2024年04月04日

『公務員、中田忍の悪徳 8』

立川浦々 先生が贈る、異世界エルフと邂逅した地方公務員の道義を描く異色作。第8巻は
“アリエル”が樹になるのを阻止すべく、地方公務員“忍”が最後の悪あがきを見せます。
(イラスト:楝蛙 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09453176


“星愛星”の慧眼にまず驚かされる冒頭。迷走する“忍”が両親との断絶と向き合うのを
見た“アリエル”が「彼を一方的に愛する」と決めたが故にかけたあの言葉は厳しくとも
彼の「悪徳」の根源として認め、否定することもまた一方的な愛の一端だと思うと納得で。

“ナシエル”とは結局なんだったのか。ここにも“忍”が「約束」を交わすほど覚悟する
決定的な過去を紐解く重要な鍵が満載で唖然とするばかり。一方的に“アリエル”を託す
“ナシエル”の独断すら己の「悪徳」でもって断罪する“忍”らしさが印象に残ります。

そして残された“由奈”の件。「公務員、中田忍の悪徳」その集大成で解を導く展開には
度肝を抜かされます。同人誌側の動きも相まって悪化の一途を辿る福祉生活課の状況など
お構いなしに「悪徳」の道を貫く“忍”たちに幸あれ、ということで完結を祝す次第です。

posted by 秋野ソラ at 00:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル