「氷結令嬢さまをフォローしたら、メチャメチャ溺愛されてしまった件」(ガガガ文庫)の
愛坂タカト 先生が贈る新作は、登校拒否の妹を異世界から連れ戻す兄の苦心を描きます。
(イラスト:pon 先生)
【 https://www.shogakukan.co.jp/books/09461173 】
カレーが好きで、特に母が作るカレーを愛する大学二年生の“来人”には小学5年生の妹
“華恋”がいる。学校でいじめを受け、登校拒否を続ける彼女は異世界に行く手段を得て
そこに引きこもっている。家族で食卓を囲むため、彼は都度妹を連れ戻しにかかるが──。
「ポータル」の力を駆使して異世界でやりたい放題な“華恋”を、それ以上に使いこなし
妹を圧倒していく“来人”という構図がコミカルな話運び。その過程で彼女が兄のことを
どう思っているか、素直になれない胸の内が見えてくると切なくなってくる興味深い展開。
そこに“華恋”を心配する“皆川”先生や、“来人”に接触を図るいじめっ子“蛇ヶ崎”
がどう関与してくるか。兄妹の母“雫”は家族のことをどう思っているか。意外な結末に
すらカレーが関与してくる徹底ぶりが見所。そしてあの引きからどう続くのか、注目です。
2024年08月30日
2024年08月29日
『氷結令嬢さまをフォローしたら、メチャメチャ溺愛されてしまった件3』
愛坂タカト 先生が贈る異世界ラブコメディ。第3巻は突然再会した姉“シルヴィア”に
“グレイ”が“アリシア”との恋愛に待ったを掛けられ身分差恋愛の覚悟を求められます。
(イラスト:Bcoca 先生)
【 https://www.shogakukan.co.jp/books/09453205 】
“シルヴィア”が“グレイ”を溺愛する姿に、貧民街へ置いてきてしまった弟を想う心と
生半可な気持ちで弟を奪ってほしくない、という覚悟が窺えます。それが行き過ぎて彼を
拉致したり洗脳したり、と“アリシア”にとっては恋敵が如く、傍迷惑な存在に映ります。
“グレイ”が生き別れた間に第三王子妃まで上り詰めた“シルヴィア”もまた彼女なりに
決死の覚悟で貧民街を飛びだしたエピソードが幕間で描かれるのが見どころ。蹴落とした
ライバルの中に「あの人」がいる、というのが彼にとっても無関係ではないのが印象深い。
“アリシア”に厳しい現実を突きつけた“シルヴィア”が彼女、また“グレイ”に求めた
難題にしっかり応える、深い絆と愛がもたらす結末は見ていて清々しいほど。「溺愛」の
テーマにとことんこだわった結末も安心して受け止められます。コミカライズも期待です。
“グレイ”が“アリシア”との恋愛に待ったを掛けられ身分差恋愛の覚悟を求められます。
(イラスト:Bcoca 先生)
【 https://www.shogakukan.co.jp/books/09453205 】
“シルヴィア”が“グレイ”を溺愛する姿に、貧民街へ置いてきてしまった弟を想う心と
生半可な気持ちで弟を奪ってほしくない、という覚悟が窺えます。それが行き過ぎて彼を
拉致したり洗脳したり、と“アリシア”にとっては恋敵が如く、傍迷惑な存在に映ります。
“グレイ”が生き別れた間に第三王子妃まで上り詰めた“シルヴィア”もまた彼女なりに
決死の覚悟で貧民街を飛びだしたエピソードが幕間で描かれるのが見どころ。蹴落とした
ライバルの中に「あの人」がいる、というのが彼にとっても無関係ではないのが印象深い。
“アリシア”に厳しい現実を突きつけた“シルヴィア”が彼女、また“グレイ”に求めた
難題にしっかり応える、深い絆と愛がもたらす結末は見ていて清々しいほど。「溺愛」の
テーマにとことんこだわった結末も安心して受け止められます。コミカライズも期待です。
2024年08月28日
『夏に溺れる』
青葉寄 先生の「第18回小学館ライトノベル大賞・大賞」受賞作。人気者なのに自殺願望を
持つ少年と不登校になった少女が、殺したい人を殺しに旅に出る夏の旅の顛末を描きます。
(イラスト:灸場メロ 先生)
【 https://www.shogakukan.co.jp/books/09453204 】
ある理由から退学を決意した“凛”は校舎から飛び降りそうな“光”を見かけ声を掛ける。
今まで縁の無かった彼と意外に気が合うと知った彼女は翌年度の夏休み、家に帰ってない
という様子がおかしい彼から母親を殺したと言われ、一緒に逃げようと提案されるが──。
8月末までの1週間に“光”と“凛”が交互に人を殺す、という彼が提案してきたゲーム。
ゲームの意図は何か。なぜ彼は人を殺すのか。彼女を選んだ訳とは。彼女も人を殺すの?
2人の奇妙な逃避行が進むにつれ謎が謎を呼び、犠牲者も増え、不安を掻き立てられます。
“光”の内面に触れていく夏の終わりの種明かし。理想的な男子だと周囲から高い評価を
受ける彼が抱える深い闇が生み出した歪んだ愛、自分勝手な願望の行方はもう吃驚の一言。
彼が手に入れたものの代償を胸に刻む“凛”がこの夏に溺れないことを願って止みません。
持つ少年と不登校になった少女が、殺したい人を殺しに旅に出る夏の旅の顛末を描きます。
(イラスト:灸場メロ 先生)
【 https://www.shogakukan.co.jp/books/09453204 】
ある理由から退学を決意した“凛”は校舎から飛び降りそうな“光”を見かけ声を掛ける。
今まで縁の無かった彼と意外に気が合うと知った彼女は翌年度の夏休み、家に帰ってない
という様子がおかしい彼から母親を殺したと言われ、一緒に逃げようと提案されるが──。
8月末までの1週間に“光”と“凛”が交互に人を殺す、という彼が提案してきたゲーム。
ゲームの意図は何か。なぜ彼は人を殺すのか。彼女を選んだ訳とは。彼女も人を殺すの?
2人の奇妙な逃避行が進むにつれ謎が謎を呼び、犠牲者も増え、不安を掻き立てられます。
“光”の内面に触れていく夏の終わりの種明かし。理想的な男子だと周囲から高い評価を
受ける彼が抱える深い闇が生み出した歪んだ愛、自分勝手な願望の行方はもう吃驚の一言。
彼が手に入れたものの代償を胸に刻む“凛”がこの夏に溺れないことを願って止みません。
2024年08月27日
『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います8』
香坂マト 先生が贈る、かわいい受付嬢がボスと残業を駆逐する異世界コメディ。第8巻は
“アシュリー”をインターン生として迎える“アリナ”が更なる残業の危機に襲われます。
(イラスト:がおう 先生)
【 https://bookwalker.jp/de7fe0122e-a10d-436a-b47d-c12053e7ebe7/ 】
【 https://girumasu.com/ 】
ギルド本部に新しく出来るクエストカウンター、受付嬢にとって約束された繁忙期の戦場。
まるで悪霊のように、その話題が周囲から出ることすら禁忌と振舞う“アリナ”が面白い。
そんな彼女が“ジェイド”との旅行やケーキ屋デートを楽しみにする姿の愛らしさたるや。
鬼気迫る“アリナ”のもとを訪れた“アシュリー”が目にする彼女の日常という非日常さ
に驚く様子、そこにちょくちょく出てくる“ジェイド”に敵意を示す大人げなさも面白い。
そんな彼が冒頭で姉のことを託される“シュラウド”の夢を見たのがあの暗喩になるとは。
ほのぼのと弛緩した空気を震撼させる緊急事態に直面した“ジェイド”が身を挺して街を、
そして“アリナ”を護ろうとする決死の覚悟も虚しく“アシュリー”の怒りがこだまする
引き具合に唖然。TVアニメ化が決定した喜ばしさを胸に、気になる続きを待ちたい所です。
“アシュリー”をインターン生として迎える“アリナ”が更なる残業の危機に襲われます。
(イラスト:がおう 先生)
【 https://bookwalker.jp/de7fe0122e-a10d-436a-b47d-c12053e7ebe7/ 】
【 https://girumasu.com/ 】
