三上延 先生が贈る“栞子”と“大輔”のその後を描く大人気ビブリオミステリ。第3巻は
ある古書店の蔵書を形見として相続する少年の事情に“扉子”たちも深く関わっていきます。
(イラスト:越島はぐ 先生)
【 https://mwbunko.com/product/biblia/322105000045.html 】
「虚貝堂」の古書が息子の“恭一郎”に遺されず、彼の祖父に売却されそうなのを止めたい。
その依頼を“佳穂”から受けた“栞子”は“智恵子”の仕事を引き継いで日本を数日離れる。
戻ってくる間に“扉子”が問題の古本市で関係者の話を聞く手伝いをするという珍しい導入。
“大輔”同様に本を読む習慣がない“恭一郎”は本好きの父から千冊の本を譲り受けたいか。
祖父“正臣”はなぜ本を売ろうとするのか。“佳穂”はなぜ息子に蔵書を相続させたいのか。
話を聞くごとに当初の依頼だけで済まない事情も見えて着地点を探りながら読むのが面白い。
依頼の影にちらつく“智恵子”の姿。母親の頸木を外れたはずの“栞子”が、掴み切れない
その思惑を含め彼女を評価したあの一言が印象深い。知る由もなく新たな頸木をかけられる
者たちがどんな道を選ぶのか、選ばされるのか。空恐ろしさすら覚えながら続きを待ちます。
2022年04月08日
2022年04月07日
『悪逆大戦 地獄の王位簒奪者は罪人と踊る』
綾里けいし 先生が贈る新作は、恩ある少女が死んで奈落の底に堕とされたと知った少年が
かつて逃げ出した地獄へ戻り、彼女を救うべく地獄の王を目指すダークファンタジーです。
(イラスト:ろるあ 先生)
【 https://mfbunkoj.jp/product/akugyaku/322111001009.html 】
弱肉強食が信条の地獄では雑魚など常に命を狙われる。それゆえに地獄の王の第108子は
人界へ降りて“俊”と名乗り、日本で高校生として過ごす。ある事件に巻き込まれ地獄へ
堕とされた少女を救うため第七子“ネロ”へ直談判に挑んだのが茨の道になろうとは──。
“俊”の与り知らぬ間に始まる、第八子までが行う「地獄の王」継承戦。怠惰の象徴たる
“ネロ”には戦う気はなく、対する意気昂然な“俊”には魔力がなく。彼が肩代わりする
継承戦が、悪人を「駒」として戦わせる代理戦争というのが皮肉というか実にいやらしい。
劣勢が続く戦いの間にも思い浮かぶ、日本でも不憫な日々を過ごす“俊”を救ってくれた
“桜花”との大切な思い出。様々な「悪人」の逸話が戦局を左右する描写も面白いですし、
そもそも彼女にも謎がありそうな点も興味を抱かせます。続きが楽しみなシリーズです。
かつて逃げ出した地獄へ戻り、彼女を救うべく地獄の王を目指すダークファンタジーです。
(イラスト:ろるあ 先生)
【 https://mfbunkoj.jp/product/akugyaku/322111001009.html 】
弱肉強食が信条の地獄では雑魚など常に命を狙われる。それゆえに地獄の王の第108子は
人界へ降りて“俊”と名乗り、日本で高校生として過ごす。ある事件に巻き込まれ地獄へ
堕とされた少女を救うため第七子“ネロ”へ直談判に挑んだのが茨の道になろうとは──。
“俊”の与り知らぬ間に始まる、第八子までが行う「地獄の王」継承戦。怠惰の象徴たる
“ネロ”には戦う気はなく、対する意気昂然な“俊”には魔力がなく。彼が肩代わりする
継承戦が、悪人を「駒」として戦わせる代理戦争というのが皮肉というか実にいやらしい。
劣勢が続く戦いの間にも思い浮かぶ、日本でも不憫な日々を過ごす“俊”を救ってくれた
“桜花”との大切な思い出。様々な「悪人」の逸話が戦局を左右する描写も面白いですし、
そもそも彼女にも謎がありそうな点も興味を抱かせます。続きが楽しみなシリーズです。
2022年04月06日
『魔法使い黎明期5 新世界の使者』
TVアニメが放映開始の時を迎える、虎走かける 先生が贈る本格ファンタジー。第5巻は
“ロス”でも渡れない死の海を越えた新世界からの来訪者が新たな冒険を呼び起こします。
(イラスト:いわさきたかし 先生 一部キャラクター原案:しずまよしのり 先生)
【 http://lanove.kodansha.co.jp/books/2022/4/1.html 】
【 https://www.tbs.co.jp/anime/reimeiki/ 】
“セービル”が作る魔法薬が世の中を変えていく中、違法なものを売りさばくウサ耳美女
“ハル・ベル”を捕まえたら、新世界の存在と現状を知ることになる導入部。死の海域と
呼ばれる海を越えて交易する、というハードルを易々と超える“ゼロ”が相変わらず凄い。
魔力回復薬を大量に求めるほど魔力不足に陥る新世界。そこに“ハル・ベル”が“ホルト”
だけに従う理由や獣堕ちを隷獣扱いする“ダナ・リル”、その娘“ウツワ”の選民思想が
浮き彫りになってくることで“ロス”たちの目的に翳りが見え始めてくる雰囲気がヤバい。
好奇心にあふれる異文化の邂逅が、やがて諍いの火種に。新世界と禁足地の狭間で揺れる
立場に置かれた“ハル・ベル”が求められた選択にどう答えるか。それに“ロス”たちは
どう応えるか。抱く感情を知らぬ“ダナ・リル”たちに憐れみを抱きつつ次巻を待ちます。
“ロス”でも渡れない死の海を越えた新世界からの来訪者が新たな冒険を呼び起こします。
(イラスト:いわさきたかし 先生 一部キャラクター原案:しずまよしのり 先生)
【 http://lanove.kodansha.co.jp/books/2022/4/1.html 】
【 https://www.tbs.co.jp/anime/reimeiki/ 】
“セービル”が作る魔法薬が世の中を変えていく中、違法なものを売りさばくウサ耳美女
“ハル・ベル”を捕まえたら、新世界の存在と現状を知ることになる導入部。死の海域と
呼ばれる海を越えて交易する、というハードルを易々と超える“ゼロ”が相変わらず凄い。
魔力回復薬を大量に求めるほど魔力不足に陥る新世界。そこに“ハル・ベル”が“ホルト”
だけに従う理由や獣堕ちを隷獣扱いする“ダナ・リル”、その娘“ウツワ”の選民思想が
浮き彫りになってくることで“ロス”たちの目的に翳りが見え始めてくる雰囲気がヤバい。
好奇心にあふれる異文化の邂逅が、やがて諍いの火種に。新世界と禁足地の狭間で揺れる
立場に置かれた“ハル・ベル”が求められた選択にどう答えるか。それに“ロス”たちは
どう応えるか。抱く感情を知らぬ“ダナ・リル”たちに憐れみを抱きつつ次巻を待ちます。
2022年04月05日
『【BOOK☆WALKER限定】六畳間の侵略者!? へらくれす!出張版』
健速 先生が贈る人気シリーズ。「BOOK☆WALKER」(電子書籍)のみで贈る中編小説では
高校生最後の夏を過ごす“孝太郎”たちが忙しい中、夏祭りで羽を伸ばす顛末を描きます。
(イラスト:ポコ 先生)
【 https://firecross.jp/hjbunko/product/1475 】
夏祭り、と言えば浴衣。女性陣の浴衣選び、そのセンスから窺える彼女たちの「らしさ」
を“孝太郎”がどう評価するか。このやり取りがまず面白い。“ティナ”から揚げ足を
取られそうになる所を“クラン”の着付けを手伝うことで回避していまうのが印象的で。
金魚すくいや射的、出店の買い食いと夏祭りを満喫する中で“ナナ”が何かと可愛らしい
と言われて、これまた可愛らしく怒る様子が何とも微笑ましい。“ティナ”と射的勝負に
臨む“孝太郎”が互いに喧嘩しながら世話を焼く、という独特の信頼関係が興味深い話で。
“ゆりか”も気付く、“ナナ”と“孝太郎”にある距離感の変化。思わず“ルース”らが
騒ぎ出すその「きっかけ」は読んで確認いただくとして、天才肌であるがゆえに不器用に
生きてきた彼女に対して冷静に、的確に対処できる彼を改めてすごいと感じる一幕でした。
高校生最後の夏を過ごす“孝太郎”たちが忙しい中、夏祭りで羽を伸ばす顛末を描きます。
(イラスト:ポコ 先生)
【 https://firecross.jp/hjbunko/product/1475 】
夏祭り、と言えば浴衣。女性陣の浴衣選び、そのセンスから窺える彼女たちの「らしさ」
を“孝太郎”がどう評価するか。このやり取りがまず面白い。“ティナ”から揚げ足を
取られそうになる所を“クラン”の着付けを手伝うことで回避していまうのが印象的で。
金魚すくいや射的、出店の買い食いと夏祭りを満喫する中で“ナナ”が何かと可愛らしい
と言われて、これまた可愛らしく怒る様子が何とも微笑ましい。“ティナ”と射的勝負に
臨む“孝太郎”が互いに喧嘩しながら世話を焼く、という独特の信頼関係が興味深い話で。
“ゆりか”も気付く、“ナナ”と“孝太郎”にある距離感の変化。思わず“ルース”らが
騒ぎ出すその「きっかけ」は読んで確認いただくとして、天才肌であるがゆえに不器用に
生きてきた彼女に対して冷静に、的確に対処できる彼を改めてすごいと感じる一幕でした。
2022年04月04日
『六畳間の侵略者!? 40』
健速 先生が贈る人気シリーズ。通算42冊目はフォルトーゼ本国へ向かう旅支度にいそしむ
“孝太郎”たち六畳間の面々や“賢治”や“琴理”たちのドタバタぶりを描く中編集です。
(イラスト:ポコ 先生)
【 https://firecross.jp/hjbunko/product/1474 】
“孝太郎”が埴輪たちの熱量に突き動かされて始まるラジコン勝負。そこに“クラン”が
参戦して準備に勤しむ姿から、互いに意外な一面を感じてつい面映ゆい様子を見せるのが
微笑ましい。場外の駆け引きも含めた彼らの勝負の行方も見ていて面白いものがあります。
“真希”と“クリムゾン”の再会では気まずさを残しながら、変わりゆく互いの姿を口に
するやり取りが興味深くて。“ナナ”と“佳苗”の再会では年月を重ねて変わったものと
それでも変わらないものを、思いがけない新旧勝負の中で見い出す顛末が印象に残ります。
出発を前に“賢治”と“琴理”が超冷戦状態に陥る、という状況を横目に六畳間の面々が
それぞれの絆を確かめ合い、その先を見据える想いに感慨深さを覚えつつ遠く離れた地で
“エルファリア”がどんな幸せな罰を愛する“孝太郎”に用意するのか、楽しみな所です。
“孝太郎”たち六畳間の面々や“賢治”や“琴理”たちのドタバタぶりを描く中編集です。
(イラスト:ポコ 先生)
【 https://firecross.jp/hjbunko/product/1474 】
“孝太郎”が埴輪たちの熱量に突き動かされて始まるラジコン勝負。そこに“クラン”が
参戦して準備に勤しむ姿から、互いに意外な一面を感じてつい面映ゆい様子を見せるのが
微笑ましい。場外の駆け引きも含めた彼らの勝負の行方も見ていて面白いものがあります。
“真希”と“クリムゾン”の再会では気まずさを残しながら、変わりゆく互いの姿を口に
するやり取りが興味深くて。“ナナ”と“佳苗”の再会では年月を重ねて変わったものと
それでも変わらないものを、思いがけない新旧勝負の中で見い出す顛末が印象に残ります。
出発を前に“賢治”と“琴理”が超冷戦状態に陥る、という状況を横目に六畳間の面々が
それぞれの絆を確かめ合い、その先を見据える想いに感慨深さを覚えつつ遠く離れた地で
“エルファリア”がどんな幸せな罰を愛する“孝太郎”に用意するのか、楽しみな所です。