2025年12月03日

『フルメタル・パニック! Family3』

賀東招二 先生が贈るSFアクション「フルメタ」新シリーズ。第3巻はギャングのパーティ
に潜入する作戦を“テッサ”が“宗介”と偽装夫婦を演じながら遂行する顛末を描きます。
(イラスト:四季童子 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/202401fullmetaFamily/322412000957.html


“安斗”が表紙でなぜあの格好をしているのか。読み進めると分かる「身から出た錆」感。
独断専行は事故の元、ということで彼にとって良い薬になったのではないかと思いたい所。
“夏美”も荒事はいざとなればASで片づけようとするクセが出てきて苦笑いするしかなく。

“テッサ”が満を持しての登場、ということで“宗介”との当時を振り返る描写など実に
感慨深いものがあります。オトナの女性として魅力あふれる姿になろうとも、本質は何ら
変わらないことが窺えるのは複雑な胸中。でも“かなめ”にちょっかい出せたので良いか。

“大貫”がまさかの登場。用務員を辞めたあとの転身ぶりには驚くしかない。それでいて
一度スイッチが入ればあの狂暴ぶりを見せつける所は年齢を重ねても変わりなくて何より。
彼に熱い眼差しを向ける“夏美”の行く末が新たな楽しみにつながって次巻も要注視です。

posted by 秋野ソラ at 00:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2025年12月02日

『名前のない英雄』

宮下愚弟 先生の「第19回小学館ライトノベル大賞・優秀賞」受賞作。邪族と戦う勇者が
欲する「勇者の剣」を探し、届けるために命を懸ける者たちを描くファンタジー作品です。
(イラスト:カラスロ 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09453269


勇者“アステラ”は考える。「希望という灯火を受け継いできた者はみな英雄なのだ」と。
彼が放つ魔法は人に仇をなす怪物「邪族」を圧倒するも武器が耐えられず、壊れてしまう。
それを解決する「勇者の剣」発見の知らせを聞き、彼はその到着を信じて待ち続ける──。

「名前のない英雄」は誰だったのかと想いを馳せて、口絵にある「辺境の少年」のことを
振り返ると「俺」「兄ちゃん」「君」「あなた」「あんた」「お前さん」などの指示語で
しか呼ばれていない。けど言った人物の文脈で意図は伝わる。なるほどに絶妙なタイトル。

「必ず帰る」と“メノウ”と交わした約束。「死相が視える」と“ライラ”が告げた予知。
邪族から執拗に勇者の剣、そして命も狙われる緊迫感の中で垣間見える仲間たちの人間性
にも心を奪われながら、どちらが勝ったかを示すエピローグの演出も見事。オススメです。

posted by 秋野ソラ at 00:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2025年12月01日

『崩壊世界の魔法杖職人2 小冊子付き特装版』

黒留ハガネ 先生が贈る、荒廃した日本で世界一の魔法杖職人を目指す男の活躍を描く物語。
第2巻は生き辛い状況が続く中で“大利”が新たな技を磨き、人との縁を結んでいきます。
(イラスト:かやはら 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/houkaisekai/entry-12654.html
https://web-ace.jp/youngaceup/contents/1000315/
https://ncode.syosetu.com/n8281jr/


“大利”の長所とも言える、仮説を立てられる能力とそれを検証できる技術。特化型な彼
に対して普遍化の流れが魔法大学に生じてもそれを悪しとせず、むしろ襟を正して研鑽に
力を注いだり、任せる点は頼ったりと職人として弁えている潔さが不器用なのに好感触で。

“地獄の魔女”が必要悪と生きる覚悟を僅かに揺らがせる時、“大利”の気遣いが支えに
なることが救いに感じました。“花の魔女”にとって当たり前ではない所作を当然の如く
こなす彼に、彼女が琴線を震わせる様子は気の置けない感情を表せていて心温まりました。

“青の魔女”が感染爆発の際、“大利”に命を救われたことでいよいよ友人という関係を
超えた思慕の念を抱き始めたことが何ともこそばゆい。小冊子のSSにもそれがよく表れて
いるのでご注目。そんな点も踏まえつつ彼が新しいステージへ突入する次巻も楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 00:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2025年11月28日

『レイの世界 ―Re:I― 1 Another World Tour』

ドワンゴ発のオリジナルIPブランド「IIV」からリリースされた 時雨沢恵一 先生の短編
連作小説が電撃文庫にて文庫化。歌手と女優を目指す少女が異世界・並行世界を巡ります。
(イラスト:黒星紅白 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322504000335.html
https://twofive-iiv.jp/works/reinosekai/


女社長“有栖川”が営む小さな芸能事務所に所属する“ユキノ・レイ”はマネージャーの
“因幡”に連れられ、小さな町の音楽イベントでステージに立って歌う初仕事をこなした。
その件で彼女は女社長に問いかける。なぜ別の世界で仕事をすることになったのかと──。

事務所の社長室へ焦点を寄せていく前口上。仕事が出来てしまう“因幡”と共に目にする
異世界・並行世界の雰囲気。その世界の異物だからこそ歌ったり演技をすることに意味が
生じる“レイ”の活動。短編一つ一つが 時雨沢 先生の世界観にあふれていて味わい深い。

書き下ろし短編「因幡のメランコリア」では“レイ”と同年代に見えてしまう“因幡”が
行ける異世界や並行世界についてどう思っているのかを垣間見れるので興味を惹かれます。
あとがきの更なる実績解除も、所々ぬけている彼女の次なる仕事っぷりも気になる所です。

posted by 秋野ソラ at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2025年11月27日

『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙XIII 羊たちの宴<下>』

支倉凍砂 先生が描く賢狼の娘と聖職者による旅路。第13巻は様々な思惑が渦巻く公会議に
足を運ぶ“コル”が「薄明の枢機卿」として何を為すか。その一部始終を描く完結巻です。
(イラスト:文倉十 先生)

https://dengekibunko.jp/product/spice-and-wolf/wolf-on-the-parchment/322504000331.html


“エーブ”に問われた「全身全霊をかけたいこと」。公会議へ臨むに際して足りない何か
と聖職者を目指して“コル”が旅立つ冒頭の場面を思い出させるかのような演出がお見事。
彼女を「貨幣とは何か」を突き詰めて出し抜くあたりに彼、そして本作らしさが窺えます。

“コル”が敵の懐とも言える教皇庁において登壇し、聖職者として在るべき姿を語る奇跡。
これまでの道程を思えば感慨深さもひとしおです。様々な願い、そして努力が報われると
期待に胸が高まる中で、この流れを良しとしない者たちが振りかざす「神の錫杖」に驚嘆。

“ミューリ”が“コル”の頑固さをどこまで支えられるのか。彼の騎士として胸に感じる
熱量を信じて賭けに打って出る姿は圧巻の一言。文倉 先生の挿絵による演出も光ります。
彼が時の人となろうとも、2人の旅はまだ続くのだと思うと嬉しさが勝るというものです。

posted by 秋野ソラ at 00:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル