2018年05月09日

『大須裏路地おかまい帖 あやかし長屋は食べざかり』

Swind 先生が「神凪唐州」名義で贈る新作は、小神社の神主と居酒屋の雇われ店長を兼ねる
青年があやかしたちと様々な騒動の解決に勤しむ物語。なごやめし普及促進協議会公認です。
(イラスト:平沢下戸 先生)

http://tkj.jp/book/?cd=72817601


人や動物に擬態する「あやかし」たちが暮らすあやかし長屋の一角にある居酒屋「なご屋」。
“諒”はあやかしを視る能力を活かし、そこで店長を務める。神主で賄えない日銭のために。
ある日、弱った子猫を拾い食事を与えてみると少年の姿を取り戻すも記憶がないと言い──。

“諒”が養うことになる記憶喪失の少年“トータ”が長屋の人々から助けられたり、思わぬ
友達を得ることで成長していく様子が微笑ましい。もちろん「協議会公認」の名に恥じない
名古屋ならではの食べ物をおいしく口にする描写の絶妙さは、読了後に思わず食が進むほど。

大須の地を舞台に起こる、あやかし由来の騒動を解決していく内に、“トータ”が鍵を握る
ようになっていく展開に注目。彼の成長と騒動の結末を見届ける面白さがあります。そして
長屋の大家“朱音”の立ち居振る舞いを推しておきたいところです。おススメしておきます。

posted by 秋野ソラ at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2018年05月08日

『ファイフステル・サーガ 再臨の魔王と聖女の傭兵団』

「火の国、風の国物語」シリーズの 師走トオル 先生が贈る新たな叙事詩。魔王再臨を前に
自分の死を夢に見る聖女と婚約することになる少年が共に死を回避する術を探し続けます。
(イラスト:有坂あこ 先生)

http://www.fujimishobo.co.jp/bk_detail.php?pcd=321712000906


魔王戦役から数百年経った今も魔物から国を守るため戦う《狂嗤の団》。その団長の息子
“カレル”は幼き頃に禁忌を恐れずエルフの教えを請い18になってからは国中を渡り歩く
日々を過ごしていた。そんな彼が英雄譚の中心に担がれていく、運命の瞬間が訪れる──。

聖女“セシリア”の秘密を共有する“カレル”が自分の能力や立ち位置を正確に分析して
最善の手を尽くそうとする、実直な姿勢に好感が持てます。死が予知できることを逆手に
取る仕掛けが絶妙です。“ミーリエル”がさばさばとしているのも実に良いと思います。

巻末に推薦文を寄せた 大森藤ノ 先生も言及されています通り暗愚王子“ヴェッセル”が
主人公を超えるくらい言動で魅せてくれるので目が離せません。“イエッタ”も同様に。
強国に攻められる窮地の救い方も見事なもので、胸が熱くなります。続きが楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 00:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2018年05月07日

『15歳でも俺の嫁! 交際0日結婚から始める書店戦争』

庵田定夏 先生が贈る新作は出版業界、中でも「取次」に焦点を当てた歳の差ラブコメディ。
初対面の女子中学生に求婚された大手出版販売会社に勤める会社員の激動の日々を描きます。
(イラスト:はまけん。先生)

https://mfbunkoj.jp/product/15yome/321712001032.html


出版社と書店の間を取り持つ出版販売会社に勤める27歳の会社員“賢一”。見ず知らずの
美少女中学生“アリサ”に求婚され、思わず受け入れた彼は有無を言わさず彼女の祖父に
「貴様はワシの孫を幸せにすると、誓うか?」と凄まれる。急転直下の展開に、彼は──。

日本の出版流通を語る上で外せない「取次」について解説しているのがまず注目すべき点。
それを踏まえて“賢一”と“アリサ”の結婚騒動と、通販大手の外圧に抗う大規模書店の
生き残りを賭けた企業戦争が織り交ざる展開にハラハラドキドキ、胸を熱くさせられます。

やがて数の暴力に晒される“アリサ”と“賢一”。心挫けそうになる彼女を、窮地の中に
あるはずの彼が屈せずにどう救うのか。彼女が彼に結婚を誘った裏付けもしっかりあって
ラブコメとしても十二分に楽しめる作品に仕上がっています。激しくお薦めしておきます。

posted by 秋野ソラ at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2018年05月04日

『信長とセーラー服 時をかける大和撫子』

井の中の井守 先生が贈る新作は、戦国時代を行き来して“織田信長”と出会うきっかけを
得た美少女が、挫折を引きずって内向的になっていた自分を変えようとする様を描きます。
(イラスト:ぼに〜 先生)

http://www.bishojobunko.jp/c/item/82960021064270000000.html


愛知の名門お嬢様学校に通う“静香”。校外学習で訪れた名古屋城で彼女にしか見えない
光る岩に触れた瞬間、眩しさの先に現れた見慣れぬ日本家屋に驚くほどの美少年。彼こそ
若かりし“信長”だが逢瀬の時は短く、現代に引き戻される。彼女は異変を調べるが──。

“信長”の足跡を追うことで時間逆行する機会を得る“静香”が彼の育ての親“政秀”を
失う場面に立ち会った時、自身と同じ境遇に身を重ね、生まれる母性のままに体で慰める
転機を迎えます。そこから彼の生き様に感化され、思慕の念を募らせる彼女がいじらしい。

時間逆行と共に歳を重ねる“信長”に対し美少女のままな“静香”。やがて迎える歴史的
瞬間、彼の死を前に二人はどんな決断を下すのか。二人の悲痛な想いを押し潰す炎の先に
彼女が流す涙の理由をぜひ見届けてほしい。冒頭を読み返すと、より納得感が増します。

posted by 秋野ソラ at 00:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2018年05月03日

『土地神様のわすれもん』

新井輝 先生が贈る新作は、偶然に作家となった青年が、突然に遭遇した土地神の「誰かを
助けたい」気持ちに応え、思わぬ経験を通じて友情と執筆の機会を得ていく様を描きます。
(イラスト:あおいれびん 先生)

https://www.kadokawa.co.jp/product/321711000895/


何となく書いた作品が大当たりした“光”だが、次回作が書けず忘れられた作家となって
久しい。そんな彼が幼少の記憶も朧げな生まれ故郷へ戻ると猫の姿をした土地神に出会う。
忘れられた存在からの脱却を願う、威厳のない土地神の気まぐれに付き合ってみるが──。

仕事に限界を感じで出戻ってきた“美羽”から自分のことを覚えていないという“光”に
「このわすれもんが」と怒られる場面があります。この「わすれもん」がその土地で示す
意味に“光”と土地神との因果が込められていることを知るまでの展開が何とも興味深い。

祟り話や迷子探しなど他の土地神や困っている人を助けようと行動する“光”と土地神の
気心知れたやりとりに和みます。思いがけず手に入れた平穏をあっさり崩される“光”が
見せる言動、機微の変化にもご注目。あとがきで触れられたご縁にも目を惹く一作です。

posted by 秋野ソラ at 06:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2018年05月02日

『乃木坂明日夏の秘密』

『乃木坂春香の秘密』シリーズ完結から約6年。“春香”の娘“明日夏”たちを軸にした
次世代シークレット・ラブコメを再び しゃあ 先生と組んで 五十嵐雄策 先生が綴ります。
(イラスト/しゃあ 先生)

http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-893798-6/


私立白城学園のAMW(アニメ・マンガ・ウォッチング)研究会に所属する“善人”は幼馴染
である“冬姫”のガチさには劣る、ライトなアキバ系男子。同じ会に所属する乃木坂家の
令嬢“明日夏”のある秘密を偶然知ったことで日常生活を共に過ごす機会が増えるが──。

“春香”の時とは真逆で「アキバ系ではないこと」をひた隠しにする“明日夏”の苦悩は
真剣であるが故に、つい微笑ましく映ってしまいます。血が為せる業なのかも知れません。
窮地を度々救ってくれる“善人”に秘密を知る度、彼女が思慕の念を抱くのも自然な流れ。

やがて乃木坂家のホームパーティに招かれ家族の覚えもよくなった所で、最大級の秘密を
“明日夏”自身から打ち明けられた“善人”の決意が、この時ばかりは格好良く見えます。
46個すべての秘密を知って彼はどう立ち居振舞うのか。想像するだけでも楽しいものです。

posted by 秋野ソラ at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2018年05月01日

『ぼくたちのリメイク4 「いってらっしゃい」』

木緒なち 先生が贈る青春リメイクストーリー。第4巻は思わぬ決別から11年の時が過ぎ、
元の年齢に戻った“恭也”が“亜貴”と幸せな人生を作り直したところから始まります。
(イラスト:えれっと 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/bokutachi-remake/321712001027.html


気がつけば娘がいて。その娘は“亜貴”と結婚してできた子供で。けど彼女は、いや彼女
だけでなく“奈々子”も“貫之”も夢を諦めていて。これが幸せな結末かと自問自答する
“恭也”の姿が何とも痛ましい。それを受け止める“亜貴”が吐露した心情も、また然り。

ソーシャルゲームの開発会社で以前と同様にゲームディレクターを務める“恭也”。彼が
目にする上司となった“河瀬川”に対する理不尽な仕打ちに何もできないと不甲斐なさを
滲ませる様子はまさに悲愴。仕方ない、で本当に済ませてしまうのかハラハラするばかり。

飛行機で飛び立つ“河瀬川”を見送った“恭也”が出会う「あの人物」が全てを物語る訳
ではありませんが、仮初めのハッピーエンドに終止符を打つ彼の決意を揺るぎないものと
するのは納得の展開。とは言え“貫之”の問題をどう解決するのか、そこが残課題です。

posted by 秋野ソラ at 01:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル