2022年09月30日

『古き掟の魔法騎士V』

羊太郎 先生が贈る、教官騎士に導かれし王子の英雄譚。第5巻は“エンデア”によって
絶望の淵に立たされた世界で王として覚悟を見せる“アルヴィン”に“シド”が応えます。
(イラスト:遠坂あさぎ 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/202012fairyknight/322204000986.html


“アルヴィン”に対して抱く“エンデア”の憎悪。それに困惑する“アルヴィン”の言動。
すれ違いの根源には先人たちが残した禍根がある、と分かってからのやるせない気持ちは
“シド”にどんな感情を抱かせたのか。一人を除いて悲痛なまでに残酷な展開が続きます。

「野蛮人」と呼ばれることを甘んじて受けた“シド”。“アルスル”の騎士として、その
志を全うするために選んだ結果であることが分かる過去の経緯も、今ここに在る訳も含め
“シド”の生き様が際立ちます。羊太郎 先生は男性キャラを格好良く描くのも秀逸です。

“テンコ”たちが新たな騎士道精神を魅せてくれる中で、残された時間の限りを尽くして
“シド”が戦い抜いた末に辿り着く結末。ぜひ見届けてほしいと思える作品です。完結を
祝うと共に『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』の続刊、そして新作にも期待したい所です。

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2022年09月29日

『天才王子の赤字国家再生術12〜そうだ、売国しよう〜』

鳥羽徹 先生が贈る弱小国家運営譚。第12巻は帝国の皇位継承を巡る政争決着に一役買った
“ウェイン”がナトラ国内にはびこるフラム人による独立国家樹立の気運と向き合います。
(イラスト:ファルまろ 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815616410/
https://tensaiouji-anime.com/


“ニニム”が“ウェイン”を支える身であり続ける理由。その背景を幼き日の2人が邂逅
したところから深堀していく描写と、彼女を担ぎ上げようとするフラム人たちとの温度差。
行き着く先が不幸にしかならないのでは、と不安を覚えずにはいられない展開にやきもき。

帝国の次はナトラかと揺れ動く世界情勢に拍車をかけるのが“フラーニャ”の兄に対する
宣戦布告。彼女の胸中に火種が燻ぶっていただけに、持論を投げかけ合うやり取りを見て
「ついにこの時が来たか」と思う一方、“ウェイン”の余裕な姿勢が不気味にも映る訳で。

諸外国から見ても今後の動向が注視されるナトラに突き付けられた究極の選択。さすがの
“ウェイン”でも一考を要する事態に気を揉む“ニニム”が目の当たりにする衝撃の展開。
彼の「大事なもの」になる、という宣言は果たせるか。佳境を迎える話の行方に注目です。

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2022年09月28日

『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件7』

2023年にTVアニメ放送を迎える、佐伯さん 先生が贈る甘く焦れったい恋の物語。第7巻は
文化祭に向けて“周”と“真昼”が周囲から目を惹かれることに互いに葛藤していきます。
(イラスト:はねこと 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815612016/
https://otonarino-tenshisama.jp/


努めて紳士に振舞う“周”の心理をわかった上でつい「おねだり」してしまう“真昼”の
可愛らしさたるや。口絵で魅せた彼女の姿を見れば、「メイド喫茶」とクラスの文化祭の
出し物がと決まってから、見世物にされることを嫌悪する彼の心情も分かるというもので。

“真昼”の隣に自信をもって立てるよう研鑽し続けている“周”も成果は出ているご様子。
好感の持てる男子、として女子たちから奇異の目に晒されている彼を鼻高々に思いつつも
恋人として独占欲をあらわにする彼女がこれまた。律儀に返す彼の反応も熱々でご馳走様。

家族ぐるみで良い関係が築けている“周”と“真昼”。一方でどうにもならない理由から
“樹”の両親と“千歳”にしこりを残す関係にあるのが切ない。何とか切り返してほしい
と思いながら、ラストで緊張感を漂わせる引き具合。次巻の動向も目が離せないようです。

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2022年09月27日

『小説が書けないアイツに書かせる方法』

アサウラ 先生のオリジナル作品が「電撃文庫」に初登場。ED(勃起不全)に悩む新人賞
受賞作家の少年が、ある少女からの脅迫を契機に次回作が書けない事実とも向き合います。
(イラスト:橋本洸介 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322202000064.html


とある小説新人賞で優秀賞を飾った月野シズクこと“月岡零”は高校一年生の男子である。
期待の新人作家だが、新作は出ないまま一年が過ぎる。執筆に迷走する彼の前に謎の女性
“琥珀”が現れ、彼女の考えた小説を書かないと周囲にシズクだとばらすと脅されて──。

“雫”が書けない理由が「勃たないこと」も、それに理解を示す彼の姉妹も「電撃文庫」
としては攻めたテーマであることがまず印象深い。下ネタに寛容な“琥珀”もヒロインと
してははっちゃけた設定で、読み進めていくとわかるその下地を培った家族関係も特徴的。

本作のタイトルがダブルミーニングになっているのでは、と思わせる内容。「書かせる」
はひらがなにしたかったのでは、と邪推したくなる展開。飛び道具のように見せながらも
しっかりと魅せる作品に仕上げてきたところは流石の一言。十分にお薦めできる作品です。

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2022年09月26日

『リコリス・リコイル Ordinary days』

アサウラ 先生がストーリー原案を務めるTVアニメのスピンオフ小説を自らノベライズ。
アニメで描き切れない「喫茶リコリコ」の面々が織り成す日常と非日常の狭間を描きます。
(イラスト:いみぎむる 先生 原案・監修:Spider Lily)

https://dengekibunko.jp/product/322205000797.html
https://lycoris-recoil.com/


東京都墨田区錦糸町。“徳田”が見つけた洒落た佇まいの「喫茶リコリコ」はそこにある。
子供から大人まで幅広い年齢層の店員が務めるこの店に足しげく通う彼は「ある仕事」を
頼むべく声を掛けた“ミカ”は、神妙な面持ちで彼の話に耳を傾ける。その仕事とは──。

「どんなジャンルのお話でもやれる地盤の強さがある」という アサウラ 先生の言葉通り
“千束”や“たきな”たちが色々な一面を限られた枠の中で魅せてくれているのが印象的。
妙に詳しいガンアクションあり、腹にきくグルメな描写あり、で安定感を覚えたのも然り。

向こう見ずな“千束”の振舞いや、融通が利かない“たきな”の言動など興味深い場面を
楽しみつつ、一番思い入れがあるのは“カナ”の話。日常と非日常の絡み具合が絶妙です。
いみぎむる 先生の挿絵も含め、アニメとは別の一面を今後も見られたら、とも思います。

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2022年09月23日

『となりの悪の大幹部!』

「昔勇者で今は骨」「グリモアレファレンス」の 佐伯庸介 先生が贈る新作は、怪人らを
やっつける戦隊の一員である青年が隣室に引っ越してきた住人との意外な交流を描きます。
(イラスト:Genyaky 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322112000007.html


“草間ミドリ”は悪の秘密組織と戦う5人の戦隊組織「バンショクジャー」の一員であり
高校の非常勤講師も務めるアラサー独身である。ある日、戦闘を終えて帰宅すると隣室に
入居する子連れで褐色銀髪の美人と遭遇するが初対面なのに見た覚えがある気がして──。

戦隊の中では支援役に回る“ミドリ”の不遇さを払拭するかのような“アシェラー”との
濃密なキス。そこに至るまでの、遡れば秘密組織と対峙する経緯を語る“タラタット”が
明かす真相、相互不理解の背景がいろいろと筋道の通っている内容で、納得感のある展開。

新たな敵との戦いでも“ミドリ”の立場が重要になってくる場面では爽快感を覚えますし、
何より Genyaky 先生の挿絵による演出も相まった艶っぽい描写が絶妙。“アシェラー”が
度々覗かせる可愛らしい一面もぜひ堪能あれ。面白くて、色々と考えさせられる一作です。

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2022年09月22日

『天使は炭酸しか飲まない3』

丸深まろやか 先生が贈る青春物語。第3巻は天使としての活動にかまけて補習づくしの
夏休みを迎える“伊緒”が、正体を知られている後輩の恋愛相談にのる顛末を描きます。
(イラスト:Nagu 先生)

https://dengekibunko.jp/product/tenshihatansan/322203002166.html


“伊緒”がやらかした過去の失態から、彼が「天使」だと気づいている所からスタート
する後輩“光莉”の恋愛相談。中学時代からの好きが高じて“鷹村”と同じ高校へ進学
を決めるほどの想いに彼は応えてくれるのか。今回も難題が“伊緒”に降りかかります。

諦めきれないなら例え何度でも、告白して気持ちを伝えることが大切と考える“伊緒”。
何回告白しても振られる、叶わない恋はいつまで続けたらいいのかと葛藤する“光莉”。
好きな人への想いに区切りをつけるか否か、の論点が物語を大きく動かす展開が印象的。

“伊緒”が抱き続ける“彩羽”への思慕。彼に“梨玖”が思う所ある内容を知ることが
できたのが良かったですし“御影”たちも同様に考えてくれていて本当に良い子たちで。
ラストで不穏な影を落としながら迎える続刊の危機、はねのけてほしいものであります。

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2022年09月21日

『あした、裸足でこい。』

「三角の距離は限りないゼロ」の 岬鷺宮 先生と Hiten 先生がタッグを組んで贈る新作は
時の人となった元カノの失踪を機に元カレ少年が彼女を救うため時を越える恋愛物語です。
(イラスト:Hiten 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322203000069.html


高校卒業を意識する“巡”が想起するのは、恋人だった“二斗”との思い出。歌手として
成功した彼女が遺書を残して失踪した、と知った彼は天文同好会の部室で茫然としながら
絆をつなぎ止めるかのように彼女の曲をピアノで奏でていると突然、閃光に包まれて──。

“二斗”と出会った頃に戻った“巡”が、彼女との気さくなやり取りを通じてその魅力を
再認識しながら、過去を改変し、遺書を残して失踪するという「今」を回避できるのでは
ないかと模索し始める試行と思考の連続が面白い。巻き込まれる“真琴”は散々ですけど。

“六曜”や“五十嵐”とは築けなかった関係を築きつつ、才能が開花する前の“二斗”と
新しい繋がりを築く“巡”。彼が今いる世界線を探りつつ読み進める中で出てきた巻末の
あのセリフ。過去作の登場人物も今作の脇を固める物語がどう動くのか注視したい所です。

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2022年09月20日

『怪物中毒』

約5年ぶりに「電撃文庫」から贈る 三河ごーすと 先生の新作は、管理社会の中で唯一
サプリを使って獣人となり好き勝手できる街の「掃除屋」を務める少年の命運を描きます。
(イラスト:美和野らぐ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/monsterholic/322203002159.html


未曽有の疫病に対応するため、強制参加を義務付けたSNSで人々を管理する島国、秋津洲。
人々は官製スラムで怪物サプリを使い、獣となって鬱憤を晴らすのが数少ない享楽の一つ。
その街で「清掃作業」を請負う“零士”はある少女を事故に遭う寸前で助けるのだが──。

インターネット、SNS、コロナ禍、経済危機・・・日本の今を見据えた先にあるかもしれない
物語として興味深い導入。苦学生として生活する“零士”や“月”の「トクニン」という
属性が、夏木原という場を通じて話へ一気に惹き込んでいく要因となっているのが面白い。

怪物サプリにまつわる事件を通じて、“零士”が普通であることにこだわる意味を知った
“蛍”が彼に対してあの行動をとるまでの顛末が実に印象的で。“命”のあぶなっかしい
性格や食わせ物な“楢崎”の言動も気になりますし、続きが楽しみなシリーズの登場です。

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2022年09月19日

『七つの魔剣が支配するX』

TVアニメ化に向けて準備が進んでいる、宇野朴人 先生の大人気学園ダークファンタジー。
第10巻は終盤を迎える決闘リーグの中、“デメトリオ”攻略に“オリバー”が集中します。
(イラスト:ミユキルリア 先生)

https://dengekibunko.jp/product/7-maken/322203002161.html


“オリバー”を求める“ナナオ”の気持ちに応えようとする彼がその一線を越えられない
理由として打ち明けるつらい記憶の残滓。癒えない傷があると知り、受け止めて触れ合う
2人の様子を微笑ましく見守るだけでは終わらせないのが今巻、いや本作最大の見せ場で。

仇敵“デメトリオ”との舌戦、そして剣戟の果てに隙を突かれた“オリバー”が覗かれて
しまう両親との幸せな日常、彼が性交を忌避する契機となったシャーウッドの血に纏わる
宿願、そして魔剣を成らせて今に至るまでの経緯。あまりの落差にただ驚愕するしかなく。

決闘リーグも終わりにかけて印象的な対戦が見られましたし、終えて行われた統括選挙の
投票結果を受けて壇上で語られた演説も魔法学校ならではの内容で魅せてもらいました。
戦いの果てに尊い犠牲も背負って“オリバー”はどこへ向かうのか、続きを見守ります。

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2022年09月16日

『こんな可愛い許嫁がいるのに、他の子が好きなの?3』

ミサキナギ 先生が贈る仁義なき正妻戦争ラブコメ。第3巻は婚約にこだわる“二愛”から
“幸太”は婚約解消を引き出せるのか。揺れ動く四角関係がたどり着く行き先を描きます。
(イラスト:黒兎ゆう 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094530872


“二愛”は“幸太”のことを本当に好きなのか。陶芸に打ち込みすぎる余り生活を疎かに
する彼女の姿から疑問を抱いた彼らが、調べていくうちに彼女の存在意義が「JK陶芸家」
しかない所まで追いつめられていると知る訳ですが、そこに彼の責はあるのかという話で。

それでも“幸太”が“二愛”に対して責任を取ろうとする姿には只々感心するしかなく。
漁夫の利を狙う“クリス”はあくまでも「同盟者」止まりで、譲る気はない“氷雨”は
決め手となる一手が無くて。“二愛”が気持ちにどう折り合いをつけるのかがポイント。

「婚約解消同盟」に一つの区切りをつけた“幸太”が選んだ道は読んで確認してもらう
として、なんと言うか、改めて罪作りな少年だということが分かるのではないかと思う
次第です。物語としても区切りをつけた ミサキナギ 先生にはお疲れ様です、の一言を。

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2022年09月15日

『わたし、二番目の彼女でいいから。4』

西条陽 先生が描く少年少女の不健全な恋愛模様。第4巻は一線を越えた“橘”と“桐島”、
壊れかけな“早坂”の三角関係がいよいよ泥沼へと嵌まっていく高校生編の話を結びます。
(イラスト:Re岳 先生)

https://dengekibunko.jp/product/nibanmenokanojo/322201000061.html


「桐島事変」とか言い出してしまう彼に“浜波”のツッコミが冴え渡りまくるのが面白い。
“桐島”たちと関わることで身についてしまった「浜波レーダー」をもって止めたアレが
まさか足りなかったとは思いも寄らず。これはもう読んで確かめてもらうしかない展開で。

これでもまだ“桐島”が“橘”や“早坂”との拗れた関係をソフトランディングさせると
言ったりするあたりに彼の本質、というか問題思考が浮き彫りとなるワケで。“酒井”が
そこを的確に突きつつ「ちゃんと決められる」とまで言い切る場面がまず印象に残る所で。

“柳”も巻き込んでいよいよ狂いきった“桐島”たちがハードランディングするしかない
着地点は「二番目の彼女でいいから。」という意味を問い直したくなる場所となりました。
驚愕の引きをみせたあと、第5巻でどんな話を用意するのか。西 先生の手腕が問われます。

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2022年09月14日

『運命の人は、嫁の妹でした。2』

逢縁奇演 先生が贈る、嫁とその妹による三角ラブコメ。第2巻は“兎羽”と“獅子乃”の
修羅場も覚悟する状況から“大吾”はどう動くか、彼の甲斐性が問われる顛末を描きます。
(イラスト:ちひろ綺華 先生)

https://dengekibunko.jp/product/yome_no_imouto/322205000049.html


いきなり刃傷沙汰か、と思えばそこは“兎羽”ゆえの展開。“大吾”に加えて“獅子乃”
への愛があふれていて驚嘆、ですがやはりアカン子かなということが元婚約者“工藤”、
大叔母“詩子”、乳母“フェイ”の証言からも明らかに。というか各々傑物なのも驚愕。

“兎羽”が“大吾”と愛のクエスト、その初歩となるロマンチックな初キスを期待する
やり取りがまた面倒くさくて微笑ましいのなんの。2人の様子を目にする“獅子乃”が
彼を想う感情に蓋をしきれず、少しずつ倒錯めいた所作を見せてくる展開もドキドキで。

そして“獅子乃”と“大吾”の頭によぎる、前巻とは別の前世での顛末。更なる因果が
逃れられない3人の絆を演出しつつ、更に「あの人」が関わってきてどうなることやら。
いずれにせよ吹っ切れた姉妹の決意を“大吾”がどう受け止めるか、次巻も楽しみです。

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2022年09月13日

『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙VIII』

支倉凍砂 先生が描く賢狼の娘と聖職者による旅路。第8巻は聖典印刷の計画を進めるべく
“コル”が放浪学生として過ごした大学都市に向かい、新たな騒動と出会いに遭遇します。
(イラスト:文倉十 先生)

https://dengekibunko.jp/product/spice-and-wolf/wolf-on-the-parchment/322202000066.html


