2018年05月24日

『死んじゃうくらい泣いていっぱい幸せになる百合』

みかみてれん さんのサークル「てれたにあ」が頒布する新刊は、病弱な少女の前に現れた
笑顔満面の死神が残された日々の中でかけがえのない想いを育んでいく感動百合小説です。
(イラスト:風知草 さん カバーデザイン:ゆぞうに さん)

http://unnamed.main.jp/teretania/
http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/62/61/040030626114.html


「あたしは、紗夜さんのことを幸せにしようと思ってやってきたんです!」そう力説する
死神“エミリー”に面食らう彼女であったが、友人として、そして想い人として深い関係
を築いていく。死神に叶えたい「やり残したこと」を尋ねられた“紗夜”は悩んだ末──。

迫る死を前に、生きることへの諦めを感じていた“紗夜”が“エミリー”との邂逅を経て
活き活きと、そして積極的になっていく様子。さらに“エミリー”が翻弄される雰囲気が
まず尊い。それだけに二人を分かつ瞬間のやり取りが見せる切なさといったらもうつらい。

物語は変則二部構成で、もう一組の少女と死神の話が描かれる中で“紗夜”と“エミリー”
二人が出会った意味が分かったときの高揚感と畳みかけるエピローグに尊さが深まること
間違いなし。思わず読み返したくなる仕掛けが実に絶妙。オススメに値する百合小説です。

posted by 秋野ソラ at 00:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌

2018年02月02日

『作家軽飯』

カルロ・ゼンさん、蝉川夏哉さん、津田彷徨さんが隠れ処的な店を伏せて綴る合作同人誌。
「コミックマーケット93」において頒布開始から22分で完売した本作をようやく拝読です。

http://www.tasty-3.com
https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=333299


缶詰部屋から、編集者から、そして〆切から一時でも逃れて心に栄養を、明日への活力を
取り戻すための食事。追い込まれた三者三葉の心情を、各々だけが知るお気に入りの店に
向かう過程を含めて描く。思わず苦笑いしつつ、羨ましく見えてしまうのが何とも罪深い。

値段に合わせた逃亡コースを提示してくるカルロ・ゼンさん、安定の「富士そば」一択な
蝉川夏哉さん、そして「存在X」を除く数多の神々に感謝しながら神戸まで逃避行を続ける
津田彷徨さん。それぞれの文体と作風が同人誌となっても垣間見えるのが興味深いところ。

確かに編集者や出版社の人たちには何の益にもならない本作。それにしても「太田が悪い」
というキーワードが目を惹きます。あと「長月バー」。時間的、金銭的余裕があればぜひ
隠れ処的な店を探ってみるのも一興と思える内容で、「作家重飯」の頒布も楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 00:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌

2018年01月19日

『もしも百合星人が地球でもっとも尊い百合を見せろと言ってきたら』

鰤/牙 さんがコミックマーケット93にて頒布した同人誌。異星人からの突然の宣告に対し
運命を託された2人の少女と、託す側の事情と思惑を織り交ぜて描いていく百合小説です。
(イラスト:さちはら さん)

https://twitter.com/kiva_blitz/status/939046112924647424


冒頭で各国首脳陣が真剣に「百合」について舌戦する場面にまず圧倒されつつ、片田舎で
くすぶる“友梨佳”が幼い頃に出会った“リリー”に憧れ、運命的に再開する・・・と思えば
その裏に仕組まれた“光琉”のシナリオがある。仕組まれた百合は尊いのかが問われます。

“友梨佳”と“リリー”が抱く心情の差異も整わぬ中、“リリー”の元彼女が揺さぶって
きたり、百合過激派の“ユリスキー”事務次官が介入したりと軌道修正不可なシナリオが
どんな結末を迎えるのか。百合星人は何を尊いと判断するのか。最後まで目が離せません。

付属のペーパーにある「よもやま話」を読了後に読むと、得心のいく点が出てきて面白い。
折本の「杜若あいり、インスタグラムにハマる」も拝読しまして久々に「カネの力」分を
摂取できたのも嬉しい。トレンドを織り込みつつ“あいり”らしさが窺える話に満足です。

posted by 秋野ソラ at 00:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌

2018年01月12日

『飼い猫になって百合カップルのイチャラブ生活を見守るお話』

みかみてれん さんがコミックマーケット93にて頒布した同人誌。百合もの大好き社畜OLが
仔猫となって飼い主の少女が大人になるまで見守り続ける甘くほろ苦い百合ラブ小説です。
(イラスト:ゆぞうに さん)

http://unnamed.main.jp/teretania/


“たま子”から“タマ”になり、近くに越してきた“深優”の飼い猫となる所から物語は
始まります。前作『観葉植物〜』とは異なり、言語での意思疎通ができないもどかしさを
残す状況で繰り広げられる百合展開は、いわゆる尊さを感じさせてくれる良さを魅せます。

小学生編にて、気が強くて活発な“燐火”と、大人しいようでふてぶてしい“ひな乃”と
出会い雑誌の「友ちゅーのススメ」を契機に百合の片鱗に触れる“深優”。中学生編では
同じ部活で様々な人間関係に触れ、それぞれの意外性を垣間見せてこれまた百合百合しい。

高校生編では、各々のやりたいことが見えてきて3人が一緒にいる機会も減っていく中で
胸に抱くドキドキの意味を自問していきます。これがほろ苦い。“深優”の幸せのために
“タマ”に何が出来るか、3人はどんな結末を迎えるか、読んで確かめるに足る作品です。

posted by 秋野ソラ at 01:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌

2017年08月16日

『観葉植物になって百合カップルのイチャラブ生活を見守るお話』

みかみてれん さんのサークル「てれたにあ」がコミックマーケット92に送り出す新作は
百合もの大好き女子高生が観葉植物となって妹らの成長を見守る百合ラブストーリーです。
(イラスト:ゆぞうに さん)

http://unnamed.main.jp/teretania/
http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/55/25/040030552504.html


不慮の死を遂げた“華”は気づくと何故か小学5年生の妹“葵”の部屋にある観葉植物に。
憧れの姉を失い気落ちする“葵”を、幼なじみの“千晴”が「元気が出るおまじない」で
慰める瞬間を目にした“華”は百合ップルの誕生を特等席で見守ることを決意した──。

小学生編、中学生編、高校生編と成長していく“葵”を見守る“華”の前向きさに苦笑い。
“千晴”との百合描写に注力するかと思えば二人の仲に思うところある級友の“泉美”が
急接近したりと“葵”の無垢な心は揺り動く。みかみ さんのやりたいことがてんこ盛り。

生活環境の変化にも対応できる“華”の仕掛けに驚嘆しつつ、自分のことを想ってくれる
“千晴”と“泉美”に対して“葵”はどんな選択をするのか。結末も含めてこれでもかと
詰め込まれた百合要素に大満足。挿絵の柔らかい雰囲気も作品に合致していてステキです。

posted by 秋野ソラ at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