2017年04月24日

『読者(ぼく)と主人公(かのじょ)と二人のこれから』

岬鷺宮 先生が贈る新作は、擦り切れるほど読み返した大好きな本さえあればいい、という
少年が、その本に出てくる主人公そのものの女の子に出会うところから始まる恋物語です。
(イラスト/Hiten 先生)

http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-892603-4/


“柊ところ”なる作家が書いた『十四歳』。手に取ったその本に描かれている“トキコ”
の真情に共感した“晃”は入学したクラスのある自己紹介を聞いて驚愕する。彼女の名は
“柊時子”。その姿、佇まいはまさしく想像した通りの「トキコだ、トキコがいる」──。

“時子”の所作に“トキコ”がちらつく“晃”は、やがて秘密を共有し彼女からある依頼
を受けることに。理想の女の子との距離が近づいていく“晃”が恋に落ちないワケがない
のですが『十四歳』という作品が好きすぎることで意外な落とし穴に嵌まってしまいます。

一方的にすれ違っていく“晃”を止める術はないのか。面映ゆい二人の様子との落差が
激しい終盤で与えられる最後のきっかけを彼がどう受け止めるかをぜひ見届けてほしい。
先生の好きが詰まった青春恋愛小説、実に良かった。挿絵も素敵でオススメの一冊です。

posted by 秋野ソラ at 00:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年04月21日

『長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本』

江本マシメサ 先生の「小説家になろう」投稿作が書籍化。雨の日のみ開店する洋館カフェ
でバイトする女子大生が極上スイーツと長崎の歴史、そして恋心に触れていく物語です。
(イラスト:げみ 先生)

http://tkj.jp/book/?cd=72684901
http://ncode.syosetu.com/n7322df/


雨の日のオランダ坂。バイトの面接で失敗した“乙女”は傘も差さず大好きな作家の本も
びしょ濡れしながら「Cafe 小夜時雨」に辿り着く。メニューは気まぐれで1セットのみ、
五百円という仏頂面の店長が出すスイーツに魅了された彼女は早速バイト先に選ぶが──。

長崎出身の先生だからこそ描ける情景や、物珍しいご当地スイーツの数々が目を惹きます。
店長の“向井”に教わる長崎文化に、そして彼自身に少しずつ魅了されていく“乙女”の
機微が何とも面映ゆいです。店を訪れる物珍しい客との交流も演出に一役買っています。

店の運営方針もそうですが、そもそも存在が謎すぎる“向井”の正体は・・・早いうちに想像
できる思います。どういった形でそれが明らかになるのか、実は出会うべくして出会った
2人だと気付かされる雨の夜のオランダ坂でのやりとりを読んで確かめてほしい作品です。

posted by 秋野ソラ at 00:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年04月20日

『悪役令嬢に転生したけどごはんがおいしくて幸せです!』

矢御あやせ 先生の「第4回ネット小説大賞」受賞作。大好きな乙女ゲームの悪役令嬢に
転生したOLがバッドエンド回避・・・よりも食事を大切にする食欲系コメディの登場です。
(イラスト:東条さかな 先生)

http://tkj.jp/book/?cd=02707401
http://ncode.syosetu.com/n8464cu/


広陵院家のお嬢様“江梨子”は我が儘が過ぎる余り不幸な末路を迎える乙女ゲームの悪役。
前世の記憶として現状を理解した彼女は、運命を覆すためにまず自らが悪化させた弟との
関係改善を図る。毎日のおいしい料理を一緒に、笑って食べられるようになるために──。

・・・とシリアスめに導入してみましたが“江梨子”は結構ポンコツで頑張るけれども空回り
したりするので全体的にコミカルに展開していきます。ですが周りに支えられて、友達も
できて、と本来のゲームルートから少しずつ改善していく様子は微笑ましく映るものです。

“江梨子”が食事を堪能しようとするあまり近づかないと決めていた攻略キャラや主人公
キャラたちとあっさり関係を築き、やっぱり恋心を抱いてしまう「うっかりさ」は物語を
どう左右するのか。各々の幸せを追求した先に何があるのか、続きを見てみたいものです。

posted by 秋野ソラ at 00:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年04月19日

『造られしイノチとキレイなセカイ3』

緋月薙 先生が贈るスローライフ・ストーリー。第3巻は“リーゼ”が持つ力の秘密に迫り
ながら、“カリアス”と“フィアナ”の間に見られる明らかな変化にも触れていきます。
(イラスト/ふーみ 先生)

https://hobbyjapan.co.jp/hjbunko/lineup/detail/716.html
http://yomeru-hj.net/novel/kireinasekai/


“レミリア”や“マクスウェル”の予想をあっさりと超えてくる“リーゼ”と幼竜の件。
そして彼女と“イリス”との関係。とんでもない力場が“カリアス”と“フィアナ”の
周囲に形成されていく過程の面白さ、それが披露される局面の圧巻ぶりがまず見どころ。

もう一つはやはり口絵のあのシーンから繰り広げられる“カリアス”と“フィアナ”の
気まずい距離感・・・からの本心の伝え合い。もうニヨニヨするしかない。幼馴染キャラは
報われない、とよく言われますけど 緋月 先生はそういう二人の描き方が本当に上手い。

“イリス”をはじめとする子供たちから繰り出される純真無垢ながらも誤解を生む発言
の数々、ムッツリな言動のあれこれもぜひご堪能いただきたいところ。Web版の連載も
続けてほしいですし、続刊も期待したいので「HJ文庫」には心よりお願いする次第です。

posted by 秋野ソラ at 00:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年04月18日

『明治あやかし新聞 怠惰な記者の裏稼業』

さとみ桜 先生の「第23回電撃小説大賞・銀賞」受賞作。幼馴染の友人が奉公先から暇を
出された原因となる妖怪記事を書いた記者に押し掛けた女性が結ぶ奇妙な縁を描きます。
(イラスト/銀行 先生)

http://mwbunko.com/978-4-04-892676-8/


「で、そのふざけた記事がどうかしたのかな?」記事を書いた“久馬”の悪びれもしない
態度に怒りをあらわにする“香澄”。だが事情を突き詰めるとむしろ友人を助けるための
記事であったと知り、元凶たる奉公先の主人を懲らしめる手助けの乗り出すのだが──。

役者崩れの“艶煙”と共に妖怪の逸話をネタと小新聞を武器にある時は人助け、ある時は
悪者を懲らしめる展開がまず面白い。何度も手を貸す“香澄”が“久馬”の食えない言動
を前にして少しずつ彼への印象を変えていく機微の描写もポイント。絶妙な距離感です。

そんな“久馬”の従妹が神隠しに遭っていた、と知る“香澄”。その裏側にある彼の秘密
に気付いた彼女がある依頼をすることを決断した第四話の話運び。これがまた良かった。
妖怪記事がもたらした縁がどう変化していくのか、ぜひ読んで確かめてほしい作品です。

posted by 秋野ソラ at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル