2024年02月29日

『変人のサラダボウル6』

4月からのTVアニメ放送が迫る、平坂読 先生が贈る変人たちの奇想天外おもしろ群像喜劇。
第6巻は“サラ”の芸能人スカウト話や“リヴィア”の反社活動など話題てんこ盛りです。
(イラスト:カントク 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09453166
https://www.tbs.co.jp/anime/hensara/


「剣持命」として生きることを決めた“リヴィア”の流されるままに生きる姿がまず圧巻。
反社会勢力の帝王に上りつめた彼女が“望愛”の保釈申請を通したい一心で社会的信用を
勝ち取っていく顛末は面白すぎるの一言。“章”や“タケオ”の目線で語られる点も見所。

“沙羅”の将来を預けていいのか、を見極めるべく“惣助”と共に訪れた芸能事務所でも
“陽葵”からの新人いびりも何のそので応じる“沙羅”のコミュニケーション能力に脱帽。
挿入される名古屋観光、東京観光の顛末も旅番組を観ているかのようで、これまた楽しい。

異世界人の面々が日本社会で新たな生き方を謳歌する中で、“友奈”が夢の実現に向けて
前進した姿を見て“閨”や“ブレンダ”に打つ手はあるのかを考えるとまた実に興味深い。
こうした平穏な岐阜の地を脅かす悪意の到来がどんな騒動を呼び起こすのか、要注目です。

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2024年02月28日

『魔王都市2 -血塗られた聖剣と致命の亡霊-』

ロケット商会 先生が贈る世界破滅級クライムサスペンス。第2巻は派出騎士が相次いで
変死する事件の黒幕《致命者》を追うべく“キード”と“アルサリサ”が捜査に臨みます。
(イラスト:Ryota-H 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09453172


捜査方針に口を出す調整官の「提言」に正魔導騎士として口答えできない“アルサリサ”。
魔王“ニルガラ”の「全知の王冠」を預かる立場として仁義を通すことに拘る“キード”。
しなくていい衝突で拗れる2人の関係に心を砕く、彼の課長が持つ見識の高さに惚れ惚れ。

僭主七王がそれぞれ掲げる徳目に従って動く魔族たちの中で、誰が《偽造聖剣》の密造に
関わっているのか、その目的は・・・と探る“キード”たちがやがて辿り着く真犯人との激闘。
その果てに見せた彼の覚悟が新たな時代の到来を周囲にも印象づけているように感じます。

事件解決に安堵する間もなく新たな謎と難局を迎える“キード”、そして“アルサリサ”。
薄々勘付いている領分の外で動いていく話の流れと登場人物の関係性に戸惑う彼女の様子
を微笑ましく眺めつつ、彼がどんな秘策でそれを乗り越えていくのか楽しみにしています。

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2024年02月27日

『獄門撫子此処ニ在リ2 赤き太陽の神去団地』

伏見七尾 先生が贈る、うつくしくもおそろしい少女鬼譚。第2巻は現世と幽世のはざまに
ある場所で、“撫子”が失った記憶を取り戻すために無耶師たちの野望と立ち向かいます。
(イラスト:おしおしお 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09453170


“撫子”のらしからぬ言動に得も言われぬ表情を見せる“アマナ”に切なさを幾度となく
覚えます。「逆獏」のせいでは終わらない“撫子”の記憶の欠落は誰の仕業か、そもそも
神去団地という閉じた環境は何なのか、探る2人が目にする光景の異様さが目につきます。

“撫子”を神去団地に呼んだ、という謎の少女“羅々”。“アマナ”を悪い奴だと断じる
“羅々”を諭す“撫子”に、それを確かめるべく相対する“羅々”が見た歪で綺麗な心を
覗かせる“アマナ”に困惑する様子が2人の特異な絆に抱く素直な感想だと思えるのが妙。

“撫子”が失った記憶を意外な人物から取り戻し、落涙するその意味もまた彼女の精神の
弱さを象徴していて尊いとも感じるほど。因果も逆転し、秩序も崩壊したはざまの場所で
“アマナ”もまた好きに生きると共に改めて認識した先に何が在るのか注目したい所です。

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2024年02月26日

『ノベルライト 文系女子、ときどき絶叫女子。』

ハマカズシ 先生が贈る「ガガガ文庫」と青春パンクバンド「ガガガSP」とのコラボ作品。
「ガガガ」で繋がってしまった2人の高校生女子がガガガっと心のメロディを響かせます。
(イラスト:ねめ猫E 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09453175
https://gagagabunko.jp/special/gagagasp/


アオハルな話には縁がなく独りでラノベを読むのが日常の“青春”。ガガガ文庫への愛を
河原で叫んでいると「ガガガ好きなの?」と“京子”に声を掛けられる。彼女が好きなの
は「ガガガSP」だと知らぬまま“青春”は同士発見と有頂天に自宅へ連れ込むのだが──。

何者かになろうとして、でもなれなくて。熱量は有り余っていても、その向き先がなくて。
『ノベルライト』を筆頭にガガガSPの曲から思春期全開な若者の心とも感じられる熱量を
「ライトノベル」という形に ハマカズシ 先生が見事に落とし込んできた傑作と言えます。

“和馬”や“明日香”も巻き込んで「軽音部」そして「ラノベ部」設立に向けて動き出す
“京子”と“青春”が、起伏の激しい高校生活を一緒に乗り越えていく顛末は見所も十分。
ガガガSPの歌声を聴きながら、ページをめくりながら、共に心の底を燃やしてみませんか。

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2024年02月23日

『サイレント・ウィッチ VII 小冊子付き特装版 沈黙の魔女の隠しごと』

依空まつり 先生が贈るファンタジー作品。シリーズ9冊目は正体がバレる恐怖に怯えつつ
“モニカ”が“クロックフォード”公爵と“フェリクス”の関係について調査を進めます。
(イラスト:藤実なんな 先生)

https://kadokawabooks.jp/product/silentwitch/322311000071.html


〈偽王の笛ガラニス〉が選択を誤ったと独白する様子にどこか悲哀を感じさせる破壊作戦
の顛末。その中で“モニカ”が「沈黙の魔女」らしからぬ行動に出てしまうその様子から
抱えた矛盾に心を軋ませていることが窺えて、不安な気持ちを抱かずにはいられません。

その“モニカ”が頭を悩ませる「左手を負傷した女子生徒」を捜す“フェリクス”の執心。
彼女の不安を取り除く代わりに彼の秘密を探るよう取引を提示する“ブリジット”の手腕、
辿り着いた一つの推論には驚かされるばかりで。“メアリー”が言ったあの一言も含めて。

“モニカ”と友だちになりたい“ラウル”が見せる意外な察しの良さ、そして振るう力の
異様さにも注目しつつ、いよいよ打って出る形になる彼女の決断は吉と出るか凶と出るか。
チャットノベル形式の小話集を読んで心を和ませながら本編の続刊を待ちたいと思います。

posted by 秋野ソラ at 00:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル