2018年09月04日

『ジャナ研の憂鬱な事件簿4』

酒井田寛太郎 先生が贈る日常系ミステリー。第4巻は“啓介”が事件と関わる姿を通じて
真実とどう向き合うのかを問いかける“真冬”が、その答えに対し彼の本質を見抜きます。
(イラスト:白身魚 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094517484


「金魚はどこだ?」では写真部がコンクールで金賞をとった被写体である金魚とその鉢が
無くなる事件に臨む“啓介”。部員の“玲”が置かれている境遇などを踏まえ真相に迫る
過程において、自身が「推理する」ということに対する葛藤に似た感情を抱くのが印象的。

「スウィート・マイ・ホーム」では“ユリ”の母が勤める介護施設で起こる騒動を巡って
“啓介”の推理は身を助ける「芸」になると評価する“真冬”と意見が決定的に分かれる
重要な話。白身魚 先生の挿絵が両者の意志を見事に演出しています。自惚れでしたなぁ。

「ジュリエットの亡霊」では幽霊を見たという“玲”の話を受け事の真相を探る“啓介”。
“真冬”が寄り付かなくなったジャナ研の雰囲気と意外な結末がもたらす一抹の寂しさは
気が気でない。加えてあの間の悪さ。“啓介”は己と向き合う暇があるのか気になります。

posted by 秋野ソラ at 00:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2018年09月03日

『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦5』

細音啓 先生が贈る王道ファンタジー。第5巻は“シスベル”を皇庁へ護衛することとなる
“イスカ”たちが彼女に向けられた悪意の数々、その周囲で暗躍する者たちと対峙します。
(イラスト:猫鍋蒼 先生)

http://www.fujimishobo.co.jp/bk_detail.php?pcd=321804000870


“シスベル”から“イスカ”へのあからさまなアプローチに対し“ミスミス”や“音々”
そして“アリス”が黙っているワケがない。特に彼のことを「奪われるかも」と認識した
“アリス”の大爆発ぶりが今後を左右するかもしれない様子で思わずニヨニヨするところ。

皇庁では王女暗殺未遂事件が発生して“仮面卿”に嫌疑が掛かる事態に。その犯人を捜す
鍵を握るのが“シスベル”ということで、彼女の身を脅かす勢力がついに動き出す不穏な
空気は気になる展開。彼女もああいった形で襲撃されることになるとは思わないでしょう。

“イスカ”が“シスベル”を襲う新たな敵の存在に苦戦した、その理由から窺える得体の
知れない何か。それに輪をかけるかのように意味深長な感情を吐露する“イリーティア”
の真意と合わせて読めない部分に注目しつつ、次巻の三つ巴な戦争が楽しみでなりません。

posted by 秋野ソラ at 00:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2018年08月31日

『Everlasting』

藤村由紀(古宮九時)さんがコミックマーケット94で頒布された新刊。異世界から侵入する
異形らと戦う組織最強の少女と、彼女を支える幼馴染の少女を巡る数奇な運命を描きます。
(イラスト:白線 さん)

https://mypage.syosetu.com/141617/


人を喰らい、破壊の限りを尽くす異形の存在《鵺》から世界を護る者が集う「廃城機関」。
その組織で最高位を務める“亜貴妃”には守りたい日常がある。周囲から腫れ物のように
扱われる彼女に寄り添ってくれる幼馴染“メイ”と過ごす時間が何よりの救いだから──。

最強と呼ぶにふさわしい異能の力を持つ“亜貴妃”。その責任からしがらみも多い彼女が
敵に対して、そして組織内の仲間に対しても厳しい様子を見せるのとは対称的に、優しい
雰囲気を醸し出す“メイ”とのやりとりが実に印象的です。そこに裏があるとは露知らず。

「廃城機関」という組織が一枚岩ではない、という不遇さ。そもそもなぜ「廃城機関」と
呼ばれるのか。《鵺》が異世界から侵入してくる理由とは。すべてを知った“亜貴妃”が
結果をどう受け止めるのか。刹那の幸せに望む未来があることを願わずにはいられません。

posted by 秋野ソラ at 00:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌

2018年08月30日

『子育て陰陽師 へっぽこアラサー男と狐と小さなお弟子さん』

真楠ヨウ 先生の「第5回富士見ラノベ文芸大賞・金賞」受賞作にしてデビュー作。有数の
見鬼眼だけが取り柄という陰陽師を訪ねた4歳の女の子がもたらす生活の変化を描きます。
(イラスト 紀伊カンナ 先生)

https://www.kadokawa.co.jp/product/321804000773/


「あのねサヤね、間宮のおじさんに言われてここの子になるの。」見ず知らずの幼女から
いきなり宣言されて困惑する陰陽師の“春明”とその式神“識”。元気いっぱいの彼女は
式神にも興味津々で・・・ということは彼と同じく「視える」能力者のようなのだけど──。

対称的に優秀な兄からの要請もあり“サヤカ”を引き取ることになった“春明”。見鬼眼
という能力の危うさについて説くも思うようにいかず、子育ての面からも“識”からは
ダメ出しの連続で“春明”のへっぽこぶりがコミカルな前半は楽しく読み進められます。

“サヤカ”との生活にも慣れてきた所で現れる彼女の親族。離れたくない彼女とは裏腹に
あっさり引き渡しを決める“春明”。それが思わぬ怪異を招いて後悔するあたりですとか
やるときはしっかりやる彼のシリアスさにご注目。新しい家族の姿を見守りたいお話です。

posted by 秋野ソラ at 00:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2018年08月29日

『ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット3』

渡瀬草一郎 先生が贈る、和風VRMMOを舞台とした「SAO」スピンオフ作品。第3巻は勢いで
お泊りイベントを発生させたりする“ナユタ”と“クレーヴェル”の本音に触れていきます。
(イラスト:ぎん太 先生 原案・監修:川原礫 先生)

https://dengekibunko.jp/product/saoa-clover/321804000341.html


風邪でお休みの“クレーヴェル”に代わって役目をこなす“リリカ”に対して嫉妬の念を
抱く“ナユタ”が可愛くて。くっつくまで秒読み、というそぶりを見せながらも言葉では
「そんなつもりはない」と意思表示をする彼女の真意が見えず彼同様、困惑するばかりで。

“ナユタ”たちと一緒にいることで“クレーヴェル”の張り詰めていた印象が和らいだと
口を揃えて発言する周囲の関係者。そこへ、ふっと沸いた彼の見合い話。その裏に見える
SAO事件の傷痕。その傷をもってしても二人の絆を分けるのが難しいのは得心がいきます。

社員の中でもレアキャラという“八鳥”が作り出した《思考出力》に、いわゆる「先」を
感じるのも良い趣向。更に思いがけない未来予想図まで描かせる、という効果をもたらし
実に心地よい終幕を演出してくれました。潜在的な願望が形になることを願うばかりです。

posted by 秋野ソラ at 00:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2018年08月28日

『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXIV』

宇野朴人 先生が贈るファンタジー戦記。 第14巻は帝国本土への侵攻を開始したキオカに
対して、そして“シャミーユ”の悲願に向けて“イクタ”が命を懸けた一手を仕掛けます。
(イラスト:竜徹 先生)

https://dengekibunko.jp/product/alderamin/321804000332.html


“イクタ”と“ジャン”、互いの考えを先読みする戦略の応酬がまず熱い。その中で出た
「イクタ・ドクトリン」が功を奏する様子に喜びつつ、少しずつ劣勢に追い込まれる帝国
に焦りを覚えます。“サザルーフ”の言動が絶妙な形でその情勢に拍車をかけていました。

帝国とキオカ、両国最大の戦いは“ミアラ”の想いも救われる形でまとまる・・・かと思えば
ついに「敗戦」処理が始まるワケで。“シャミーユ”の呪いを解くため“イクタ”が放つ
渾身の裏切りには胸を震わせるものが。“トリスナイ”もまた被害者という演出も同じく。

民主化する帝国の成長を願いながら“ヤトリ”の元へ旅立つ“イクタ”の潔さ。見たくも
あり、避けたかったとも思うあたり複雑な感情が胸の中をよぎります。願わくば彼の意を
汲んで“シャミーユ”が幸せになってほしい。そう思える幕引きでした。お疲れ様でした。

posted by 秋野ソラ at 00:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2018年08月27日

『錆喰いビスコ2 血迫!超仙力ケルシンハ』

瘤久保慎司 先生の「第24回電撃小説大賞・銀賞」受賞作に待望の続刊登場。第2巻は場を
島根に移し“ビスコ”が自身の不死性を取り除くべく不死僧正なる人物の素性を探ります。
(イラスト:赤岸K 先生 世界観イラスト:mocha 先生)

https://dengekibunko.jp/product/bisco/321801000626.html


大宗教国家・島根。その拠点「出雲六塔」から6人の弟子たちに追い出された不死僧正
“ケルシンハ”の復讐劇に巻き込まれる“ビスコ”の胃を抜かれて大丈夫な体がまず凄い。
仙医“アムリィ”を連れての「経典」奪取競争、その苦戦ぶりに敵の強さを滲ませます。

“ミロ”も“ケルシンハ”に脳を侵食されたりと難しい局面を迎えますが、思いがけず
「錆」とは何か、「真言」の意味とは、という話の鍵を握る部分に触れることになって
ますます“ビスコ”とは違った方向に強さを見せていく場面の数々は注目と言えるかと。

最終決戦を前に明らかとなる“アムリィ”の不遇。そして摩錆天として猛威を振るう
“ケルシンハ”の強さ。まさしく神に抗うが如き“ビスコ”たちの戦いっぷりが熱い。
信念と信念のぶつかり合いは必見です。神に狙われる彼らの次なる物語に期待大です。

posted by 秋野ソラ at 00:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル