2019年10月23日

『妖姫ノ夜 月下ニ契リテ幽世ヲ駆ケル』

渡瀬草一郎 先生が贈る新作は大正伝奇浪漫譚。関東大震災の爪痕が残る横浜にある資産家
の邸宅に下宿することになった青年が、都会での生活と妖に対する見聞を広めていきます。
(イラスト:こぞう 先生)

https://dengekibunko.jp/product/321906000025.html


祖父が持つ縁を頼り、郷里を離れ“瀬尾”と共に“夜鳴川”のもとを訪れる“雪緒”青年。
一番の権力者は飼い猫の“ミタマ”様だと言われた厳命を守り居候としての生活を始める。
その彼の寝床に忍び込む若い娘の声で喋る白蛇を目の当たりにして彼が取った行動は──。

妖相手に商売をしている“夜鳴川”の正体を知ってもなお驚くことのない“雪緒”は豪胆
なのか、ただ物知らずなだけなのか。父の“十六夜”が決めた縁談から逃れたい“姫”を
手助けする中で、彼の麒麟児っぷりが分かるのが面白い。あと真摯なのが好感を持てます。

そんな“雪緒”の人柄に惹かれて“姫”だけでなく、数々の妖に好かれ過ぎて身の危険を
覚える様子とかまた好きですね。“鐘寿”の思惑がどう転ぶかとか“蜂月”が何だかんだ
助けてくれる様子とか、脇の見どころもたくさん。実に素敵な大正伝奇浪漫、お薦めです。

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2019年10月22日

『シノゴノ言わずに私に甘えていればいーの!』

『はじらいサキュバスがドヤ顔かわいい。』の 旭蓑雄 先生が贈る新作は仕事がしたくて
たまらない会社員と、押し掛けて世話を焼きたい女性が繰り広げる甘々攻防コメディです。

(イラスト:なたーしゃ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/321906000901.html


日々、終電帰りを繰り返す“拓務”は仕事に対してしんどいと感じることはなく、むしろ
音を上げる後輩“宮本”の業務を肩代わりしてでも仕事がしたい、という生粋の天然社畜。
ある日、隣に越してきた金髪の美少女“シノ”は怪しい位にスキンシップが積極的で──。

「甘やかしエリート」と自ら豪語する“シノ”を訝しみながらもその好意をなし崩し的に
受け続けることになる“拓務”。あれだけ奉仕をされても怠けることなく仕事に注力する
彼の姿勢もさることながら、彼女の行動原理を労働と位置付ける価値観も突飛で興味深い。

“シノ”の正体は推して知るべし、ということで「悪魔っ娘シリーズ」とか組めるのでは
と「電撃文庫」編集部には提案しておきたい所。『はじらいサキュバス〜』も続刊すると
いうことで安心して見届けられる作品。ラブコメを十二分に堪能できることと思います。

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2019年10月21日

『幼なじみが絶対に負けないラブコメ2』

井冬良 先生による漫画化が決定した、二丸修一 先生が贈る先の読めないヒロインレース。
第2巻は“黒羽”と“白草”も油断ならない“末晴”の妹分である“真理愛”が参戦です。
(イラスト:しぐれうい 先生)

https://dengekibunko.jp/product/osamake/321906000898.html


三者三葉の「やらかした!」な心情を踏まえながら、最悪の状況を打破するために選んだ
“黒羽”の秘策。“末晴”のトラウマを払拭するため、そして何より絶対負けないために
何でもやる彼女の姿勢には目を見張るものが。表紙が指し示す意味も読めば納得できます。

“真理愛”からの熱烈アプローチも気になる中、彼女が繋ぎをつけてきた“末晴”の古巣
からの芸能界復帰提案。彼にとって、そして“黒羽”たちにとってベストな未来とは何か。
突如始まる大勝負に、深慮遠謀が渦巻く展開。老若男女が入り混じる駆け引きは見所満載。

今回、「群青同盟」を結成して状況を俯瞰し続けた“哲彦”。彼の目的と“黒羽”の意図、
それがたまたま合致したから辿り着けた結果ですが、いつか敵に回るかもと思うと怖い。
何より彼女の読みが最強すぎて空恐ろしい。むしろ“末晴”が何に負けないのか注目です。

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2019年10月18日

『本を愛した彼女と、彼女の本の物語』

上野遊 先生が贈る新作は、大病を患い失意の底にある少女が手にした1冊の本からの視点
を通じて、愛した本に救い、救われる彼女と彼女に関わる様々な人たちの人生を描きます。
(イラスト/はねこと 先生)

https://mwbunko.com/product/321904000293.html


死者たちのホテルに迷い込んだ少女が従業員として働く様子を描く小説『ホテル・カロン』。
なぜか自意識を持つその本が運ばれた先は病院。ある手術を受けないと癇癪を起こす少女
“銀河”がその本を読み、感動のあまり涙し、手術を受けると言う彼女に彼は恋をする──。

なぜ本の視点から“銀河”の物語が綴られるのだろう、と不思議に思いつつ読み進めていく
うちに描かれていく彼女の人生。「物語」を通じて“睦月”と絆を深め、「物語」を契機に
仕事と運命の人に出会い、「物語」に対して恩を返そうとするその生き様に魅了されます。

“銀河”の親友や運命の人すらも知らない、彼女の喜怒哀楽を「本」の視点から描くことで
その愛を一層強く感じることができた気がします。章題の付け方もその変遷が窺えてお見事。
本を通じて伝わる想いの数々を、ぜひ読んで触れていただきたいと思う作品。オススメです。

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2019年10月17日

『朝比奈若葉と○○な彼氏』

「2ちゃんねる」のやる夫を主人公とするAA作品スレッド「やる夫スレ」から傑作が書籍化。
間孝史 先生が贈るのは「翠星石と白饅頭な彼氏」。嘘告白から始まるラブコメを描きます。
(イラスト:桃餅 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/asahinawakaba/321904000843.html
https://foraastory.kadokawa.co.jp/


親譲りの容姿をもつ“若葉”は内気な性格で、女子たちにやっかみを受けても上手く対応
できずに暗澹とした日々を過ごす。クラスの中心人物“郁美”に目をつけられた彼女は
デブ・オタ・キモイと揶揄される“晴斗”に告白してきて、と罰ゲームをさせられ──。

突然の申し出に驚き歓喜する“晴斗”と、罰ゲームを終わらせたいと思う憂鬱な“若葉”。
どう見ても未来がない2人の関係が、とある気付きをきっかけに彼女の心情や生活すら
変えていく、まさにバカップルそのものに見えてくる展開が救われるし、ほっこりします。

罠を仕掛けた“郁美”も思わず引くほど“晴斗”と過ごす日々が待ち遠しく思う“若葉”。
そんな彼女の大いに盛り上がる気分に水を差す、彼の親友から投げかけられるあの言葉。
ともすれば自分勝手に見える“若葉”の心情は断罪されるか否か、続きに興味津々です。


◆傑作やる夫スレ4作が一挙にラノベ化の発表へ。
https://togetter.com/li/1359446

◆#スレ発ラノベ4 のスレ発って何?→#やる夫スレ のことだから元スレ情報まとめるお。ついでに他の商業デビュー作家も紹介するお
https://togetter.com/li/1404938

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2019年10月16日

『このあと滅茶苦茶ラブコメした 本当はあなたのこと大好きだけど、絶対バレてるわけないよね!!』

春日部タケル 先生が贈る新作は、文武両道のラブコメ好き高校生男子がラブコメ魔法を
発動させてしまうことで校内の美少女たちと様々なラッキースケベを繰り広げていきます。
(イラスト:悠理なゆた 先生)

https://sneakerbunko.jp/product/konoato_lovecome/321906000147.html


ラブコメが好きすぎて女子からモテない残念なイケメンの“大我”。ある日、魔法トラブル
解決のため派遣された天使“ピュアリィ”から、彼の願望を叶えるラブコメ魔法を発動する
少女たちの存在を教えられる。数々のラブコメ騒動に巻き込まれる、彼の運命や如何に──。

バカっぽい言動の“ピュアリィ”に、やることなすことポンコツな美少女の“シフォン”と
キャラクターの掛け合いで魅せるコメディの描写は相変わらずお見事、と言うしかないです。
鈍い“大我”が気付かない、女性陣の秘めた心情に触れていくことでニヨニヨできる場面も。

そんな微笑ましさも、下ネタ大好き完璧超人“君影”の登場で一変。えげつない魔法の発動
によって涙する少女を前に“大我”は何ができるのか。ラブコメ好きらしい彼が見せる矜持、
見届ける価値はあるかと。乙女すぎる“君影”を推しつつ次巻を楽しみにしたいところです。

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2019年10月15日

『すべては装丁内』

木緒なち 先生が「LINE文庫」から贈る新作はお仕事エンターテインメント。新人編集者が
出会った偏屈なデザイナーとの関わりから「装丁」に懸ける熱い想いと重要性を紐解きます。
(イラスト:三嶋くろね 先生)

http://novel-blog.line.me/archives/18817261.html


SNSで共感を呼ぶ少女が紡ぐ言葉を本にしたい。“可能子”の想いに応じた少女が指定した
大御所イラストレーターは「イラストに文字を一切かぶせるな」と難条件を提示してくる。
デザイナー探しに苦慮する彼女へ編集長はある人物を提示するが、これがまたドSで──。

“可能子”に対して難癖をつける“烏口”は一見憎らしい。ただ、ある失敗をした彼女の
焦りを突くかのような的確な指摘で首肯するばかり。社内のいざこざに巻き込まれながら
編集者としての壁を乗り越えようと努力する彼女の姿は実にひたむきで好感が持てます。

読むにつれて“烏口”の装丁に懸ける情熱があふれてくるかのような描写も素晴らしくて
難条件の含意を汲んであの提案をしてくる場面はまさに最たるもの。短い紙幅で読み応え
十分なお仕事小説です。曲者な編集長の思惑に乗せられた2人の次の仕事がぜひ見たい所。

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2019年10月14日

『横濱SIKTH ―けれども世界、お前は終わらない―』

イラストレーターの ニリツ 先生が「LINE文庫」にて作家としてデビューを果たす本作。
横濱を舞台に、異能力者たちが起こす事件に関わっていく少女の数奇な運命を描きます。
(イラスト:ニリツ 先生)

http://novel-blog.line.me/archives/18895179.html


行政特区として半独立地域となった横濱。両親を亡くした少女“セカイ”はナンパ男らに
絡まれているところを謎の美少年“まぜる”に救われる。ゲバブサンドを手に身の上話を
しているとその店に現れた異様な太さの右腕を振るう男から2人共、追われる羽目に──。

同人誌に収録された喫煙娘のイラストから、ここまで読みごたえのある異能ものが書ける
ニリツ 先生には驚嘆するしかない。「シックス」と呼ばれる能力を悪用する厄介者たちを
排除する「掃除屋」との出会いが“セカイ”の人生を変えていく顛末は興味深く、面白い。

“まぜる”の保護者である“竜眼寺”が見せる突然の敵対行動に驚かされた上に、それを
超える横濱という場に潜む思惑、何より彼に課せられた役割が気になり続きが待ち遠しい。
見事なデビューを飾った ニリツ 先生の、作家としての躍進も期待します。オススメです。

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2019年10月11日

『EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩の惑星クラフト〈下〉』

川上稔 先生が贈る、とある惑星の天地創造物語。1話下巻はテラフォーム遅延を指摘する
「神委」の監査に“住良木”や“先輩”たちが相対する様子、奇想天外な展開を描きます。
(イラスト:さとやす 先生(TENKY))

https://dengekibunko.jp/product/kamigami/321905000103.html


“雷同”たちが相対する“ビルガメス”が言及する「政治」の意味。相方同士の絆の深さ
を見せつける戦いぶりも見事ながら、上役たる“江下”との駆け引きはどこか抜けていて、
それでいて狡猾で。どう転ぶか目が離せない展開と“江下”の憎めないキャラが見所満載。

そんな“江下”が裁定の末に放つ槍がまさか“先輩”の秘密、そして権能を明らかにする
きっかけになるとは。更にロールバックを重ねる“住良木”が時系列も、記憶も、性別も、
そして岩屋の壁も超えて、己の弱さを卑下する彼女を選ぶと宣言しにいく過程が実に一途。

349ページの挿絵にある実に良い感じの目つきをした“先輩”のために、神々のいない星で
神話を作ろうと謳った“住良木”も熱いし、精霊を超える存在に神道の言霊がもつ威力を
見せつけた彼女の強さも圧巻。2人の幸せな日々がこの惑星で続くことを願うばかりです。

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2019年10月10日

『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦7』

細音啓 先生が贈る王道ファンタジー。第7巻は強襲を掛ける帝国軍勢にネビュリス皇庁が
最大の窮地に陥る中、“イスカ”と“アリス”が最悪のタイミングで再会の時を迎えます。
(イラスト:猫鍋蒼 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/201705kimitoboku/321901000623.html


白夜の魔女“グリューゲル”の執拗な追撃から必至に逃れる“シスベル”たち。その裏で
“タリスマン”と“イスカ”、“キッシング”と“冥”、“仮面卿”と“璃洒”など対峙
しては力比べを繰り広げる激戦模様。しかし趨勢は「魔女狩り」の章題が指し示す通り。

女王“ミラベア”と帝国騎士“ヨハイム”の一騎打ちではこれまた衝撃の事実を前にして
文字通り油断大敵で皇庁は遂に陥落。そこで“イリーティア”が示した意外な行動がまた
彼女の抱く闇の深さを感じさせ、“アリス”も翻弄されてしまうワケです。悲しいことに。

超越の魔人“サリンジャー”が刹那に独白する胸に秘めた過去。繰り返してしまう歴史を
“イスカ”は止められるのか。望まない戦いの行方は切なくも安堵するものがありました。
さらに続く異変を前に“シスベル”、そして“アリス”たちは立ち向かえるか、注目です。

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2019年10月09日

『処刑少女の生きる道(バージンロード)2 -ホワイト・アウト-』

佐藤真登 先生が贈るファンタジー作品。第2巻は港町リベールにある世界四大人災の1つ
「霧魔殿」に向かう“メノウ”と“アカリ”を思いがけない悪意と衝撃の事実が襲います。
(イラスト:ニリツ 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4815603939.html


3つに分かれたこの世界の身分階級、そこからの逸脱を図る団体「第四(フォース)」。
港町の教会を与る“シシリア”司祭から“メノウ”たちが旅費を提供してもらう代わりに
こなす依頼はその団体員が「魔薬」を使い起こした事件に対応してほしい、というもの。

第二身分という立場にありながら「第四(フォース)」を統率する“マノン”に辿り着く
までの間に“アカリ”は不穏な動きを見せますし、“アーシュナ”も突飛な場所から登場
したりと“メノウ”の苦労は絶えません。“モモ”は相変わらずな感じで安心しますけど。

「魔薬」の生産拠点を潰し、“マノン”と対峙する段になって現れる黒幕の圧倒的な強さ。
そして黒幕が告げる“アカリ”の「時」の力がもたらした異変や、様々な可能性の示唆。
彼女たちの決意を改めて問いかけつつ、それ以上の脅威が迫る引き具合。次巻も注目です。

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2019年10月08日

『ファイフステル・サーガ4 再臨の魔王と女神の巫女』

師走トオル 先生が贈る王道戦記ファンタジー。第4巻は司教領の内紛に巻き込まれ奮起を
図る少女“ヘンリエッテ”を巡り“カレル”そして“コルネリウス”が手を差し伸べます。
(イラスト:有坂あこ 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/201804saga/321903000066.html


権力を笠に着て私腹を肥やす“メルヒオール”大司教。彼が暗殺したと噂される前大司教
“マルテン”の一人娘“ヘンリエッテ”を内戦を治める立役者として推す場面で殺される
夢を見た“カレル”。“ギルセリオン”も暗躍するかの地に赴く彼の所業はまさに無謀。

大司教の魔手から“ヘンリエッテ”を守る堅物の修道騎士“ノルベルト”。強さと信用に
足る人物を求め、彼が辿り着いたのは“コルネリウス”。婚約という形で大司教を目指し
旅する2人のソリの合わなさはどこか滑稽でありながら心温まる場面もあって実に面白い。

殺される運命を乗り越え、“メルヒオール”を陰謀を暴く“カレル”。情に弱い少女の
決意を実現させるため大人としての義務を果たす“コルネリウス”。共に魅せられました。
“ヴェッセル”の秘密に気がついたかと思えばあの引き具合。続刊、頼みますよホントに。

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2019年10月07日

『妹さえいればいい。13』

平坂読 先生が贈る大人気青春ラブコメ。第13巻は新興の出版社ブランチヒルに就職して
プロの編集者となった“京”の生活を中心に“伊月”たちの変わりゆく日常を描きます。
(イラスト:カントク 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518085


TRPGサークルに所属した“千尋”がオタサーの姫と化したのをさりげなく諫める“春斗”。
彼女が抱く冷めることない“春斗”への恋心を知り、彼からの思慕も受け止めた“京”が
出した仕事優先の結論。その相手となるあの作家“和泉”の扱いは考えさせられるものが。

ブランチヒルから“和泉”の新作を出すにあたって彼がごねる描写は「何言ってんだ」と
思いがちですが、彼が頑なな態度を取った要因が“京”側にもある点を“彩音”の言葉を
借りて指摘する、コミュニケーションエラーの実例紹介としても秀逸な内容と感じました。

「主人公になりたい」。“伊月”が“那由多”のためだけに書いた小説は彼女だけでなく
“京”の心も動かし、そして広く世間の読者にも響いていく。作家として、一人の男性と
しても成功を掴む彼、更に彼の周辺は最終巻でどう纏められるのか、見届けたい所です。

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2019年10月04日

『レイジングループ REI-JIN-G-LU-P 6 告滅の蝕』

アドベンチャーゲーム「レイジングループ」のシナリオライター、mphibian 先生が自ら
小説版の執筆に臨む本作。芝村裕吏 先生の解説を受け、最悪の結末を見届けていきます。
(Illustration/影由 先生)

https://www.seikaisha.co.jp/information/2019/08/28-post-rl6.html


「おおかみ」としての役割を果たすために“橋本”をどう出し抜くか。これまで以上に
高度な情報戦を繰り広げ、死に戻りを繰り返す“陽明”。“かおり”の見事な殉死に加え
“春”の自死がもたらす理解を得てもなお「夢使い」という謎が壁となる物語の重厚さ。

夢が現実となる瞬間を目の当たりにして、何度でも死に戻る役割を担った本質を理解する
“陽明”がついに“千枝実”が抱いてしまった絶望に気付く。これがまた得心のいく話で
彼女が見せた数々の奇行も納得の一言。その上でエグさを見せつけるのも彼女らしさかも。

突然始まる座談会形式でのやりとりで、要点を押さえつつ次々と謎が明らかになっていく
話の流し方も構成として面白く、また読みやすくて親切。“陽明”が見せ続けた“悪癖”、
それを封じて“千枝実”に伝えると決めた「答え」をつまびらかにするその時を待ちます。

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2019年10月03日

『プロペラオペラ』

犬村小六 先生が贈る新作は恋と空戦のファンタジー。極東の島国「日之雄」と軍事大国
「ガメリア合衆国」との戦争の狭間で繰り広げられる壮大な三角関係の顛末を描きます。
(イラスト:雫綺一生 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518122


