2021年12月17日

『愛じゃないならこれは何』

斜線堂有紀 先生が贈る新作は恋愛小説集。ジャンプ×ノベル「JUMP j BOOKS」公式note
に掲載の4小編に、書き下ろし作『ささやかだけど、役に立つけど』を収録しております。
(装画:ナナカワ 先生)

https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-790068-2


一番熱心なファンの恋路に楔を打つアイドル、両片思いかと思えば勘違いなデザイナー、
「三人で結婚しろ」案件な男女3人、一目惚れした後輩に向けた趣味を貫き通す先輩、と
安易に「自分本位だから」「相手本位だから」と区別できない恋愛模様が描かれています。

印象深いのは『ミニカーだって一生推してろ』でSNSを介して邪念にまみれていく“瑠璃”、
『きみの長靴でいいです』であの振舞いをしながらもビジネスな関係を貫き通す“妻川”、
『愛について語るときに我々の騙ること』であと一歩を踏み入らせない“鳴花”たち3人。

そんな3人の関係を深堀する“園生”の独白を綴った『ささやかだけど、役に立つけど』
では交わらない感情のベクトルが生じた背景や、彼の抱いてしまった欲を端的に問い質す
あの一言へと繋がる逸話の追憶に驚かされます。サッと読めるページ数なのもお薦めです。

posted by 秋野ソラ at 00:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年12月16日

『僕らのセカイはフィクションで』

夏海公司 先生が贈る新作は、学園内外のトラブルを解決しながらWeb作家として活動する
少年が、現実世界でなぜか自作のヒロインと遭遇し彼女が陥る窮地を救う顛末を描きます。
(イラスト:Enji 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322106001048.html


学園事件解決人“文士”は解決した事件をネタに小説を書く。投稿作は人気を博すものの
ネタ切れで筆を止めている彼の前に突如現れたのが“いろは”。自作のヒロインと思しき
少女が自作の敵に襲われている場面を目にした彼だが驚きつつもやることはただ一つ──。

「作者として設定を知っているから」と“文士”が“いろは”を颯爽と救う手際の良さで
その先も夢想していくのか、と思いきや彼の人知を超えた事件、更に人物が現れることで
思いがけない方向へ舵を切っていく話の流れに「なるほどそう来たか」と思うことしきり。

“文士”のことを何かと気に掛けるイラストレーターの存在が鍵となって広がるセカイ、
その思惑を超えた「敵」を前に彼は、そして“いろは”は何を思うのか。エピローグも
面白そうな余韻を残していて続きがあってしかるべき内容です。オススメしておきます。

posted by 秋野ソラ at 00:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年12月15日

『好きな子にフラれたが、後輩女子から「先輩、私じゃダメですか……?」と言われた件』

「クラスのぼっちギャルをお持ち帰りして清楚系美人にしてやった話」に続く 柚本悠斗
先生の新作は、好きな人がいる先輩に横恋慕する後輩女子が恋を叶える略奪純愛劇です。
(イラスト:にゅむ 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815609627/


自分が監督、そしてカメラマンとしてドラマを作る夢を抱く“鳴海”が求める理想の女優。
演劇部の舞台で熱演する“楓”先輩に理想の姿を、そして恋心を重ねた彼は知る由もない。
彼の隣で、彼と夢を共にする“彩乃”が、彼に淡い想いを抱き続けていたことなんて──。

恋愛経験ゼロの“鳴海”が“彩乃”との恋人ごっこを経てそのイロハを伝授してもらう、
という口実で彼女がちょっとイイ思いをしたり、腹黒い一面を覗かせたりする所が可愛い。
そして「初恋を叶える1パーセントの人」を目指し諦めない姿に空恐ろしさすら感じます。

“楓”が役を演じる上での致命的欠陥。先生から教えられたそれを克服すべく“鳴海”が
あの手この手を尽くす中、彼自身が決定的な鍵となることに気づくまでの後手に回った感。
覚悟を決めた“彩乃”に彼女はこのままリードを許すのか。恋心の行方が気になります。

posted by 秋野ソラ at 00:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年12月14日

『男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 4. でも、わたしたち親友だよね?〈上〉』

七菜なな 先生が贈る青春〈友情〉ラブコメディ。第4巻は“日葵”を引き留めた“悠宇”
を見て“凛音”も「親友」として彼との距離感を詰めるべく残る夏休みを有効に使います。
(イラスト:Parum 先生)

https://dengekibunko.jp/product/danjoru/322106001049.html


お祭りに花火、そしてビーチ遊び。“日葵”と“悠宇”の仲がステップアップした様子が
見られて一安心・・・と思いきや“慎司”が思いついた作戦に“紅葉”と“咲良”が乗っかり、
“凛音”が彼と一緒にいられる時間を作ってしまうあたりから何とも油断ならない展開に。

物理的に“日葵”から離された“悠宇”と時間を共にする機会を得た“凛音”が長期戦を
覚悟して「今は親友でもいいから」と言いながらアプローチを図る様子が強かで興味深い。
その上で彼女が目にしている彼の姿は本当に今を見据えているか見届ける必要がありそう。

面白い力関係を見せる“紅葉”と“凛音”ですが最終的には“紅葉”が一枚上手のようで。
“日葵”のことをまだ諦めていない“紅葉”が一度やられただけでやり返さない訳がない。
“悠宇”の鼻をへし折ろうとする強敵を前に、彼は太刀打ちできるのか続きが見ものです。

posted by 秋野ソラ at 00:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年12月13日

『ノーゲーム・ノーライフ11 ゲーマー兄妹たちはカップルにならなきゃ出られないそうです』

榎宮祐 先生が贈る大人気異世界ファンタジー。3年半以上の時を経て刊行される第11巻は
妖精種によって押し込められた空間で“空”と“白”が互いの関係と未来に向き合います。
(イラスト:榎宮祐 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/ngnl/321809000110.html


まずは 榎宮 先生の復帰を心よりお祝い申し上げます。先生の Twitter アカウントを拝見
していただけに感慨もひとしお。長い時を経ても色褪せないキャラクターの魅力、そして
物語そのものの面白さには驚嘆するしかありません。・・・そして圧倒的なページ数の多さも。

“フェオニクラム”によって仕組まれた恋愛ドキュメンタリーという名の動画配信と共に
精神操作や悪堕ちなどエロノベ手前のネタに翻弄される“空”たちが事の経緯を思い出す
まで、そして“白”が安易な言葉で語れない兄との関係を自認するまでの流れが印象的で。

『  』に敗北はない、と自負する2人の間違いと、間違っていない部分を認めてあげた
“ステフ”の振舞いも見逃せません。ある意味“フェオニクラム”の一人勝ちが際立つ中、
ゲーマーとして勝ち逃げなんて許さない“空”たちが世界をどう揺るがすか、見ものです。

posted by 秋野ソラ at 00:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル