2025年02月07日

『妹よ、今夜はカレーだから早く異世界から帰ってきなさい2』

愛坂タカト 先生が贈る、カレーを通じて家族の絆を描くファンタジー。第2巻は離婚宣言、
そして異世界へ家出した母親の真意を探るべく“来人”と“華恋”が異世界へ向かいます。
(イラスト:pon 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09461181


母“雫”が異世界で「バブバブ団」なる謎すぎる組織を立ち上げた、と聞いて唖然とする
“来人”にまず同情を禁じ得ません。母としての立場にこだわり過ぎた“雫”を説得する
のに骨が折れるのを見て“華恋”が一肌脱いでやろうと血気盛んになる様子が微笑ましい。

兄“来人”と幾度となく勝負してきた“華恋”が、母を異世界から連れ戻すため料理対決、
しかもカレー作りに挑むという無謀すぎる一手にこだわることで得られた「料理の極意」。
“雫”も忘れかけていた、母として子を思い遣る手段を再認識させる展開は心温まります。

娘“華恋”が作ってくれたカレーを食べて“雫”が明かす、父から言われた「あること」。
彼女が異世界に来る必要など何らなかったかも知れないオチが家族の絆を深くしたことは
災いを転じて福となす、と言うべきか。本作を完結へと導けた先生の次回作に期待します。

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2025年02月06日

『白き帝国3 アルテミシア純情』

「このラノ2025」ランキング文庫部門6位、総合新作部門3位で勢いづく、犬村小六 先生の
王道ファンタジー群像劇。第3巻はガトー島に戻った“ジャンジャック”を軸に進みます。
(イラスト:こたろう 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09453227


“アルテミシア”が“ルシファー”と友達になる、なんて未来が想像できないほど彼女の
心に溢れる激情は父“イリアス”への愛の裏返し。その感情すら「仮面」だという描写に
絶句すると共に、「本当」すら偽る妹と真摯に向き合う“ジャンジャック”の愛に敬服で。

“ルシファー”が魔王と称されるのも過言ではない、と知り“ジャンジャック”に大器の
可能性を感じた“イリアス”が娘の仮面すら利用する姿はまさに傲慢、そして打算の極み。
そんな彼でも“義春”という毒を受容する必要がある弱みが今後にどう影響するか注目で。

“ガガ”が糊口を凌ぐため旅芸人一座に身をやつし、辛酸をなめる様子が妙に微笑ましい。
その彼が率いる傭兵団「白猫隊」は激動を兆す世界情勢に取り残されているか、というと
実は違うようで。彼が夢を形にして西へと向かう未来の到来に期待しつつ次巻を待ちます。

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2025年02月05日

『愛とか恋とか、くだらない。2』

雲雀湯 先生が贈る、高校生男女の愛と恋を取り巻く関係を描く不純愛青春小説。第2巻は
“祐真”が読者モデルを務める“奏音”との接点を得たことで人間関係に変化が生じます。
(イラスト:美和野らぐ 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09453226


隙間の時間、隠れた場所で情事を重ねる“祐真”と“涼香”が恋愛を冷めた目で見ている、
矛盾のような珍しい関係は相変わらず。一方で“晃成”と“莉子”の関係に一石を投じる
彼女の身を挺した攻めの一手にハラハラさせられます。こちらは好転を期待したい関係で。

クラスのカーストトップに位置し、色恋沙汰が絶えない“奏音”を“祐真”や“涼香”が
忌避するのは当然として、“奏音”に対してあの失言してしまう“祐真”が今回は迂闊で。
その詫びとして打った一手でその色恋沙汰に巻き込まれるとは彼もこちらも想定外すぎて。

“紗雪”からも反省を促される、という何とも罪作りな場面を見せる“祐真”な訳ですが
彼の「あの行動」に裁定を下す“涼香”の心中をよぎる感情は愛とか恋とかではないのか。
修羅場待ったなし、としか言えないエピローグからどう続くのか、注目せざるを得ません。

posted by 秋野ソラ at 00:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2025年02月04日

『現代魔法をぶち壊す、あたしだけの魔法 ―異世界帰りの勇者姫と神降ろしの白乙女―』

「完璧な俺の青春ラブコメ」などを上梓する 藍藤唯 先生が「ダッシュエックス文庫」に
初登場。異世界から戻った少女が規格外の魔法で他を圧倒する現代学園ファンタジーです。
(イラスト:いちかわはる 先生)

https://dash.shueisha.co.jp/bookDetail/index/978-4-08-631560-9


いなくなっても困らない人間が選ばれるという勇者召喚。その勇者として得た魔法を手に
異世界から帰還した“アズサ”は両親が蒸発し、中卒で金もなく、明日をも知れぬ身の上。
戦闘特化の魔法を隠し、まずバイト先が見つかるよう願う彼女にある好機が到来する──。

現世にも魔法があって“アズサ”が習得した魔法とは異なるという事実。東京魔導訓練校
への転入で構築されるすったもんだの人間関係、思いがけない敵との再会を通じて彼女が
「現代魔法」という概念、それに根差す選民思想を揺るがしていく話運びが軽妙で面白い。

話の鍵ともなる、“陽菜”が“アズサ”にあそこまで惹かれ、慕っているのかという理由。
“アズサ”がとった何気ない言動の責任を取るかの如く、現代魔法をぶち壊す行動に移る
姿が輝かしく映る幕引きも見事。“征人”頑張れと応援しながら、次巻刊行を期待します。

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2025年02月03日

『世界でいちばん透きとおった物語2』

杉井光 先生が贈る新人作家と敏腕編集によるビブリオ・ミステリ。第2巻はコンビ作家の
片割れが死去し未完となった連載短編ミステリの解決編を“燈真”たちが探っていきます。
(イラスト:ふすい 先生)

https://www.shinchosha.co.jp/book/180300/


「いちばん大切な場面の中のいちばん大切な一ページを決めて」とは前作のどこを指すか。
コンビ作家「翠川双輔」を巡る顛末に関わる少女“琴莉”がそれを当てられたという意味
を、知る由もない解決編に導く力に変える“燈真”が作家としての資質を魅せてくれます。

自分ではない誰かのために物語を書かれた、という嫉妬心を“燈真”にぶつける“霧子”。
彼女らしい所作が可愛らしい、と思いつつ彼とは違い現場に居ないにもかかわらず、伝聞
だけで「翠川双輔」が残したミステリの謎に迫る洞察力は空恐ろしいとも思える存在です。

作中作「殺導線の少女」も読みごたえのある短編で。ミステリとは何か、読者が納得する
「論理のアクロバット」という考え方など、“霧子”の熱弁を踏まえ「謎とその解明」に
共に臨む楽しさもあり。前巻からどう続くの、なんて不安を吹き飛ばす内容でお薦めです。

posted by 秋野ソラ at 00:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル