サークル「作家軽飯」のコミックマーケット103における頒布作品。コロナ禍の影響により
畳まざるをえなかった数々の飲食店、そこで出されていた様々なメニューに思いを馳せて
カルロ・ゼンさん、蝉川夏哉さん、津田彷徨さんが筆を走らせた短編を収録されています。
【 https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=2183096 】
カルロ・ゼンさんの短編。「5分の3ビーフ」のちょっとした認識齟齬にカルロさんを苦笑
と共に擁護しつつ、もう出会うことのない味と、それらが形成してきた文化とも言うべき
何かの断絶に触れる度、胸中に哀愁が漂います。自分のご近所の変遷も思い浮かべながら。
蝉川夏哉さんの短編。今やドクターストップによって手が出せないような一品も交えつつ
大阪を軸として消えてしまった味もあれば思わぬ再会を期する話があって救われもしたり。
そしてなんと言っても描写に力の入り具合が窺える富士そば。自分も富士そば大好きです。
津田彷徨さんの短編。今年の正月にEテレ『ナンブンノイチ (14) 278分の1のヒトって?
ネットで小説を発表する人』で好きなネタを仕込んできたかのような茶目っ気にクスッと
しながら、終わりもあれば始まりもある話にどこか前向きになれる読了感を味わいました。
2024年01月19日
2023年08月25日
『大無人島』
作家軽飯のC102頒布作品。カルロ・ゼンさん、蝉川夏哉さん、津田彷徨さん、日向夏さん、
長月達平さん、丸戸史明さん、吉上亮さんが大無人島を舞台に思い思いの小編を綴ります。
(イラスト:輝竜司 さん)
【 https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=2026798 】
まずは午前の枠を乗り切り、午後完売へと繋げた発行部数の見立てに祝辞を申し上げます。
あとがきで蝉川さんが触れている「原稿はすでに出来ていたこと」と「自宅という無人島
で暮らした経験を有している」という文言が、胸に複雑な思いをよぎらせる今回のテーマ。
津田さんがまえがきで述べたアレを受け継いでいるのは長月さんの短編かと思いますけど、
それにしても“マスク・ド・ツーダ”的な人物の出番が多かったような気がしてつい苦笑。
輝竜 さんが描かれた表紙がまさしくそれなんですけど、他にも色々と意味深すぎて喝采。
特に印象的だった短編は、丸戸さんのはやってくれたなというアレな感じでヨシとしつつ、
人がいない島に着目した吉上 さんの作品でしょうか。SF感に溢れていたのが新鮮でした。
一番好きなのは 津田 さんのかも知れません。2人のやり取りが脳内再生できそうな点で。
長月達平さん、丸戸史明さん、吉上亮さんが大無人島を舞台に思い思いの小編を綴ります。
(イラスト:輝竜司 さん)
【 https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=2026798 】
まずは午前の枠を乗り切り、午後完売へと繋げた発行部数の見立てに祝辞を申し上げます。
あとがきで蝉川さんが触れている「原稿はすでに出来ていたこと」と「自宅という無人島
で暮らした経験を有している」という文言が、胸に複雑な思いをよぎらせる今回のテーマ。
津田さんがまえがきで述べたアレを受け継いでいるのは長月さんの短編かと思いますけど、
それにしても“マスク・ド・ツーダ”的な人物の出番が多かったような気がしてつい苦笑。
輝竜 さんが描かれた表紙がまさしくそれなんですけど、他にも色々と意味深すぎて喝采。
特に印象的だった短編は、丸戸さんのはやってくれたなというアレな感じでヨシとしつつ、
人がいない島に着目した吉上 さんの作品でしょうか。SF感に溢れていたのが新鮮でした。
一番好きなのは 津田 さんのかも知れません。2人のやり取りが脳内再生できそうな点で。
2023年05月24日
『非正規公務員、丸山千尋の悪徳』
様々な協力の下、著者である立川浦々さんが頒布する「公務員、中田忍の悪徳」超公式的
非公式スピンオフ同人誌。ある女性との関わりと通じて“忍”の人物像を深掘りします。
(イラスト:楝蛙 先生)
【 https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=1896255 】
「生きている」とは何か。誰かの力になることを誇らしく思う“千尋”が区の福祉生活課、
非正規職員として働くようになった1月のある日、中途半端な時期に移動してくる人物の
教育係を任される。名は“中田忍”、相当キレてる変な男で悩ましいことになりそう──。
良かれと思ってやったのに。そう思わずにはいられない“千尋”の胸中を慮ったかの如く
“忍”が出した助け船に感銘を受けつつ、福祉に泣く者を作ってしまった消せない過去を
彼がどう認識しているかも窺えて考えさせられます。愛、とか単純に括れないその感情が。
耐用年数が存在する、という福祉の仕事に携わる“忍”や“千尋”の関係を深掘していく
ことは商業作品として求められないかも知れません。ですが、彼の悪徳を把握する材料の
一つとして本作を活用することは原作6巻を読む前後を問わず意味があるように思います。
非公式スピンオフ同人誌。ある女性との関わりと通じて“忍”の人物像を深掘りします。
(イラスト:楝蛙 先生)
【 https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=1896255 】
「生きている」とは何か。誰かの力になることを誇らしく思う“千尋”が区の福祉生活課、
非正規職員として働くようになった1月のある日、中途半端な時期に移動してくる人物の
教育係を任される。名は“中田忍”、相当キレてる変な男で悩ましいことになりそう──。
良かれと思ってやったのに。そう思わずにはいられない“千尋”の胸中を慮ったかの如く
“忍”が出した助け船に感銘を受けつつ、福祉に泣く者を作ってしまった消せない過去を
彼がどう認識しているかも窺えて考えさせられます。愛、とか単純に括れないその感情が。
耐用年数が存在する、という福祉の仕事に携わる“忍”や“千尋”の関係を深掘していく
ことは商業作品として求められないかも知れません。ですが、彼の悪徳を把握する材料の
一つとして本作を活用することは原作6巻を読む前後を問わず意味があるように思います。
2022年01月10日
『ダブルデート・デコレーション』
みかみてれん さんのC99新刊。「わたなれ」の“れな子”と“真唯”が2人でお出かけ中
に「ありおと」の“鞠佳”と“絢”の2人と遭遇する顛末を描くクロスオーバー作品です。
(イラスト:ゆぞうに さん 組版:古宮九時 さん)
【 https://teren-mikami.booth.pm/items/3567158 】
“鞠佳”が“真唯”をモデルとして知っていること、“真唯”が“絢”たちの様子を見て
自分たちと同類だと察してからダブルデート、そして「らぶらぶカップル五番勝負」へと
繋がっていく展開を“れな子”の視点、“鞠佳”の視点で連作短編として描いていく本作。
陰キャを自負する“れな子”が陽キャな面々にあてられてヘロヘロになるか、と思いきや
何かと気にかけてくれる“鞠佳”に助けられてデートを満喫しちゃうあたりは「強い」と
言うべきか。そして圧倒的に“真唯”はどこへ行っても、誰に対しても“真唯”だな、と。
対する“鞠佳”たちはどうか、と言うと「百日百合」をお読みの方なら察するに余りある
展開です。彼女の語る恋愛観を“れな子”がどう昇華するのか、興味深いものがあります。
ダブルデートにおける勝負の行方は「エピローグ」をお読みいただいて、ご堪能ください。
に「ありおと」の“鞠佳”と“絢”の2人と遭遇する顛末を描くクロスオーバー作品です。
(イラスト:ゆぞうに さん 組版:古宮九時 さん)
【 https://teren-mikami.booth.pm/items/3567158 】
“鞠佳”が“真唯”をモデルとして知っていること、“真唯”が“絢”たちの様子を見て
自分たちと同類だと察してからダブルデート、そして「らぶらぶカップル五番勝負」へと
繋がっていく展開を“れな子”の視点、“鞠佳”の視点で連作短編として描いていく本作。
陰キャを自負する“れな子”が陽キャな面々にあてられてヘロヘロになるか、と思いきや
何かと気にかけてくれる“鞠佳”に助けられてデートを満喫しちゃうあたりは「強い」と
言うべきか。そして圧倒的に“真唯”はどこへ行っても、誰に対しても“真唯”だな、と。
対する“鞠佳”たちはどうか、と言うと「百日百合」をお読みの方なら察するに余りある
展開です。彼女の語る恋愛観を“れな子”がどう昇華するのか、興味深いものがあります。
ダブルデートにおける勝負の行方は「エピローグ」をお読みいただいて、ご堪能ください。
2020年06月12日
『本山らの文庫公式アンソロジー「本山らのが○○になったら?」』
本山らの さんが「エアコミケ(コミックマーケット98)」で頒布した小説アンソロジー。
「女子大生狐巫女ではなかったら」というテーマで人気作家たちが思いの丈を綴ります。
(イラスト:名取さな さん)
【 https://motoyama-rano.booth.pm/items/1979489 】
【 https://www.youtube.com/watch?v=IKg5j70jyqU 】
掲載順に神田夏生、古宮九時、八目迷、海津ゆたか、あまさきみりと、羽場楽人、涼暮皐、
藤井論理、モノカキ・アエル、岬鷺宮、以上敬称略が寄稿する豪華な一冊。様々な作風を
同時に味わえるアンソロジーが商業にも流れを築けないかとまず思わずにはいられません。
物語と出会ったり、物語に囲まれたり、物語でつまずいたり、物語を嫌いになったり──。
ふとした瞬間に“本山らの”という「概念」が登場する人物たちにどう影響を及ぼすのか。
読み進める度に「そう演出してくるか!」と驚かされるばかりでまさに十人十色の短編集。
苦い思い出の夏、朽ちた都市、禁じられた世界、輝かしい舞台、公園の隅、継がれる宇宙、
まぼろしの感情、絶望と希望、解禁された酒の席、あらまほしき先達。どの小編にも必ず
ライトノベルを愛し、推していく心が感じられるのがまた素晴らしい、素敵な一冊でした。
「女子大生狐巫女ではなかったら」というテーマで人気作家たちが思いの丈を綴ります。
(イラスト:名取さな さん)
【 https://motoyama-rano.booth.pm/items/1979489 】
【 https://www.youtube.com/watch?v=IKg5j70jyqU 】
掲載順に神田夏生、古宮九時、八目迷、海津ゆたか、あまさきみりと、羽場楽人、涼暮皐、
藤井論理、モノカキ・アエル、岬鷺宮、以上敬称略が寄稿する豪華な一冊。様々な作風を
同時に味わえるアンソロジーが商業にも流れを築けないかとまず思わずにはいられません。
物語と出会ったり、物語に囲まれたり、物語でつまずいたり、物語を嫌いになったり──。
ふとした瞬間に“本山らの”という「概念」が登場する人物たちにどう影響を及ぼすのか。
読み進める度に「そう演出してくるか!」と驚かされるばかりでまさに十人十色の短編集。
苦い思い出の夏、朽ちた都市、禁じられた世界、輝かしい舞台、公園の隅、継がれる宇宙、
まぼろしの感情、絶望と希望、解禁された酒の席、あらまほしき先達。どの小編にも必ず
ライトノベルを愛し、推していく心が感じられるのがまた素晴らしい、素敵な一冊でした。