2022年12月30日

『Unnamed Memory -after the end-II』

古宮九時 先生が贈る大ヒットファンタジー。世界の理から外れた王と魔女のその後を描く
第2巻はファルサス史上最悪の王と関わる所から始まる“オスカー”たちの話を綴ります。
(イラスト:chibi 先生)

https://dengekibunko.jp/product/unnamed/322208000022.html
https://unnamedmemory.com/


不老であって不死ではない。何気なくその意味を思考する“オスカー”が実際に試行する
ことになる小国「アンネリ」での顛末。“リースヒェン”の選択を見守る姿から彼がただ
“ティナーシャ”を“ティナーシャ”だから愛していることが伝わってくるのが素敵です。

花嫁衣裳を拵えるなど微笑ましく新鮮な2年間の新婚生活を経て2人が訪れた、東の大陸
にある強国「セーロン」。その王子“アリスティド”に好意を寄せられるあたり男運には
難ありと言うしかない“ティナーシャ”が示す「王の魔女」としての不変の愛がまた素敵。

「イクレム」であの本に翻弄される“フィレウス”と命運を共にするはずの弟“セノワ”。
“オスカー”が逸脱者、“ティナーシャ”が魔女として彼らに介入する顛末に哀愁と希望
がないまぜになっていて印象深い。「UM」アニメ化を祝いながら、2人の足跡を追います。

posted by 秋野ソラ at 00:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年12月29日

『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録IV』

ロケット商会 先生が贈るアクションファンタジー。第4巻は聖女計画の本格始動に向けて
発動される第二王都奪還作戦に内部工作員として“ザイロ”たちが容赦なく投入されます。
(イラスト:めふぃすと 先生)

https://dengekibunko.jp/product/yushakei/322207000024.html
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_AM19202963010000_68/


まず潜入。“ザイロ”に同行する“フレンシィ”が彼の与り知らぬ所で“パトーシェ”と
良き対抗意識を築いていて微笑ましい。“ジェイス”と“ニーリィ”の絆と覚悟が会話を
通じて都度伝わってくるのが印象深い。“ライノー”の異名と経歴が見えてくる点も注目。

続いて工作。“ドッタ”の副官に就いた“トリシール”の教育ぶりが面白い。同様に聖女
“ユリサ”へ“ツァーヴ”が発破をかけたことが後々のアレに繋がったのかと思うと実に
興味深い。“ベネティム”が裏工作のためについた嘘の代償が高くつきそうで気になる所。

そして総力戦。“ノルガユ”の聖印兵器、“タツヤ”の戦斧、“テオリッタ”が出す聖剣。
勇者らしい戦い方と犠牲に圧倒されながら、今回の顛末として“アバドン”が打った真の
布石の不穏さに慄く引き具合。聖女計画が人類に一体何をもたらすか、続きを見届けます。

posted by 秋野ソラ at 00:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年12月28日

『榮国物語 春華とりかえ抄 七』

一石月下 先生が贈る男女逆転中華譚。第7巻は“莉珠”の母懐妊を機に噴き出した陰謀に
宮廷中が巻き込まれ、入れ替わりの件が暴露された“春蘭”と“春雷”が覚悟を決めます。
(イラスト:ノクシ 先生)

https://lbunko.kadokawa.co.jp/product/shunkatorikae/322003000819.html


「とりかえばや」モノで最大の山場となるバレたタイミングが悪すぎて“春蘭”と“春雷”
には耐え忍んでほしいと願う一方、そこからの流れ読んで動く“秋明”の穏やかならざる
雰囲気から最悪の結末を受け止める覚悟を決めなければならないかと諦観すら感じる展開。

代用がきく関係性か否か。“秋明”の示した答えを“春蘭”なりに受け止め、導いた解を
“海宝”と、そして“春雷”と共有し、道を切り開いていこうとする覚悟に圧倒されます。
糾弾する者たちに対して、これまでに築いてきた「実績」が盾になる攻め手には惚れ惚れ。

“白水”が示す最大の悪意に打ち勝つ鍵となる人物が、“秋明”にとっても意外な結末を
もたらしてくれる話運びは爽快。“海宝”もよくぞここまで待ったものです。“春雷”も
含めて希望ある未来の兆しも窺えて大満足です。無事の完結を心よりお祝い申し上げます。

posted by 秋野ソラ at 00:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年12月27日

『青春ブタ野郎はマイスチューデントの夢を見ない』

鴨志田一 先生が贈る青春ストーリー。シリーズ第12冊目は“透子”から思春期症候群を
与えられた“紗良”と“麻衣”に迫る危機を巡り“咲太”が聖夜に色めく街を奔走します。
(イラスト:溝口ケージ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/aobuta/322105000008.html
https://ao-buta.com/


「霧島透子を探せ」「麻衣さんが危ない」。2年前に刊行された11巻を読み返すと確かに
「彼」はそう言っていたし、“透子”と「#夢見る」の話はまだ終わってない、と再認識
しつつ、意味ありげな素ぶりを見せる“紗良”が先触れなのかを見定める過程が興味深い。

「思春期症候群を治さないでください」。そう宣言する“紗良”が“咲太”を塾の講師と
することにこだわる理由から探りを入れていく彼の強かさは色々と先輩感をにじませます。
試される彼女もさることながら、そのとばっちりを受ける“理央”には同情を禁じ得ない。

「姫路さん、二十四日は予定空いてる?」。“咲太”が予定を確認して臨んだクリスマス
デートが意外な方向へ転がっていく展開には悲喜こもごもあって楽しませてもらいました。
幸せな時間を噛みしめているはずの彼と“麻衣”に何の差があったのか、続きに注目です。

posted by 秋野ソラ at 07:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年12月26日

『アストレア・レコード3 正邪決戦 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 英雄譚 小冊子付き特装版』

スマホRPG「ダンまち〜メモリア・フレーゼ〜」周年イベントの内容を 大森藤ノ 先生自ら
加筆修正して書籍化。第3巻はオラリオの皆が総出で最大悪、絶対悪との決着に臨みます。
(イラスト:かかげ 先生 キャラクター原案:ヤスダスズヒト 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815617554/


人として守るべき正しい道。私欲を捨て、公共のためにすること。「義」に含まれる意味
を紐解くと正義の尖兵たる“アリーゼ”だけでなく、“エレボス”たちにもその軸となる
条理を心に刻んでいることが分かる。まさに信じる正義のぶつかり合いが印象に残る今巻。

“フィン”の布石でどうにか堪えるオラリオが巻き返す契機となるあの勝鬨に胸を熱くし、
“リオン”の宣誓と突き進む道に対し絶対悪が示したありうる未来の一つに切なさを覚え、
“アストレア”が裁いた“エレボス”の悪と最後の受け答えの内容に驚嘆するばかりです。

小冊子の短編まで読み終えて1巻を読み返すとプロローグで馳せる想いも染み渡りますし、
あとがきで英断を迫った担当編集氏と、腹を括った 大森 先生には感謝の念が絶えません。
託された「英雄」の歩み。蒔かれた「悪」の残滓。本編で引き続き追っていきたい所です。

posted by 秋野ソラ at 00:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル