2022年06月20日

『竜殺しのブリュンヒルド』

東崎惟子 先生の「第28回電撃小説大賞・銀賞」受賞作。神命を受けた白銀の竜が守る島で
育った人間の少女が竜殺しのいる帝国に運命を翻弄される様を描く本格ファンタジーです。
(イラスト:あおあそ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/ryugoroshi_brunhild/322110000036.html


「エデン」を守る竜に殲滅された人々の中で、唯一生き残った少女“ブリュンヒルド”。
その竜に育てられた少女は竜を愛し、竜に愛されるようになるが、再び島を狙う帝国軍に
竜を殺され、囚われる。そこで彼女は帝国が誇る竜殺しの家の末裔だと知らされるが──。

“ブリュンヒルド”の実父である“シギベルト”が彼女へ愛を示さない様子に業を煮やす
“ザックス”の気遣い。家督争いで彼女に一度は妬みの感情をぶつけた“シグルズ”との
本音の語らい。帝国軍人として祭り上げられていく彼女の想いに響くのかが興味深い展開。

竜の狂信者たちに果たした説明責任。身を挺して竜から守った帝国の街並み。竜殺しの力
に隠された秘密。何度もフラッシュバックする「エデン」での思い出と遵守すべきルール。
竜として、人として生きた“ブリュンヒルド”が選んだ道の悲愴さに胸打たれる物語です。

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2022年06月17日

『声優ラジオのウラオモテ #07 柚日咲めくるは隠しきれない?』

二月公 先生が贈る青春声優エンタメ。第7巻は“夕陽”と“やすみ”が頑張り続ける姿を
見守る“めくる”の想いに触れつつ、彼女が考える声優としての在り方、矜持を描きます。
(イラスト:さばみぞれ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/sayyouradio/322202000055.html


声優ファンでありながら声優になった“めくる”だからこその葛藤や想いが伝わってきて
読み進める内にどんどん彼女の魅力に惹かれていく内容。『じゅーどるラジオ』の顛末が
その最たるもので「声優を活かす声優」を目指した彼女だからこそ見せられる感情が熱い。

オーディションに対して本気になれない。“めくる”の更なる躍進を切望する“成瀬”も
指摘せざるを得ない、彼女も自認する弱み。声優業を続けられなかった人たちのためにも
変わらなければいけない、と考え抜いた末の彼女の決断は見る側にも重く、そして切なく。

気合の入れ直し方を間違えた“めくる”に対して、親友の“花火”が活を入れ直す方法が
今巻の副題やイラストから窺えるのも面白い。ベテラン声優と相対しても臆することなく
臨める“めくる”に「らしさ」を残しているのもまた良い。彼女に対する株が急上昇です。

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2022年06月16日

『姫騎士様のヒモ2』

白金透 先生が贈る異世界ノワール。第2巻は迷宮都市の治安維持のため配備された聖護隊
に“ヴァネッサ”の兄が、彼女の死の真相を突き止めるべく“マシュー”をつけ狙います。
(イラスト:マシマサキ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/himekishisamanohimo/322201000060.html


やがて訪れる、かもしれない迷宮攻略の時を迎えた時ことを“マシュー”が示唆した際に
“アルウィン”が取った行動。これを見て彼女は彼とどう在りたいのか、尋ねてみたいと
改めて感じました。恋だの愛だの、単純には推し量れない彼女の心境、実に気になります。

そんな姫騎士様に今回も迷惑をかけてしまう形になる“マシュー”の身から出た錆な話の
数々に苦笑が絶えません。しかし、彼も彼女の迷宮病を何とかしようと「清濁併せ呑む」
方法で尽力しているのが見て取れるので、今巻も憎めない立ち居振る舞いに魅せられます。

迷宮都市に来た“ヴィンセント”が“マシュー”をどう見極めたのかも見所の一つですが
今回の騒動につながる“太陽神”の手口が、見方を変えればさも悪魔のようで憎たらしい。
都市の危機、そして姫騎士様の窮地が迫る中、ヒモとして選ぶ決断を見届けたいものです。

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2022年06月15日

『ひとつ屋根の下で暮らす完璧清楚委員長の秘密を知っているのは俺だけでいい。』

西塔鼎 先生が贈る新作は、成績優秀、品行方正、東欧人のハーフで眉目秀麗と疎遠ながら
幼なじみのいる少年が、彼女のとある秘密と日常を共有していく顛末を描くラブコメです。
(イラスト:さとうぽて 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322202000056.html


“黒川スヴェトラーナ”。校内で「姫君」とも称される彼女だが昔は物怖じする女の子で
良く世話を焼いたものだ、と独りごちる“俺”。ある日、家族の都合で彼女を家に預かる
ことになった彼は、彼女から未だ残る「怖がる癖」を克服する手助けを求められるが──。

主人公を「たっくん」「たーくん」「たの字」と呼ぶことで誰が喋っているかを印象づけ
ているのが、彼との会話を楽しむ上でのポイントとまず感じました。最初から“チカ”と
彼に呼ばせる“黒川”の「特訓」に至るまでの動機づけも分かりやすく、好感が持てます。

“霞野”や“鳴宮”を始めとする友人、知人たちに“黒川”の怖がりがいつバレるのかと
ヒヤヒヤしつつ、彼女の仄かな想いは伝わるのかモヤモヤしつつ安心して読了することが
できるラブコメになっているかと思います。さとうぽて 先生の挿絵による演出も絶妙です。

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2022年06月14日

『私のほうが先に好きだったので。2』

佐野しなの 先生が贈る青春泥沼トライアングル。第2巻は“桜子”の彼女となったはずの
“安芸”が“小麦”から過去の想いをぶつけられて揺れ動く、泥沼必至の展開を描きます。
(イラスト:あるみっく 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815611583/


“安芸”に関しては、彼の恋愛相談に答えた姉の辛辣な言葉がすべてを表しているとしか
言えなくて。結婚を前提にしている訳でもないにしろ、“桜子”がいない間に“小麦”と
元の関係に戻るのを受け入れるなんて誠実さが欠けていて情状酌量の余地もないというか。

“小麦”にとって不幸なのは、“安芸”への気持ちを引きずったまま、彼の心境を知って
しまったということ。諦めたはずなのに、諦めきれない。易々と割り切れないのが人の心
とは言え恋か友情か、二者択一を迫られれば選ばざるを得ないのが彼女の業というものか。

“桜子”にしてみれば“安芸”も“小麦”も求めてしまっている時点でもう救う手立てが
無いように見えて。彼の気持ちも、彼女の心情も察してしまうことができる“桜子”故に
進む道は唯一つ、と突っ切るのがつらい。このラストを繋ぐ 佐野 先生の腕の見せ所です。

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2022年06月13日

『高嶺の花には逆らえない』

冬条一 先生の「カクヨム」投稿作が書籍化。入学と共に校内随一の美少女に一目惚れを
する少年と、その友人となるモテ男が恋に振り回されていく様を描く新感覚ラブコメです。
(イラスト:ここあ 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094530681
https://kakuyomu.jp/works/16816452218689030051


引きずり続けた中学時代の初恋に別れを告げ、高校で同じクラスとなった“立花”に恋を
する“佐原”。意を決して告白を決めた矢先、友人となった校内一のイケメン“進藤”に
先を越された“佐原”。憂鬱な彼は翌日、友人の様子が何やらおかしいことに気づく──。

“進藤”と付き合い始めたはずの“立花”が弁当を作ってくれたり、名前呼びしてきたり
と“佐原”が戸惑うのも無理はなく。そんな彼が偶然出会うぽっちゃり系少女“武田”に
彼の家族の心を掴まれていく展開とその手腕が面白い。こんな外堀の埋め方があるのかと。

“進藤”の思惑を“立花”が知っている点。そもそも彼女が抱えている胸の内。それらを
知る由もない彼が彼女に目をつけたのが運の尽きというか。悪あがきを続ける彼、そして
岡目八目で状況を見守る“美紀”を前に“佐原”はどう振る舞うか、続きが気になります。

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2022年06月10日

『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 S.ex(すぺしゃる・えくすとら)』

有象利路 先生が贈る危険球ギャグラノベが「Born Digital」、電子特別編として初登場。
担当編集の思惑も、ページ数の制約も外れて、“サヨナ”たちが自由気ままに振舞います。
(イラスト:かれい 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322109000431.html


ギャグというのは受け手の感性に寄る部分も多く、評価が分かれることもしばしばですが
世知辛い昨今、こうして肩ひじ張らずに読める本作の存在は有難いものと感じている所で。
1巻と2巻の間にあった話がやたら多いあたりにも政治的な背景が感じられてつい苦笑い。

それにしても一段とヒロインらしくない“サヨナ”の立場が面白い。“カグヤ”のほうが
余程それらしいのがまた興味深くて。パロディのネタも下ネタも攻めて、責めての連発で、
編集部としても幾度となく確認に追われたことでしょう。その甲斐ある内容だと思います。

「電撃文庫」編集部を離れた 土屋 さんへの恨み言というか愛があふれる仕掛けが満載で。
あとがきも含めて読み終えた際に、改めてチームとして作品が作り上げられていることが
窺えて一読者としても感慨深いです。有象 先生、担当編集諸氏も含め、お疲れさまです。

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2022年06月09日

『魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 15』

手島史詞 先生が贈る、不愛想魔王と箱入りエルフによるラブコメファンタジー。第15巻は
〈ネフェリム〉たちの新たな拠点となる街づくりを担う“フォル”の頑張る姿を描きます。
(イラスト:COMTA 先生)

https://firecross.jp/hjbunko/product/1507


未だ残る魔術師と聖騎士との確執。そんな二大組織の融和への鍵となる“バルバロス”と
“シャスティル”のやり取りに今巻もニヨニヨ。“レイチェル”の信仰も捗るというもの。
“ゴメリ”に至っては拗らせた“アルシエラ”の愛で力にもあてられて幸せそうで何より。

“フォル”が預かった魔王“アスモデウス”の身柄。記憶がないという言動の真偽を問う
うちに見えてくる、《蒐集士》たる魔王の所以が切なさを誘います。信じる“フォル”が
言葉で、力で相対する姿は相手にどんな影響を与えるか、見届けたくなるというものです。

“ネフィ”とのデートに全神経を集中する“ザガン”に水を差した「あれ」が鉄拳制裁を
食らうのも無理はなく。対して振るった剣の無駄さに気づく遅さから見ても面倒な御仁で。
終わってみれば、彼が用意した誕生日プレゼントも粋な計らいで実に心温まる一幕でした。

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2022年06月08日

『クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。5』

YouTube漫画として展開されている同シリーズを、脚本を務める 天乃聖樹 先生が小説化。
第5巻は同棲の噂を逸らすため、“陽鞠”が“才人”のニセ恋人を演じる顛末を描きます。
(イラスト:成海七海 先生 キャラクター原案・漫画:もすこんぶ 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/daikirai_kekkon/322201000776.html


少なくとも“陽鞠”には同棲の件がバレたことで俄然、彼女のやる気は引き出される訳で。
“糸青”や“真帆”では務まらない彼女役を介して“陽鞠”が次々と夢描いていた場面を
実現させていき、“才人”と本当の彼女になることも目指す姿は輝かしくて、また強くて。

対する“朱音”は状況ゆえに、かつ身から出た錆として“陽鞠”の行動を止められる訳も
なく、後手に回ることにもどかしさと苛立ちを隠せない様子が微笑ましいやら、何とやら。
“朱音”かの風当たりが一段と強くなる“才人”には同情を禁じ得ませんが致し方なしで。

“陽鞠”からの決定的なアピールを受けて、黙っていられない“朱音”がついに明かした
過去の逸話。互いに譲らない、諦めない2人がまるで好敵手のように喧嘩する様子が強く
印象に残ります。ただ一人、真実を知らない“才人”が示す立ち居振る舞いに要注目です。

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2022年06月07日

『灰原くんの強くて青春ニューゲーム 2』

雨宮和希 先生が贈る、強くてニューゲームな学園ラブコメ。第2巻は“詩”からの好意を
感じつつ“夏希”が“陽花里”への想いを貫けるか、周囲の関係も交えて描いていきます。
(イラスト:吟 先生)

https://firecross.jp/hjbunko/product/1502


“美織”が“夏希”に対して“詩”を「キープしとく」と評するあたりは性格が出ている
というか、納得できるというか。その“美織”が仕掛けたダブルデートで彼がループした
からこそ気付けた彼女の悩みが、本音を明かせなかった彼自身と重なるのが実に印象深い。

一度は引き下がって、“夏希”が“美織”に対して格好をつける所を目にして、夏祭りで
願い事を変えたりして、それでもなお彼に気持ちを示した“詩”には適わない。脱帽です。
そんな彼が敗北した姿をたまたま見かけた「彼女」の独白が気になって仕方がありません。

清々しいほど潔い“竜也”の強いんだか弱いんだか謎な振舞いを微笑ましく思う暇もなく
“怜太”が示した意外にも強い意思。“陽花里”や“七瀬”も意味ありげな言動も含めて
“夏希”が選ぶのは友情か、恋愛か、共存か。未曽有の夏で彼が辿る道程に興味津々です。

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