杉井光 先生が贈る青春バンドストーリー。第7巻は新たな曲作り、またアルバム作成に
向けて“真琴”が“凛子”たちと夏合宿に臨む中、ある未来予想図を頭にちらつかせます。
(イラスト:春夏冬ゆう 先生)
【 https://dengekibunko.jp/product/paradise_noise/322312000504.html 】
【 https://comic-walker.com/detail/KC_003884_S 】
無響(デッド)、レコーディング時に求められる反響がない状態。その環境で掻き鳴らす
音がPNOの中にいながらも孤独感を覚える“真琴”の姿を暗喩するかのような描写が印象的。
そんな彼を「憑りつかれてる」「いつかバンドを抜ける」と評する“拓斗”の慧眼たるや。
“真琴”はなぜPNOを棄てるのか。彼自身が認識できていなかったその訳を“キョウコ”が
こだわるあのスタジオで、エンジニア“稲森”とやり取りする中で掴むのも因果なもので。
音楽の録音と再生について語らせることで彼の心情を浮き彫りにする演出は端的かつ的確。
刹那を思わせる夏の合宿は不安な気持ちを忘れさせてくれるかのように賑やかで姦しくて。
水着姿の“凛子”たちを見て奏でる音に思いを馳せる“真琴”の姿が彼の奇異な存在感を
再認識させてくれます。そして秀逸すぎる表紙イラストでも。次巻が待ち遠しい限りです。
2025年06月16日
2025年06月13日
『天久翼の読心カルテU 淡雪の記憶』
知念実希人 先生の「天久鷹央」シリーズ、兄妹作となるハードボイルド医療ミステリー。
第2巻は爆破テロの事件解決につながる記憶を失った女性の心境に“翼”が向き合います。
(イラスト:いとうのいぢ 先生)
【 https://www.j-n.co.jp/books/978-4-408-55953-7/ 】
映像化したときに映えると感じるくらい“真美”の運転技術が圧巻すぎる。しかも真相を
追うために必須という大事な場面なだけに。映えると言えば“勝己”ですら手を焼く犯人
との格闘シーンも見所。勝つためのヒントを最大限に活かす彼の熱い戦いぶりに注目です。
失った記憶は取り戻すべき、と考える“ゆかり”を安直だと抗言する“翼”が印象深くて。
猫の興味深い思考すら読める彼が“赤羽”の悲劇を再認識させることを危険視する医師と
しての見解は流石と感じる一方で、その中に残された希望には気づけなかったことが特に。
“赤羽”はなぜあの場所で倒れていたのか。登場する人々の思惑が、度重なる事件を経て
面白いように線で結ばれて明らかになる話運びは読み応え十分。兄をからかう“鷹央”の
「当然」に気づく“翼”が今回の件を踏まえ「責任」とどう向き合うか、続きに期待です。
第2巻は爆破テロの事件解決につながる記憶を失った女性の心境に“翼”が向き合います。
(イラスト:いとうのいぢ 先生)
【 https://www.j-n.co.jp/books/978-4-408-55953-7/ 】
映像化したときに映えると感じるくらい“真美”の運転技術が圧巻すぎる。しかも真相を
追うために必須という大事な場面なだけに。映えると言えば“勝己”ですら手を焼く犯人
との格闘シーンも見所。勝つためのヒントを最大限に活かす彼の熱い戦いぶりに注目です。
失った記憶は取り戻すべき、と考える“ゆかり”を安直だと抗言する“翼”が印象深くて。
猫の興味深い思考すら読める彼が“赤羽”の悲劇を再認識させることを危険視する医師と
しての見解は流石と感じる一方で、その中に残された希望には気づけなかったことが特に。
“赤羽”はなぜあの場所で倒れていたのか。登場する人々の思惑が、度重なる事件を経て
面白いように線で結ばれて明らかになる話運びは読み応え十分。兄をからかう“鷹央”の
「当然」に気づく“翼”が今回の件を踏まえ「責任」とどう向き合うか、続きに期待です。
2025年06月12日
『悪食緋蒼は×××なのか?』
夜方宵 先生の「第16回講談社ラノベ文庫・新人賞」受賞作。人間に擬態して人を喰らう
異形・殺戮魔を討伐する探偵として活動する青年に関わる顛末を描く超感覚ミステリです。
(イラスト:AKiEDA 先生)
【 https://lanove.kodansha.co.jp/books/2025/6/3.html 】
史上最高の名探偵にして姉の“愛嵐”を事件で失い、実力を発揮できずにいる底辺探偵
“探流”はその鍵となる殺戮魔の集団《賛美たる晩餐会》の手掛かりを探し続けている。
助手希望の“来宇”と推理を求める“緋蒼”がその意図を知り、彼に接触を図るが──。
「殺戮魔は誰に扮しているの?」とか「これってそういう意味?」など読み手に想像を
掻き立てさせながら、その上で意外性のある話の流れに誘導していく構成がまず面白い。
ちょっとラブな要素も滲ませながら、死者を出すのに容赦がない所も実に潔いというか。
意外性の魅せ方としては、一見するとお淑やかな美少女でありながら殺戮魔との迫真の
バトルも探偵と劣らずにこなしていく“緋蒼”という人物像を描く所でも発揮されます。
“探流”と彼女の関係がこの先どうなるのかも気になりますし、続きに期待の物語です。
異形・殺戮魔を討伐する探偵として活動する青年に関わる顛末を描く超感覚ミステリです。
(イラスト:AKiEDA 先生)
【 https://lanove.kodansha.co.jp/books/2025/6/3.html 】
史上最高の名探偵にして姉の“愛嵐”を事件で失い、実力を発揮できずにいる底辺探偵
“探流”はその鍵となる殺戮魔の集団《賛美たる晩餐会》の手掛かりを探し続けている。
助手希望の“来宇”と推理を求める“緋蒼”がその意図を知り、彼に接触を図るが──。
「殺戮魔は誰に扮しているの?」とか「これってそういう意味?」など読み手に想像を
掻き立てさせながら、その上で意外性のある話の流れに誘導していく構成がまず面白い。
ちょっとラブな要素も滲ませながら、死者を出すのに容赦がない所も実に潔いというか。
意外性の魅せ方としては、一見するとお淑やかな美少女でありながら殺戮魔との迫真の
バトルも探偵と劣らずにこなしていく“緋蒼”という人物像を描く所でも発揮されます。
“探流”と彼女の関係がこの先どうなるのかも気になりますし、続きに期待の物語です。
2025年06月11日
『探偵気取りと不機嫌な青春』
野中春樹 先生の「第18回講談社ラノベ文庫・新人賞」受賞作。推理をひけらかすことで
自己満足していた少年と冤罪を疑われた少女の関わりから始まる学園青春ミステリーです。
(イラスト:うらたあさお 先生)
【 https://lanove.kodansha.co.jp/books/2025/6/2.html 】
“朝河”が過去に相談役みたいなことをやっていた、と“山藤”が聞いてお願いしたこと。
それは同じクラスの“青山”に課題を出してもらうのと、彼女の万引き疑惑を晴らすこと。
その気のない彼女が職員室に呼ばれた際、あることに気付き慌てて教師に訴え出るが──。
思っていたことを口にした時、相手がどう感じるかを想像できなかったことでトラウマを
負った“朝河”を「探偵気取り」と言い表すのが的確すぎる逸話の数々。でも“青山”を
救ったことが無駄ではなく、変わるためのきっかけを得る重要な転機となったのが救いで。
推理することに臆病となり、妹との距離感も図りかねてしまった“朝河”を非難する者が
現れることもあれば彼を庇う者も登場する。それを見て「情けは人のためならず」と諺を
想起し、色々と考えさせられる物語でした。こそばゆいアオハル要素にも注目の一作です。
自己満足していた少年と冤罪を疑われた少女の関わりから始まる学園青春ミステリーです。
(イラスト:うらたあさお 先生)
【 https://lanove.kodansha.co.jp/books/2025/6/2.html 】
“朝河”が過去に相談役みたいなことをやっていた、と“山藤”が聞いてお願いしたこと。
それは同じクラスの“青山”に課題を出してもらうのと、彼女の万引き疑惑を晴らすこと。
その気のない彼女が職員室に呼ばれた際、あることに気付き慌てて教師に訴え出るが──。
思っていたことを口にした時、相手がどう感じるかを想像できなかったことでトラウマを
負った“朝河”を「探偵気取り」と言い表すのが的確すぎる逸話の数々。でも“青山”を
救ったことが無駄ではなく、変わるためのきっかけを得る重要な転機となったのが救いで。
推理することに臆病となり、妹との距離感も図りかねてしまった“朝河”を非難する者が
現れることもあれば彼を庇う者も登場する。それを見て「情けは人のためならず」と諺を
想起し、色々と考えさせられる物語でした。こそばゆいアオハル要素にも注目の一作です。
2025年06月10日
『誰が勇者を殺したか 勇者の章』
シリーズ累計30万部を超す、駄犬 先生の大人気ファンタジー作品。第3巻は“ザック”が
立ち寄ったリュドニア国の勇者“カルロス”が命を落とした事実、そして真相に迫ります。
(イラスト:toi8 先生)
【 https://sneakerbunko.jp/product/daregayu/322502000208.html 】
勇者であり、兄である“カルロス”を慕うがあまり“エレナ”が“ザック”に言いがかり
をつけている。そんな印象を受けつつ読み進めていくと、彼女の言動も致し方ないことが
分かってくると共に、“ザック”もまたあの回答をせざるを得ないのが得心のいく話運び。
リュドニア国に潜む魔王軍との内通者、変幻自在の魔物“シェイプシフター”は誰なのか。
“ザック”が勇者であることを拒む人物が表に裏にと描かれる中で“カルロス”はそれを
どんな気持ちで眺めていたのか。読み終えた後で思い返すと複雑な感情が胸をよぎります。
足並みが揃わない“ザック”たち勇者一行を見て、“カルロス”が彼に諭したあの言葉も
現在に至る必要な要素だと痛感させられるが故に、最後に“エレナ”の流した涙が切ない。
プロローグのやり取りを振り返り、兄を偲んで生きていく彼女の生き様に思いを馳せます。
立ち寄ったリュドニア国の勇者“カルロス”が命を落とした事実、そして真相に迫ります。
(イラスト:toi8 先生)
【 https://sneakerbunko.jp/product/daregayu/322502000208.html 】
勇者であり、兄である“カルロス”を慕うがあまり“エレナ”が“ザック”に言いがかり
をつけている。そんな印象を受けつつ読み進めていくと、彼女の言動も致し方ないことが
分かってくると共に、“ザック”もまたあの回答をせざるを得ないのが得心のいく話運び。
リュドニア国に潜む魔王軍との内通者、変幻自在の魔物“シェイプシフター”は誰なのか。
“ザック”が勇者であることを拒む人物が表に裏にと描かれる中で“カルロス”はそれを
どんな気持ちで眺めていたのか。読み終えた後で思い返すと複雑な感情が胸をよぎります。
足並みが揃わない“ザック”たち勇者一行を見て、“カルロス”が彼に諭したあの言葉も
現在に至る必要な要素だと痛感させられるが故に、最後に“エレナ”の流した涙が切ない。
プロローグのやり取りを振り返り、兄を偲んで生きていく彼女の生き様に思いを馳せます。