2021年11月30日

『霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない』

綾里けいし 先生が贈る新作は、死者と語りその姿を人に見せる異能をもつ「かみさま」に
なるはずだった少女とその従者となる青年が経験する非日常を描く現代伝奇ミステリです。
(イラスト:生川 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094530421


藤咲家。異能の一族として現代にも在り続ける家に生まれた“藤花”はその実権をも握る
「かみさま」の候補となる。幼き彼女と出会った“朔”は名誉ある従者として選ばれる。
しかし劣化品、として「かみさま」に選ばれなかった彼女たちの行く末はというと──。

意味深長な導入から一転して“藤花”の凋落が著しい姿と、呆れつつも面倒をみる“朔”、
2人で生きる微笑ましい生活感あふれる描写が面白い。そんな彼女が限られた異能を使い
霊能探偵として難事件を紐解いていく、バディものとしても楽しめる話なのが先生らしい。

やがて“藤花”と“朔”が遭遇する「かみさま」の予言に纏わる顛末。その中で改めて
語られる邂逅のエピソードが今の2人に繋がっているのだと印象づける描写は必見かと。
主従だけでなく様々な関係を内在する2人がどこへ向かうのか、見届けてみたいものです。

posted by 秋野ソラ at 00:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年11月29日

『君は僕の後悔2』

しめさば 先生が贈る、後悔を抱えた少年少女による恋と対話の物語。第2巻は“結弦”と
距離を置くように言動が変化していく“薫”の抱える胸の内に、彼が深く触れていきます。
(イラスト:しぐれうい 先生)

http://dash.shueisha.co.jp/bookDetail/index/978-4-08-631442-8


“薫”が部室でラーメンを食べる理由。その一端に触れた大雨の日。“結弦”に見せた涙。
借りた本を境に彼女が構築した「宇宙」。それを盾に孤高を貫く彼女へ差し伸べられた手。
限られた宇宙をその手に広げられた彼女の「一番になれない」という葛藤が胸を打ちます。

“結弦”の姿を見て「ほっといてやんなよ」とやんわり諭す先輩の“名越”。彼女からは
逆に“薫”や“藍衣”にとって温かいと感じる言葉がカッターのように感じる人もいると
経験談をもって彼の胸に刻ませたかのような言動が、そこに至った経緯が気になるところ。

“藍衣”は“薫”の背景にある懊悩も、“結弦”の奥底にある躊躇も、それを吹っ切った
2人の感情も見据えた上で「もう二度と……後悔しないで」と告げる一連の発言。あれが
また印象的で。今は笑顔の戻った“薫”に安堵しつつ、彼の思考の行方を見定めたいです。

posted by 秋野ソラ at 00:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年11月26日

『メイデーア転生物語 5 扉の向こうの魔法使い(下)』

友麻碧 先生が贈る本格ファンタジー作品。 第4巻は帝国の強襲を受ける魔法学校の窮地
に対応すべく“マキア”たちが強大な力の源、前世の秘密、絡み合う縁に触れていきます。
(イラスト:雨壱絵穹 先生)

https://lbunko.kadokawa.co.jp/product/maydare/322106000552.html


メイデーアを作った十柱の創世神。始まりの魔法使い。世界の理が次々と明らかになる中、
そこに“マキア”たちも紐づけられていく顛末には驚かされるばかり。“エスカ”司教や
“ユリシス”先生もこれまでの言動が先々を見据えてのことだと分かると得心がいきます。

事実と真実を受け入れてもなお、“マキア”や“トール”が今の自分自身を失わずにいる
ことが果たして永続的なことなのか。そもそもなぜ2人は現世で生を受けたのか。未だに
謎な要素は残しつつも、ようやく関係が進展したことにまずは胸をなでおろしたい所です。

『何度生まれ変わっても、俺はお前を、必ず、殺す』そう告げる「彼」の言葉にどれ程の
想いが乗せられていたのかと思うと、「彼女」の悲願達成も期待せずにはいられなくて。
一段と成長を遂げた“アイリ”や9班の面々がこの世界を守れるのか、続きに要注目です。

posted by 秋野ソラ at 02:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年11月25日

『公女殿下の家庭教師10 千年の都』

七野りく 先生が贈る魔法革命ファンタジー。大台に乗る第10巻は王太子の不当な要求を
躱すべく“リディヤ”に導かれ敵国へ脱出した“アレン”が更なる陰謀に巻き込まれます。
(イラスト:cura 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/201812koujodenka/322102001236.html


これぞ“リディヤ”のターン! 逃避行中、ライバル不在なのをいいことに“アレン”を
独占しようと、可愛がられたいがためにおねだりしまくる彼女の姿からは「剣姫」である
ことを思わず忘れてしまうほどです。振り回される彼も羨ましいやら、けしからんやら。

剣姫とその頭脳、2人なら敵国であろうと敵無し。しかも“アレン”の偉業は侯国連合の
水都にも伝わっていて、自然とかの国の内部にくさびを打つ形にもっていく展開が面白い。
“リディヤ”たちが決して束の間の休息を満喫しているだけではないところも注目です。

そんな無敵なはずの“リディヤ”と“アレン”の前に現れた、侯国連合の裏で暗躍する
強敵との相対。2人の力を合わせてもなお苦戦を強いられる局面に驚かされるとともに、
挫けることなく次は必ず勝つと誓う様子は実にらしくて安心します。次巻も楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 00:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年11月24日

『結婚が前提のラブコメ5』

栗ノ原草介 先生が贈る婚活ラブコメ。第5巻は“縁太郎”が“牡丹”の“男爵”に対する
想いを探ろうとする中、婚活業界を揺るがす一手を打ち出す“黒峰”にも頭を悩ませます。
(イラスト:吉田ばな 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094530346


“男爵”を伴侶たる異性と見ることができない“牡丹”。知り合った頃は満更でもないと
聞いた“男爵”が彼らしい手段でその真意に迫っていく顛末が興味深い。彼女が婚活する
意味を、彼女なりの幸せの形を追求した結果に“縁太郎”も示唆に富む所があったのでは。

「追い出し会」を経て次はいよいよ“カレン”と“結衣”の番。恋愛マスター“玉置”に
せっつかれる“縁太郎”も2人の気持ちを認識した上で答えを出さなければいけない立場。
最終巻で三者三様の「結婚」像をどう結ぶのか。栗ノ原 先生の動向も含めて要注視です。

「黒峰マリッジプランナー」に付くか、「結婚相談所・連合会」に残るか。究極の選択を
迫る“黒峰”に伸る“誠”に対し、不信感が拭えずに反る“縁太郎”。明暗を分ける道の
行方も、“黒峰”が抱える唯一の不安要素への対応方法もあわせて見届けたいと思います。

posted by 秋野ソラ at 00:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル