2019年10月07日

『妹さえいればいい。13』

平坂読 先生が贈る大人気青春ラブコメ。第13巻は新興の出版社ブランチヒルに就職して
プロの編集者となった“京”の生活を中心に“伊月”たちの変わりゆく日常を描きます。
(イラスト:カントク 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518085


TRPGサークルに所属した“千尋”がオタサーの姫と化したのをさりげなく諫める“春斗”。
彼女が抱く冷めることない“春斗”への恋心を知り、彼からの思慕も受け止めた“京”が
出した仕事優先の結論。その相手となるあの作家“和泉”の扱いは考えさせられるものが。

ブランチヒルから“和泉”の新作を出すにあたって彼がごねる描写は「何言ってんだ」と
思いがちですが、彼が頑なな態度を取った要因が“京”側にもある点を“彩音”の言葉を
借りて指摘する、コミュニケーションエラーの実例紹介としても秀逸な内容と感じました。

「主人公になりたい」。“伊月”が“那由多”のためだけに書いた小説は彼女だけでなく
“京”の心も動かし、そして広く世間の読者にも響いていく。作家として、一人の男性と
しても成功を掴む彼、更に彼の周辺は最終巻でどう纏められるのか、見届けたい所です。

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2019年10月04日

『レイジングループ REI-JIN-G-LU-P 6 告滅の蝕』

アドベンチャーゲーム「レイジングループ」のシナリオライター、mphibian 先生が自ら
小説版の執筆に臨む本作。芝村裕吏 先生の解説を受け、最悪の結末を見届けていきます。
(Illustration/影由 先生)

https://www.seikaisha.co.jp/information/2019/08/28-post-rl6.html


「おおかみ」としての役割を果たすために“橋本”をどう出し抜くか。これまで以上に
高度な情報戦を繰り広げ、死に戻りを繰り返す“陽明”。“かおり”の見事な殉死に加え
“春”の自死がもたらす理解を得てもなお「夢使い」という謎が壁となる物語の重厚さ。

夢が現実となる瞬間を目の当たりにして、何度でも死に戻る役割を担った本質を理解する
“陽明”がついに“千枝実”が抱いてしまった絶望に気付く。これがまた得心のいく話で
彼女が見せた数々の奇行も納得の一言。その上でエグさを見せつけるのも彼女らしさかも。

突然始まる座談会形式でのやりとりで、要点を押さえつつ次々と謎が明らかになっていく
話の流し方も構成として面白く、また読みやすくて親切。“陽明”が見せ続けた“悪癖”、
それを封じて“千枝実”に伝えると決めた「答え」をつまびらかにするその時を待ちます。

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2019年10月03日

『プロペラオペラ』

犬村小六 先生が贈る新作は恋と空戦のファンタジー。極東の島国「日之雄」と軍事大国
「ガメリア合衆国」との戦争の狭間で繰り広げられる壮大な三角関係の顛末を描きます。
(イラスト:雫綺一生 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518122


空を飛ぶ駆逐艦「井吹」の艦長を務める日之雄の第一王女“イザヤ”。彼女の前に現れた
“クロト”は幼少の折、不遜な求婚をして叛意ありと家が取り潰され、ガメリアに渡って
投資で財を成した良くも悪くも有名人。彼は「祖国を救うため軍に入った」と言うが──。

現実世界の背景を下敷きに、黄色人種と迫害を受ける“クロト”がサクセスストーリーを
展開する流れが、まさか戦争の引金になるとは。当事者とは思いも寄らない“イザヤ”を
守るために奮闘する彼を俄然応援したくなる一方、“カイル”の示す意思と権力は盤石で。

絶望的な戦力差を覆せるのか。セラス粒子層という制約がもたらす海戦が如き大空の戦闘、
“イザヤ”や“クロト”が侍従を出し抜くために絞った知恵、「井吹」の愉快な乗組員が
見せる覚悟。すべてがもたらす泡沫の勝利は2人の命運をどこへ誘うか、目が離せません。

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2019年10月02日

『スイレン・グラフティ(2) もすこしつづく、ナイショの同居』

世津路章 先生が贈るガールズ青春グラフティ。第2巻は夏休みを迎え“蓮”と“彗花”が
同人誌即売会での経験を通じてさらに意見を交わし、ぶつけ合い、繋がりを深めていきます。
(イラスト:堀泉インコ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/suiren/321906000072.html


一時帰国した母からの提案とは異なる新たな道、漫画化を目指す“蓮”と秘密の共同生活を
続けることを選んだ“彗花”。後ろめたさの中に高揚感を覗かせる2人の様子はこそばゆい
ことこの上ない。そんな2人が迎える夏休み、そして同人誌即売会が今回の話の軸なワケで。

即売会の出張編集部で自作をコテンパンにされた“蓮”。即売会の魅力に気付いた“彗花”。
個人運営の即売会へ参加すると決めた2人が目にしたネット上の恐怖体験。それに怖気ずく
“蓮”と諫める“彗花”が衝突し、和解の印に“蓮”が身の上を語るまでの展開が印象的。

互いを信じる、と誓って作り上げた初めての同人誌を持ち込み、サークル参加する即売会。
目の当たりにするのは厳しい現実だけでなく、思いがけない出会いや好意もあってとても
心温まる結末。2人ならどこまでも行ける、と感じられる強さが素敵で安心感を覚えます。

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2019年10月01日

『クラスメイトが使い魔になりまして2』

鶴城東 先生が贈る険悪主従ラブコメ。第2巻は“想太”の新魔術に目をつけた“千景”の
両親の思惑を他所に、力をつけるべく修行に挑む2人が険悪な雰囲気を変化させていきます。
(イラスト:なたーしゃ 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518108


「結婚しろ」と迫られその猶予期間として1年間、使い魔の契約を解除できるかが焦点と
なる“想太”と“千景”。肉体関係を持つ瞬間を見届けるお目付け役として後輩“麗”が
加わり、彼の周囲もまた色めくワケで。“リリス”に唆される“旭”がまた可愛いの何の。

2つの人格と体形を使い分ける“想太”の師匠“真紀美”が見せる言動の落差、その驚き
以上に彼女が嘆く彼らの主従関係の酷さ。師匠が設けた信頼関係を築くための修行の場で
改めて互いのことを知らず、知ろうとする勇気を見せるまで成長する姿に熱量を感じます。

魔術を悪用する「まつろわぬもの」に目をつけられた“想太”もやられっぱなしじゃない、
そんな戦いぶりを“千景”と共に見せる中で交わしてしまった視線、その先にある紅の瞳。
色々と猶予がない2人が手を取り合って勝ちを取りに行けるか、次巻の展開に大注目です。

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2019年09月30日

『コールミー・バイ・ノーネーム』

斜線堂有紀 先生が贈る新作は「名前当て」ミステリー。ゴミ捨て場で拾った美しい女性に
惹かれていく女学生が、友達になるため彼女の「本当の名」と過去を探る経緯を描きます。
(Illustration/くわばらたもつ 先生)

https://www.seikaisha.co.jp/information/2019/08/28-post-clmn.html


奔放な性生活と無法な横恋慕。一宿一飯の恩義を体で返そうとする“古橋琴葉”に関する
ことは数少ない。そんな彼女から提示された「付き合っている間に自分の本名を当てたら
友達になってあげる」という話に乗った“愛”は世にも奇妙な同居生活を始めるが──。

改名する、その意味を交際する過程で探る“愛”自身にも一つの問題が存在する。それは
「なぜ“琴葉”を助けたのか」という点。善意の先に芽生えた感情を証明しようともがく
“愛”の気持ちを受け止め、それでも本名の「呪い」に苦しむ“琴葉”が示す拒絶は悲痛。

未希が“愛”のことを「光人間」と称したその意味も、読み終える今ならわかる気がする。
共に「何か」を証明する難しさ、やるせなさを痛感してきたからこそ繋がる2人の心と体。
名前当てが終わるその先に、“琴葉”の感情を証明する“愛”が居続けてほしいものです。

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2019年09月27日

『ここは書物平坂 黄泉の花咲く本屋さん』

新井輝 先生が贈る新作はあやかしもの。死の淵に立つ人へ未練ある本を提供する地獄の鬼
が店長を務める書店、そこを訪れた本好きな女性が辿る数奇な運命と縁の変遷を描きます。
(イラスト:紅木春 先生)

https://lbunko.kadokawa.co.jp/product/321809000748.html


黄泉比良坂。死者の住む世界へと続く坂の名と聞き間違える書店で和装の男性店長が言う。
「無事に帰りたくばワゴンの中から本を一冊買うことをお薦めする。お代は言い値で」と。
上司の失敗を押し付けられ失意の“奈美”は子供の頃何度も読んだあの本を手に取る──。

本で失敗し、本を断って生きてきた“奈美”が今また本に救われ、本で人を救っていく。
店長の厚意で住み込みのバイトを始め、好意を示されて困惑したり。取引先の若社長に
助けられ、意外な縁から誤解を与えたり。冒頭からは窺い知れない彼女の豪胆さが面白い。

前向きに生きていけるようになった“奈美”の上司、“山田”課長がまた嫌味な人物で。
彼が本を通じて因果応報な結末を迎えることに胸がすく思いを覚えるのはお許し頂きたい。
プロローグを読み返すとまたニヤリとできて、心温まる読了感が味わえるのでお薦めです。

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