯爵令嬢に目をつけられた“テオ”たちが王位継承争いに巻き込まれます。
(イラスト:巻羊 先生)

https://gcnovels.jp/book/2108


人の心が読める“アリス”を前にしても、腹の探り合いで引けを取らない“テオ”の傑物
ぶりが印象的。その前の、邂逅の際に粗相をした“アリス”には苦笑い、というか同情を
禁じ得ないというか。“アポロ”も気後れしつつやり返したりと肝が据わってきた感じで。

“アリス”が御輿に担ぐ第二王子“レオナルド”の扱いに手を焼く様子がこれまた面白く、
彼の彼女一筋ぶりがただ滑稽なだけではないところも中々の曲者ぶりで魅せてくれてます。
“アポロ”も錬金術師として成長している様子を合間合間に印象づけている描写も見所で。

様々な示唆を体現する今回の強敵と相対する“テオ”が、その拳を交えることで知る敵の
志を慮って渡す引導はどこか切ない余韻を残すものがありました。翻って、“アポロ”は
錬金術師として“テオ”に何ができるか、同道の旅中にその答えが出ることを期待します。

posted by 秋野ソラ at 00:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2026年06月09日

『獣の見た夢 1』

真樹真也 先生のWeb小説投稿作が書籍化。愛することも、愛されることもない渇いた人生
を終えたはずの男性が、転生した別世界でかけがえのない愛と運命の出会いに遭遇します。
(イラスト:天野英 先生)

https://gcnovels.jp/book/2110
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888930318


判決─父親殺しの罪により地獄行き。そう告げられた男に与えられたのは別世界の男の子
“アベル”として送る新たな生。両親の愛に戸惑いつつも成長した彼はある日、魔獣討伐
の旅に同行して圧倒的な強さを見せる少女騎士“イース”と出会い目をかけられるが──。

人生にやり直しなんてない。信じるな、疑え。そんな擦れた価値観のまま“アベル”の核
として年を重ねていくうちに、やがて従者として“イース”の傍らにいることを心地よく
感じたり、家族がいることに喜びを感じたりする変化を見せることに救いがある気がして。

“アベル”の核なる存在を見抜いた“イース”について、知れば知るほど異様に映るのが
剣の強さよりも感情の薄さ。彼女もまた彼と出会ったことで変化の兆しを感じさせている
ところを興味深く捉えつつ、「地獄」とは何なのかを確かめるべく次巻を待ちたい所です。

posted by 秋野ソラ at 00:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2026年06月08日

『誰が勇者を殺したか 賢者の章』

シリーズ累計50万部を超す、駄犬 先生の大人気ファンタジー作品。第4巻は魔王討伐に
単身で臨む人嫌いな魔法使い“ソロン”が気紛れなエルフとの絆を深める旅路を描きます。
(イラスト:toi8 先生)

https://sneakerbunko.jp/product/daregayu/322601001306.html


「世界編纂」のことを記憶しているかもしれない。王妃の記憶すら操る能力を持つらしい。
そして“ソロン”に執着していたというエルフ“エーヴ”の存在が俄然気になる導入部分。
彼女が彼のどんな所に気を止めたのか、彼の人物像を深掘りする一人旅の始まりが印象的。

勇者に選ばれたことに嫌気を差しつつ、勇者という存在や背景について念入りに調査する。
彼が天才と呼ばれながら研鑽は怠らない努力家であることを「理解されたいと願っている」
ことを叶える相手として“エーヴ”が名乗りを上げてくれた気紛れに救いがある気がして。

光を求めて魔王を倒す二人旅の果てに、光を見つけて魔王に殺されるのではないと強がる
“ソロン”が矛盾を抱え続けながら人間として生き抜いた。その生き様を胸に抱えながら
生きた“エーヴ”が気づく懐かしい風に運ばれてくる奇跡には胸を打つものがありました。

posted by 秋野ソラ at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2026年06月05日

『和カフェこよみ しずさんの春めく推しごはん』

野村美月 先生が「徳間文庫」から贈る、季節のごはんと和菓子がいろいろな縁を結ぶ物語。
自尊心を失った女性が、偶然見つけた店の若い店主が作る料理に惚れ込む顛末を描きます。
(イラスト:西淑 先生)

https://www.tokuma.jp/book/b672212.html


25歳の“しずこ”は過去3回の長い引きこもり期間を経験し、居候している叔父の家から
社会復帰を果たして1年。他人の言動が気になり臆病になった彼女が再び心を折りかけた
ある日、偶然見かけた和カフェで“五月”が振る舞う料理に立ち直る力を与えられて──。

“五月”との関わり方を「推し活」になぞらえ、気落ちする心を奮い立たせる契機とする
“しずこ”の考え方が興味深い。そんな彼女に「推し」という概念を教えた叔父“司”の
拗らせた価値観にも驚かされるワケですが。“五月”だけ裏表の無さが印象的に映ります。

「こよみ」という場を通じて思いがけない人や心が繋がっていく話の流れに惹かれていく
中で迎える春先に、その場所がなくなるとしたら“しずこ”は何を思うのか。その答えが
もたらす演出は、桜咲く季節を彼女と共に実感できることうけあいです。ぜひご一読あれ。

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2026年06月04日

『願い星は君にほほえむ』

「シュレディンガーの猫探し」の 小林一星 先生が贈る新作は、七夕の日には町が滅ぶと
予言する謎の少女と出会った少年がその危機を回避するため悪戦苦闘する顛末を描きます。
(イラスト:まころん 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09453290


中学3年生の“アルタ”は、町にある裏サイトで「学園トラブル解決屋」を秘密裏に営む
不登校児。仲間である優等生の後輩“叶絵”、番長と悪名高い同輩“天流”と共に過ごす
7月1日、「1週間後に町が滅ぶので助けてほしい」と依頼メールが舞い込んできて──。

龍神の復活、という突飛な話をした“織姫”を信じる“アルタ”が彼女に抱く一つの疑念。
滅びを回避するために行う「七龍祭」を巡って東奔西走する彼らがその理由を知ったとき、
彼らの心が、そして物語が突き動かされていく構成が印象的。そこまで拗れていただけに。

嘘つきまみれの人々と関わることを避けて、割り切って、そして諦めた“アルタ”たちが
幸せな日々がいつまでも続くことを願った“織姫”との約束を果たそうと決意し、本物は
あると信じて歩み出す姿に感慨深い熱量を感じずにはいられません。お薦めしておきます。

posted by 秋野ソラ at 01:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル