2021年12月31日

『義妹生活4』

企画・原作・脚本を担当するアニメ・マンガ動画を 三河ごーすと 先生が自らノベライズ。
第4巻は兄妹でいることを決めたはずの“悠太”と“沙季”の錯綜する胸中を深堀します。
(イラスト:Hiten 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/gimaiseikatsu/322108000971.html
https://www.youtube.com/channel/UCOQyW7GmCyTKwjCJEaTBWRw


「それは恋愛感情などではない、としたら?」と思いがけない所から指摘される“沙季”。
義兄に抱く感情を紐解く過程で自分の本質を見つめ直すことになる彼女が、答えには辿り
着かないにしても視野を広げる糸口を掴んだのは塞翁が馬か。“読売”先輩は大変ですね。

「女性に期待しないで育ったでしょう?」と思わぬ縁で同族嫌悪の誹りを受ける“悠太”。
“沙季”と出会って掛けられたあの一言を聞いて彼は本当に安堵しただけなのか。翻って
彼女は同じ気持ちでいたのか、両親はどうだったのか、と自分を見つめ直せたのは好機か。

義理とは言え兄妹の関係である“悠太”と“沙季”が、募る想いと罪悪感から少し距離を
置こうとして違う異性と接する機会を増やした結果、2人の心を占有する感情は何なのか。
感じた熱に、そして幸福感に掻き立てられて我を貫こうとする両者の行方が気になります。

posted by 秋野ソラ at 00:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年12月30日

『機械音痴な幼馴染が我が家でリモート授業を受けているのは、ここだけの秘密。』

秋月月日 先生が贈る新作は、幼馴染の少年に恋をする機械音痴の少女が通学する高校で
導入されるオンライン授業を機に彼との距離を縮めようと模索する在宅ラブコメディです。
(イラスト:雪島もも 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/202112remote/322108001000.html


“枝折”と“重音”は小中高が一緒で、昔は遅くなるまで一緒に遊んだ幼馴染。いつしか
抱いた彼女の恋心も何故か距離を置くようになった彼にうまく伝えられず持て余すばかり。
オンライン授業が始まるにあたってノートPCの扱いが苦手な彼女は彼を頼りたいけど──。

表紙にもある通り、眼を隠すところから感じる“枝折”の気弱さ。その彼女が“重音”に
見せる健気な行動、ちょっとした油断、それに人知れず気付いた“唯奈”の好アシストも
あって彼に印象付けをしていく展開は、見ていてつい応援したくなるのが人情というもの。

“重音”が“枝折”の想いに気づかない「思い込み」の部分は分かるけど分かりたくない、
複雑な感情が渦巻きます。メカクレ大好きな 秋月 先生にまんまとしてやられた感じです。
彼に素晴らしい助言をくれた“佐々木”先生にも要注目。清々しい読了感の残る作品です。

posted by 秋野ソラ at 00:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年12月29日

『美少女とぶらり旅』

青季ふゆ 先生の「小説家になろう」投稿作が書籍化。閉塞を感じる日常から解放されたい
と旅に出た少年が希死念慮に囚われる級友の少女と遭遇する所から始まる旅ラブコメです。
(イラスト:いちかわはる 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/202112burari/322107001150.html
https://ncode.syosetu.com/n0166hc/


進学校に通う“高橋”は動画投稿で稼げる実力もあり将来もその道を、と希望するも両親
から猛反対をくらう。学校でのストレスも重なり「旅に出よう!」と発起して家出を敢行。
出立の田端駅で“七瀬”が投身しようする場を目にした彼は、彼女に同行を提案する──。

行きたいところはあるか、と問えば「天国とか?」と答えるほど厭世的な“七瀬”を連れ
目的地もないまま旅を続ける“高橋”。彼が次第に彼女の心を解いていく内に見えてくる
凄惨な生い立ちは、踏み入る彼に対し最後の壁として立ちはだかるのも無理はない内容で。

それでも生きることに絶望感を拭えない“七瀬”の心を救うのが、旅の途中で出会う人々
との縁であったり、何より真剣に彼女と向き合った“高橋”の熱い想いだったりする所に
心温まる何かを感じます。2人の人生の寄り道が有益になることを願いつつ続刊希望です。

posted by 秋野ソラ at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年12月28日

『出会ってひと突きで絶頂除霊!9』

赤城大空 先生が贈るアツくて淫らな退魔活劇。第9巻は最後のパーツが敵に奪われる予言
を受けて先取を目指す“晴久”に付けられる強力な護衛が、周囲に大きな波紋を呼びます。
(イラスト:魔太郎 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094530469


テロリストの目的が「サキュバス王の復活」による「性の理想郷の建設」という予想外の
未来を目指しているのに対し、“ミホト”の見解がまだ食い違っているのがもどかしい所。
快楽堕ちした“アーネスト”から言質を取った「絶頂司法取引」という言葉が衝撃的です。

パーツ奪取作戦に護衛として現れた“朝風”が“楓”たちの心をざわつかせる、その隙を
突くかのように発生した怪異がまた強烈。認識阻害を受けてもなお彼女たちが“晴久”と
“晴久”と一線超えていないのが不思議なくらい。よく乗り切ったな、と褒めたいほどに。

淫魔化した“アンドロマリウス”、その上をゆく敵を前にしても善戦する“晴久”たちの
活躍が目覚ましい。「正エネルギー」ならぬ「性エネルギー」が物語の鍵を握る言い様の
ない展開がどこへ向かうのか。更なる陰謀をほのめかすエピローグの内容も気になります。

posted by 秋野ソラ at 00:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年12月27日

『ルーン帝国中興記 〜平民の商人が皇帝になり、皇帝は将軍に、将軍は商人に入れ替わりて天下を回す〜』

「我が驍勇にふるえよ天地」シリーズを完結させた あわむら赤光 先生の新作。斜陽の国
で燻ぶる商人、皇帝、将軍が適材適所の立場に入れ替わり、世を変えていく様を描きます。
(イラスト:Noy 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815609474/


長引く戦争で疲弊するルーン帝国。商会の長として現皇帝の失政に思う所ある“セイ”は
皇帝“ユーリ”と将軍“グレン”が同席する酒宴に偶然居合わせる。無礼講をいいことに
自分ならマシな世にできる、と豪語する“セイ”に“ユーリ”はある策を打ち明ける──。

副題にある通り、肩代わりすることで各々が抱える問題を理解し、当事者が選べなかった
独自のやり方で解決に導いていく勧善懲悪な展開は読んでいて実に爽快。“セイ”の話を
軸にしながら“ユーリ”や“グレン”の領域も絡ませてくる構成なのがまた興味深い所で。

“セイ”に“ミレニア”、“ユーリ”に“エファ”、“グレン”に“ステラ”と本来なら
深く関わることのないヒロインたちが、彼らの入れ替わりを通じて抱く想いも気になる点
ではあるものの、定められた1年という期限がどう左右するか。続きが楽しみな作品です。

posted by 秋野ソラ at 00:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル