伊達康 先生が贈る痛快討ち入りファンタジー。第3巻は騎士団の解散、国外追放の下知
を受けた“クラノス”たちの次なる手の内を、“喜一”の人たらしぶりと共に描きます。
(イラスト/紅緒 先生)
【 https://www.shogakukan.co.jp/books/09461164 】
臨時宰相に就任した“ソシオ”へ“クラノス”が殴り込みを掛けるのも分かるあの仕打ち。
彼主体で新設される保安局へ潜り込む意思を示す“エナーナ”たちの団員としての誇りが
伝わってきて良いです。そこから担任の例えを出してくるのが 伊達 先生の絶妙なセンス。
下知を伝えに来た“喜一”に現を抜かす“アンスヴェイ”の姿に“マギュー”が釘を刺す
緊張感の無さを見せるのがまた騎士団らしい。解散と共に様々な挙動を見せる団員の中で
強行に出る“ミナイツェ”連合へちゃんと対応する“クラノス”の思慮には驚かされます。
“ソシオ”も本件に思う所あることを知らしめるべく“クラノス”が手合せして勝てない
「あの人」の見せた覚悟もそうですが、結末に至る青写真を描いた「黒幕」のずる賢さが
印象に残ります。“喜一”がどんな真相を目の当たりにするのか、続きが気になる所です。
2023年03月30日
2023年03月29日
『お兄様は、怪物(なぞ)を愛せる探偵ですか?』
「明日の世界で星は煌めく」の ツカサ 先生が贈る新作は、事件を解明することで怪異を
鎮める能力を持つ兄と、その助手を務めるワケありな妹が織り成す新感覚ミステリです。
(イラスト:千種みのり 先生)
【 https://www.shogakukan.co.jp/books/09453116 】
突如、地方都市の住民が息絶える謎の事件で生き残った“葉介”。怪異に惹きつけられ、
怪物へと変貌した幼馴染を救うため、その謎を解く伝手を頼って混河家の人間となった
彼は、妹の“夕緋”を連れて探偵まがいの「お役目」に務め、手がかりを求めるが──。
「謎を解いて怪異を封じる」という意味。「ワケあり」とは何か。カマイタチの事件を
例に“葉介”と“夕緋”の関係や「六課」の存在、混河家のお家事情を理解させてから
謎の焼死事件「焔狐」の話へ導入する滑らかさ、ミステリの雰囲気づくりがまず好感触。
古くから伝わる儀式「火祭り」と村長選を巡る派閥争いは「焔狐」の幻想に繋がるのか。
“葉介”が謎を解き明かす、成否判定ギリギリの局面まで追究し続ける姿勢から伝わる
覚悟の決まり具合が印象的。悲願成就は果たせるか、兄妹の行く末を見届けたい所です。
鎮める能力を持つ兄と、その助手を務めるワケありな妹が織り成す新感覚ミステリです。
(イラスト:千種みのり 先生)
【 https://www.shogakukan.co.jp/books/09453116 】
突如、地方都市の住民が息絶える謎の事件で生き残った“葉介”。怪異に惹きつけられ、
怪物へと変貌した幼馴染を救うため、その謎を解く伝手を頼って混河家の人間となった
彼は、妹の“夕緋”を連れて探偵まがいの「お役目」に務め、手がかりを求めるが──。
「謎を解いて怪異を封じる」という意味。「ワケあり」とは何か。カマイタチの事件を
例に“葉介”と“夕緋”の関係や「六課」の存在、混河家のお家事情を理解させてから
謎の焼死事件「焔狐」の話へ導入する滑らかさ、ミステリの雰囲気づくりがまず好感触。
古くから伝わる儀式「火祭り」と村長選を巡る派閥争いは「焔狐」の幻想に繋がるのか。
“葉介”が謎を解き明かす、成否判定ギリギリの局面まで追究し続ける姿勢から伝わる
覚悟の決まり具合が印象的。悲願成就は果たせるか、兄妹の行く末を見届けたい所です。
2023年03月28日
『高嶺の花には逆らえない3』
冬条一 先生が贈る、ヒロインたちが暗躍する新感覚ラブコメ。第3巻は“葉”の恋心が
向かうのは“あいり”か“千鶴”か。過去、現在、そして未来を見据えて答えを出します。
(イラスト:ここあ 先生)
【 https://www.shogakukan.co.jp/books/09453117 】
中学1年生の記憶。“葉”の差し伸べた手に救われた女の子が「もう泣かない」と決意し
彼の思い描く「世界一理想の女の子」になると、臥薪嘗胆の思いで高嶺の花なったのだと、
だからこそ数々の「お願い」に繋がるのが分かって驚愕すると共に空恐ろしくなるワケで。
高校1年生の忘却。加害者は忘れても被害者は忘れない、とはよく言われますが、全てを
理解した上で見せた“新”の振舞いには骨があると感じます。同じく掘り起こした過去や
今の気持ちを綯い交ぜにしながら恋に決着をつける“葉”の真摯な態度に好感が持てます。
高嶺の花には逆らえないのは誰だったのか。アフターケアに回る“美紀”が代弁する言葉
一つ一つから“葉”の「大切だと感じるもの」が伝わってくる、実に印象的な一幕でした。
前向きな想いで物語を締めくくるのも見事です。無事の完結を心よりお祝い申し上げます。
向かうのは“あいり”か“千鶴”か。過去、現在、そして未来を見据えて答えを出します。
(イラスト:ここあ 先生)
【 https://www.shogakukan.co.jp/books/09453117 】
中学1年生の記憶。“葉”の差し伸べた手に救われた女の子が「もう泣かない」と決意し
彼の思い描く「世界一理想の女の子」になると、臥薪嘗胆の思いで高嶺の花なったのだと、
だからこそ数々の「お願い」に繋がるのが分かって驚愕すると共に空恐ろしくなるワケで。
高校1年生の忘却。加害者は忘れても被害者は忘れない、とはよく言われますが、全てを
理解した上で見せた“新”の振舞いには骨があると感じます。同じく掘り起こした過去や
今の気持ちを綯い交ぜにしながら恋に決着をつける“葉”の真摯な態度に好感が持てます。
高嶺の花には逆らえないのは誰だったのか。アフターケアに回る“美紀”が代弁する言葉
一つ一つから“葉”の「大切だと感じるもの」が伝わってくる、実に印象的な一幕でした。
前向きな想いで物語を締めくくるのも見事です。無事の完結を心よりお祝い申し上げます。
2023年03月27日
『負けヒロインが多すぎる!5』
雨森たきび 先生が贈る負け確ラブコメ。第5巻はバレンタインデーを前にして“佳樹”が
手作りチョコを兄以外の異性に渡す可能性を知り、“温水”が相手の調査に乗り出します。
(イラスト:いみぎむる 先生)
【 https://www.shogakukan.co.jp/books/09453118 】
「14日は空けておくね、橘君」電話越しのやり取りを耳にして動揺する“温水”を手玉に
取るかのような“佳樹”。小悪魔的な愛らしさを魅せる彼女の複雑な胸中を知る由もない
彼のデリカシー欠如をあしざまに言う“小鞠”たちも変わらず平常運転で良いと思います。
「橘君と豊川稲荷にお出かけ」妹の予定が気になって、後をつけたり、潜入捜査したりと
妹愛が過ぎる“温水”。そんな中でアプローチを、様々な形でそれとなく受ける彼が全く
と言っていいほどなびかないのが凄い。そして“橘”少年の想いがますます気になる訳で。
「お兄様が好きな人は──」卑近な勘違いと迂遠な目論見。“佳樹”の考えを受け止めて
“温水”なりに答えを返してあげる、その優しさがまさに兄弟愛という感じで素晴らしい。
吹っ切れた妹からの攻め手に文芸部の面々も含めどう対応するか次巻も見届けたい所です。