空を飛ぶ駆逐艦「井吹」の艦長を務める日之雄の第一王女“イザヤ”。彼女の前に現れた
“クロト”は幼少の折、不遜な求婚をして叛意ありと家が取り潰され、ガメリアに渡って
投資で財を成した良くも悪くも有名人。彼は「祖国を救うため軍に入った」と言うが──。

現実世界の背景を下敷きに、黄色人種と迫害を受ける“クロト”がサクセスストーリーを
展開する流れが、まさか戦争の引金になるとは。当事者とは思いも寄らない“イザヤ”を
守るために奮闘する彼を俄然応援したくなる一方、“カイル”の示す意思と権力は盤石で。

絶望的な戦力差を覆せるのか。セラス粒子層という制約がもたらす海戦が如き大空の戦闘、
“イザヤ”や“クロト”が侍従を出し抜くために絞った知恵、「井吹」の愉快な乗組員が
見せる覚悟。すべてがもたらす泡沫の勝利は2人の命運をどこへ誘うか、目が離せません。

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2019年10月02日

『スイレン・グラフティ(2) もすこしつづく、ナイショの同居』

世津路章 先生が贈るガールズ青春グラフティ。第2巻は夏休みを迎え“蓮”と“彗花”が
同人誌即売会での経験を通じてさらに意見を交わし、ぶつけ合い、繋がりを深めていきます。
(イラスト:堀泉インコ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/suiren/321906000072.html


一時帰国した母からの提案とは異なる新たな道、漫画化を目指す“蓮”と秘密の共同生活を
続けることを選んだ“彗花”。後ろめたさの中に高揚感を覗かせる2人の様子はこそばゆい
ことこの上ない。そんな2人が迎える夏休み、そして同人誌即売会が今回の話の軸なワケで。

即売会の出張編集部で自作をコテンパンにされた“蓮”。即売会の魅力に気付いた“彗花”。
個人運営の即売会へ参加すると決めた2人が目にしたネット上の恐怖体験。それに怖気ずく
“蓮”と諫める“彗花”が衝突し、和解の印に“蓮”が身の上を語るまでの展開が印象的。

互いを信じる、と誓って作り上げた初めての同人誌を持ち込み、サークル参加する即売会。
目の当たりにするのは厳しい現実だけでなく、思いがけない出会いや好意もあってとても
心温まる結末。2人ならどこまでも行ける、と感じられる強さが素敵で安心感を覚えます。

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2019年10月01日

『クラスメイトが使い魔になりまして2』

鶴城東 先生が贈る険悪主従ラブコメ。第2巻は“想太”の新魔術に目をつけた“千景”の
両親の思惑を他所に、力をつけるべく修行に挑む2人が険悪な雰囲気を変化させていきます。
(イラスト:なたーしゃ 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518108


「結婚しろ」と迫られその猶予期間として1年間、使い魔の契約を解除できるかが焦点と
なる“想太”と“千景”。肉体関係を持つ瞬間を見届けるお目付け役として後輩“麗”が
加わり、彼の周囲もまた色めくワケで。“リリス”に唆される“旭”がまた可愛いの何の。

2つの人格と体形を使い分ける“想太”の師匠“真紀美”が見せる言動の落差、その驚き
以上に彼女が嘆く彼らの主従関係の酷さ。師匠が設けた信頼関係を築くための修行の場で
改めて互いのことを知らず、知ろうとする勇気を見せるまで成長する姿に熱量を感じます。

魔術を悪用する「まつろわぬもの」に目をつけられた“想太”もやられっぱなしじゃない、
そんな戦いぶりを“千景”と共に見せる中で交わしてしまった視線、その先にある紅の瞳。
色々と猶予がない2人が手を取り合って勝ちを取りに行けるか、次巻の展開に大注目です。

