2021年09月23日

『楽園ノイズ3』

杉井光 先生が贈る青春バンドストーリー。第3巻は「PNO」の新メンバー候補“伽耶”を
加入させるかどうか悩む過程で“真琴”が自分の音楽と「PNO」の音楽を見つめ直します。
(イラスト:春夏冬ゆう 先生)

https://dengekibunko.jp/product/paradise_noise/322011000007.html


“玉村”の思いつきで“真琴”らに紹介された“伽耶”。ベースも上手く即戦力な彼女が
加入した「PNO」という未来を、彼女の可能性を見極める彼が結論づけたあの一言は流石。
彼女に涙を流させた罪作りな彼に下される天罰が少しでも軽くなることを祈っておきます。

自分抜きでクリスマスライブを、とわがままを通した“真琴”がソロ活動の中で出会った
プロレベルなのに謎多き動画の音源。辿り着いた“拓斗”との出会いが共に「音楽バカ」
であることを印象づけ、“拓斗”の止まっていた物語と紐づける結末へと誘う展開が絶妙。

“伽耶”も憧れていた「musa男」の活動を、「Misa男」として見届けてきた“華園”先生。
彼女が待誕節を通して貫ききれなかった嘘、残された祈りと願い。彼がこなしたハードな
デートスケジュールの果てに現実へと繋ぎとめられた「あの手」に光明を見い出しました。

posted by 秋野ソラ at 04:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年09月22日

『インフルエンス・インシデント Case:02 元子役配信者・春日夜鶴の場合』

駿馬京 先生が贈るインターネットに起因する事件へインフルエンサーが挑むミステリー。
第2巻は実際の炎上を運ぶと悪意ある噂を流される人気の配信者に纏わる事件を扱います。
(イラスト:竹花ノート 先生)

https://dengekibunko.jp/product/influence/322106000005.html


「RootDSpeak」に追加された『音声通話機能』を使いインフルエンサーのスクープ記事を
匿名で発信し続けるアカウントが広める「春日夜鶴は炎上を運ぶ」という噂。当の本人は
ボヤ騒ぎがあるのは認めるものの迷惑しているので“玲華”へ相談しに来たのが事の発端。

とは言え“玲華”は不在で、しかもなおざりな拒否反応を示す、とあれば“まゆ”たちが
動かざるを得ず。本件を通じて“まゆ”が、少ないながらも「友達」という関係について
考えて一つの答えに辿り着く過程、その意味合いはインフルエンサーならではで興味深い。

“まゆ”の成長につながり、“夜鶴”がスターダムへの上り口に足を掛けたこの炎上騒動、
そもそも“夜鶴”に“玲華”の話を持ち掛けたきっかけは・・・ということで止まっていた
あの話が動き出す、というかいよいよ“ひまり”も巻き込まれていく引きが気になります。

posted by 秋野ソラ at 00:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年09月21日

『僕の愛したジークフリーデ 第2部 失われし王女の物語』

松山剛 先生が贈る、乱世に生きる少女たちの物語。第2巻は“ジークフリーデ”の両腕を
奪ってもなお続く女王“ロザリンデ”の凶行、その真相に魔術師“オットー”が迫ります。
(イラスト:ファルまろ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322106000007.html


“ロザリンデ”に腕を失われてもなお「陛下を愛している」と告げる“ジークフリーデ”。
呆れるほど強い想いに理解が追い付かない“オットー”が彼女の「眼」によって共有した
「夢」が温かくて、哀しくて。だからこそ祭りの二の舞を食い止めんとする姿が勇ましい。

“ファーレンベルガー”が示した極意。“オットー”の師が「大魔術典」に残した過ちと
託した希望。“ジークフリーデ”の眼帯に込められた迂遠なる願い。「鮮血の謝肉祭」の
真相を語る「彼女」が“ジークフリーデ”に訂正した事実。後半は驚嘆するばかりの展開。

章の間に挿入される記憶の断片もまた印象的で。だからこそ“ジークフリーデ”の慟哭が
胸を打ちましたし、終章から感じられる絆に救いを感じずにはいられません。あと今巻で
筋を通した“イザベラ”が見せる可愛らしい一面もご注目。間違いなくお薦めの一作です。

posted by 秋野ソラ at 00:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年09月20日

『わたし、二番目の彼女でいいから。』

西条陽 先生が贈る新作は、一番好きな人との望みの薄い想いを抱えつつ二番目に好きな人
と交際する少年少女の、どんどん抜けられない関係に陥る危険で不健全な恋愛を描きます。
(イラスト:Re岳 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322009000012.html


真面目で清純と評判の“早坂”。無口で無表情、超美人の“橘”。高嶺の花として名高い
二人だが“早坂”には好きな人が、“橘”には彼氏がいる。“桐島”は“橘”に報われぬ
恋をしながら二番目に好きな“早坂”と交際中。彼女もまた彼が二番目に好きだから──。

一番に好きな人とできない「わるいこと」をしたがる“早坂”に対してブレーキ役を担う
“桐島”も満更ではなくなっていく不純異性交遊な雰囲気にはそそられるものがあります。
彼が所属するミステリー研究会へ“橘”が急に入会することで崩れていくバランスが見所。

「何で彼氏がいるのに“桐島”にちょっかい出すの?」「でも二番目の彼女だし・・・」と
矛盾した感情から情緒不安定になっていく“早坂”を後目に“橘”が語る真意とあの宣言
によって四角関係が一気に変化する構成と読ませ方はお見事。続きが気になる注目作です。

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2021年09月17日

『ぼんくら陰陽師の鬼嫁 七』

秋田みやび 先生が贈る、退魔お仕事嫁物語。第7巻は廃遊園地の件が片付いてもなお続く
“芹”の不調をもたらす呪詛、その原因を探るべく“皇臥”たちが動く顛末を描きます。
(イラスト:しのとうこ 先生)

https://lbunko.kadokawa.co.jp/product/bonkuraonmyouji/322101000345.html


母“史緒佳”が“皇臥”に雷を落とした理由は、彼に同情を誘いつつも得心がいく内容で。
彼女から語られる呪詛に纏わる北御門の悲しい過去、彼の面子に関わる話を聞いてもなお
嫁として寄り添える“芹”の気丈ぶりに救われます。それゆえに呪詛の謎も深まるワケで。

“皇臥”の影武者としての役割も担う式神“如月”を呼び出しても手詰まりが続く調査の
行方を左右するのはやはり“貴緒”。そう易々と手は貸さない彼が弟に「アレ」を求める
あたりは実にあくどい、というかよく分かっているのが窺えてつい苦笑いせざるを得ない。

“皇臥”たちに心配をかけることが悪いこと、と今更ながらに気付いた“芹”の言動から
契約の枠を超えた家族の絆が見て取れて感慨深い。今回の顛末が二人の出会いに結びつく
設定の妙は先生のTRPGリプレイを読んだ時に似たものを感じました。続きも気になります。

posted by 秋野ソラ at 00:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル