2022年06月30日

『塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い6.5』

猿渡かざみ 先生が贈る青春ラブコメ。新規書き下ろし中編や、店舗特典用SSを四季ごとに
テーマ分けして収録する他、Twitter限定公開短編を加筆して再集録するなどした一冊です。
(イラスト:Aちき 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094530711


「イマモテ」に振り回される女子がここにもいたとは驚きです。今巻と同時刊行を迎えた
猿渡 先生の新作『高嶺さん、君のこと好きらしいよ』の販促にもつながる構成がお見事。
やはり時系列に沿って話を並べていただけると頭の中にもスッと話が入ってくるものです。

普段は大人しい“こはる”がまれに調子づいたり、小悪魔要素を見せたりするのが可愛い。
“円花”と“蓮”の関係も二人なりのペースで進んでいるのも見て取れてニヨニヨできる
のもまた良し。“颯太”のバイト先でのやり取りをSSならでは話の種に使うのが好きです。

横に長い口絵を見て、ここまで登場人物が増えたものかと感慨深く思うところもあったり。
バレンタインで始まり、バレンタインでしめくくる今巻は“颯太”と“こはる”の意外な
繋がりを暗喩するのも印象に残る場面で、続く7巻でどう作用するか楽しみでもあります。

posted by 秋野ソラ at 00:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年06月29日

『高嶺さん、君のこと好きらしいよ』

猿渡かざみ 先生が贈る新作は、堅物な少年に助けられた少女が恋愛指南本を片手に想いを
伝えようと奮闘する姿を、彼の心情も交えつつ描く両片想い恋愛ハウツー・ラブコメです。
(イラスト:池内たぬま 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094530766


美人すぎるが故に良くも悪くも噂が絶えない“高嶺”は校内で絡まれているところを鬼の
風紀委員長“間島”に助けられる。惚れた彼女は自身が称える恋愛指南本の内容をもとに
「高嶺さん、君のこと好きらしいよ」という噂を利用して、想いを伝えようとするが──。

“高嶺”の数少ない友人“瀬波”が呆れるほどに空回りするアプローチの数々が面白くて。
“高嶺”の口数が少ないのも、“間島”が正しくありたいと思うのも訳があって。2人が
両片思いなのにも意味があって。笑ってばかりじゃいられない恋愛の難しさに苦笑いして。

噂や第一印象といった要素を上手く使い分けて話を進める構成が印象深く、そこに漫画家
である 池内たぬま 先生ならではの演出も加わり、最後まで安心して読める仕上がり具合。
“高嶺”と“間島”の背中を押す友人たちの振舞いにも注目。文句なくお薦めの作品です。

posted by 秋野ソラ at 00:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年06月28日

『霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない2』

綾里けいし 先生が贈るく現代伝奇ミステリ。第2巻は「かみさま」亡き「藤咲」の家から
逃亡を続ける“藤花”と“朔”が未来視の力を持つ「永瀬」の家の陰謀に巻き込まれます。
(イラスト:生川 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094530742


逃亡中のホテルでようやくイチャイチャできるかと思った矢先、占女の導きにより訪れた
“未知留”に水を差される“藤花”と“朔”。「かみさま」より劣る「永瀬」の力を補う
ため“朔”が持つ「異能を強める目」を欲するのも道理とはいえ“藤花”には迷惑な話で。

泳がない金魚、首のない死体、永瀬の深部。異能と共に、永瀬の闇に触れていく“藤花”。
「永瀬の本物」が抱く疑念に触れ、「永瀬の本物」を守る者たちの思念に直面する“朔”。
時の流れを掴んでいく“未知留”に命運を握られる2人が、共に死を覚悟するのも道理で。

緊張の糸を緩めるかのように登場した“甲斐羅”。登場した意味はすぐ察しがつくものの、
フラッシュバックするプロローグや口絵の意味が“藤花”と“朔”を苛む展開に驚かされ、
エピローグが語る言葉の数々に目を疑うばかりで。続きが出るまでもどかしさが募ります。

posted by 秋野ソラ at 00:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年06月27日

『変人のサラダボウル3』

平坂読 先生が贈る、変人たちの奇想天外おもしろ群像喜劇。第3巻は学校に通い始めた
“サラ”、もはや遊び人の“リヴィア”など、“惣助”にまつわる人々の日常を描きます。
(イラスト:カントク 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094530735


「小学二年生の女子、水沢夢」にまず驚くしかない。“サラ”の口癖がうつるのも可愛い。
あだ名呼びやいじめといった現実を捉えつつ、思慕も、羨望も、嫉妬も一身に受け止めて
“サラ”が最終的に“惣助”も驚きのアレを顕示する姿はこの世界における幸せの証かも。

“リヴィア”が無知なのをいいことに“望愛”の望むまま生かされている様子もまた幸せ
に見えて泡沫であることは、これまた最後で見せつけられる訳ですが、さてどうなるやら。
合間に見える“ブレンダ”と“春花”の努力が空回りする姿を面白がりつつ思わず苦笑い。

前巻から“サラ”に騙された形で転校デビューに臨む“友奈”の姿から哀愁が漂う展開が
続くのかと思えば「災い転じて福となす」とも言える、救いのある新生活が訪れて一安心。
それどころか“惣助”の生き様が彼女の人生にもかかわる流れで将来展望が気になります。

posted by 秋野ソラ at 00:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年06月24日

『おいしいベランダ。 亜潟家のアラカルト』

竹岡葉月 先生が贈る大好評・園芸ライフラブストーリー。第11巻は“葉二”と“まもり”
の結婚後の様子を描く書き下ろし4編に、書籍未収録のSS13編をまとめた1冊となります。
(イラスト:おかざきおか 先生)

https://lbunko.kadokawa.co.jp/product/oishiiberanda/322110000732.html


ハネムーンに纏わる紛らわしい名前の料理を巡る思い出話に、結婚しても根は変わらない
“葉二”と“まもり”の様子を見ることができてひとまず安心したり。家族の縁が広がる
ことで発生するあれやこれやの対応、反応に積み重なる時間と絆を感じずにはいられない。

“まもり”たちに何となく触発される“湊”が、これまた実に紛らわしい“周”の言動に
振り回される話や、“葉二”と酒を酌み交わすまでに成長した“ユウキ”が報告を受ける
顛末も話の脇を固める内容で面白い。共に“まもり”の返しから「らしさ」が窺える所も。

「エピローグ」を読み終えた余韻から、「特典ショートストーリーズ」で各巻の前日譚や
後日譚、裏話など物語全体を補完する貴重な機会を得ることもできて、大満足の一冊です。
本作の結びをお祝いしつつ、新作『犬飼いちゃんと猫飼い先生』を楽しみにしておきます。

posted by 秋野ソラ at 00:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル