2022年10月10日

『君と紡ぐソネット 〜黄昏の数学少女〜』

暁社夕帆 先生の「第12回講談社ラノベ文庫新人賞・優秀賞」受賞作。数学を得意とする
女子に憧れる高校三年生の男子が数奇な縁で数学を好きになっていく異色のラブコメです。
(イラスト:フライ 先生)

https://lanove.kodansha.co.jp/books/2022/10/2.html


理系なのに数学が苦手な“数馬”。受験を前に赤点常連な彼を見かねた隣席の“有理”は
数学の神様がいるという神社に参拝することを提案する。数学の女王とも称される彼女の
言葉に従い神頼みをしてみると「数学が得意になりたい?」という女の子の声がして──。

幽霊中学生にしか見えない“環”に導かれ受験数学の問題を回答する力を“数馬”が身に
つけていく過程、「自分より数学ができる人としか付き合わない」という“有理”が彼の
急激な変化に合わせて見せる機微、まさにサクセスストーリーを予感させる前半の話運び。

後半で物語に暗雲を漂わせる“圏”が明かす大切な絆、戻れない過去。すべてを理解した
“数馬”がその想いに東大受験を通じて応えていく姿から“環”と共に数学好きとなった
ことを印象づける結び方も好感触。ソネットに託された意味もぜひ感じてほしい物語です。

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2022年10月07日

『六畳間の侵略者!? 41』

健速 先生が贈る人気シリーズ。通算43冊目は六畳間の面々が総出でフォルトーゼへ向かい
現地で様々な関心を集めながら、“ラルグウィン”たちを一網打尽にすべく動き始めます。
(イラスト:ポコ 先生)

https://firecross.jp/hjbunko/product/1562


フォルトーゼへの影響を避けるため、何もせずこの星を去った“孝太郎”に対する熱烈な
歓迎ムード。“エルファリア”がけしかけた部分もありますけど、国民性、というよりは
それだけ彼を英雄として讃えているのが伝わってくる現象です。面白い一面でもあります。

茶目っ気を見せる“エルファリア”が掴んだ“ラルグウィン”たちの拠点を強襲する局面
においては“ルース”が水を得た魚のように“孝太郎”たちと戦う姿が見られて実に熱い。
総合力、分析力に長けた彼女だからこその見せ場の数々はまさに見どころ満載というもの。

対する“グレバナス”もやり返すだけの策は持ちつつ、その手段がいよいよ人道に反する
ところまで伸びきった点から技術とその行使に関わる人間の資質がより問題となった今巻。
悩みが増えた“孝太郎”を“エルファリア”たちがどう後押しするか、次巻も楽しみです。

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2022年10月06日

『見上げるには近すぎる、離れてくれない高瀬さん』

「ただ制服を着てるだけ」の 神田暁一郎 先生が贈る新作は、低身長を理由に好きな女子
から振られた経験を持つ少年と、妙に彼を構う高身長の少女が織り成す青春ラブコメです。
(イラスト:たけの このよう。 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815616304/


「自分より背の低い男子は無理」152cmの“下野”はその言葉に傷つき、活動的な性格を
消極的で一匹狼に変えてしまうほど劣等感を抱く中学二年生。そんな彼によく声を掛ける
少女“高瀬”の身長は172cm。惨めさが募る身長差だけに放っておいてほしい彼だが──。

単に「いいひと」なだけかと思いきや、“下野”に話しかけたタイミングや小学校時代の
話にまで言及してくる“高瀬”の思わせぶりな態度。流石の彼も心を解きほぐされるかと
思いきやここでも身長差がわだかまりを生んでしまうのが思春期の頃もあって実に切ない。

“高瀬”が“下野”にこだわる理由。つい八つ当たりじみた対応に及んだ“下野”がその
思いがけない真実を知ったとき「勇気」を持つことができるか。描かれる彼の葛藤と機微
についてぜひ目で追ってほしいと思います。爽やかな読了感が味わえる本作、お薦めです。

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2022年10月05日

『高嶺の花には逆らえない2』

冬条一 先生が贈る、ヒロインたちが暗躍する新感覚ラブコメ。第2巻は“あいり”との
デートを夢見る“葉”が資金調達のためバイトに精を出す所から新たな火種が生まれます。
(イラスト:ここあ 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094530902


身だしなみを整えるのも、デートに出かけるにもお金が要る。ということでファミレスの
アルバイトに臨む“葉”がのっけからババを引きそうになる展開と、その裏で巡らされる
謀略と駆け引きが驚きの連続。“あいり”の攻勢が功を奏するか、注目の展開が続きます。

焦りを覚えずにはいられない“千鶴”が、けれども自身の決意を貫き通そうとする姿には
称賛するしかなくて。それでも挫けそうな心を“美紀”が激励するあの一言に痺れました。
彼女の母親も事態好転に寄与するものの、隠したくなるのも納得の曲者なのがまた面白い。

“新”の“あいり”に対する執着が益々の熱を帯びてくる中で、彼女が彼に課した最後の
約束がいよいよ危険球っぽく見える引きが非常に気になります。“千鶴”も“葉”に対し
願い事を叶えてもらって予断を許さない流れですし、揺れ動く彼の心の行方も要注目です。

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2022年10月04日

『王様のプロポーズ3 瑠璃の騎士』

橘公司 先生が贈る新世代最強の初恋を描くファンタジー。第3巻は“瑠璃”に本家から
婚姻決定の知らせが舞い込み、“彩禍”も巻き込んで不夜城家の秘密に触れていきます。
(イラスト:つなこ 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/202109propose/322205000950.html


あれだけ“彩禍”に熱を上げる“瑠璃”が本家へ戻った途端に結婚、中途退学すると宣言。
この急展開に〈虚の方舟〉学園長も務める不夜城家の当主“青緒”が何を仕掛けたか探る
ために“無色”が乗り込む、のは順当としてそこが「女子高」というのは文句ない話運び。

不自然な言動を示す“瑠璃”にショック療法で臨む“無色”の肝の据わり具合が面白くて。
“青緒”の思惑に気づいた“黒衣”が示す本音にしっかり向き合う彼の言動が凛々しくて。
その彼に“瑠璃”がどんな覚悟をもって今に至ったかを知ることが出来たのも印象深くて。

不夜城家の「婚礼の儀」が示す真意を知った“無色”、そして“瑠璃”が“青緒”に対し
投げかけた想いの数々は熱量に溢れていて見どころの連続。結果として“瑠璃”にも色々
誤魔化しが効かなくなってきた上でのあのラストも良かった。続きも引き続き楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 00:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル