両生類かえる 先生の「第17回MF文庫Jライトノベル新人賞・最優秀賞」受賞作。他人に
嘘をつけない少女が“でたらめちゃん”の奇天烈な都合に巻き込まれる顛末を描きます。
(イラスト:甘城なつき 先生)
【 https://mfbunkoj.jp/product/detarame/322107001130.html 】
友人の“芳乃”から鉛筆泥棒の犯人を捕まえたいので協力してくれ、と頼まれた“東月”。
快く了承した彼女は帰宅後、自分が犯した「あるミス」をひとり、ほくそ笑みつつ省みる。
そんな彼女の嘘を断罪すると言い、猫耳パーカーを着た謎の少女が包丁を手に現れて──。
“でたらめちゃん”の振舞いもさることながら、まず“東月”が相当な異常者すぎて驚く。
鉛筆が盗まれた犯人をあっさりと明かされた“芳乃”も変な方向に大物だな、と思う所で
謎すぎる少女から語られた、嘘を現実にする〈嘘憑き〉の話に絡んでくるから更に驚きで。
話が進んでいくにつれ“東月”が何度も呆気にとられるのと同じく「えんぴつ事件」から
はるか遠くに事態が動いていることに「えっ」と思わずにいられないスピード感。彼女が
嘘をつけない、という点がどこまで効いてくるか。物語としての展望が気になる作品です。
2021年12月10日
2021年12月09日
『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん3』
燦々SUN 先生が贈る大人気ロシアンJKとの青春ラブコメディ。第3巻は討論会での顛末を
経て結束を強める“アリサ”と“政近”に対して“有希”が更なる攻めの一手を打ちます。
(イラスト:ももこ 先生)
【 https://sneakerbunko.jp/product/roshidere/322106001160.html 】
【 https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_CW01202130010000_68/ 】
【 https://ncode.syosetu.com/n2778gf/ 】
“谷山”が陥った状況を見て、看過できないと“政近”に救済措置を講じてもらうあたり
“アリサ”の優しさ、というか甘さが窺えます。対称的に強かな彼とは良いコンビとする
印象づけにも繋がっているのではないかと。そんな穴を“有希”が見逃さないワケですが。
“政近”が女性陣からラッキースケベな目に遭ったり、熱で休んだ日に“アリサ”に看病
してもらったり、と羨ましい様子から一変して“有希”が“アリサ”を己のフィールドに
持ち込んでマウントを取りに来る展開が中々えげつない。彼の的確なフォローが光ります。
選挙戦の大事な局面でロシアと日本の文化の違いを活かし、「ロシア語を理解している」
という強力な札をさりげなくバレないように切ってくる“政近”の作戦が印象に残ります。
“アリサ”と距離を縮めていく彼に“有希”がどこまで強キャラ感を出せるか見ものです。
経て結束を強める“アリサ”と“政近”に対して“有希”が更なる攻めの一手を打ちます。
(イラスト:ももこ 先生)
【 https://sneakerbunko.jp/product/roshidere/322106001160.html 】
【 https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_CW01202130010000_68/ 】
【 https://ncode.syosetu.com/n2778gf/ 】
“谷山”が陥った状況を見て、看過できないと“政近”に救済措置を講じてもらうあたり
“アリサ”の優しさ、というか甘さが窺えます。対称的に強かな彼とは良いコンビとする
印象づけにも繋がっているのではないかと。そんな穴を“有希”が見逃さないワケですが。
“政近”が女性陣からラッキースケベな目に遭ったり、熱で休んだ日に“アリサ”に看病
してもらったり、と羨ましい様子から一変して“有希”が“アリサ”を己のフィールドに
持ち込んでマウントを取りに来る展開が中々えげつない。彼の的確なフォローが光ります。
選挙戦の大事な局面でロシアと日本の文化の違いを活かし、「ロシア語を理解している」
という強力な札をさりげなくバレないように切ってくる“政近”の作戦が印象に残ります。
“アリサ”と距離を縮めていく彼に“有希”がどこまで強キャラ感を出せるか見ものです。
2021年12月08日
『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 Another side story 三島柚葉』
しめさば 先生が贈るサラリーマンと女子高生の日常ラブコメディ。本編完結のその後を
描く外伝は、“三島”が“吉田”に寄せる思慕の起点と辿り着く終着点に触れていきます。
(イラスト:ぶーた 先生)
【 https://sneakerbunko.jp/product/higewosoru/322105000116.html 】
“沙優”がいなくなった穴を仕事で埋めるかのような“吉田”の近寄りがたい雰囲気も
何のそので強引に映画へ誘う“三島”。鑑賞後、彼女を突き動かす心の熱量が爆発する
一連のやり取りは気まずいながらもやっと辿り着いた転換点で感慨深いことこの上なく。
“吉田”にとっては寝耳に水な“三島”の気持ちをどう受け止めるのか。鈍感ながらも
“あさみ”や“橋本”、“神田”たちに助けられつつ「彼女にとって彼ができること」を
実行に移す場面であの映画が自分を、そして互いを見つめ直す因子となる顛末が印象的。
“三島”の恋は物語のように区切りよく終わることなく、しこりとなって心に残り続ける
ことになるとは思います。幾度も流した彼女の涙は見ていて痛ましく、切なくなるばかり
ではなく、次なる物語へと繋がっていくことを切望して止まない。そんなSSでありました。
描く外伝は、“三島”が“吉田”に寄せる思慕の起点と辿り着く終着点に触れていきます。
(イラスト:ぶーた 先生)
【 https://sneakerbunko.jp/product/higewosoru/322105000116.html 】
“沙優”がいなくなった穴を仕事で埋めるかのような“吉田”の近寄りがたい雰囲気も
何のそので強引に映画へ誘う“三島”。鑑賞後、彼女を突き動かす心の熱量が爆発する
一連のやり取りは気まずいながらもやっと辿り着いた転換点で感慨深いことこの上なく。
“吉田”にとっては寝耳に水な“三島”の気持ちをどう受け止めるのか。鈍感ながらも
“あさみ”や“橋本”、“神田”たちに助けられつつ「彼女にとって彼ができること」を
実行に移す場面であの映画が自分を、そして互いを見つめ直す因子となる顛末が印象的。
“三島”の恋は物語のように区切りよく終わることなく、しこりとなって心に残り続ける
ことになるとは思います。幾度も流した彼女の涙は見ていて痛ましく、切なくなるばかり
ではなく、次なる物語へと繋がっていくことを切望して止まない。そんなSSでありました。
2021年12月07日
『不死王の息子 1』
「薬屋のひとりごと」の 日向夏 先生が贈る新作は、人間と人外が共存する日本で不死者
の王とその息子に関わることになる少女の数奇な運命を描くカニバリズム・コメディです。
(イラスト:大地幹 先生)
【 https://herobunko.com/books/hero101/13366/ 】
“由紀子”の通う小学校でも耳にする連続行方不明事件。塾通いで遅くなったある日の夜、
彼女はその犯人である人外、食人鬼と遭遇して致命傷を負う。最近転入してきた不死王の
息子“不死男”が駆けつけることに気づくも、時すでに遅し・・・となるはずだったが──。
非常事態とはいえ“不死男”の父の肉を食べたことで人の道を外れてしまう“由紀子”が
直面する現実を淡々と受け入れていく様子が面白い。彼のことは受け入れないのも含めて。
己の肉に矜持のある“山田父”を容赦なく捌く“山田母”なども滑稽さに拍車を掛けます。
不死身になれるという不死者の血肉。温和な山田一族、そして“由紀子”も例外なく標的
として危険に晒される中、一族には何やら複雑な事情があることが見え隠れする所に注目。
大人たちの都合にも巻き込まれる彼女はどんな道を歩んでいくのか、続く展開を待ちます。
の王とその息子に関わることになる少女の数奇な運命を描くカニバリズム・コメディです。
(イラスト:大地幹 先生)
【 https://herobunko.com/books/hero101/13366/ 】
“由紀子”の通う小学校でも耳にする連続行方不明事件。塾通いで遅くなったある日の夜、
彼女はその犯人である人外、食人鬼と遭遇して致命傷を負う。最近転入してきた不死王の
息子“不死男”が駆けつけることに気づくも、時すでに遅し・・・となるはずだったが──。
非常事態とはいえ“不死男”の父の肉を食べたことで人の道を外れてしまう“由紀子”が
直面する現実を淡々と受け入れていく様子が面白い。彼のことは受け入れないのも含めて。
己の肉に矜持のある“山田父”を容赦なく捌く“山田母”なども滑稽さに拍車を掛けます。
不死身になれるという不死者の血肉。温和な山田一族、そして“由紀子”も例外なく標的
として危険に晒される中、一族には何やら複雑な事情があることが見え隠れする所に注目。
大人たちの都合にも巻き込まれる彼女はどんな道を歩んでいくのか、続く展開を待ちます。
2021年12月06日
『灰原くんの強くて青春ニューゲーム 1』
雨宮和希 先生の「HJ小説大賞2020前期」受賞作。暗い高校生活に悔いを残して社会人に
なる青年がタイムリープを機に高校生をやり直す、強くてニューゲーム学園ラブコメです。
(イラスト:吟 先生)
【 https://firecross.jp/hjbunko/product/1417 】
陰キャだった中学時代を反省して、高校デビューで心機一転を図るも失敗した“夏希”は
灰色のまま三年間を終える。大学生になり、就職も決まった彼が今も後悔する灰色の青春。
やり直したい、と居酒屋で煙草をくゆらせる彼はふと気が付くとあの頃に戻っていて──。
自己改造計画が功を奏して幼馴染の“美織”も驚くほど変貌を遂げ、陽キャなメンバーに
仲間入りする“夏希”。「またオレ何かやっちゃいました?」と言わんばかりに完璧超人
の印象を周囲に与える彼が、前回はフラれた“星宮”との交際を目標に頑張る姿が印象的。
灰色の青春を送ったが故に知る由もなかった「虹色の青春」における悩みに直面したとき、
“夏希”はどう対応するかが実に良い見せ場。彼の青春の行方だけでなく“美織”の行動
に裏はないのか、そもそもなぜやり直せたのか、など気になる点も多く続きが楽しみです。
なる青年がタイムリープを機に高校生をやり直す、強くてニューゲーム学園ラブコメです。
(イラスト:吟 先生)
【 https://firecross.jp/hjbunko/product/1417 】
陰キャだった中学時代を反省して、高校デビューで心機一転を図るも失敗した“夏希”は
灰色のまま三年間を終える。大学生になり、就職も決まった彼が今も後悔する灰色の青春。
やり直したい、と居酒屋で煙草をくゆらせる彼はふと気が付くとあの頃に戻っていて──。
自己改造計画が功を奏して幼馴染の“美織”も驚くほど変貌を遂げ、陽キャなメンバーに
仲間入りする“夏希”。「またオレ何かやっちゃいました?」と言わんばかりに完璧超人
の印象を周囲に与える彼が、前回はフラれた“星宮”との交際を目標に頑張る姿が印象的。
灰色の青春を送ったが故に知る由もなかった「虹色の青春」における悩みに直面したとき、
“夏希”はどう対応するかが実に良い見せ場。彼の青春の行方だけでなく“美織”の行動
に裏はないのか、そもそもなぜやり直せたのか、など気になる点も多く続きが楽しみです。