2018年08月31日

『Everlasting』

藤村由紀(古宮九時)さんがコミックマーケット94で頒布された新刊。異世界から侵入する
異形らと戦う組織最強の少女と、彼女を支える幼馴染の少女を巡る数奇な運命を描きます。
(イラスト:白線 さん)

https://mypage.syosetu.com/141617/


人を喰らい、破壊の限りを尽くす異形の存在《鵺》から世界を護る者が集う「廃城機関」。
その組織で最高位を務める“亜貴妃”には守りたい日常がある。周囲から腫れ物のように
扱われる彼女に寄り添ってくれる幼馴染“メイ”と過ごす時間が何よりの救いだから──。

最強と呼ぶにふさわしい異能の力を持つ“亜貴妃”。その責任からしがらみも多い彼女が
敵に対して、そして組織内の仲間に対しても厳しい様子を見せるのとは対称的に、優しい
雰囲気を醸し出す“メイ”とのやりとりが実に印象的です。そこに裏があるとは露知らず。

「廃城機関」という組織が一枚岩ではない、という不遇さ。そもそもなぜ「廃城機関」と
呼ばれるのか。《鵺》が異世界から侵入してくる理由とは。すべてを知った“亜貴妃”が
結果をどう受け止めるのか。刹那の幸せに望む未来があることを願わずにはいられません。

posted by 秋野ソラ at 00:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌

2018年08月24日

『女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話』

みかみてれん さんがコミックマーケット94で頒布された新刊。おしゃれにも十分気を遣う
イケてる女子高生が不用意な一言を境にあり得ないはずの道に落とされる過程を描きます。
(イラスト:雪子 さん カバーデザイン:ゆぞうに さん)

http://unnamed.main.jp/teretania/
https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=384302
https://amzn.to/2MYEl8C


バイトをクビになって欲しいバッグも買えない“鞠佳”は売春も軽々しく考える女子高生。
そんな彼女にクラスメイトの“絢”が100万円を突きつけて1日1万円で買うと言ってきた。
「女同士なんてありえない」という考えを翻すなんてありえない、と彼女は息巻くが──。

その気じゃない“鞠佳”が“絢”との勝負にどう負けていくのか、駆け引きの描写が絶妙。
徐々に距離感が近付いていく様子や、触れ合っていくあれこれとか攻めの姿勢が窺えます。
「誘い受け」とか言われちゃう場面とかもうね。落ちていく姿を見るのは実に良いもので。

もちろん“鞠佳”が落ちる展開を楽しむだけではなくて、なぜ“絢”が彼女に対して勝負を
持ち掛けたのか、この理由に触れていく流れにもご注目。勝負の行方を際立たせてくれます。
雪子さんのイラストもキャッチーで目を惹くものがあり、オススメするしかない一品です。

posted by 秋野ソラ at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌

2018年05月24日

『死んじゃうくらい泣いていっぱい幸せになる百合』

みかみてれん さんのサークル「てれたにあ」が頒布する新刊は、病弱な少女の前に現れた
笑顔満面の死神が残された日々の中でかけがえのない想いを育んでいく感動百合小説です。
(イラスト:風知草 さん カバーデザイン:ゆぞうに さん)

http://unnamed.main.jp/teretania/
http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/62/61/040030626114.html


「あたしは、紗夜さんのことを幸せにしようと思ってやってきたんです!」そう力説する
死神“エミリー”に面食らう彼女であったが、友人として、そして想い人として深い関係
を築いていく。死神に叶えたい「やり残したこと」を尋ねられた“紗夜”は悩んだ末──。

迫る死を前に、生きることへの諦めを感じていた“紗夜”が“エミリー”との邂逅を経て
活き活きと、そして積極的になっていく様子。さらに“エミリー”が翻弄される雰囲気が
まず尊い。それだけに二人を分かつ瞬間のやり取りが見せる切なさといったらもうつらい。

物語は変則二部構成で、もう一組の少女と死神の話が描かれる中で“紗夜”と“エミリー”
二人が出会った意味が分かったときの高揚感と畳みかけるエピローグに尊さが深まること
間違いなし。思わず読み返したくなる仕掛けが実に絶妙。オススメに値する百合小説です。

posted by 秋野ソラ at 00:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌

2018年02月02日

『作家軽飯』

カルロ・ゼンさん、蝉川夏哉さん、津田彷徨さんが隠れ処的な店を伏せて綴る合作同人誌。
「コミックマーケット93」において頒布開始から22分で完売した本作をようやく拝読です。

http://www.tasty-3.com
https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=333299


缶詰部屋から、編集者から、そして〆切から一時でも逃れて心に栄養を、明日への活力を
取り戻すための食事。追い込まれた三者三葉の心情を、各々だけが知るお気に入りの店に
向かう過程を含めて描く。思わず苦笑いしつつ、羨ましく見えてしまうのが何とも罪深い。

値段に合わせた逃亡コースを提示してくるカルロ・ゼンさん、安定の「富士そば」一択な
蝉川夏哉さん、そして「存在X」を除く数多の神々に感謝しながら神戸まで逃避行を続ける
津田彷徨さん。それぞれの文体と作風が同人誌となっても垣間見えるのが興味深いところ。

確かに編集者や出版社の人たちには何の益にもならない本作。それにしても「太田が悪い」
というキーワードが目を惹きます。あと「長月バー」。時間的、金銭的余裕があればぜひ
隠れ処的な店を探ってみるのも一興と思える内容で、「作家重飯」の頒布も楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 00:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌

2018年01月19日

『もしも百合星人が地球でもっとも尊い百合を見せろと言ってきたら』

鰤/牙 さんがコミックマーケット93にて頒布した同人誌。異星人からの突然の宣告に対し
運命を託された2人の少女と、託す側の事情と思惑を織り交ぜて描いていく百合小説です。
(イラスト:さちはら さん)

https://twitter.com/kiva_blitz/status/939046112924647424


冒頭で各国首脳陣が真剣に「百合」について舌戦する場面にまず圧倒されつつ、片田舎で
くすぶる“友梨佳”が幼い頃に出会った“リリー”に憧れ、運命的に再開する・・・と思えば
その裏に仕組まれた“光琉”のシナリオがある。仕組まれた百合は尊いのかが問われます。

“友梨佳”と“リリー”が抱く心情の差異も整わぬ中、“リリー”の元彼女が揺さぶって
きたり、百合過激派の“ユリスキー”事務次官が介入したりと軌道修正不可なシナリオが
どんな結末を迎えるのか。百合星人は何を尊いと判断するのか。最後まで目が離せません。

付属のペーパーにある「よもやま話」を読了後に読むと、得心のいく点が出てきて面白い。
折本の「杜若あいり、インスタグラムにハマる」も拝読しまして久々に「カネの力」分を
摂取できたのも嬉しい。トレンドを織り込みつつ“あいり”らしさが窺える話に満足です。

posted by 秋野ソラ at 00:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