2019年07月25日

『逢う日、花咲く。』

青海野灰 先生の「第25回電撃小説大賞・選考委員奨励賞」受賞作。心臓移植手術を受けた
少年が見始めるようになったドナーの少女の夢と淡い想いの行方を描く青春恋愛小説です。
(イラスト/ふすい 先生)

https://mwbunko.com/product/321901000084.html


記憶転移。臓器を移植された患者がドナーの記憶や知識、嗜好等を受け継ぐとされる現象。
知らない少女の夢を見る“八月朔日”は科学的根拠のないこの現象を身をもって体験する。
後に自ら命を絶った彼女、“葵花”の夢に彼も良く知る「ある人物」が登場してきて──。

“葵花”の記憶を追体験する“八月朔日”と同様に、実は“葵花”も彼のことを何となく
認識できている、そして互いに淡い恋心を抱いている、という興味深い設定。両者の視点
を織り交ぜながら“葵花”の事の真相に迫っていく彼と彼女の心のふれあいに惹かれます。

移植された臓器をきっかけとして“葵花”の人生に“八月朔日”はどこまで干渉できるか。
好きな人のためにできることを為した彼の生き様は思いがけない奇跡を呼ぶ展開は思わず
胸を熱くさせるものがあります。万葉の一首がもたらす希望をぜひ感じ取ってみて下さい。

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2019年07月24日

『ウタカイ 異能短歌遊戯』

「百合姫ノベル」から発売された 森田季節 先生の青春百合SF。短歌で環境を操る異能を
駆使するスポーツで全国大会に臨む少女の想いを描く本作が特別篇を収録して文庫化です。
(イラスト/えいひ 先生)

https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014241/shurui_3/page1/order/


ウタカイの全国大会で初めて対決した“鏡霞”先輩に辛勝したことを契機に交際を始めた
“伊勢”はその勢いで彼女が在籍する強豪校へ飛び級で入学。今またセンバツへの出場権
を賭け彼女の歌垣、炎を纏う龍の異能と周囲を霞で惑乱させる先輩の異能が対峙する──。

2013年の発売当時はまだ百合の素養が乏しく、今こうして文庫化された本作を読むことは
むしろ幸甚だったのではないかと思える読了感。三十一文字にのせた想い、時に文字数に
収まらないその感情がもたらす強さ、葛藤は微笑ましく、そして眩しく映るものばかりで。

トーナメントを勝ち上がっていく“伊勢”を見て信念を揺らがせる“鏡霞”の機微が実に
いじらしい。そんな2人も「後日談」では平常運転に戻って安心させられますし、巻末の
「幻と憎しみのマリネ」も思わぬ年の差百合が味わえて何粒もおいしい作品と感じました。

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2019年07月23日

『友達の妹が俺にだけウザい2』

三河ごーすと 先生が贈るいちゃウザ青春ラブコメ。第2巻は“真白”の爆弾発言に揺れる
“明照”の心を、なぜか「5階同盟」の面々が更にかき回していく波乱の展開を描きます。
(イラスト:トマリ 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4815602772.html


「なまこ」としての作風が変わるのも、日常とLIMEとで見せる“真白”の態度が正反対で
あることも、“明照”が動揺するのは無理もなく。そんな彼の様子を見て“彩羽”がつい
ふくれっ面を見せる所に「5階同盟」や彼と彼女の思い入れのある関係が改めて窺えます。

“明照”の頭を悩ませるもう一つの要因、“菫”が顧問を務める部活の窮地が「紫式部」
としての活動にも悪影響を及ぼすとあって、部員たちにウザがられながらも全力で介入
していく姿勢が、やがて彼自身の悩みを解決に導く糸口につながる展開は今巻も魅せ所。

思わずドキッとさせられる“音井”の後押しを受け自分らしさを取り戻していく“明照”。
それに引きずられて覚悟完了をキメる“彩羽”。こうしてみると改めて2人が話の中心に
いることを再認識させられます。次なる爆弾発言にどう対処するか、続きも楽しみです。

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2019年07月22日

『数字で救う! 弱小国家 4 平和でいられる確率を求めよ。ただし大戦争は必須であるものとする。』

「コミックアライブ」にて えかきびと 先生によるマンガ連載が始まる、長田信織 先生の
救国戦記ファンタジー。第4巻は前巻から5年後の世界にて新たな火種が燻ぶり始めます。
(イラスト:紅緒 先生)

https://dengekibunko.jp/product/su-suku/321904000057.html


“トゥーナ”が示す「正しい愛の数式」を“ナオキ”が軽々論破できるほど“ソアラ”が
益々ご成長あそばされしこと、お慶び申し上げます。というか、187ページの挿絵すげぇ。
そんな彼女ですが、話の先々で相変わらずかわいそうぶりを発揮してくれて安心しました。

福音派同盟を楯に旧敵から派兵を迫られるファヴェール王国。誓連会との戦争まったなし、
そんな状況で“ナオキ”が“ソアラ”の顔色を窺いつつ密かに進めるある計画が夫婦仲に
水を差すかと思えばアレだから公認の愛人“テレンティア”の有能ぶりが光るというもの。

今巻の顛末で魔術師というか魔王ぶりを発揮する“ナオキ”以外にも、一方通行な想いが
もどかしい“オードッグ”、愛らしい“カタリナ”や“ルーカス”といった“ナオキ”の
子供たち等、次代を担う者たちの行方も気になります。次巻も魅せてくれると期待します。

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2019年07月19日

『最強騎士団長の世直し旅1』

長きに渡る人類と竜魔人との戦いに終止符を打った銀翼騎士団の団長が各地に残る残党を
討伐するための世直し旅に出る物語。佐竹アキノリ 先生が完全新作としてお贈りします。
(イラスト : パルプピロシ 先生)

https://herobunko.com/books/hero79/10067/


「騎士団を辞めさせていただきたく存じます」と騎士“フェリクス”からそう告げられた
国王は彼を引き留めようとするもその意志は固く、代わりに幻影魔導師の“シルルカ”を
供にするよう命じる。想像していた気ままな一人旅とは異なり、騒々しくなりそうで──。

佐竹アキノリ 先生の作品ということで、“フェリクス”に対して思わしげな言動を見せる
“シルルカ”やあどけなさの残る“リタ”も狐娘。パルプピロシ 先生が描くその姿も実に
可愛らしいものがあります。そんな2人を連れて世直し旅を続ける彼が羨ましい限りです。

立ち寄った村を襲う魔物を退治したり、、絹糸の村で起こる行方不明事件の黒幕に迫って
みたり、湖の魚を食いつくす犯人をつきとめたり、教会を巡る陰謀を明らかにしたり、と
痛快活劇ぶりは爽快で。“アッシュ”の支援を受けどんな巨悪に立ち向かうか楽しみです。

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2019年07月18日

『お姉さん先生は男子高生に餌づけしたい。』

朱月十話 先生の「小説家になろう」投稿作が書籍化。インテリヤクザと周囲に恐れられる
少年が学園内でも有数の美人教諭たちに色々とお世話される様子を描く激甘ラブコメです。
(イラスト:HIMA 先生)

https://ebten.jp/p/9784047356429
https://ncode.syosetu.com/n4300fl/


姉ヶ崎高校の女神、「女騎士先生」こと“岸川”先生が顧問を務める水泳部で親御さんに
揉め事を起こされている場を助けた“涼太”。お礼をしたいという先生の距離感が異様に
近く胸の鼓動は治まる所を知らない。しかし先生と生徒、適切な関係は維持すべきで──。

やっかみを受けて怪我をした“涼太”の苦境を思い、自宅に招いて世話を焼く養護教諭の
“杜山”も加わって実に羨ましい身分の彼が、いつ爆発しないかと思わずにはいられない。
HIMA 先生が描く教諭2人の容姿たるや、「美少女文庫」案件でないのを悔やむばかりで。

そんな先生と生徒の関係を訝しむ“空野”先輩と“涼太”の関係も中々に浅からぬものが
あって、インテリヤクザとか言われている彼の印象も眉唾物だと感じてもらえる逸話かと。
ユーフォニアムがまた良い形で物語に絡んできます。ぜひとも続きを、ということで一つ。

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2019年07月17日

『異世界転生アンチテーゼ 転生魔王はチート転生者をチートで殺します』

小路燦 先生の「第24回スニーカー大賞・編集部大賞」受賞作。元日本人の少年が転生した
異世界にて次々と訪れる闖入者たちを返り討ちにする異色の異世界転生ファンタジーです。
(イラスト:mmu 先生)

https://sneakerbunko.jp/product/antithesis/321903000006.html


究極のドラゴン“テオ”、鬼族の姫“オリア”、魔女にして魔王の側近“セレス”他1名。
四天王に面白がられたり蔑まされたりする“魔王”は今日も今日とて魔王城で転生者たち
を待ち受ける。彼自身も人間と魔族が対立するこの異世界に転生してきた者なのだが──。

同じく転移してきた勇者、剣神と呼ばれた英雄の生まれ変わり、オンラインゲームの世界
からやってきたプレイヤー、魔術を極めるため転生してきた魔術王。今の世に在りがちな
異世界転移・転生モノの主人公が示す正義を、“魔王”の正義が崩していく興味深い展開。

突っかかってくる“ジャガル”をあしらう際に示した“魔王”の気概にスローライフ感も
滲ませていてこれも今どきだな、と思いました。“セレス”と“魔王”の意味深な距離感
を見ていると微笑ましくもあり、“オリア”が見せる苦渋の表情もクるものがありました。

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