天使のような聖女、と褒め立てられ結婚申込書が殺到するのも満更ではない“ミューリ”。
その返事にも使う紙やインクが不足している、と冷静に彼女をたしなめる“コル”が紙の
在庫を求めて訪れた大学都市も教科書売買を巡る策謀に揺れている、というのだから大変。

馴染み深い組織名「賢者の狼」を率いる“ルティア”、思いがけぬ「仲間」との出会いに
“コル”、そして“ミューリ”も感化するところがある様子で面白い。その一方で今回の
騒動の根幹を握る「敵」の片棒を、“ミューリ”に担がせることになる話運びが興味深い。

無闇矢鱈に“コル”を持ち上げる“カナン”の有能さにも目を見張りつつ、教会を倒すの
ではなく、その不正を糺したい、とその意味を語る“コル”の一言一言が印象に残ります。
新大陸に思いを馳せながら、変革の兆しに揺れる世界を旅する2人の行方を見守ります。

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2022年09月12日

『恋は暗黒。』

十文字青 先生が贈る新作は、どこにでもいる普通の高校生・・・になりたかった少年がある
特殊な仕事や、美少女との恋愛に振り回されていくちょっぴりダークなラブコメディです。
(イラスト:BUNBUN 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/koikuro/322204000948.html


同じクラスの“白森”から一人呼び出された“想星”。そして「付き合ってください」と
突然の告白を受けた彼は戸惑いつつも「はい」と返答。「チート」を使い「仕事」をする
自分に可愛いを具現化したような彼女ができていいのか、と自問自答する日々が続く──。

なんで“想星”を好きになったのか、と疑いたくなる“白森”の言動を微笑ましく見守り
たくなる日常と、姉の指示に従い淡々と命のやり取りを繰り広げる非日常が交錯する展開。
それらを結ぶ鍵となる“羊本”の存在感が、少しずつ大きくなっていく描写も興味深い所。

“想星”が抱く“羊本”への疑問、「チート」の背景、姉の目的・・・様々な疑問が明らか
となった上で表紙を見返してみると「なるほど納得」という思いがひしひしと浮かびます。
思いがけず気付いた奇跡にすがって彼らは生きていけるのか、注目しておきたいものです。

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2022年09月09日

『生命の略奪者 ─天久鷹央の事件カルテ─』

知念実希人 先生が贈る新感覚メディカル・ミステリー。長編シリーズ8冊目は度重なる
臓器強奪事件に天医会総合病院も巻き込まれ、解決に向けその謎を“鷹央”が診断します。
(イラスト/いとうのいぢ 先生)

https://www.shinchobunko-nex.jp/books/180246.html


脳死状態の診断を受けた“由佳”が生前、臓器提供の意思を示していたことから行われた
腎臓摘出。その臓器が天医会総合病院から盗まれたことで“鷹央”の出番となる訳ですが
臓器提供に関するプロセス、医師や業者の関わり方等に知見を得られるのがまず印象深い。

なぜ臓器を強奪する意味があるのか。天医会総合病院での事件を収めるだけでは終わらぬ
一連の事件。“鷹央”のことを「ホルスの目」と揶揄した「あの犯人」の意図を汲み取り
彼女が着実に結果へと結びつけていく流れは流石。それにしても病院社会はげに恐ろしき。

中途半端な知識に踊らされ、他人の尊厳を傷つけ、その命にまで手を出す愚者を表す言葉
「生命の略奪者」。そこに“鷹央”の、医療従事者としての憤りが強く表れていることを
感じます。エピローグでの彼女の発言が残す余韻も前向きで、良い読了感を味わいました。

posted by 秋野ソラ at 01:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年09月08日

『砂の上の1DK』

「終末なにしてますか〜?」シリーズの 枯野瑛 先生が贈る新作は、産業スパイの青年が
潜入したある施設で研究されていた未知の細胞を巡って数奇な運命を辿る顛末を描きます。
(イラスト:みすみ 先生)

https://sneakerbunko.jp/product/1dk/322205000214.html


産業スパイの“江間”は、ある研究所からの依頼にきな臭さを感じて辞退する。その直後、
別の組織による破壊工作が行われたその場所で旧知の少女が巻き込まれていることを知る。
組織に目をつけられるのを覚悟で救出するものの、少女の様子はいつもと違うようで──。

“沙希未”であって“沙希未”ではない。そんな状態の彼女を“アルジャーノン”と呼ぶ
“江間”も中々のものですが、その正体ゆえの言動を見せる彼女もまた刹那的で切なさを
覚えずにはいられません。“孝太郎”が分かりやすい、いい位置に居たのが印象深いです。

“アルジャーノン”と有限の時間を過ごした上で“江間”がらしくない行動に至った顛末。
冒頭で、自身のことを部外者と独りごちた「彼女」の言葉が思い返される結末を踏まえて
「彼女」が新たな物語の関係者となる未来があってもいいのではないかと思った次第です。

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2022年09月07日

『神は遊戯に飢えている。5』

TVアニメ化企画が進行中となる、細音啓 先生の人類VS神々の至高のファンタジー頭脳戦。
第5巻は“フェイ”たちが「神々の遊び」の進行を妨げる者の可能性を探りはじめます。
(イラスト:智瀬といろ 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/kami_to_game/322203002003.html


「神樹の実バスケットボール」に仕掛けられた、人間の固定概念を悉く突いてくる作戦に
舌を巻くばかり。人間が陥る窮地を前に、まさに切り札として活躍する“フェイ”たちの
振舞いには安心感すら覚えます。“レーシェ”もこれまでの鬱憤を晴らせたようで何より。

そんな“フェイ”たちの挑むゲームから爪弾きにされた“ウロボロス”が明かしてくれた
謎の一端。神々も、そして人間も一枚岩ではないことをようやく窺い知ることができます。
「インターミッション」による挿話の数々が見逃せない場面ばかりだったという印象です。

そして新たに仕掛けてきた“ポセイドン”が好み全開の遊戯に、“フェイ”も油断大敵と
肝に銘じたことでしょう。こちらも憎めないキャラの神で今後の動向が楽しみ。ラストで
得られた勝利報酬に粋な要素を感じつつ、彼らの行先にあるものを見届けたいところです。

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2022年09月06日

『想いの重なる楽園の戦場。そしてふたりは、武器をとった』

「転生王女と天才令嬢の魔法革命」の 鴉ぴえろ 先生が贈る新作は、荒廃した世界の中で
竜に守られる千年都市の巫子を目指す少女たちが繰り広げる百合バトルファンタジーです。
(イラスト:みきさい 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/202208futaribuki/322204000983.html


巫子を目指す努力家“レーネ”、都市の外へ思いを馳せる天才肌“セスカ”、都政を担う
長の娘“ルルナ”、過去に巫子を輩出してきた名家の娘“ジョゼット”。守護竜から力を
預かる巫子になる理由はそれぞれに、4人の少女が次代の巫子を選ぶ戦いの場に臨む──。

展開がとにかく驚くほど早い。“セスカ”に負け続けの“レーネ”は勝てるのか、という
創意工夫にあふれた戦いぶりを描きつつ、女の子同志の睦まじいやりとりや、その関係を
思いがけない形で崩れていく展開、と先生の「好き」が満載の展開に安心感すら覚えます。

巫子になることが大事なのではなく、なってからが軸となるこの物語。千年都市の秘密を
どう受け止め行動していくか。“レーネ”の切なる想いが報われてくれることを願いつつ、
いま一番難しい状況下におかれた“セスカ”に注目しながら、続きに目を向けたい所です。

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2022年09月05日

『転生王女と天才令嬢の魔法革命5』

2023年のTVアニメ化が決定した、鴉ぴえろ 先生が贈る異世界百合ファンタジー。第5巻は
東部に眠る魔石を求めて“アニス”と“ユフィ”が新婚旅行のような領地視察に臨みます。
(イラスト:きさらぎゆり 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/202001mahoukakumei/322203002021.html
https://tenten-kakumei.com/


引いたりすることはあるものの“アニス”にぐいぐいと攻める“ユフィ”の基本姿勢には
女王として見ても安定感が備わっているように見受けられます。時にはやり返そうとする
“アニス”が結局やり込められてしまう掛け合いもニヨニヨしながら見守りたくなります。

“アニス”が気にかけたくなる“ユフィ”と“カインド”との関係。理性で割り切れる所、
感情で割り切れない所、三者三様に思いを示すことで改めて見えてくる話もあり興味深い
やり取りで。ちゃんと気遣いできて、大切なものは譲らない“アニス”に好感を抱きます。

その“アニス”もまた“アル”と気懸かりを残す中、彼の立場に寄り添って話してくれる
人物の登場と意見交換にどれだけ助けられたのだろうか思うと、“ユフィ”の時と同様に
印象に残るやり取りでありました。“アル”の幸ある未来を願いながら、次巻を待ちます。

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