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2019年09月30日

『コールミー・バイ・ノーネーム』

斜線堂有紀 先生が贈る新作は「名前当て」ミステリー。ゴミ捨て場で拾った美しい女性に
惹かれていく女学生が、友達になるため彼女の「本当の名」と過去を探る経緯を描きます。
(Illustration/くわばらたもつ 先生)

https://www.seikaisha.co.jp/information/2019/08/28-post-clmn.html


奔放な性生活と無法な横恋慕。一宿一飯の恩義を体で返そうとする“古橋琴葉”に関する
ことは数少ない。そんな彼女から提示された「付き合っている間に自分の本名を当てたら
友達になってあげる」という話に乗った“愛”は世にも奇妙な同居生活を始めるが──。

改名する、その意味を交際する過程で探る“愛”自身にも一つの問題が存在する。それは
「なぜ“琴葉”を助けたのか」という点。善意の先に芽生えた感情を証明しようともがく
“愛”の気持ちを受け止め、それでも本名の「呪い」に苦しむ“琴葉”が示す拒絶は悲痛。

未希が“愛”のことを「光人間」と称したその意味も、読み終える今ならわかる気がする。
共に「何か」を証明する難しさ、やるせなさを痛感してきたからこそ繋がる2人の心と体。
名前当てが終わるその先に、“琴葉”の感情を証明する“愛”が居続けてほしいものです。

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2019年09月27日

『ここは書物平坂 黄泉の花咲く本屋さん』

新井輝 先生が贈る新作はあやかしもの。死の淵に立つ人へ未練ある本を提供する地獄の鬼
が店長を務める書店、そこを訪れた本好きな女性が辿る数奇な運命と縁の変遷を描きます。
(イラスト:紅木春 先生)

https://lbunko.kadokawa.co.jp/product/321809000748.html


黄泉比良坂。死者の住む世界へと続く坂の名と聞き間違える書店で和装の男性店長が言う。
「無事に帰りたくばワゴンの中から本を一冊買うことをお薦めする。お代は言い値で」と。
上司の失敗を押し付けられ失意の“奈美”は子供の頃何度も読んだあの本を手に取る──。

本で失敗し、本を断って生きてきた“奈美”が今また本に救われ、本で人を救っていく。
店長の厚意で住み込みのバイトを始め、好意を示されて困惑したり。取引先の若社長に
助けられ、意外な縁から誤解を与えたり。冒頭からは窺い知れない彼女の豪胆さが面白い。

前向きに生きていけるようになった“奈美”の上司、“山田”課長がまた嫌味な人物で。
彼が本を通じて因果応報な結末を迎えることに胸がすく思いを覚えるのはお許し頂きたい。
プロローグを読み返すとまたニヤリとできて、心温まる読了感が味わえるのでお薦めです。

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2019年09月26日

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.20』

聴猫芝居 先生が贈る、残念で楽しい日常≒ネトゲライフ。第20巻は“杏”の受験シーズン
真っ只中の間に“亜子”が猛烈なプロポーズ攻勢を仕掛け“英騎”がタジタジとなります。
(イラスト:Hisasi 先生)

https://dengekibunko.jp/product/netogeyome/321906000045.html


「リアルでもルシアンにプロポーズしたい!」と強く主張する“亜子”。リアルとゲームに
違いなんて無い、と言っていたはずの彼女を前に“英騎”や周囲も困惑の色が隠せない展開。
グイグイくる彼女を前に断り続ける彼の、鉄壁の意志が少しずつ削られていく様子が面白い。

“亜子”の攻勢にゲーム部の面々が次々と陥落し「仲魔」として“英騎”を裏切っていく中
“茜”だけが2人の無意識とも言える心境を見抜き、考えさせる助言を残していくのが流石。
というか“杏”は受験中にも関わらずゲームもしていて結果も残しているのがある意味凄い。

“亜子”と腹を割って話し合った“英騎”が彼女からのプロポーズを断り続ける真の理由に
気付いて打ち明ける場面は彼らしくてこそばゆくて思わずニヨニヨしてしまいます。そんな
幸せな2人の雰囲気に水を差すかのような引き具合にゲーム部はどう向き合うのか注目です。

posted by 秋野ソラ at 00:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル