知念実希人 先生が贈る新感覚メディカル・ミステリー。長編シリーズ8冊目は度重なる
臓器強奪事件に天医会総合病院も巻き込まれ、解決に向けその謎を“鷹央”が診断します。
(イラスト/いとうのいぢ 先生)
【 https://www.shinchobunko-nex.jp/books/180246.html 】
脳死状態の診断を受けた“由佳”が生前、臓器提供の意思を示していたことから行われた
腎臓摘出。その臓器が天医会総合病院から盗まれたことで“鷹央”の出番となる訳ですが
臓器提供に関するプロセス、医師や業者の関わり方等に知見を得られるのがまず印象深い。
なぜ臓器を強奪する意味があるのか。天医会総合病院での事件を収めるだけでは終わらぬ
一連の事件。“鷹央”のことを「ホルスの目」と揶揄した「あの犯人」の意図を汲み取り
彼女が着実に結果へと結びつけていく流れは流石。それにしても病院社会はげに恐ろしき。
中途半端な知識に踊らされ、他人の尊厳を傷つけ、その命にまで手を出す愚者を表す言葉
「生命の略奪者」。そこに“鷹央”の、医療従事者としての憤りが強く表れていることを
感じます。エピローグでの彼女の発言が残す余韻も前向きで、良い読了感を味わいました。