知念実希人 先生が贈る新感覚メディカル・ミステリー。長編シリーズ8冊目は度重なる
臓器強奪事件に天医会総合病院も巻き込まれ、解決に向けその謎を“鷹央”が診断します。
(イラスト/いとうのいぢ 先生)
【 https://www.shinchobunko-nex.jp/books/180246.html 】
脳死状態の診断を受けた“由佳”が生前、臓器提供の意思を示していたことから行われた
腎臓摘出。その臓器が天医会総合病院から盗まれたことで“鷹央”の出番となる訳ですが
臓器提供に関するプロセス、医師や業者の関わり方等に知見を得られるのがまず印象深い。
なぜ臓器を強奪する意味があるのか。天医会総合病院での事件を収めるだけでは終わらぬ
一連の事件。“鷹央”のことを「ホルスの目」と揶揄した「あの犯人」の意図を汲み取り
彼女が着実に結果へと結びつけていく流れは流石。それにしても病院社会はげに恐ろしき。
中途半端な知識に踊らされ、他人の尊厳を傷つけ、その命にまで手を出す愚者を表す言葉
「生命の略奪者」。そこに“鷹央”の、医療従事者としての憤りが強く表れていることを
感じます。エピローグでの彼女の発言が残す余韻も前向きで、良い読了感を味わいました。
2022年09月09日
2022年09月08日
『砂の上の1DK』
「終末なにしてますか〜?」シリーズの 枯野瑛 先生が贈る新作は、産業スパイの青年が
潜入したある施設で研究されていた未知の細胞を巡って数奇な運命を辿る顛末を描きます。
(イラスト:みすみ 先生)
【 https://sneakerbunko.jp/product/1dk/322205000214.html 】
産業スパイの“江間”は、ある研究所からの依頼にきな臭さを感じて辞退する。その直後、
別の組織による破壊工作が行われたその場所で旧知の少女が巻き込まれていることを知る。
組織に目をつけられるのを覚悟で救出するものの、少女の様子はいつもと違うようで──。
“沙希未”であって“沙希未”ではない。そんな状態の彼女を“アルジャーノン”と呼ぶ
“江間”も中々のものですが、その正体ゆえの言動を見せる彼女もまた刹那的で切なさを
覚えずにはいられません。“孝太郎”が分かりやすい、いい位置に居たのが印象深いです。
“アルジャーノン”と有限の時間を過ごした上で“江間”がらしくない行動に至った顛末。
冒頭で、自身のことを部外者と独りごちた「彼女」の言葉が思い返される結末を踏まえて
「彼女」が新たな物語の関係者となる未来があってもいいのではないかと思った次第です。
潜入したある施設で研究されていた未知の細胞を巡って数奇な運命を辿る顛末を描きます。
(イラスト:みすみ 先生)
【 https://sneakerbunko.jp/product/1dk/322205000214.html 】
産業スパイの“江間”は、ある研究所からの依頼にきな臭さを感じて辞退する。その直後、
別の組織による破壊工作が行われたその場所で旧知の少女が巻き込まれていることを知る。
組織に目をつけられるのを覚悟で救出するものの、少女の様子はいつもと違うようで──。
“沙希未”であって“沙希未”ではない。そんな状態の彼女を“アルジャーノン”と呼ぶ
“江間”も中々のものですが、その正体ゆえの言動を見せる彼女もまた刹那的で切なさを
覚えずにはいられません。“孝太郎”が分かりやすい、いい位置に居たのが印象深いです。
“アルジャーノン”と有限の時間を過ごした上で“江間”がらしくない行動に至った顛末。
冒頭で、自身のことを部外者と独りごちた「彼女」の言葉が思い返される結末を踏まえて
「彼女」が新たな物語の関係者となる未来があってもいいのではないかと思った次第です。
2022年09月07日
『神は遊戯に飢えている。5』
TVアニメ化企画が進行中となる、細音啓 先生の人類VS神々の至高のファンタジー頭脳戦。
第5巻は“フェイ”たちが「神々の遊び」の進行を妨げる者の可能性を探りはじめます。
(イラスト:智瀬といろ 先生)
【 https://mfbunkoj.jp/product/kami_to_game/322203002003.html 】
「神樹の実バスケットボール」に仕掛けられた、人間の固定概念を悉く突いてくる作戦に
舌を巻くばかり。人間が陥る窮地を前に、まさに切り札として活躍する“フェイ”たちの
振舞いには安心感すら覚えます。“レーシェ”もこれまでの鬱憤を晴らせたようで何より。
そんな“フェイ”たちの挑むゲームから爪弾きにされた“ウロボロス”が明かしてくれた
謎の一端。神々も、そして人間も一枚岩ではないことをようやく窺い知ることができます。
「インターミッション」による挿話の数々が見逃せない場面ばかりだったという印象です。
そして新たに仕掛けてきた“ポセイドン”が好み全開の遊戯に、“フェイ”も油断大敵と
肝に銘じたことでしょう。こちらも憎めないキャラの神で今後の動向が楽しみ。ラストで
得られた勝利報酬に粋な要素を感じつつ、彼らの行先にあるものを見届けたいところです。
第5巻は“フェイ”たちが「神々の遊び」の進行を妨げる者の可能性を探りはじめます。
(イラスト:智瀬といろ 先生)
【 https://mfbunkoj.jp/product/kami_to_game/322203002003.html 】
「神樹の実バスケットボール」に仕掛けられた、人間の固定概念を悉く突いてくる作戦に
舌を巻くばかり。人間が陥る窮地を前に、まさに切り札として活躍する“フェイ”たちの
振舞いには安心感すら覚えます。“レーシェ”もこれまでの鬱憤を晴らせたようで何より。
そんな“フェイ”たちの挑むゲームから爪弾きにされた“ウロボロス”が明かしてくれた
謎の一端。神々も、そして人間も一枚岩ではないことをようやく窺い知ることができます。
「インターミッション」による挿話の数々が見逃せない場面ばかりだったという印象です。
そして新たに仕掛けてきた“ポセイドン”が好み全開の遊戯に、“フェイ”も油断大敵と
肝に銘じたことでしょう。こちらも憎めないキャラの神で今後の動向が楽しみ。ラストで
得られた勝利報酬に粋な要素を感じつつ、彼らの行先にあるものを見届けたいところです。
2022年09月06日
『想いの重なる楽園の戦場。そしてふたりは、武器をとった』
「転生王女と天才令嬢の魔法革命」の 鴉ぴえろ 先生が贈る新作は、荒廃した世界の中で
竜に守られる千年都市の巫子を目指す少女たちが繰り広げる百合バトルファンタジーです。
(イラスト:みきさい 先生)
【 https://fantasiabunko.jp/product/202208futaribuki/322204000983.html 】
巫子を目指す努力家“レーネ”、都市の外へ思いを馳せる天才肌“セスカ”、都政を担う
長の娘“ルルナ”、過去に巫子を輩出してきた名家の娘“ジョゼット”。守護竜から力を
預かる巫子になる理由はそれぞれに、4人の少女が次代の巫子を選ぶ戦いの場に臨む──。
展開がとにかく驚くほど早い。“セスカ”に負け続けの“レーネ”は勝てるのか、という
創意工夫にあふれた戦いぶりを描きつつ、女の子同志の睦まじいやりとりや、その関係を
思いがけない形で崩れていく展開、と先生の「好き」が満載の展開に安心感すら覚えます。
巫子になることが大事なのではなく、なってからが軸となるこの物語。千年都市の秘密を
どう受け止め行動していくか。“レーネ”の切なる想いが報われてくれることを願いつつ、
いま一番難しい状況下におかれた“セスカ”に注目しながら、続きに目を向けたい所です。
竜に守られる千年都市の巫子を目指す少女たちが繰り広げる百合バトルファンタジーです。
(イラスト:みきさい 先生)
【 https://fantasiabunko.jp/product/202208futaribuki/322204000983.html 】
巫子を目指す努力家“レーネ”、都市の外へ思いを馳せる天才肌“セスカ”、都政を担う
長の娘“ルルナ”、過去に巫子を輩出してきた名家の娘“ジョゼット”。守護竜から力を
預かる巫子になる理由はそれぞれに、4人の少女が次代の巫子を選ぶ戦いの場に臨む──。
展開がとにかく驚くほど早い。“セスカ”に負け続けの“レーネ”は勝てるのか、という
創意工夫にあふれた戦いぶりを描きつつ、女の子同志の睦まじいやりとりや、その関係を
思いがけない形で崩れていく展開、と先生の「好き」が満載の展開に安心感すら覚えます。
巫子になることが大事なのではなく、なってからが軸となるこの物語。千年都市の秘密を
どう受け止め行動していくか。“レーネ”の切なる想いが報われてくれることを願いつつ、
いま一番難しい状況下におかれた“セスカ”に注目しながら、続きに目を向けたい所です。
2022年09月05日
『転生王女と天才令嬢の魔法革命5』
2023年のTVアニメ化が決定した、鴉ぴえろ 先生が贈る異世界百合ファンタジー。第5巻は
東部に眠る魔石を求めて“アニス”と“ユフィ”が新婚旅行のような領地視察に臨みます。
(イラスト:きさらぎゆり 先生)
【 https://fantasiabunko.jp/product/202001mahoukakumei/322203002021.html 】
【 https://tenten-kakumei.com/ 】
引いたりすることはあるものの“アニス”にぐいぐいと攻める“ユフィ”の基本姿勢には
女王として見ても安定感が備わっているように見受けられます。時にはやり返そうとする
“アニス”が結局やり込められてしまう掛け合いもニヨニヨしながら見守りたくなります。
“アニス”が気にかけたくなる“ユフィ”と“カインド”との関係。理性で割り切れる所、
感情で割り切れない所、三者三様に思いを示すことで改めて見えてくる話もあり興味深い
やり取りで。ちゃんと気遣いできて、大切なものは譲らない“アニス”に好感を抱きます。
その“アニス”もまた“アル”と気懸かりを残す中、彼の立場に寄り添って話してくれる
人物の登場と意見交換にどれだけ助けられたのだろうか思うと、“ユフィ”の時と同様に
印象に残るやり取りでありました。“アル”の幸ある未来を願いながら、次巻を待ちます。
東部に眠る魔石を求めて“アニス”と“ユフィ”が新婚旅行のような領地視察に臨みます。
(イラスト:きさらぎゆり 先生)
【 https://fantasiabunko.jp/product/202001mahoukakumei/322203002021.html 】
【 https://tenten-kakumei.com/ 】
引いたりすることはあるものの“アニス”にぐいぐいと攻める“ユフィ”の基本姿勢には
女王として見ても安定感が備わっているように見受けられます。時にはやり返そうとする
“アニス”が結局やり込められてしまう掛け合いもニヨニヨしながら見守りたくなります。
“アニス”が気にかけたくなる“ユフィ”と“カインド”との関係。理性で割り切れる所、
感情で割り切れない所、三者三様に思いを示すことで改めて見えてくる話もあり興味深い
やり取りで。ちゃんと気遣いできて、大切なものは譲らない“アニス”に好感を抱きます。
その“アニス”もまた“アル”と気懸かりを残す中、彼の立場に寄り添って話してくれる
人物の登場と意見交換にどれだけ助けられたのだろうか思うと、“ユフィ”の時と同様に
印象に残るやり取りでありました。“アル”の幸ある未来を願いながら、次巻を待ちます。