手作りチョコを兄以外の異性に渡す可能性を知り、“温水”が相手の調査に乗り出します。
(イラスト:いみぎむる 先生)
【 https://www.shogakukan.co.jp/books/09453118 】
「14日は空けておくね、橘君」電話越しのやり取りを耳にして動揺する“温水”を手玉に
取るかのような“佳樹”。小悪魔的な愛らしさを魅せる彼女の複雑な胸中を知る由もない
彼のデリカシー欠如をあしざまに言う“小鞠”たちも変わらず平常運転で良いと思います。
「橘君と豊川稲荷にお出かけ」妹の予定が気になって、後をつけたり、潜入捜査したりと
妹愛が過ぎる“温水”。そんな中でアプローチを、様々な形でそれとなく受ける彼が全く
と言っていいほどなびかないのが凄い。そして“橘”少年の想いがますます気になる訳で。
「お兄様が好きな人は──」卑近な勘違いと迂遠な目論見。“佳樹”の考えを受け止めて
“温水”なりに答えを返してあげる、その優しさがまさに兄弟愛という感じで素晴らしい。
吹っ切れた妹からの攻め手に文芸部の面々も含めどう対応するか次巻も見届けたい所です。
2023年03月24日
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア14 小冊子付き特装版』
大森藤ノ 先生が贈る大人気シリーズ「ダンまち」スピンオフ作品。小冊子付き特装版と
同時刊行となる第14巻は都市最高位に到達した【ロキ・ファミリア】の原初に触れます。
(イラスト:はいむらきよたか 先生)
【 https://ga.sbcr.jp/product/9784815618728/ 】
【 https://danmachi.com/ 】
“フィン”。小人族の言葉で「光」を意味するその名を掲げるに至った後悔、過ちを
繰り返さないという決死の覚悟、“ロキ”との出会いから彼の言う「冒険」が飛躍的に
広がっていく過程が面白いです。“メリサ”との件は残念でしたが後々を考えれば、ね。
“リヴェリア”。アルヴの王森においてハイエルフの王女としての振舞いを求められる
窮屈さ、鬱憤から里を飛び出す過程が彼女らしい。恥を承知で“フィン”や“ロキ”に
助力を求めるまでの葛藤と妥協、そしてハイエルフとして一皮むけていく流れも同様に。
“ガレス”。“ロキ”に目をつけられたのが運の尽き。三顧の礼ならぬ「三娘の礼」で
【ロキ・ファミリア】に迎えられることになるとは、よもやよもやの展開。邂逅と旅の
過程を“アイナ”の視点で描く、小冊子の短編もお見逃しなく。次の刊行も楽しみです。
同時刊行となる第14巻は都市最高位に到達した【ロキ・ファミリア】の原初に触れます。
(イラスト:はいむらきよたか 先生)
【 https://ga.sbcr.jp/product/9784815618728/ 】
【 https://danmachi.com/ 】
“フィン”。小人族の言葉で「光」を意味するその名を掲げるに至った後悔、過ちを
繰り返さないという決死の覚悟、“ロキ”との出会いから彼の言う「冒険」が飛躍的に
広がっていく過程が面白いです。“メリサ”との件は残念でしたが後々を考えれば、ね。
“リヴェリア”。アルヴの王森においてハイエルフの王女としての振舞いを求められる
窮屈さ、鬱憤から里を飛び出す過程が彼女らしい。恥を承知で“フィン”や“ロキ”に
助力を求めるまでの葛藤と妥協、そしてハイエルフとして一皮むけていく流れも同様に。
“ガレス”。“ロキ”に目をつけられたのが運の尽き。三顧の礼ならぬ「三娘の礼」で
【ロキ・ファミリア】に迎えられることになるとは、よもやよもやの展開。邂逅と旅の
過程を“アイナ”の視点で描く、小冊子の短編もお見逃しなく。次の刊行も楽しみです。