2023年02月16日

『レプリカだって、恋をする。』

榛名丼 先生の「第29回電撃小説大賞・大賞」受賞作。オリジナルの代わりに嫌な日常を
こなす「レプリカ」が抱いた初めての恋を描くちょっと不思議な青春ラブストーリーです。
(イラスト:raemz 先生)

https://dengekibunko.jp/product/replica/322210000101.html


“素直”には「セカンド」と称する、自分と瓜二つの存在がいる。学校に行くのが億劫な
ときなど肩代わりしてもらったりする便利な存在だ。幼い頃の喧嘩で仲直りを代行させる
目的で生んだ「セカンド」の変化や機微に気づくことなく、任せきりの日々は続くが──。

踵をダメにされたローファー。どこかに行きたいという願望。隠し続けて貯めた五十円玉。
ハーフアップの髪型にする区別。「セカンド」ではない名前。レプリカにも当然ある痛覚。
あの日、文芸部に入部してきた“秋也”と“ナオ”が心通わせていく過程が実に興味深い。

“律子”の言うダブルでも、ドッペルゲンガーでもない。オリジナルがあってのレプリカ。
きっかけはどうあれ、レプリカだって当たり前のように人として生きて、恋をしてもいい。
そう読み手の心をねじ伏せてくれる、爽快感あふれる青春ラブストーリー。オススメです。

posted by 秋野ソラ at 00:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年02月15日

『スパイ教室09 《我楽多》のアネット』

TVアニメが放映中となる、竹町 先生の痛快スパイファンタジー。第9巻は14日間の休暇
として訪れた離島で『灯』のメンバーが、次なる任務へと繋がる騒動に巻き込まれます。
(イラスト:トマリ 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/202001spy/322207001298.html
https://spyroom-anime.com/


離島でバカンス。ただし集団行動する日に制約あり。“クラウス”の設けたその意図を
『灯』のメンバーが探りながら始まる初日から“ラフタニア”がぶちかましてくれます。
対抗心むきだしの“グレーテ”と張り合う様子が面白い。相変わらず罪作りな男性です。

楽しい雰囲気に影を落とす「大海賊ジャッカルの呪い」。変死体、怪現象などオカルト
じみた騒動に振り回される様子を、分断した『灯』メンバー各々の視点から描くことで
物語のパーツも上手く嵌っていく構成がお見事。“ティア”が一番割を食っているかも。

騒動の顛末は読んで確認いただくとして、今回の主眼はあくまで“アネット”。彼女が
『灯』と共に在って何を思ったか。暁闇計画、ライラット王国、最強の防諜屋“ニケ”、
不穏なキーワードを前に彼女たちがどう向き合っていくのか。続きが楽しみであります。

posted by 秋野ソラ at 00:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年02月14日

『コミュ症なクラスメイトと友達になったら生き別れの妹だった』

「彼女と俺とみんなの放送」の 高峰自由 先生が「第14回講談社ラノベ文庫新人賞・佳作」
を 永峰自ゆウ 名義で受賞して贈る、絶対バレてはいけない兄妹による青春ラブコメです。
(イラスト:かがちさく 先生)

https://lanove.kodansha.co.jp/books/2023/2/1.html


校内随一の才媛“如月”からの告白を断る“真藤”には理由がある。転校続きで居心地の
悪かった学生生活を変えようと自分を高め、「みんなの友だち」で在りたいという理由が。
そんな彼は同じクラスの“篠宮”が昔の自分みたいに一人ぼっちでいるのが心配事で──。

友だち作りが苦手な“篠宮”が実は“真藤”の妹である。とある都合で父親からはあまり
関わらないよう言及されるものの、手伝うくらいはいいだろうとついつい気に掛ける彼が
どんどん良い方向へ変わっていく彼女に好感を抱かない訳がない。これが中々のジレンマ。

“篠宮”の急な変化に周りがついてこれないこともある。悪意を向けられてしまう彼女に
“真藤”が講じる一手が頼られるのに慣れて、頼ることに慣れないあたりも実に彼らしい。
違った意味で2人は友だちで居続けることができるのか、興味深い関係が気になる所です。

posted by 秋野ソラ at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年02月13日

『ステラ・ステップ』

「落ちこぼれ天才竜医と白衣のヒナたち」から約2年半ぶりとなる 林星悟 先生の新作は
災害で疲弊した国々の代理戦争に費やされる「アイドル」に纏わる人々の運命を描きます。
(イラスト:餡こたく 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/sutesute/322209001592.html


人の感情でエネルギーを生む「共心石」が降り注ぎ、技術革新によって国々が新興し富を
奪い合う世界。人の感情を震わす少女「アイドル」を戦わせてその優劣を競う「戦舞台」
で負け無しの“レイン”は、“ハナ”との出会いを契機に戦い方を大きく左右される──。

この世界におけるアイドルの象徴たる“レイン”。本来の意味でのアイドルたる“ハナ”。
対称的な2人の邂逅によって、特に“レイン”へ好影響が生じる一方、プロデューサーが
忌避し続けてきたアイドル特有の病が話題に出ることで変わる物語の雰囲気がまず印象的。

戦争の道具としてではなく、笑顔で愛と勇気と希望を歌うアイドルとして“ハナ”と共に
“レイン”頑張っていく過程、“フレア”との因縁の対決を経て切磋琢磨していく・・・で
終わらせない引き具合が一番の興味深い要素。未来に何が待つのか気になるシリーズです。

posted by 秋野ソラ at 00:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2023年02月10日

『転生王女と天才令嬢の魔法革命6』

TVアニメが放映開始を迎えた、鴉ぴえろ 先生が贈る異世界百合ファンタジー。第6巻は
ヴァンパイアの悲願が何たるかを突き付けられた“アニス”と“ユフィ”が抗戦します。
(イラスト:きさらぎゆり 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/202001mahoukakumei/322209001609.html
https://tenten-kakumei.com/


ヴァンパイアの魔石に蓄積された経験を受け継ぐ“レイニ”の急成長ぶり。その検証の
一助とすべく彼女の亡き母“ティリス”の過去を探るうちに、彼女を知る“ルエラ”から
事実と悪意を向けられる展開で、冒頭の百合百合しい演出も吹き飛ぶいきなりの緊迫感。

「永遠」を求める“ライラナ”から色々な意味でケンカを売られた“ユフィ”。彼女でも
苦戦を強いられる戦いの中、“アニス”が選択を求められる場面と“レイニ”がその前に
問いかけた言葉が被る演出が中々に小憎い。“ユフィ”が狼狽えるのも無理はないことで。

既知の過去にとどまるより、未知の未来へ飛び込む覚悟が決まっている“アニス”ならば
手にする結末もおのずと分かるというもので。彼女のことを認めている“ティルティ”の
あの一言も印象深かったです。一区切りついた物語がどう進んでいくか、次巻も注目です。

posted by 秋野ソラ at 00:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル