2021年08月10日

『元カノとのじれったい偽装結婚2』

望公太 先生が贈る、じれったい二人が織りなす偽甘新婚ラブコメ。第2巻は“晴”への
想いが残る“千百合”から結婚生活に疑いを掛けられ、“理桜”が複雑な想いを抱えます。
(イラスト:ぴょん吉 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/gisoukekkon/322102001214.html


割と生々しいラッキースケベイベントを互いにこなす“晴”と“理桜”。バイト先絡みで
浮気騒動が発生した“晴”に対して的外れな行動に出たりする彼女からは相も変わらずの
未練タラタラぶりが窺える訳ですが「お宅訪問」でまさかの事態を迎えてまさに油断大敵。

直接対決に臨んだ“千百合”が、“晴”から聞いていた人生の失敗エピソードに登場する
「元カノ」の存在から色々と察してしまう点に加え“林田”に共感を抱かれる、ある意味
同盟のような関係を見て同情を禁じ得ない。幸せになってほしい、と応援したくなります。

同じく虚勢を張る“晴”の内情が垣間見える場面もあり、もう一押しが必要と感じる中で
“理桜”と対峙した“秋乃”が搦め手で仕掛けてくる2人に対する罠の予兆。彼女が望む
「家」は手に入れられるのか。微笑ましくも予断を許さない偽装夫婦の行方に注目です。

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2021年08月09日

『五人一役でも君が好き』

壱日千次 先生が贈る新作は、スポーツ特待生で進学した高校で二度と野球ができない体に
なった少年が身も心も救ってくれた校内一の才女との交際を目指して頑張るラブコメです。
(イラスト:うなさか 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/goninhitoyaku/322103001902.html


“近衛・ルイーズ・知佳”。「Noblesse oblige」を体現する組織「ノーブレス」の会長を
務める彼女は文武両道、校外でも数多くの実績をあげる美少女。厳しい条件をクリアして
その組織へ入った“大河”は、5人で1人のフリをしている彼女の秘密を知るのだが──。

「会長の五変化」に対し、『どうすれば自分のことを好きになってもらえるか』を考えて
ずる賢い手を使ってでも着実に距離を縮めていく“大河”。彼への好感度に差はあっても
彼の行動がしっかり届いているのが“知佳”の言動に見て取れて、実に良い印象の話運び。

このまま上手くいくか、と思わせて「五人一役」という設定を活かしたどんでん返しには
一杯食わされました。波乱を予感させるエピローグの顛末や、そもそも「ノーブレス」に
彼を入れると決めた理事長の真意も気になりますし、次巻の刊行が楽しみなシリーズです。

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2021年08月06日

『異世界薬局 8』

アニメ化が決定した、高山理図 先生が贈る薬局ファンタジー。第8巻は入念に送り出した
新大陸探検隊が消息を絶ち、救出に向かう“ファルマ”が想定外の敵と窮地に遭遇します。
(イラスト:keepout 先生)

https://mfbooks.jp/product/pharmacy/321908000704.html
https://isekai-yakkyoku.jp/


“ブランシュ”の適当な詠唱に端を発して“パッレ”の神術が飛躍していく顛末。後進の
育成に目を向ける“ファルマ”も彼に「あるヒント」を与えることで実績につなげていく
ところが、いずれ“ファルマ”なしでも異世界が盤石に回っていく雰囲気を窺わせます。

製薬、それ以外の分野でも“ファルマ”に頼り切らず進化していく兆しが見て取れます。
そんな中で“テオドール”が彼と同じようにオーバーワークをしている言動に注意する
顛末が「類は友を呼ぶ」という流れを感じさせて苦笑いしつつ、心嬉しさを覚えました。

ギャバン大陸への再上陸に纏わる緊迫感あふれる展開。現地少女“メレネー”の能力が
“ファルマ”を思いのほか苦しめる状況を“クララ”の予知能力がどこまで補えるか。
総力を結集して窮地を脱し、この形勢を逆転できると期待しつつ次巻の刊行を待ちます。

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2021年08月05日

『むすぶと本。 『夜長姫と耳男』のあどけない遊戯』

野村美月 先生が贈るビブリオミステリー。シリーズ5冊目は“むすぶ”が今の“夜長姫”
と出会うきっかけとなった一人の少女にまつわるエピソード他、短編を収録した一冊です。
(イラスト:竹岡美穂 先生)

https://famitsubunko.jp/product/322104000018.html


『少女パレアナ』に纏わる話では“妻科”たちが恋心に振り回される顛末を描く一方で、
『好色一代男』に纏わる話ではそもそも恋心は何ぞやで苦心する“若迫”の所作を描く。
関与する“むすぶ”がとばっちりを受けたり、頭を悩ませたりと苦労性ぶりを見せます。

『リルケの詩集』が関係する話では“悠人”の父“流人”、母“千愛”の特徴あふれる
夫婦関係に触れながら、彼自身の報われない恋模様とその内面に触れる描写が興味深い。
そこで鍵を握る一冊の本とある登場人物が今巻の軸となる逸話に繋がるのも見事な演出。

迎える『夜長姫と耳男』のエピソードでは“むすぶ”と“夜長姫”がいま共に在る理由、
“むすぶ”と“悠人”が絆を結ぶ契機となった或る少女の言動に圧倒されるばかりで。
それを経て色々な点が線となって結ばれる結末に得心がいきました。流石の一言です。

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2021年08月04日

『ただ制服を着てるだけ』

神田暁一郎 先生の「第13回GA文庫大賞・金賞」受賞作。コンビニの店長を務める青年が
JKビジネスに身を置く人気リフレ嬢と出会い、否応なしに関わっていく顛末を描きます。
(イラスト:40原 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815611774/


性交類似行為なしとされる風俗店「JKリフレ」で働く“明莉”の話を聞いた“広巳”は
いつしか彼女の常連客になるほど入れ込む。しかし、彼が女子高生の制服を着る身体へ
手を出さないことに彼女は不審を感じずにはいられない。彼の狙いは一体何なのか──。

交際相手と喧嘩して家を飛び出した“明莉”を家に匿うことになっても、金銭トラブルに
彼女が巻き込まれても、“広巳”は事あるごとに無償で対応にあたりつつ代償は求めない。
身体を許す覚悟を決めた彼女が、やり場のない怒気を示すのも得心がいく展開が続きます。

リフレ嬢として働かざるを得ない“明莉”の身の上が中心かと思えば、彼女と共に過ごす
時間に取り戻せない過去を求める“広巳”の罪の意識も物語の根幹を握っていく。それが
タイトルに内包されている点に驚くばかり。ほころびを見せる共同生活の行方に注目です。

posted by 秋野ソラ at 22:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル