西条陽 先生が描く少年少女の不健全な恋愛模様。第5巻は“早坂”と“橘”の傍を離れ
京都に移り住んだ“桐島”が鬱屈しながらも新たな人間関係を築く大学生編に突入です。
(イラスト:Re岳 先生)
【 https://dengekibunko.jp/product/nibanmenokanojo/322207000044.html 】
エーリッヒ・フロムの著書『愛するということ』によると、その本質は「与えること」に
あるという。自罰的に大学一回生を過ごす“桐島”が、アパートの隣室に住む“福田”の
優しさに救われてから「これからは自分も与えるものになろう」と心を入れ替えるが──。
やはり“浜波”の常識的なツッコミがないと話が始まらないですな、と再認識する読了感。
“遠野”に思いを寄せる“福田”を後押しする“桐島”の言動に騙されそうになる展開を
後出しジャンケンで“桐島”が色々やらかしているのがわかる話の構成にはお見事の一言。
“宮前”に対する布石もいつの間にか済んでいて、京都でもトラブルが絶えない“桐島”。
東京に残された“早坂”と“橘”が不憫でならない、という感情もないまぜにするような
怒涛の引きに、早くも波乱万丈すぎて怖いもの見たさな続刊が待ち遠しくてたまりません。
2023年01月17日
2023年01月16日
『不可逆怪異をあなたと 床辻奇譚』
古宮九時 先生が贈る新作は、命に関わる禁忌と怪異が蔓延る地方都市で、凄惨な事件に
巻き込まれた妹を救うべく闘い続ける少年の数奇な運命と出会いを描く現代伝奇作品です。
(イラスト:二色こぺ 先生)
【 https://dengekibunko.jp/product/322209000254.html 】
妹の“花乃”が自室に籠るようになって半年、“蒼汰”が登校後に目にした血塗れの校舎。
謎の人物からの電話をもとに教室へ向かうと家にいるはずの彼女がそこに、生首だけ在る。
電話越しに「この街の怪奇を百体滅ぼせば、体を取り戻す機会が来る」と言われるが──。
「血汐事件」を境に次々と変わっていく“蒼汰”の生活、床辻という街、そして日本全土。
『床辻に住むと早死にする』と流布されるのも得心がいく怪奇現象の数々に驚かされつつ、
そんな状況でも妹のために孤軍奮闘する彼の妙な逞しさと勢いの良さに惹かれていきます。
“蒼汰”が渦中に出会う、あの明朗快活な“一妃”を「人でなし」と評価せざるを得ない
話の運び方は「流石は古宮先生」と言うほかなく。彼女のお家事情にも巻き込まれた彼が
望む未来に、「床辻 よい街」と真に思える現実に辿り着くことを祈りつつ続刊希望です。
巻き込まれた妹を救うべく闘い続ける少年の数奇な運命と出会いを描く現代伝奇作品です。
(イラスト:二色こぺ 先生)
【 https://dengekibunko.jp/product/322209000254.html 】
妹の“花乃”が自室に籠るようになって半年、“蒼汰”が登校後に目にした血塗れの校舎。
謎の人物からの電話をもとに教室へ向かうと家にいるはずの彼女がそこに、生首だけ在る。
電話越しに「この街の怪奇を百体滅ぼせば、体を取り戻す機会が来る」と言われるが──。
「血汐事件」を境に次々と変わっていく“蒼汰”の生活、床辻という街、そして日本全土。
『床辻に住むと早死にする』と流布されるのも得心がいく怪奇現象の数々に驚かされつつ、
そんな状況でも妹のために孤軍奮闘する彼の妙な逞しさと勢いの良さに惹かれていきます。
“蒼汰”が渦中に出会う、あの明朗快活な“一妃”を「人でなし」と評価せざるを得ない
話の運び方は「流石は古宮先生」と言うほかなく。彼女のお家事情にも巻き込まれた彼が
望む未来に、「床辻 よい街」と真に思える現実に辿り着くことを祈りつつ続刊希望です。
2023年01月13日
『たかが従姉妹との恋。』
漫画原作、シナリオライター等も手掛ける 中西鼎 先生が「ガガガ文庫」から贈る新作は
初めてキスをした従姉と疎遠になった少年の胸に残る、甘くて苦い初恋の行方を描きます。
(イラスト:にゅむ 先生)
【 http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094531039 】
「四つ年上の従姉とキスをしたことがある」小学生の“幹隆”が友人についた嘘を現実の
ものとした中学受験を経て迎えた高校生活。今は連絡も取れない従姉“絢音”への想いを
残しつつ、新しい恋を見つけようとする彼は同級生の“凪夏”が気になり初めていて──。
“凪夏”とイイ感じに話が進んでいくかと思えば転校してきた従姉妹で双子の“伊緒”と
“眞耶”の隠しごとが、“幹隆”の抱く「好き」という気持ちの扱い方を揺れ動かしたり
筋道を立てさせたりする流れが興味深い。祖父“源一郎”の血筋が源にあるのかもですが。
“幹隆”以外も想いや願望が垣間見える中で、彼が改めて“絢音”と再会するという意味。
「誰かを愛したり愛されたりすることってね、世界を壊すことなんだよ」と彼女が言った
その意味をどこか楽しむかのような彼に未来のある好機が訪れることを願って止みません。
初めてキスをした従姉と疎遠になった少年の胸に残る、甘くて苦い初恋の行方を描きます。
(イラスト:にゅむ 先生)
【 http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094531039 】
「四つ年上の従姉とキスをしたことがある」小学生の“幹隆”が友人についた嘘を現実の
ものとした中学受験を経て迎えた高校生活。今は連絡も取れない従姉“絢音”への想いを
残しつつ、新しい恋を見つけようとする彼は同級生の“凪夏”が気になり初めていて──。
“凪夏”とイイ感じに話が進んでいくかと思えば転校してきた従姉妹で双子の“伊緒”と
“眞耶”の隠しごとが、“幹隆”の抱く「好き」という気持ちの扱い方を揺れ動かしたり
筋道を立てさせたりする流れが興味深い。祖父“源一郎”の血筋が源にあるのかもですが。
“幹隆”以外も想いや願望が垣間見える中で、彼が改めて“絢音”と再会するという意味。
「誰かを愛したり愛されたりすることってね、世界を壊すことなんだよ」と彼女が言った
その意味をどこか楽しむかのような彼に未来のある好機が訪れることを願って止みません。
2023年01月12日
『霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない3』
綾里けいし 先生が贈るく現代伝奇ミステリ。第3巻は“朔”と“藤花”の力を活用できる
と尊大ぶる「神がかりの山査子」兄妹の都合に巻き込まれる2人の顛末に触れていきます。
(イラスト:生川 先生)
【 http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094531077 】
“朔”の力で本物の神様を“冬夜”に憑かせたら“藤花”と過ごす安寧な生涯を約束する。
“冬夜”からの提案に“朔”が悩む間もなく、その妹“春日”に連れ回される地獄めぐり。
“藤花”と同じく霊能探偵もこなす“春日”が示す醜い地獄の意味を考えさせられる今巻。
何かを為す者のために何かが犠牲となる。「眼球潰し」「死者の手首」「天使の墜落」と
続く事例を視て、当事者たちの想いを感じとりながら「自分だったらどう行動するか」を
思い描いていく“朔”と“藤花”が抱く愛の覚悟、その駆け引きが時に面白く、興味深い。
「神がかりの山査子」兄妹の思惑を超えて動こうとする“朔”たちが目にする“冬夜”と
“春日”、互いが抱く想いの形。改めて問いかけられる「本物の神様」とは何かという謎。
互いが居ればそれでいい、と願う“朔”と“藤花”の逃避行に未来はあるのか。注目です。
と尊大ぶる「神がかりの山査子」兄妹の都合に巻き込まれる2人の顛末に触れていきます。
(イラスト:生川 先生)
【 http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094531077 】
“朔”の力で本物の神様を“冬夜”に憑かせたら“藤花”と過ごす安寧な生涯を約束する。
“冬夜”からの提案に“朔”が悩む間もなく、その妹“春日”に連れ回される地獄めぐり。
“藤花”と同じく霊能探偵もこなす“春日”が示す醜い地獄の意味を考えさせられる今巻。
何かを為す者のために何かが犠牲となる。「眼球潰し」「死者の手首」「天使の墜落」と
続く事例を視て、当事者たちの想いを感じとりながら「自分だったらどう行動するか」を
思い描いていく“朔”と“藤花”が抱く愛の覚悟、その駆け引きが時に面白く、興味深い。
「神がかりの山査子」兄妹の思惑を超えて動こうとする“朔”たちが目にする“冬夜”と
“春日”、互いが抱く想いの形。改めて問いかけられる「本物の神様」とは何かという謎。
互いが居ればそれでいい、と願う“朔”と“藤花”の逃避行に未来はあるのか。注目です。
2023年01月11日
『ミモザの告白3』
八目迷 先生が贈る、戸惑いの三角関係を描く物語。第3巻は“汐”に陸上部復帰を望む
“能井”、“アリス”に挑発を続ける“世良”、それぞれの感情の衝突に触れていきます。
(イラスト:くっか 先生)
【 http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094531046 】
“汐”は陸上部に戻ってきて当然、という思い上がりも甚だしい“能井”。そんな心情を
知った上で吹っ掛けられた勝負に臨む“汐”の強い意志と容赦無さが後腐れの無い結末を
導けたのだと思うと得心がいきます。その努力を信じる“咲馬”も安堵したことでしょう。
“汐”の今の姿が気に入らない“アリス”。不機嫌な理由を「汐が好きだったからだ」と
図星を突いた“世良”。彼がそのことを知っていた理由を周囲の人々に追究し続けていく
彼女の疑念が自身の立場を貶め、自己崩壊していく展開が目も当てられないほど痛々しい。
“汐”が抱く“咲馬”への好意。頑張ったお祝いついでにその心の深層に触れていく彼は
どんな思いを抱くのか。“世良”の思惑通りに落ちるところまで落ちきった“アリス”に
本当の意味での救いはあるのか。それぞれの複雑な心情も窺いつつ続きの刊行を待ちます。
“能井”、“アリス”に挑発を続ける“世良”、それぞれの感情の衝突に触れていきます。
(イラスト:くっか 先生)
【 http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094531046 】
“汐”は陸上部に戻ってきて当然、という思い上がりも甚だしい“能井”。そんな心情を
知った上で吹っ掛けられた勝負に臨む“汐”の強い意志と容赦無さが後腐れの無い結末を
導けたのだと思うと得心がいきます。その努力を信じる“咲馬”も安堵したことでしょう。
“汐”の今の姿が気に入らない“アリス”。不機嫌な理由を「汐が好きだったからだ」と
図星を突いた“世良”。彼がそのことを知っていた理由を周囲の人々に追究し続けていく
彼女の疑念が自身の立場を貶め、自己崩壊していく展開が目も当てられないほど痛々しい。
“汐”が抱く“咲馬”への好意。頑張ったお祝いついでにその心の深層に触れていく彼は
どんな思いを抱くのか。“世良”の思惑通りに落ちるところまで落ちきった“アリス”に
本当の意味での救いはあるのか。それぞれの複雑な心情も窺いつつ続きの刊行を待ちます。