2020年09月10日

『いつか僕らが消えても、この物語が先輩の本棚にあったなら』

永菜葉一 先生が「MF文庫J」から贈る新作は、小説に魅せられた少年少女の青春創作活劇。
文芸部部長に導かれ、苦学生の少年と恋する少年が小説家でプロデビューを目指します。
(イラスト:なび 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/itsukabokuraga/322003001224.html


無職の父に暴力を振るわれ、妹を庇いながら新聞配達で日銭を稼ぐ中学2年生の“海人”。
報われぬ日々に疲れ、自暴自棄な彼に救いの手を差し伸べる少女“朱音”。文芸部部長
と名乗る彼女は「死にたいのなら小説を書け!」と言い、彼はそこに光を見い出す──。

物語を書く手法も、小説投稿サイトの存在も知らない“海人”が“朱音”指導のもとで
作家として実力をつけ、ライバル“浩太”と切磋琢磨する展開がサクセスストーリーを
演出しつつ、未来の描写を挟むことで先の読めない展開から緊張感を高めるのが上手い。

「物書きは読者の存在に生かされている」と作中で話に出る通り、技術論を語るよりは
作家になるしかない、という生き様を描くところに軸を置いている機微の描写が面白く
プロデビューを目指す勝負の行方も落とし所が興味深いお話。オススメできる内容です。

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2020年09月09日

『育ちざかりの教え子がやけにエモい2』

鈴木大輔 先生が贈るエモ×尊みラブコメ。第2巻は“美優”が抱く淡い想いに気がついた
“ひなた”を軸として、“達也”も含めた色とりどりの恋わずらい模様を描いていきます。
(イラスト:DSマイル 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518627


風邪をひいた“ひなた”がここぞとばかりに“達也”へ色々お願いしちゃう話の導入部分。
軽々しく「好きだよ」とつぶやく彼女の言葉を軽く受け流せる彼の胆力はすでに称賛の域。
そんなしたたかな彼女が今回、警察沙汰を起こして補導されることになるとは露知らず。

前巻の騒動から真の意味で和解した“彩夏”、腹を探り合う2人を見守りながら恋バナに
淡白な姿勢を見せる“菜月”、そして引っ込み思案な自分を変えようと努力する“美優”。
そして自分の気持ちを整理しきれないまま迷走する“明日香”と機微の変化も注目の要素。

“ひなた”たちの指南をうけ、すっかり垢抜けた“美優”が全身全霊で臨んだ告白の行方。
それを見たから、だけではなく「あの場面」を見たからこそ責任を取りに来た“ひなた”
の意識の変化を“達也”は見極め、受け止めることができるのか。次巻も見逃せません。

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2020年09月08日

『ホラー女優が天才子役に転生しました 〜今度こそハリウッドを目指します!〜』

鉄箱 先生の「小説家になろう」投稿作が書籍化。ホラー女優が事故死し、転生した先は
お金持ちのご令嬢。子役からハリウッド女優を目指す未来転生型サクセスストーリーです。
(イラスト:きのこ姫 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518634
https://ncode.syosetu.com/n0230fu/


ホラー女優として名を馳せた“桐生鶫”をまるでホラー映画の呪いのように襲う交通事故。
気がつけば20年後のベッドの上で、銀髪碧眼の美少女“空星つぐみ”として転生していた。
彼女の演劇への熱を汲んだ両親はドラマのオーディション会場へ参加する手筈を整え──。

“鶫”が持つ演劇の才能をそのままに新生子役として大人顔負けの演技で周囲を惹き込む
“つぐみ”の快進撃が爽快。ト書きを使い各場面への導入をスムーズに促す演出もお見事。
そのままTVドラマ化しても問題なさそうな内容です。演者さんは大変だと思いますけど。

“珠里亜”たち同年代の友だちとの関わりだけでなく、“鶫”として共演した演者たちや
スタッフ、関係者との一方的な繋がりがどう作用していくのか楽しみな設定もちらほらと。
きのこ姫 先生の挿絵もホラーな役を演じる描写に合致していて好感。続きが楽しみです。

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2020年09月07日

『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)2』

むっしゅ 先生による漫画連載も好調な みかみてれん 先生が贈るノンストップ・ガールズ
ラブコメ。第2巻は“真唯”に復讐する“紗月”が“れな子”と期限付き交際を始めます。
(イラスト:竹嶋えく 先生)

http://dash.shueisha.co.jp/bookDetail/index/978-4-08-631379-7
https://seiga.nicovideo.jp/comic/47265?track=official_trial_l2


“れな子”を“真唯”の弱みと見る“紗月”。2人が仲直りしてほしいと願う“れな子”。
思惑が絡み合い“れな子”2週間の交際を始める“紗月”が、妻役として真摯に向き合う
姿勢がまず素敵。秘密を利用する悪女っぷりも、知られて動揺する姿もまた魅力的な要素。

なぜ“紗月”は“真唯”に復讐したいのか。家の事情も知り、裸の付き合いもしちゃう仲
を経て“れな子”が2人を羨ましいと思うのも納得で。改めて仲を取り持つため容赦ない
一撃を叩き込む姿は、あんなに油断が過ぎる身の振り方をするにもかかわらず雄々しくて。

“真唯”に対して言い訳めいた相談をしたり、今回の決闘を踏まえて慰めにかかったりと
“れな子”が「れまフレ」の関係を揺らせる中、彼女が思いも寄らず思わせぶりな言動で
募らせ続けた“紫陽花”の淡い想いがどう花開くのか、今から楽しみで仕方がありません。

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2020年09月04日

『記憶書店うたかた堂の淡々』

野村美月 先生が「講談社タイガ」から贈る新作は、驚くほど綺麗で無表情な顔をする青年
“一夜”が記憶を売り買いできることを利用する人たちが織り成す様々な物語を綴ります。
(イラスト:本山はな奈 先生)

http://taiga.kodansha.co.jp/author/m-nomura.html


本が好きな“静乃”にはそれを熱弁しても、それを熱心に聞いてくれる素敵な男性がいる。
そんな“誠”からある日「もう会えない」と連絡が。何度も連絡して繋がらないどころか
“誠”という人物は死亡していることが判明。戸惑う彼女にある記憶が沸き上がって──。

記憶を売り買いする、というのはどういうことか。示される実例に、時には命すら懸けて
相手に伝えたい想いを残したり、自身を表現することに繋げたりと興味深い小編の数々で。
婚活のアプローチに使われるとか、女優の矜持を維持するために利用するとか、実に斬新。

また、一度利用した人物が再び“一夜”のもとを訪れて更なる逸話を生み出していく構成
も小編同士に繋がりができて面白いと感じました。利用する人たちを見た“一夜”の反応
にも物珍しさを感じる注目すべき点かと。紙幅的にも読みやすくオススメできる一作です。

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2020年09月03日

『処刑少女の生きる道(バージンロード)4 ―赤い悪夢―』

佐藤真登 先生が贈るファンタジー作品。第4巻は失踪した“アカリ”と“モモ”を追う
“メノウ”の気苦労を他所に、彼女の導師“陽炎”が慈悲なき宣告を突きつけてきます。
(イラスト:ニリツ 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4815607135.html


“メノウ”が死ぬ未来に繋がる2つの可能性を知った“モモ”が“アカリ”と逃避行する
中で、時に衝突しながら、意外と仲良くしている様子は、緊張感を保ちつつも微笑ましい。
“アーシュナ”の珍妙な願いも受け入れて2人を追う“メノウ”は知る由もない話ですが。

旅中、“メノウ”が「魔導」とは何たるかを突き詰めていく間に、手痛いしっぺ返しを
喰らったり、“アカリ”を取り逃がしたり、あらぬ冤罪容疑をかけられたり、一つとして
報われることがないのが切ない。その上で“陽炎”から告げられるあの一言も容赦がない。

“陽炎”から告げられる「異世界人を送還する魔導理論」の残酷さに絶句する“アカリ”。
彼女のことを殺せるか、と先輩に問いかける“モモ”。いずれ殺意を向けてくるであろう
師匠に対して決意を示す“メノウ”。それぞれの思惑が物語をどう動かすのか、注目です。

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2020年09月02日

『スパイ教室03 《忘我》のアネット』

竹町 先生が贈る痛快スパイファンタジー。第3巻は前巻で居残ることとなった“ティア”
たちに何が起こったのか、捜しに向かう“リリィ”たちと時系列を分けて描いていきます。
(イラスト:トマリ 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/202001spy/322003001189.html


“屍”を斃す立場に選ばれた“ティア”たちを試す“クラウス”の意図が後々効いてくる
ワケですが、このほんわかした導入部分であの結末に影響するとは中々予想がつきません。
彼女たちなりの「連携」を活かせるか、“ティア”が背負う気苦労には同情するばかりで。

任務達成後の骨休み中に“ティア”たちの前へ突如現れた“アネット”の母を名乗る女性。
“マティルダ”の真偽を確認する術もなく、“ティア”の甘さにつけ入られる展開に俄然
緊張感が高まります。前もって“クラウス”は気づいていただけに、えげつない演出です。

仲の悪い陸軍情報部とのやっかみもあり、まさに内憂外患の状況で当事者“アネット”が
出した結論が、心を読んだ“ティア”と同様にただ驚かされるばかり。因果応報の結末に
胸をなでおろしつつ、遂に全員で「蛇」の正体を掴みに行く次巻の刊行が待ち遠しいです。

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2020年09月01日

『クラスメイトが使い魔になりまして4』

鶴城東 先生が贈る険悪主従ラブコメ。第4巻は“美砂”として過ごした神様の改変により
“千景”との接点も力も無くした世界で“想太”は賭けに勝てるか、その行方を描きます。
(イラスト:なたーしゃ 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518610


平然と彼女として振る舞う“美砂”に、それを平然と受け入れる“想太”に、もどかしさ
だけが募る展開。この状況をどう打破するのか、と言えばやはり「あの人」しかいません。
名助演ぶりが光るだけに、思わず惚れそうになります。ここで終わってもいいくらいです。

妙に嫉妬深い“美砂”を躱しつつ、記憶を操作されたであろう“千景”の説得に試みるも
勘づいているはずなのに“想太”を避ける、という謎を解くパートに突入。期限が迫る中
気がはやる彼の気持ちが痛いほど分かるだけに、“美砂”へのストレスがたまる一方です。

逃げ切りを図る“美砂”、“想太”への悔恨をあらわにする“千景”、強い想いを正直に
示す“想太”、三者三様の実に面倒な機微を経て掴んだ未来はひとまず一件落着な感じで
ひと安心。変な女にばかり好かれる“想太”に幸あれ、ということで無事完結を祝います。

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2020年08月31日

『たとえば俺が、チャンピオンから王女のヒモにジョブチェンジしたとして。』

藍藤唯 先生の「小説家になろう」投稿作が書籍化。杠憲太 先生によるコミカライズも
決定した、天性の職業が人生を左右する世界で最強の無職が逆転人生を歩む人気作です。
(イラスト:霜降 先生(Laplacian))

https://fantasiabunko.jp/product/202008orechamp/322003001193.html
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_KS13201819010000_68/
https://ncode.syosetu.com/n1393fy/


コロッセオで王座を守り続ける“フウタ”は、相手の戦い方を模倣するスタイルに加えて
本来生まれ持つ職業を持たない〈無職〉であることからまるで悪役のような扱いを受ける。
疲弊した彼は経営者の甘言から過ちを犯し、コロッセオ追放され人生を彷徨うのだが──。

王国の第一王女“ライラック”に拾われた“フウタ”を世話するメイドの“コローナ”が
掴みどころのない性格でありながら魅せる場面が幾つもあって実に良いキャラクターです。
受動的な彼とは違い物語を動かしてくれる要員でもあり、目が離せない人物でもあります。

“フウタ”過去を知りながら客人として招いた“ライラック”の、最強になりたいという
想いの先にある真意。世界に挑むほどに熱い彼女に空恐ろしさを感じつつ、彼女の味方で
在り続ける彼がその期待に応え続けることができるのか。先が楽しみな物語に期待大です。

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2020年08月28日

『ストライク・ザ・ブラッド22 暁の凱旋』

三雲岳斗 先生が贈る大人気学園アクションファンタジー。第22巻は異境と“カイン”の
遺産を押さえた“レン”に絃神島も握られた“古城”が徹底抗戦する完結巻となります。
(イラスト:マニャ子 先生)

https://dengekibunko.jp/product/stb/322003000221.html


“古城”に番う12人の「血の伴侶」を巡る女性陣の表に裏に見せる想いがまず面白くて。
中でも“紗矢華”が不本意ながら遂に本心をさらけ出す流れがお気に入り。その中でも
ヤキモチを焼くだけで最後の一歩が踏み込めない“雪菜”の言動がもどかしいのなんの。

駄洒落を考えるの大変そう、と登場する度にペースを崩される“ラードリー”の強さに、
“古城”へ決定的な一撃を与える“レン”に圧倒される流れを「血の伴侶」が覆す展開
には驚かされました。そして、この極限だからこそ“雪菜”が一歩踏み出せたことにも。

暴力的な「眷獣弾頭」の存在に秘められた“カイン”の希望、それを担う絃神島の奇跡。
異境や吸血鬼の位置づけも埒外の繋がりを魅せながら最後は「わたしたちのケンカ」で
締め括ってくれたのも見事。匂わせぶりな結末も興味津々ですがまずは祝・完結、です。

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