ギルド本部に新しく出来るクエストカウンター、受付嬢にとって約束された繁忙期の戦場。
まるで悪霊のように、その話題が周囲から出ることすら禁忌と振舞う“アリナ”が面白い。
そんな彼女が“ジェイド”との旅行やケーキ屋デートを楽しみにする姿の愛らしさたるや。
鬼気迫る“アリナ”のもとを訪れた“アシュリー”が目にする彼女の日常という非日常さ
に驚く様子、そこにちょくちょく出てくる“ジェイド”に敵意を示す大人げなさも面白い。
そんな彼が冒頭で姉のことを託される“シュラウド”の夢を見たのがあの暗喩になるとは。
ほのぼのと弛緩した空気を震撼させる緊急事態に直面した“ジェイド”が身を挺して街を、
そして“アリナ”を護ろうとする決死の覚悟も虚しく“アシュリー”の怒りがこだまする
引き具合に唖然。TVアニメ化が決定した喜ばしさを胸に、気になる続きを待ちたい所です。
2024年08月26日
『星が果てても君は鳴れ』
長山久竜 先生の「第30回電撃小説大賞・銀賞」受賞作。人の生活音を雑音と感じてしまう
希死念慮を抱く少年と未来視の力を持つ元有名女優の少女が織り成す青春と愛の物語です。
(イラスト:咲の字。 先生)
【 https://bookwalker.jp/de319c36e1-9052-4d5c-8e5e-3b6fed58cdcb/ 】
親を亡くし、高校を辞めて、電車に身を投げると決めた“月城”の覚悟を知る者はいない。
そのはずだった彼の前に見知らぬ美少女が現れ、唇を奪われ、命を繋ぎ止められてしまう。
“星宮”と名乗る彼女は、彼に自殺願望を抱かせる「ノイズ」を何とかすると嘯くが──。
“星宮”の辿り着きたい未来のために巻き込まれた“月城”が連れ回され、付き合わされ、
それでも「ノイズ」に苦しめられ。漂う悲壮感を心の信拠としていた歌が払拭する流れは
心が高ぶります。そこに冷水を掛けるような「約束の期限」の意味が何ともやるせなくて。
“月城”の「未来を変えたい」という諦めの悪さに観念した“星宮”が、妹を巻き込んで
成し遂げた未来への懸け橋、そのかけがえのなさに胸を打たれます。彼が常に感じていた
「ノイズ」が美しい音色へと転じる魅せ方もぜひ読んで確かめてもらいたいお薦め作です。
希死念慮を抱く少年と未来視の力を持つ元有名女優の少女が織り成す青春と愛の物語です。
(イラスト:咲の字。 先生)
【 https://bookwalker.jp/de319c36e1-9052-4d5c-8e5e-3b6fed58cdcb/ 】
親を亡くし、高校を辞めて、電車に身を投げると決めた“月城”の覚悟を知る者はいない。
そのはずだった彼の前に見知らぬ美少女が現れ、唇を奪われ、命を繋ぎ止められてしまう。
“星宮”と名乗る彼女は、彼に自殺願望を抱かせる「ノイズ」を何とかすると嘯くが──。
“星宮”の辿り着きたい未来のために巻き込まれた“月城”が連れ回され、付き合わされ、
それでも「ノイズ」に苦しめられ。漂う悲壮感を心の信拠としていた歌が払拭する流れは
心が高ぶります。そこに冷水を掛けるような「約束の期限」の意味が何ともやるせなくて。
“月城”の「未来を変えたい」という諦めの悪さに観念した“星宮”が、妹を巻き込んで
成し遂げた未来への懸け橋、そのかけがえのなさに胸を打たれます。彼が常に感じていた
「ノイズ」が美しい音色へと転じる魅せ方もぜひ読んで確かめてもらいたいお薦め作です。