2022年05月31日

『ラブコメ・イン・ザ・ダーク』

「宮本サクラが可愛いだけの小説。」の 鈴木大輔 先生が贈る新作は、夢を自由に見る力
を得た少年とそれを看過できない現実の守護者たる少女との邂逅が織り成すラブコメです。
(イラスト:tatsuki 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/lovedaku/322201000774.html


現実で鬱屈とした感情を募らせる“ジロー”。夢の中ならムカつく奴らも絶対服従させて
自由自在、と謳歌する彼が夢と現実の逆転を望んだ瞬間、その夢に突如現れたペスト医者。
何度も彼の夢を破壊しにくるそれはある案を彼に示す。「恋人が欲しくはないか」と──。

ボランティアでヒーロー、と“ユミリ”を評し“ジロー”が語る冒頭のモノローグだけで
彼の人間性、2人の特異な関係、物語の目指す所まで示して物語に惹き込ませるのは流石。
世界の危機で病そのもの、と彼女に断言された彼が振り回される様子はラブコメそのもの。

その上で、“ジロー”の病を寛解すべく“ユミリ”が提示した治療方法にまつわる顛末が
イチャイチャさせるだけで終わらせない興味深い話の転がし方をしてくるからまた面白い。
ひねくれ者の彼が一つの答えに辿り着いた、と思えばあの引き具合。続きが超楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 01:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年05月30日

『君は僕の後悔3』

しめさば 先生が贈る、後悔を抱えた少年少女による恋と対話の物語。第3巻は文化祭で
バンドを組むことになる“結弦”が“李咲”と“壮亮”のすれ違う感情に触れていきます。
(イラスト:しぐれうい 先生)

http://dash.shueisha.co.jp/bookDetail/index/978-4-08-631470-1


「バンドやらねぇ?」という“壮亮”の一言で夏休みにドラムの練習に没頭する“結弦”。
その間、海水浴へ行って“藍衣”や“薫”が繰り広げる恋の駆け引きに巻き込まれるなど
“結弦”も羨ましい限り・・・と見守るだけではいられないシリアスな話に転じるのが見所。

“壮亮”が今回のバンド活動に託す一縷の望み。憧れだった先輩“李咲”を、憧れていた
ころに戻すというのはどういうことか。彼の要望を聞き入れない彼女のしがらみとは何か。
第三者としてどう関わるのが正しいか。自分なりに考え抜く“結弦”の気概が印象深くて。

言葉で伝えることをやめてはいけない。意味がないと言われても。生意気だと言われても。
“壮亮”が“李咲”のために用意した「言葉」の力を信じる“結弦”たちの想いの行方を
ぜひ見届けてあげてほしい物語かと。巡る季節、新たな決断を迫られる彼らに要注目です。

posted by 秋野ソラ at 01:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年05月27日

『聖女に嘘は通じない』

「薬屋のひとりごと」の 日向夏 先生が「アリアンローズ」に初登場。洞察力と記憶力に
秀でた神官見習いが、聖女にまつわる殺人事件の謎に迫るファンタジー&ミステリーです。
(イラスト:しんいし智歩 先生)

https://arianrose.jp/novel/?published_id=3814


十年に一度、特殊なギフトを持つ者から選ばれる国の代表2人「神子」。その候補に推挙
された“クロエ”だが寝耳に水な話で。聖騎士“エラルド”が彼女に話を持ち掛けた訳は
彼女が賭博で荒稼ぎするべく習得した力で神子候補の殺害犯を捜してほしいらしく──。

ギフト無しの“クロエ”が、ギフトを持つ神子候補たちと気風よく渡り合う姿は豪胆で。
「豪運の聖女」たる彼女でも及ばない局面を、「豪商の息子」でもある“エラルド”が
フォローしていく様子が強かで。含みある謎の数々がファンタジーらしさ満載で面白い。

“クロエ”を神子に使われたギフトから守る魔導具の有限性。神子派と聖女派の確執。
殺された“チーロ”の人物像。散在する点がひらめきと共に繋がる瞬間、幕を引かれる
事件の結末も実にファンタジーで新鮮な味わい。終章の落としどころも見事であります。

posted by 秋野ソラ at 01:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年05月26日

『偏愛執事の悪魔ルポ』

数々のレーベルで作品を上梓し続けている 綾里けいし 先生が「講談社タイガ」に初登場。
天使候補のお嬢様に心酔する執事が悪魔としての立場で揺れるラブコメ×ミステリーです。
(イラスト:バツムラアイコ 先生)

http://taiga.kodansha.co.jp/author/k-ayasato.html#link9784065280119


“琴音”は天使となることを定められた神に選ばれし存在。“夜助”はその彼女に仕える
執事であり、彼女を至高と崇める者でありながら、天使とは敵対関係にある悪魔でもある。
二律背反の感情を抱く彼は、犯罪被災体質を持つ彼女と共に日々事件に巻き込まれて──。

次々に起こる事件から“琴音”を守るべく“夜助”が名推理と共に解決する、のではなく
事件を利用して彼女を悪堕ちさせる妄想、「悪魔的解決法」にうつつを抜かしている間に
彼女が事件を無かったことにする「天使的解決法」で話を丸く収めてしまう展開が面白い。

慈悲の心を試され続ける“琴音”が直面する閉鎖環境での殺人、彼女の体質に纏わる昔話、
迫られる選択。“夜助”は執事として、そして悪魔として緊迫する局面をどう見届けるか。
コメディ要素に引っ張られつつ、エピローグが示す2人の絆の由来が良い余韻を残します。

posted by 秋野ソラ at 01:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2022年05月25日

『豚のレバーは加熱しろ(6回目)』

TVアニメ化が決定した、逆井卓馬 先生が贈る豚転生ファンタジー。第6巻はイェスマを
解放する「最初の首輪」を巡る連続殺人の犯人を追うべく“ジェス”が名探偵に扮します。
(イラスト:遠坂あさぎ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/butaliver/322112000023.html


イェスマの解放を主張する“ノット”。その手立てを失った王家、“シュラヴィス”たち。
同盟破棄の危機を前に、全ての首輪を破壊する「最初の首輪」は切り札となるか。童謡に
隠された謎を元に探し出そうとする“豚”たちの様子はいよいよミステリーっぽい展開に。

“豚”仕込みの名探偵ネタを披露する“ジェス”の可愛らしさとは裏腹に大量かつ連続で
人が殺されていく状況は深刻なものに。ここへさらにイェスマ解放の是非を問う者たちの
思惑が絡んできて、犯人の動機を探り直す必要に駆られるところも謎解き要素いっぱいで。

たった一つの真実に辿り着いた結果として、やはり“ヴィース”が抱いたであろう心痛に
思いを馳せてしまいます。王朝、そして解放軍の行方がどうなるか気になるところ以上に
“豚”が度々、耳にしていた幻聴の意味に気づくことができるか、次巻も目が離せません。

posted by 秋野ソラ at 00:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル