2022年10月28日

『ビブリオフィリアの乙女たち』

宮田眞砂 先生先生が贈る新作は、本を読んだ人の記憶を読み取れる文学少女と識字能力に
障害を持つ探偵少女が、図書館で読んだある本を巡る謎に二人三脚で臨むミステリーです。
(イラスト/切符 先生)

https://www.seikaisha.co.jp/information/2022/09/26-post-bib.html


「話を読んで」と“文詠”に頼む“花奏”は物語が大好きだけど文字の読み書きに障害の
ある少女。“花奏”が今回興味を示したのは森鴎外の『舞姫』。学園の人気者“真壁”と
“文詠”がイチャイチャしていたという噂の発端となる本だから気になったと言うが──。

『舞姫』の原文、現代語訳を並べながら“文詠”の「行間を読む」能力を演出する描写が
まず印象的。そこから現れる「黒いコートの男」に纏わる話が、虚構と現実を彷徨うかの
ように“文詠”たちを翻弄していく展開が「新本格ミステリ」を謳うのも得心がいきます。

次々と明らかになる重い事実。事件の犯人が抱いた修羅の心。物語になぞらえて対象者の
心情を描きつつ、その心を動かすために“文詠”たちが選ぶ言葉も物語や、作者の人物像
から紡ぎ出していく構成が興味深い。文学好きな方には特にお薦めしておきたい作品です。

posted by 秋野ソラ at 00:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル