2022年06月16日

『姫騎士様のヒモ2』

白金透 先生が贈る異世界ノワール。第2巻は迷宮都市の治安維持のため配備された聖護隊
に“ヴァネッサ”の兄が、彼女の死の真相を突き止めるべく“マシュー”をつけ狙います。
(イラスト:マシマサキ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/himekishisamanohimo/322201000060.html


やがて訪れる、かもしれない迷宮攻略の時を迎えた時ことを“マシュー”が示唆した際に
“アルウィン”が取った行動。これを見て彼女は彼とどう在りたいのか、尋ねてみたいと
改めて感じました。恋だの愛だの、単純には推し量れない彼女の心境、実に気になります。

そんな姫騎士様に今回も迷惑をかけてしまう形になる“マシュー”の身から出た錆な話の
数々に苦笑が絶えません。しかし、彼も彼女の迷宮病を何とかしようと「清濁併せ呑む」
方法で尽力しているのが見て取れるので、今巻も憎めない立ち居振る舞いに魅せられます。

迷宮都市に来た“ヴィンセント”が“マシュー”をどう見極めたのかも見所の一つですが
今回の騒動につながる“太陽神”の手口が、見方を変えればさも悪魔のようで憎たらしい。
都市の危機、そして姫騎士様の窮地が迫る中、ヒモとして選ぶ決断を見届けたいものです。

posted by 秋野ソラ at 00:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年06月15日

『ひとつ屋根の下で暮らす完璧清楚委員長の秘密を知っているのは俺だけでいい。』

西塔鼎 先生が贈る新作は、成績優秀、品行方正、東欧人のハーフで眉目秀麗と疎遠ながら
幼なじみのいる少年が、彼女のとある秘密と日常を共有していく顛末を描くラブコメです。
(イラスト:さとうぽて 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322202000056.html


“黒川スヴェトラーナ”。校内で「姫君」とも称される彼女だが昔は物怖じする女の子で
良く世話を焼いたものだ、と独りごちる“俺”。ある日、家族の都合で彼女を家に預かる
ことになった彼は、彼女から未だ残る「怖がる癖」を克服する手助けを求められるが──。

主人公を「たっくん」「たーくん」「たの字」と呼ぶことで誰が喋っているかを印象づけ
ているのが、彼との会話を楽しむ上でのポイントとまず感じました。最初から“チカ”と
彼に呼ばせる“黒川”の「特訓」に至るまでの動機づけも分かりやすく、好感が持てます。

“霞野”や“鳴宮”を始めとする友人、知人たちに“黒川”の怖がりがいつバレるのかと
ヒヤヒヤしつつ、彼女の仄かな想いは伝わるのかモヤモヤしつつ安心して読了することが
できるラブコメになっているかと思います。さとうぽて 先生の挿絵による演出も絶妙です。

posted by 秋野ソラ at 00:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年06月14日

『私のほうが先に好きだったので。2』

佐野しなの 先生が贈る青春泥沼トライアングル。第2巻は“桜子”の彼女となったはずの
“安芸”が“小麦”から過去の想いをぶつけられて揺れ動く、泥沼必至の展開を描きます。
(イラスト:あるみっく 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815611583/


“安芸”に関しては、彼の恋愛相談に答えた姉の辛辣な言葉がすべてを表しているとしか
言えなくて。結婚を前提にしている訳でもないにしろ、“桜子”がいない間に“小麦”と
元の関係に戻るのを受け入れるなんて誠実さが欠けていて情状酌量の余地もないというか。

“小麦”にとって不幸なのは、“安芸”への気持ちを引きずったまま、彼の心境を知って
しまったということ。諦めたはずなのに、諦めきれない。易々と割り切れないのが人の心
とは言え恋か友情か、二者択一を迫られれば選ばざるを得ないのが彼女の業というものか。

“桜子”にしてみれば“安芸”も“小麦”も求めてしまっている時点でもう救う手立てが
無いように見えて。彼の気持ちも、彼女の心情も察してしまうことができる“桜子”故に
進む道は唯一つ、と突っ切るのがつらい。このラストを繋ぐ 佐野 先生の腕の見せ所です。

posted by 秋野ソラ at 00:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年06月13日

『高嶺の花には逆らえない』

冬条一 先生の「カクヨム」投稿作が書籍化。入学と共に校内随一の美少女に一目惚れを
する少年と、その友人となるモテ男が恋に振り回されていく様を描く新感覚ラブコメです。
(イラスト:ここあ 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094530681
https://kakuyomu.jp/works/16816452218689030051


引きずり続けた中学時代の初恋に別れを告げ、高校で同じクラスとなった“立花”に恋を
する“佐原”。意を決して告白を決めた矢先、友人となった校内一のイケメン“進藤”に
先を越された“佐原”。憂鬱な彼は翌日、友人の様子が何やらおかしいことに気づく──。

“進藤”と付き合い始めたはずの“立花”が弁当を作ってくれたり、名前呼びしてきたり
と“佐原”が戸惑うのも無理はなく。そんな彼が偶然出会うぽっちゃり系少女“武田”に
彼の家族の心を掴まれていく展開とその手腕が面白い。こんな外堀の埋め方があるのかと。

“進藤”の思惑を“立花”が知っている点。そもそも彼女が抱えている胸の内。それらを
知る由もない彼が彼女に目をつけたのが運の尽きというか。悪あがきを続ける彼、そして
岡目八目で状況を見守る“美紀”を前に“佐原”はどう振る舞うか、続きが気になります。

posted by 秋野ソラ at 01:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年06月10日

『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 S.ex(すぺしゃる・えくすとら)』

有象利路 先生が贈る危険球ギャグラノベが「Born Digital」、電子特別編として初登場。
担当編集の思惑も、ページ数の制約も外れて、“サヨナ”たちが自由気ままに振舞います。
(イラスト:かれい 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322109000431.html


ギャグというのは受け手の感性に寄る部分も多く、評価が分かれることもしばしばですが
世知辛い昨今、こうして肩ひじ張らずに読める本作の存在は有難いものと感じている所で。
1巻と2巻の間にあった話がやたら多いあたりにも政治的な背景が感じられてつい苦笑い。

それにしても一段とヒロインらしくない“サヨナ”の立場が面白い。“カグヤ”のほうが
余程それらしいのがまた興味深くて。パロディのネタも下ネタも攻めて、責めての連発で、
編集部としても幾度となく確認に追われたことでしょう。その甲斐ある内容だと思います。

「電撃文庫」編集部を離れた 土屋 さんへの恨み言というか愛があふれる仕掛けが満載で。
あとがきも含めて読み終えた際に、改めてチームとして作品が作り上げられていることが
窺えて一読者としても感慨深いです。有象 先生、担当編集諸氏も含め、お疲れさまです。

posted by 秋野ソラ at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル