2023年10月31日

『魔術探偵・時崎狂三の事件簿』

橘公司 先生が贈る大人気シリーズ「デート・ア・ライブ」のスピンオフ短編集。“狂三”
が魔術工芸品に纏わる犯罪を専門で扱う女子大生探偵となって活躍する顛末を描きます。
(イラスト:つなこ 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/201103date/322306000957.html
https://date-a-live4th-anime.com/


彩戸大学一年生の“時崎狂三”が校内にて突如女性から声を掛けられる。名は“茉莉花”、
聞けば屋敷に送られてきた脅迫状の相談に乗ってほしいとのこと。実際に屋敷で発生した
惨劇を目の当たりにした彼女は“魔弾の射手”と名乗る犯人を捜す手伝いに乗り出す──。

“茉莉花”の祖先が収集してきた魔術工芸品が紛失したことで、それを端に次々と発する
犯罪の謎を“狂三”が解決していくアプローチの仕方が爽快、痛快で面白い。“狂三”の
トリックスターなキャラクター性が遺憾なく発揮された短編はどれもサクサクと読めます。

書き下ろしの「狂三オークション」で事の発端にも関係する“折紙”の登場を楽しみつつ
“十香”の何気ない一言から魔術工芸品犯罪に隠された真相に迫る展開には驚かされます。
シリーズ化は狙えると感じましたし、他のキャラでもスピンオフできそうな気がしました。

posted by 秋野ソラ at 00:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年10月30日

『帝国第11前線基地魔導図書館、ただいま開館中』

佐伯庸介 先生が「ガガガ文庫」に初参加して贈る新作は、魔王軍との戦地に敷設された
図書館で遺物「魔導書」の兵器転用を図る連合軍部の意向に抗う司書の生き様を描きます。
(イラスト:きんし 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09453155


魔王が三か月ごとに放つ広域魔法で数々の街を吹き飛ばされ、迫る魔王軍を前にジリ貧な
人類連合。次の標的となる帝国第11前線基地で兵士の士気高揚を目的に用意された図書館
に赴く“カリア”はその運営と共に「魔導司書」として重要な役割を任されるのだが──。

図書館業務に一家言ある 佐伯 先生だからこそ姉御肌な“カリア”が示す利用者への苦言、
魔導書修復に懸ける熱意、それを使用してしまうことへの悔悟が何度も強く胸に響きます。
そんな彼女の気持ちを汲んで勇者“アリオス”が、陰になり日向になり振舞う姿が印象的。

魔導図書館を利用する兵士たちのために魔導司書として出来ることを模索する“カリア”。
任命した皇女“クレーオスター”の狙い、図書館やその書庫すら利用してあの結末を掴む
一連の流れは心躍るものがあります。この熱量、ぜひ読んで確かめてもらいたい作品です。

posted by 秋野ソラ at 01:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年10月27日

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeリュー2』

大森藤ノ 先生が贈る大人気シリーズ「ダンまち」の物語を補完するクロニクルシリーズ。
第3弾は「戦争遊戯」の時が迫るその裏側で“リュー”が過去を受け継ぐ顛末を描きます。
(イラスト:ニリツ 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815623692/
https://danmachi.com/


「星々のローカス」で剣製都市“ゾーリンゲン”に拠点を構える“アストレア”と再会を
果たした“リュー”。変わらぬ主神が変わりゆく眷族の焦りを察知して“セシル”たちに
引き合わせた、その意味を分からせるまでの過程から母娘のような愛を感じて実に印象的。

自分の正義を見つけた“リュー”だからこそわかる、未だ道を彷徨う“セシル”の気持ち。
“セシル”がなぜ【アストレア・ファミリア】の一員なのか、そこに込められた気遣いの
数々に心温まるものを感じると共に、ようやく一歩を踏み出す彼女の力強い姿に感無量で。

「黄昏の少女」「五年前にあったなんてことのない少女達の話」にて“アーディ”たちと
心を通わせる場面を見せられたからこそ本編第18巻で“ヘグニ”を前にして“リュー”が
継承した力を振るうあの戦いぶりも鮮やかに蘇るというもの。素晴らしい逸話で満足です。

posted by 秋野ソラ at 00:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年10月26日

『塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い8』

猿渡かざみ 先生が贈る青春ラブコメ。第8巻は“蓮”と“円花”が付き合っている、と
誤解している“こはる”を前に偽装交際を続ける2人の行く末を中心に描いていきます。
(イラスト:Aちき 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09453152
https://urasunday.com/title/1301


通う高校が違う“蓮”と“円花”が一緒にいる時間、思う所ある人たちが接触する機会を
増やすためとは言え、まさか「アレ」しちゃうとは。ノスタルジックな雰囲気からの急転
に驚かされつつも効果は抜群なので「アリ」で。“こはる”もテンション高めで幸せそう。

“円花”に懸想する男子が現れることで、彼女自身が整理しきれない感情や、諦観の癖と
幼馴染の距離感で拗らせた“蓮”の想いが、偽装交際を契機として在りたい形を模索する
様子はまさに思春期全開、という感じで良き展開。“蓮”が見事に漢を魅せてくれました。

「もう一つの恋の話」が盛り上がるで光る“颯太”の格好良さから“こはる”が気持ちを
上げて落として、また上げて・・・までの安定感は相変わらず。彼が“蓮”の後方彼氏面を
するかの如き所作は親友ならではという雰囲気でこれまた良きもの。次巻も楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 00:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年10月25日

『公務員、中田忍の悪徳7』

立川浦々 先生が贈る、異世界エルフと邂逅した地方公務員の道義を描く異色作。第7巻は
“忍”だけでなく“環”や“由奈”、そして“アリエル”にとって大きな転機を迎えます。
(イラスト:楝蛙 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09453151


耳島で“環”が知った異世界エルフの秘密。それを対価に彼女が挑戦した一連の顛末から
知る“忍”が己を欠陥品と公言する意味に絶句。その意思の固さを見せつけられた彼女が
どう向き合い、成長してしまった心に受け止めるのか。描かれる生々しさに圧倒されます。

インターネットから知識を得た“アリエル”が見抜いた、“由奈”自身も避けていた本質。
“環”や“アリエル”にも誤魔化しきれないあの「断章」を起点にした想いを伝えたのは
“由奈”にとって正しい道だったのか。“忍”の心に刻んだあの一言が胸中を惑わせます。

異世界エルフがいつか辿り着くという姿。いよいよ“忍”の心にも余裕が無くなってきて、
だからこそ見落としていた一つの可能性に「彼女」が気づくというのも印象深い。彼らの
答え合わせはどんな結果をもたらすか。担当編集 濱田 氏が約束を果たす時を見届けます。

posted by 秋野ソラ at 00:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル