2023年05月05日

『君は医者になれない 膠原病内科医・漆原光莉と血嫌い医学生』

「それでも、医者は甦る −研修医志葉一樹の手術カルテ−」の 午鳥志季 先生が贈る新作。
血が怖い医学生と偏屈な医師との交流を通じて、医者にとって大切なものを問いかけます。
(イラスト:BALANCE 先生)

https://mwbunko.com/product/322211000168.html


“戸島”は血を見るたびに嘔吐する、医学部生らしからぬ適性の無さゆえに進級も危うい。
学部長からの提案で、“漆原”医師に医者として適性を認められれば落第が回避できると
聞いた彼が向かうとパシリにされたり何度も「勉強が足りないね」と言われる始末で──。

“高本”の件では人格に問題ある“漆原”の実力を認めざるを得ない診断事例を描くこと
で気分の高揚を誘いつつ、“村山”の件では医者として難しい判断を迫られた“戸島”が
抱く夢への覚悟に触れることで一気に本作のテーマを印象づけてくる構成がまず印象深い。

“漆原”自身がつまらないと認める「アレルギー・膠原病内科」の専門医師で在る理由。
それを講義の形で示された“戸島”が痛感した血嫌い以外の問題点を踏まえて、改めて
「医者にとって大切なもの」として彼なりの答えを出す顛末には胸に熱量を覚えました。

posted by 秋野ソラ at 02:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年05月04日

『ステラ・ステップ2』

林星悟 先生が贈る、代理戦争に費やされるアイドルたちの物語。第2巻は「鉄の国」に
所属するアイドルとなった“レイン”と“ハナ”が新たな場所で己の生き様を模索します。
(イラスト:餡こたく 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/sutesute/322212001140.html


“総帥”の判断が全てを左右する「鉄の国」。連れられて早速“ハナ”と離れ離れになる
“レイン”の狼狽する姿に不安を覚えずにはいられない。一方で怒りをむき出しにしつつ
彼女に「アイドル」へ戻ることを強いる“フレア”の心に在る炎に触れていく展開が見所。

“ハナ”は一人になろうが、場が変わろうが本来のアイドルとして振舞える「鉄の国」に
居る者からすれば異常者でしかない・・・はずなのにいつしか彼女に影響されていく様子を
指をくわえてみるしかない“フレア”の夢と現実が板挟みになる心理描写に圧倒されます。

理不尽に抗い続ける“レイン”と“ハナ”とは対照的に、追い詰められていく“フレア”。
見かねた“シズ”が切った「切り札」に驚かされた上で、「鉄の国」の意思へやるせない
思いが募るばかりです。夢物語と鼻白む彼女の鼻を2人が明かしてくれることを祈ります。

posted by 秋野ソラ at 00:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年05月03日

『死亡遊戯で飯を食う。3』

鵜飼有志 先生が贈る、デスゲームに興じる人々の生き様を描く物語。第3巻は40回目の
クリアを越えた“幽鬼”に〈キャンドルウッズ〉の殺人鬼を彷彿とさせる敵が迫ります。
(イラスト:ねこめたる 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/shibouyugi/322212001143.html


「ワンファインデイ」では“幽鬼”が“職人さん”と呼ぶ、彼女の体をメンテナンスする
人物の茶目っ気ぶりがまず面白い。彼女が彼の存在を重要視している点や、“藍里”との
再会で次なる「クラウディビーチ」に絡み合う因縁を匂わせる描写が、振り返ると絶妙で。

孤島のビーチで“幽鬼”が出会う7人のプレイヤー。誰が犯人で何が目的かも不明なまま
次々と起こる殺人を止められるか、“幽鬼”と共に推理しながら読み進めるのが楽しくて。
そこへ今に至るまでに培われた様々な関係性が解決の糸口に繋がるのが話として奥深くて。

“幽鬼”の師匠“白士”を知る“古詠”が話す内容が様々な鍵となる展開が印象深いです。
カンザキイオリ 先生、斜線堂有紀 先生、冬野夜空 先生が務める解説も本作を読み解く
ための参考となり、新鮮な目線を得た思いがします。不穏な引きを見せる続きも注目です。

posted by 秋野ソラ at 01:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年05月02日

『ロクでなし魔術講師と禁忌教典22』

羊太郎 先生が贈る超破天荒新世代学園アクションファンタジー。第22巻は“ジャティス”
との直接対決に臨む“グレン”が正義の魔法使いとは何たるか、その信念と向き合います。
(イラスト:三嶋くろね 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/201411rokudenashi/322202001188.html


“ジャティス”がなぜ“グレン”にこだわるのか。“フェロード”が抱えてきた脅威すら
一蹴する確固たる自信はどこからくるのか。彼の昔語り、“ナムルス”が伝える夢物語、
確固たる信念を持って生きてきた者たちの姿を見て一歩臆する“グレン”がまず物珍しい。

天空城だけが戦場ではない。残る者たちにも抗うべき敵がいる。そんな緊張感あふれる場
においてカマをかけられる“イヴ”がもう可愛いのなんの。彼女が素直な気持ちを示せる
瞬間が訪れるためにも最終決戦に臨む“グレン”たちの一挙手一投足に注目が集まります。

正義の魔法使い、そして絶対的な正義。すべてを見て、確かめた“ジャティス”が改めて
“グレン”たちをどう試し、見定めるのか。“システィーナ”“ルミア”“リィエル”が
示した覚悟に彼は応えることができるのか。クライマックスに向け次巻も目が離せません。

posted by 秋野ソラ at 00:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年05月01日

『王様のプロポーズ4 黄金の神子』

橘公司 先生が贈る新世代最強の初恋を描くファンタジー。第4巻は“アンヴィエット”が
はぐれ魔術師に追われる少女を救ったことで“無色”たちが謎多き騒動に巻き込まれます。
(イラスト:つなこ 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/202109propose/322210001356.html


硬派な“アンヴィエット”の隠し子問題に、憶測が飛び交う学園内の雰囲気がまず面白い。
彼にとっては面倒でしかない話が学園を非日常へと誘う展開の鍵を握る“スーリヤ”の謎。
血縁関係の無い彼女が、彼に関して妙に察しが良い理由を探りながら読むのが楽しい今巻。

一方で“無色”と“採禍”の置かれた状況を認識した“瑠璃”、三者三様の探り合いから
あれやこれやがバレないかとヒヤヒヤする流れ。そこにあの非日常で振り回される所から
“採禍”と“アンヴィエット”の確執、その訳に触れていく緊張感あふれる話運びに驚き。

シリアスでありつつもコミカルな要素は外さない。橘 先生の手に掛かれば世界の危機も
いつの間にか愛情がいっぱいの心温まる結末につながっていくのがすごい。変わらない
“無色”に呆れる“黒衣”の平常運転ぶりに安堵を覚えつつ、次巻を待ちたいと思います。

posted by 秋野ソラ at 00:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル