みかみてれん さんのC99新刊。「わたなれ」の“れな子”と“真唯”が2人でお出かけ中
に「ありおと」の“鞠佳”と“絢”の2人と遭遇する顛末を描くクロスオーバー作品です。
(イラスト:ゆぞうに さん 組版:古宮九時 さん)
【 https://teren-mikami.booth.pm/items/3567158 】
“鞠佳”が“真唯”をモデルとして知っていること、“真唯”が“絢”たちの様子を見て
自分たちと同類だと察してからダブルデート、そして「らぶらぶカップル五番勝負」へと
繋がっていく展開を“れな子”の視点、“鞠佳”の視点で連作短編として描いていく本作。
陰キャを自負する“れな子”が陽キャな面々にあてられてヘロヘロになるか、と思いきや
何かと気にかけてくれる“鞠佳”に助けられてデートを満喫しちゃうあたりは「強い」と
言うべきか。そして圧倒的に“真唯”はどこへ行っても、誰に対しても“真唯”だな、と。
対する“鞠佳”たちはどうか、と言うと「百日百合」をお読みの方なら察するに余りある
展開です。彼女の語る恋愛観を“れな子”がどう昇華するのか、興味深いものがあります。
ダブルデートにおける勝負の行方は「エピローグ」をお読みいただいて、ご堪能ください。
2022年01月10日
2020年06月12日
『本山らの文庫公式アンソロジー「本山らのが○○になったら?」』
本山らの さんが「エアコミケ(コミックマーケット98)」で頒布した小説アンソロジー。
「女子大生狐巫女ではなかったら」というテーマで人気作家たちが思いの丈を綴ります。
(イラスト:名取さな さん)
【 https://motoyama-rano.booth.pm/items/1979489 】
【 https://www.youtube.com/watch?v=IKg5j70jyqU 】
掲載順に神田夏生、古宮九時、八目迷、海津ゆたか、あまさきみりと、羽場楽人、涼暮皐、
藤井論理、モノカキ・アエル、岬鷺宮、以上敬称略が寄稿する豪華な一冊。様々な作風を
同時に味わえるアンソロジーが商業にも流れを築けないかとまず思わずにはいられません。
物語と出会ったり、物語に囲まれたり、物語でつまずいたり、物語を嫌いになったり──。
ふとした瞬間に“本山らの”という「概念」が登場する人物たちにどう影響を及ぼすのか。
読み進める度に「そう演出してくるか!」と驚かされるばかりでまさに十人十色の短編集。
苦い思い出の夏、朽ちた都市、禁じられた世界、輝かしい舞台、公園の隅、継がれる宇宙、
まぼろしの感情、絶望と希望、解禁された酒の席、あらまほしき先達。どの小編にも必ず
ライトノベルを愛し、推していく心が感じられるのがまた素晴らしい、素敵な一冊でした。
「女子大生狐巫女ではなかったら」というテーマで人気作家たちが思いの丈を綴ります。
(イラスト:名取さな さん)
【 https://motoyama-rano.booth.pm/items/1979489 】
【 https://www.youtube.com/watch?v=IKg5j70jyqU 】
掲載順に神田夏生、古宮九時、八目迷、海津ゆたか、あまさきみりと、羽場楽人、涼暮皐、
藤井論理、モノカキ・アエル、岬鷺宮、以上敬称略が寄稿する豪華な一冊。様々な作風を
同時に味わえるアンソロジーが商業にも流れを築けないかとまず思わずにはいられません。
物語と出会ったり、物語に囲まれたり、物語でつまずいたり、物語を嫌いになったり──。
ふとした瞬間に“本山らの”という「概念」が登場する人物たちにどう影響を及ぼすのか。
読み進める度に「そう演出してくるか!」と驚かされるばかりでまさに十人十色の短編集。
苦い思い出の夏、朽ちた都市、禁じられた世界、輝かしい舞台、公園の隅、継がれる宇宙、
まぼろしの感情、絶望と希望、解禁された酒の席、あらまほしき先達。どの小編にも必ず
ライトノベルを愛し、推していく心が感じられるのがまた素晴らしい、素敵な一冊でした。
2020年05月22日
『着せ替えは心変わりを呼び起こさない!』
古宮九時さんが「Unnamed Memory Act.2」を舞台に日常の事件を描く書き下ろし同人小説。
競売に掛けられる「人の心を変える」指輪を巡って“オスカー”たちが首を突っ込みます。
(イラスト:藤崎ゑる(くん) さん)
【 https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=651846 】
片づけていたヴェールをたまたま着けていた“ティナーシャ”。その艶姿を見た流れから
“オスカー”が彼女を着せ替え人形のように扱うやりとりが面白い。けれどその胸の内に
秘める焼けつくような熱量を表に出さずにいる彼の気丈さは立派でありながら実に切ない。
服の仕立てで世話になっている商家に纏わる「人の心を変える」という指輪。事の真偽を
確かめるべく競売の席に踏み込む2人が場を荒らしまくる展開が楽しい。もちろん彼女の
無邪気な言動に心かき乱されながらも、立場を弁え達観する彼には同情を禁じ得ない訳で。
「人の心を変える」指輪を見よう見まねで自作できてしまう“ティナーシャ”のすごくて
ポンコツな実力が、この騒動の意外な真実を見抜く結末。心も着せ替えることができたら、
タイトルにそんな願いも込められているのではと感じさせるのが本作らしくて絶妙でした。
競売に掛けられる「人の心を変える」指輪を巡って“オスカー”たちが首を突っ込みます。
(イラスト:藤崎ゑる(くん) さん)
【 https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=651846 】
片づけていたヴェールをたまたま着けていた“ティナーシャ”。その艶姿を見た流れから
“オスカー”が彼女を着せ替え人形のように扱うやりとりが面白い。けれどその胸の内に
秘める焼けつくような熱量を表に出さずにいる彼の気丈さは立派でありながら実に切ない。
服の仕立てで世話になっている商家に纏わる「人の心を変える」という指輪。事の真偽を
確かめるべく競売の席に踏み込む2人が場を荒らしまくる展開が楽しい。もちろん彼女の
無邪気な言動に心かき乱されながらも、立場を弁え達観する彼には同情を禁じ得ない訳で。
「人の心を変える」指輪を見よう見まねで自作できてしまう“ティナーシャ”のすごくて
ポンコツな実力が、この騒動の意外な真実を見抜く結末。心も着せ替えることができたら、
タイトルにそんな願いも込められているのではと感じさせるのが本作らしくて絶妙でした。
2020年01月17日
『零れた灰を嘆くとも』『死骸の森』
古宮九時 さんのサークル「memoriae」が贈る、愛と呪いの一大叙事詩『Unnamed Memory』。
「灰の見る夢」の続編ともう1つ、誰の記憶にも残らないかもしれない逸話を描きます。
【 http://unnamed.main.jp/words/ 】
“オスカー”との幸せな生活がついに始まる、という“ティナーシャ”に襲いかかる悲劇。
彼からの愛を噛みしめていた彼女が自責の念に駆られる中、ふと思い出した言葉と魔法具。
やり直せるかもしれない、と迷う彼女の想いを汲む“ラザル”が手を伸ばしてしまいます。
再びその時に巡り合った“ラザル”が目にする、“オスカー”と“ティナーシャ”の関係。
望まぬ展開、掛けられる嫌疑、見抜かれる違和感、嫌な予感に反応する己の体。流れる涙
と救われない想いは切なく、けれどまたこれも『Unnamed Memory』だと納得できるワケで。
そんな物悲しさを補うかの如く綴られた『死骸の森』では、突然失踪した魔法士の変死体
が海に打ち上げられた謎を探る“ティナーシャ”が、一冊の本に隠された秘密を露にする
ことで、ある人物の理解されない想いに触れる。これまた深く重く余韻を残す一冊でした。
「灰の見る夢」の続編ともう1つ、誰の記憶にも残らないかもしれない逸話を描きます。
【 http://unnamed.main.jp/words/ 】
“オスカー”との幸せな生活がついに始まる、という“ティナーシャ”に襲いかかる悲劇。
彼からの愛を噛みしめていた彼女が自責の念に駆られる中、ふと思い出した言葉と魔法具。
やり直せるかもしれない、と迷う彼女の想いを汲む“ラザル”が手を伸ばしてしまいます。
再びその時に巡り合った“ラザル”が目にする、“オスカー”と“ティナーシャ”の関係。
望まぬ展開、掛けられる嫌疑、見抜かれる違和感、嫌な予感に反応する己の体。流れる涙
と救われない想いは切なく、けれどまたこれも『Unnamed Memory』だと納得できるワケで。
そんな物悲しさを補うかの如く綴られた『死骸の森』では、突然失踪した魔法士の変死体
が海に打ち上げられた謎を探る“ティナーシャ”が、一冊の本に隠された秘密を露にする
ことで、ある人物の理解されない想いに触れる。これまた深く重く余韻を残す一冊でした。
2020年01月16日
『女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話4』
みかみてれん さんのサークル「てれたにあ」が贈る百合小説「百日百合」シリーズ第4巻。
恋人である“絢”との関係をより深めたいと懊悩する“鞠佳”の猪突猛進ぶりを描きます。
(イラスト:雪子 さん)
【 http://unnamed.main.jp/teretania/ 】
ゴムにも色々あるけれど、と思いがけず新たな知識を身につけた“鞠佳”。そんな彼女を
頼りに“夏海”から持ち掛けられたお悩み相談は、突然のカミングアウト。相手は後輩の
“晴”で、聞くと“鞠佳”のファンだと言うから“絢”の警戒レベルも上がるというもの。
“鞠佳”一筋だからこそ思っている以上に隙のある彼女を独占しようと時も場所も構わず
行為に及ぼうとする“絢”。いま思えば“絢”が抱える不安というか闇の表れとも取れる
エピローグが気になる所。3年生の終わりに迎えるのは永遠の繋がりか、それとも別離か。
“鞠佳”に逆転されるつもりはないと息巻く“絢”、2人の関係もさることながら周囲の
百合百合しいやりとりも楽しくなってきた本作。今巻は“知沙希”の意外な気遣いがもう
ツボでした。“悠愛”がボロ泣きしたのも分かるというもの。そんな場面もお見逃しなく。
恋人である“絢”との関係をより深めたいと懊悩する“鞠佳”の猪突猛進ぶりを描きます。
(イラスト:雪子 さん)
【 http://unnamed.main.jp/teretania/ 】
ゴムにも色々あるけれど、と思いがけず新たな知識を身につけた“鞠佳”。そんな彼女を
頼りに“夏海”から持ち掛けられたお悩み相談は、突然のカミングアウト。相手は後輩の
“晴”で、聞くと“鞠佳”のファンだと言うから“絢”の警戒レベルも上がるというもの。
“鞠佳”一筋だからこそ思っている以上に隙のある彼女を独占しようと時も場所も構わず
行為に及ぼうとする“絢”。いま思えば“絢”が抱える不安というか闇の表れとも取れる
エピローグが気になる所。3年生の終わりに迎えるのは永遠の繋がりか、それとも別離か。
“鞠佳”に逆転されるつもりはないと息巻く“絢”、2人の関係もさることながら周囲の
百合百合しいやりとりも楽しくなってきた本作。今巻は“知沙希”の意外な気遣いがもう
ツボでした。“悠愛”がボロ泣きしたのも分かるというもの。そんな場面もお見逃しなく。