羊太郎 先生が贈る、教官騎士に導かれし王子の英雄譚。第5巻は“エンデア”によって
絶望の淵に立たされた世界で王として覚悟を見せる“アルヴィン”に“シド”が応えます。
(イラスト:遠坂あさぎ 先生)
【 https://fantasiabunko.jp/product/202012fairyknight/322204000986.html 】
“アルヴィン”に対して抱く“エンデア”の憎悪。それに困惑する“アルヴィン”の言動。
すれ違いの根源には先人たちが残した禍根がある、と分かってからのやるせない気持ちは
“シド”にどんな感情を抱かせたのか。一人を除いて悲痛なまでに残酷な展開が続きます。
「野蛮人」と呼ばれることを甘んじて受けた“シド”。“アルスル”の騎士として、その
志を全うするために選んだ結果であることが分かる過去の経緯も、今ここに在る訳も含め
“シド”の生き様が際立ちます。羊太郎 先生は男性キャラを格好良く描くのも秀逸です。
“テンコ”たちが新たな騎士道精神を魅せてくれる中で、残された時間の限りを尽くして
“シド”が戦い抜いた末に辿り着く結末。ぜひ見届けてほしいと思える作品です。完結を
祝うと共に『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』の続刊、そして新作にも期待したい所です。
2022年09月30日
2022年09月29日
『天才王子の赤字国家再生術12〜そうだ、売国しよう〜』
鳥羽徹 先生が贈る弱小国家運営譚。第12巻は帝国の皇位継承を巡る政争決着に一役買った
“ウェイン”がナトラ国内にはびこるフラム人による独立国家樹立の気運と向き合います。
(イラスト:ファルまろ 先生)
【 https://ga.sbcr.jp/product/9784815616410/ 】
【 https://tensaiouji-anime.com/ 】
“ニニム”が“ウェイン”を支える身であり続ける理由。その背景を幼き日の2人が邂逅
したところから深堀していく描写と、彼女を担ぎ上げようとするフラム人たちとの温度差。
行き着く先が不幸にしかならないのでは、と不安を覚えずにはいられない展開にやきもき。
帝国の次はナトラかと揺れ動く世界情勢に拍車をかけるのが“フラーニャ”の兄に対する
宣戦布告。彼女の胸中に火種が燻ぶっていただけに、持論を投げかけ合うやり取りを見て
「ついにこの時が来たか」と思う一方、“ウェイン”の余裕な姿勢が不気味にも映る訳で。
諸外国から見ても今後の動向が注視されるナトラに突き付けられた究極の選択。さすがの
“ウェイン”でも一考を要する事態に気を揉む“ニニム”が目の当たりにする衝撃の展開。
彼の「大事なもの」になる、という宣言は果たせるか。佳境を迎える話の行方に注目です。
“ウェイン”がナトラ国内にはびこるフラム人による独立国家樹立の気運と向き合います。
(イラスト:ファルまろ 先生)
【 https://ga.sbcr.jp/product/9784815616410/ 】
【 https://tensaiouji-anime.com/ 】
“ニニム”が“ウェイン”を支える身であり続ける理由。その背景を幼き日の2人が邂逅
したところから深堀していく描写と、彼女を担ぎ上げようとするフラム人たちとの温度差。
行き着く先が不幸にしかならないのでは、と不安を覚えずにはいられない展開にやきもき。
帝国の次はナトラかと揺れ動く世界情勢に拍車をかけるのが“フラーニャ”の兄に対する
宣戦布告。彼女の胸中に火種が燻ぶっていただけに、持論を投げかけ合うやり取りを見て
「ついにこの時が来たか」と思う一方、“ウェイン”の余裕な姿勢が不気味にも映る訳で。
諸外国から見ても今後の動向が注視されるナトラに突き付けられた究極の選択。さすがの
“ウェイン”でも一考を要する事態に気を揉む“ニニム”が目の当たりにする衝撃の展開。
彼の「大事なもの」になる、という宣言は果たせるか。佳境を迎える話の行方に注目です。
2022年09月28日
『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件7』
2023年にTVアニメ放送を迎える、佐伯さん 先生が贈る甘く焦れったい恋の物語。第7巻は
文化祭に向けて“周”と“真昼”が周囲から目を惹かれることに互いに葛藤していきます。
(イラスト:はねこと 先生)
【 https://ga.sbcr.jp/product/9784815612016/ 】
【 https://otonarino-tenshisama.jp/ 】
努めて紳士に振舞う“周”の心理をわかった上でつい「おねだり」してしまう“真昼”の
可愛らしさたるや。口絵で魅せた彼女の姿を見れば、「メイド喫茶」とクラスの文化祭の
出し物がと決まってから、見世物にされることを嫌悪する彼の心情も分かるというもので。
“真昼”の隣に自信をもって立てるよう研鑽し続けている“周”も成果は出ているご様子。
好感の持てる男子、として女子たちから奇異の目に晒されている彼を鼻高々に思いつつも
恋人として独占欲をあらわにする彼女がこれまた。律儀に返す彼の反応も熱々でご馳走様。
家族ぐるみで良い関係が築けている“周”と“真昼”。一方でどうにもならない理由から
“樹”の両親と“千歳”にしこりを残す関係にあるのが切ない。何とか切り返してほしい
と思いながら、ラストで緊張感を漂わせる引き具合。次巻の動向も目が離せないようです。
文化祭に向けて“周”と“真昼”が周囲から目を惹かれることに互いに葛藤していきます。
(イラスト:はねこと 先生)
【 https://ga.sbcr.jp/product/9784815612016/ 】
【 https://otonarino-tenshisama.jp/ 】
努めて紳士に振舞う“周”の心理をわかった上でつい「おねだり」してしまう“真昼”の
可愛らしさたるや。口絵で魅せた彼女の姿を見れば、「メイド喫茶」とクラスの文化祭の
出し物がと決まってから、見世物にされることを嫌悪する彼の心情も分かるというもので。
“真昼”の隣に自信をもって立てるよう研鑽し続けている“周”も成果は出ているご様子。
好感の持てる男子、として女子たちから奇異の目に晒されている彼を鼻高々に思いつつも
恋人として独占欲をあらわにする彼女がこれまた。律儀に返す彼の反応も熱々でご馳走様。
家族ぐるみで良い関係が築けている“周”と“真昼”。一方でどうにもならない理由から
“樹”の両親と“千歳”にしこりを残す関係にあるのが切ない。何とか切り返してほしい
と思いながら、ラストで緊張感を漂わせる引き具合。次巻の動向も目が離せないようです。
2022年09月27日
『小説が書けないアイツに書かせる方法』
アサウラ 先生のオリジナル作品が「電撃文庫」に初登場。ED(勃起不全)に悩む新人賞
受賞作家の少年が、ある少女からの脅迫を契機に次回作が書けない事実とも向き合います。
(イラスト:橋本洸介 先生)
【 https://dengekibunko.jp/product/322202000064.html 】
とある小説新人賞で優秀賞を飾った月野シズクこと“月岡零”は高校一年生の男子である。
期待の新人作家だが、新作は出ないまま一年が過ぎる。執筆に迷走する彼の前に謎の女性
“琥珀”が現れ、彼女の考えた小説を書かないと周囲にシズクだとばらすと脅されて──。
“雫”が書けない理由が「勃たないこと」も、それに理解を示す彼の姉妹も「電撃文庫」
としては攻めたテーマであることがまず印象深い。下ネタに寛容な“琥珀”もヒロインと
してははっちゃけた設定で、読み進めていくとわかるその下地を培った家族関係も特徴的。
本作のタイトルがダブルミーニングになっているのでは、と思わせる内容。「書かせる」
はひらがなにしたかったのでは、と邪推したくなる展開。飛び道具のように見せながらも
しっかりと魅せる作品に仕上げてきたところは流石の一言。十分にお薦めできる作品です。
受賞作家の少年が、ある少女からの脅迫を契機に次回作が書けない事実とも向き合います。
(イラスト:橋本洸介 先生)
【 https://dengekibunko.jp/product/322202000064.html 】
とある小説新人賞で優秀賞を飾った月野シズクこと“月岡零”は高校一年生の男子である。
期待の新人作家だが、新作は出ないまま一年が過ぎる。執筆に迷走する彼の前に謎の女性
“琥珀”が現れ、彼女の考えた小説を書かないと周囲にシズクだとばらすと脅されて──。
“雫”が書けない理由が「勃たないこと」も、それに理解を示す彼の姉妹も「電撃文庫」
としては攻めたテーマであることがまず印象深い。下ネタに寛容な“琥珀”もヒロインと
してははっちゃけた設定で、読み進めていくとわかるその下地を培った家族関係も特徴的。
本作のタイトルがダブルミーニングになっているのでは、と思わせる内容。「書かせる」
はひらがなにしたかったのでは、と邪推したくなる展開。飛び道具のように見せながらも
しっかりと魅せる作品に仕上げてきたところは流石の一言。十分にお薦めできる作品です。
2022年09月26日
『リコリス・リコイル Ordinary days』
アサウラ 先生がストーリー原案を務めるTVアニメのスピンオフ小説を自らノベライズ。
アニメで描き切れない「喫茶リコリコ」の面々が織り成す日常と非日常の狭間を描きます。
(イラスト:いみぎむる 先生 原案・監修:Spider Lily)
【 https://dengekibunko.jp/product/322205000797.html 】
【 https://lycoris-recoil.com/ 】
東京都墨田区錦糸町。“徳田”が見つけた洒落た佇まいの「喫茶リコリコ」はそこにある。
子供から大人まで幅広い年齢層の店員が務めるこの店に足しげく通う彼は「ある仕事」を
頼むべく声を掛けた“ミカ”は、神妙な面持ちで彼の話に耳を傾ける。その仕事とは──。
「どんなジャンルのお話でもやれる地盤の強さがある」という アサウラ 先生の言葉通り
“千束”や“たきな”たちが色々な一面を限られた枠の中で魅せてくれているのが印象的。
妙に詳しいガンアクションあり、腹にきくグルメな描写あり、で安定感を覚えたのも然り。
向こう見ずな“千束”の振舞いや、融通が利かない“たきな”の言動など興味深い場面を
楽しみつつ、一番思い入れがあるのは“カナ”の話。日常と非日常の絡み具合が絶妙です。
いみぎむる 先生の挿絵も含め、アニメとは別の一面を今後も見られたら、とも思います。
アニメで描き切れない「喫茶リコリコ」の面々が織り成す日常と非日常の狭間を描きます。
(イラスト:いみぎむる 先生 原案・監修:Spider Lily)
【 https://dengekibunko.jp/product/322205000797.html 】
【 https://lycoris-recoil.com/ 】
東京都墨田区錦糸町。“徳田”が見つけた洒落た佇まいの「喫茶リコリコ」はそこにある。
子供から大人まで幅広い年齢層の店員が務めるこの店に足しげく通う彼は「ある仕事」を
頼むべく声を掛けた“ミカ”は、神妙な面持ちで彼の話に耳を傾ける。その仕事とは──。
「どんなジャンルのお話でもやれる地盤の強さがある」という アサウラ 先生の言葉通り
“千束”や“たきな”たちが色々な一面を限られた枠の中で魅せてくれているのが印象的。
妙に詳しいガンアクションあり、腹にきくグルメな描写あり、で安定感を覚えたのも然り。
向こう見ずな“千束”の振舞いや、融通が利かない“たきな”の言動など興味深い場面を
楽しみつつ、一番思い入れがあるのは“カナ”の話。日常と非日常の絡み具合が絶妙です。
いみぎむる 先生の挿絵も含め、アニメとは別の一面を今後も見られたら、とも思います。