2023年05月18日

『異世界で生き抜くためのブラッドスキル』

火狩けい 先生の「第8回講談社ラノベ文庫新人賞」受賞作。人々が吸血鬼に庇護される
世界に死後転移してきた少年少女が生き残る選択を迫られるサバイバルファンタジーです。
(イラスト:上埜 先生)

https://lanove.kodansha.co.jp/books/2023/5/1.html


修学旅行で飛行機に乗っていたはずの“アキラ”。気がつけば見慣れぬ石造りの建造物が
並ぶ遺跡のような街にいた。彼がクラスメイトと共に途方に暮れていると吸血鬼だという
人物に声を掛けられる。ここは死後の世界で、あるルールに従うよう説明を受けるが──。

様々な血統を有する吸血鬼たち。その内のどれに連なるかでこの世界をどう生き抜くかも
変わっていく大事な選択を歪められた“アキラ”の置かれた状況が色々とつらい。死んだ
はずの“阿矢”と再会したことも、彼女が置かれている境遇も、彼にその力が無いことも。

醜悪な魔物と戦う大規模討伐任務に参加することとなった“アキラ”たちが、生存確率の
低い過酷な戦況を生き抜くために、足掻いていく描写が印象深い。彼以上に“タリサ”が
見せる言動は見所が多く要注目の人物です。ここからどう話を進めるのかが気になります。

posted by 秋野ソラ at 00:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年05月17日

『ひきこまり吸血姫の悶々11』

2023年10月のTVアニメ放送が迫る、小林湖底 先生が贈るコミカルファンタジー。第11巻は
帝国に戻って来ても山積する課題の数々に安寧できない“コマリ”たちの様子を描きます。
(イラスト:りいちゅ 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815621377/


天子を務め夭仙郷に身を置く“コマリ”と親しくなる絶好の機会を活かせない“リンズ”。
もどかしさを覚えているのは彼女のみならず、とあの手この手で2人にキスをさせようと
暗躍する人たちに後押しされて“リンズ”が一歩前へ想いを進めていくエピソードが素敵。

対称的に、七紅天の業務にも支障が出ている“サクナ”が「コマリ断ち」を命じられる話
では、元上司の“ベリーチェイス”がどんな思いで彼女を監督しているのかが分かる所が
印象深い。様々な苦行の成果として七紅天の自覚を強める“サクナ”の成長も見逃せない。

“リオーナ”と繰り広げる勝負の行方や、“クレメソス504世”に教示する帝王学の一端
といったコミカルな逸話も交えながら、帝国、そして“コマリ”を巡るシリアスな状況は
暗躍する者たちが起こす事件からも緊張感の高まりが窺えて、続く展開が気になる所です。

posted by 秋野ソラ at 00:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年05月16日

『命短し恋せよ男女』

これまで様々なレーベルで作品を上梓してきている 比嘉智康 先生が「電撃文庫」に登場。
余命宣告を受けた少年少女が思い思いの恋愛模様を繰り広げていく多角関係ラブコメです。
(イラスト:間明田 先生)

https://dengekibunko.jp/product/nochikoi/322211000052.html


学校の健康診断、病院で続く再検査、入院を経て耳にする馴染みのない病名と3年生存率。
死期が迫る14歳の“好位置”が暗澹と過ごす病室を、幽霊の真似をする謎の少女が訪れる。
同い年で同じ境遇の彼女は彼のことを恋愛対象と定め、あるお願いをしてくるのだが──。

カップルYouTuberとして心も体も距離を詰めていく“ほのか”と“好位置”、彼の元カノ
でなぜか毒舌キャラとなってしまった“美澄”、“ほのか”のことがずっと前から好きな
“龍之介”。病気の件も踏まえた四者四様の振舞いが清々しくて切なくて、そして眩しい。

比嘉智康 先生のラブコメは何かと心に刺さる作品ばかりですので、シリーズ作品として
満足のいく展開に繋がることを祈念すると共に「電撃文庫」が先生の内なる様々な構想を
商業作品として昇華する場を担ってくれることを、読者の1人として切に願うばかりです。

posted by 秋野ソラ at 00:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年05月15日

『楽園ノイズ6』

杉井光 先生が贈る青春バンドストーリー。篠アキサト 先生のコミックス第2巻と同時に
刊行される第5巻は、新年度を迎え心境の変化を迎える“真琴”たちを描く二年生編です。
(イラスト:春夏冬ゆう 先生)

https://dengekibunko.jp/product/paradise_noise/322211000056.html
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_MF02202974010000_68/


“猪狩”先生が語るクラス編成の本音があからさまなのがまず面白いのに加えてボケ倒す
“凛子”たちへのツッコミが鈍いことで不調を疑われる“真琴”もなかなかに滑稽。だが
“拓斗”からも同じ指摘を受けて、自覚症状のない“真琴”の違和感を探るのが今巻の軸。

新歓オリエンテーションで“真琴”が軽音部のステージに関わる理由を当てる“凛子”も、
曲を聴いて彼の関与を見抜く“伽耶”も凄い、というか愛が。ピアニストとしての矜持を
“華園”先生たちに見せつけられたことで“真琴”にも機微の変化が窺えるのが興味深い。

“玉村”社長みたいな人、社会に出ると実際に居たりするので厄介ですが、どんな窮地も
結果として実績に繋げていく“真琴”が恐ろしくも羨ましい。“ムサオ”という名が特別
なものになったことが「PNO」にとって吉と出るか凶と出るか、続きを見届けたい所です。

posted by 秋野ソラ at 00:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年05月12日

『異世界黙示録マイノグーラ〜破滅の文明で始める世界征服〜 6』

シリーズ累計30万部を突破した、鹿角フェフ 先生が贈る異世界ファンタジー。第6巻は
“拓斗”不在の中、窮地を打破すべく“アトゥ”が史上最悪の英雄を御せるかを描きます。
(イラスト:じゅん 先生)

https://gcnovels.jp/book/b1519.html
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_AM00000023010000_68/
https://ncode.syosetu.com/n8760ei/


“アトゥ”が「“ヴィットーリオ”との相性が最悪」と公言する意味をこれでもかと体感
できる逸話の数々に同情を禁じ得ない。しかも国を出奔したかと思えば“タクト”を神と
崇める通称「邪教イラ」を立ち上げ信者を増やしていく行動は読み手としても困惑します。

壊滅的な被害を受けた「アムリタ」にて、民衆から失われた聖神への信仰を取り戻そうと
尽力する異端審問官“クレーエ”と聖女“リトレイン”。2人の心の隙間に付け込もうと
する“ヴィットーリオ”の意図は何か。“拓斗”のためなのかを探りつつ読むのが楽しい。

“ヴィットーリオ”と頭脳戦で勝てるのは“拓斗”しかいない、とも言及した“アトゥ”。
あれもこれも、と続く布石の数々に新手の詰将棋を見せられているような展開が実に熱い。
予断を許さない結末から動きだす世界情勢にどう向き合うか、“拓斗”の手腕に期待です。

posted by 秋野ソラ at 01:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル