2021年08月31日

『千歳くんはラムネ瓶のなか6』

裕夢 先生が贈るリア充側青春ラブコメ。第6巻は“朔”を好きでいる女の子たちが彼への
想いを、互いの距離感を見つめ直すべき時が顛末を“優空”の昔話を軸に描いていきます。
(イラスト:raemz 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094530223


クラス委員長を決めるときに“夕湖”が“優空”を推薦し、“朔”が2人をたしなめた日。
当時、呼び方の固い“優空”が感じていたこと、その考えに至った家族との関係。本心を
見抜き、深く踏み込んできた彼に抱いてきた嫌悪感が絆されていく彼女の機微が印象深い。

そんな“優空”だからこそ今回結論を急いだ“夕湖”そして“朔”の建前と本音の違いに
気づき、互いに傷ついたまま夏を終わらせない策を講じることができたと納得がいきます。
“夕湖”や“朔”が彼女にやられたままにしない所もより現実味のある絆を感じさせます。

“優空”だけでなく気落ちする“夕湖”や“朔”をそれぞれのやり方で励ます仲間たちも
選択の時を予感させる展開。意中の相手にとって「フツウ」か「特別」か、それとも別の
関係か。「ラムネ瓶のなか」にいる“朔”がその意味を知る時は来るのか、気になります。

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2021年08月30日

『プロペラオペラ5』

犬村小六 先生が贈る恋と空戦のファンタジー。第5巻はガメリアに対し虫の息な日之雄を、
そして“カイル”の魔手が迫る“イザヤ”を“クロト”が救えるか、直接対決を描きます。
(イラスト:雫綺一生 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094530230


飛行戦艦「ベヒモス」。圧倒的な怪物を前に衝角攻撃しか為す術もない“クロト”たちが
勝てるのか。敵陣営の“ノダック”ですら悲願する結末を、命を賭して掴みにいく彼らの
戦いぶりは本作最大の見せ場。彼が明かした本心に応える兵員の姿には敬意すら覚えます。

意気揚々と王手をかけた“カイル”。彼に借りを返す“クロト”を後方から支援し続けた
“ユーリ”の活躍には助演女優賞を送りたいほど。彼女だからこそできたあの挨拶は見事。
逃亡劇を続けた“リオ”と“速夫”の胸を熱くさせる、主従を超えた愛の結末にもご注目。

秀逸な空戦描写を下敷きにしながら、あくまで読み手を惹きつけて止まない人間ドラマを
綴り続けた本作。表紙の笑顔を見返した時にこみ上げる感情は筆舌に尽くし難い。執筆に
心血を注いだ先生が脳内で描いていたであろう映像を具現化する日が来るよう祈念します。

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2021年08月27日

『塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い5』

鉄山かや 先生のコミックス3巻がほぼ同時発売となる、猿渡かざみ 先生の青春ラブコメ。
第5巻は“颯太”と“こはる”が譲れない思いを胸に秘めながら動物園デートに臨みます。
(イラスト:Aちき 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094530193


“蓮”の指摘にもある通り“こはる”に対して弱さをみせた不甲斐なさを恥じる“颯太”。
対する彼女は、そんな彼の見せる照れ顔を写真に収めてみたいとデートに意気揚々な姿勢。
どちらがリードを取るかで密かなせめぎ合いを見せる二人の姿が微笑ましくて、面白くて。

そのデートを妨害しようと画策するSSFの面々、“雫”たちの尾行に付き合わされる“蓮”
と“円花”、“凛香”の気持ちを知って焚きつける“京香”。各々の狙いが交錯し、暴走
していくスラップスティックな展開が、動物園の描写も含めコミカルさに拍車を掛けます。

デートを通じて自分の焦りに気付いた“こはる”。自分の虚勢に意義を確信した“颯太”。
さりげない伏線を回収しつつ、何だかんだで絆を深めた二人の様子を見て安堵するばかり。
同情の念を禁じ得ない巻き添えを食った“円花”や、なおも強気な“凛香”にも注目です。

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2021年08月26日

『わたし以外とのラブコメは許さないんだからね(4)』

羽場楽人 先生が贈る、告白で幕が開くラブコメ戦線。第4巻は“ヨルカ”と“希墨”が
恋人同士の夏休みを満喫しようとする中、横恋慕や片想いの感情が周囲をざわつかせます。
(イラスト:イコモチ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/watalove/322103000071.html


文化祭の目玉でもある“ミメイ”のバンド演奏。ある事情で直前に解散したそのバンドを
立て直すように依頼される“希墨”の世話焼きぶりが相変わらずで。その流れに組み込む
生徒会長“清虎”のさりげなくも油断のならない言動が今巻もう一つの話の軸を担います。

女性陣からの人気も高い“清虎”からアプローチを受ける“朝姫”。“希墨”への想いを
未だ残す彼女からすれば鬱陶しいことこの上なく。“アリア”に対し苛立ちをぶつけたり、
妥協よりも挑戦の道を選ぶあたりも実に彼女らしい。体を張ってアプローチするあたりも。

誤解を生むようなシチュエーションに遭遇した“希墨”に対し理解を示すものの、自分の
弱さを認め、葛藤し、感情を持て余す“ヨルカ”の姿からも成長の兆しが見て取れるのが
感慨深い。文化祭を通じて更なる外の世界とつながっていく彼女の未来も気になる所です。

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2021年08月25日

『俺の姪は将来、どんな相手と結婚するんだろう?』

落合祐輔 先生が贈る新作は、フリーランスの仕事で稼ぎはあるものの婚活が上手くいかず
悩む青年と、彼の家に通い詰める女子高生で姉の娘との幸せ溢れる半同居生活を描きます。
(イラスト:けんたうろす 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815611729/


“奈緒”が女手一つで育ててきた娘“絵里花”が通う高校の道すがらに弟“結示”が住む
ワンルームの家はある。映像編集の仕事で常に家にいる彼のもとに預けておけば防犯の面
でも安心、とはいうものの周囲に説明するのは面倒な話。だけど姪は乗り気なようで──。

叔父さんの世話を甲斐甲斐しくする“絵里花”を可愛らしく思ったり、ドキッとしたりと
どこか微笑ましい導入部分。そこから転じて“結示”の仕事を通じて見えてくる様々な縁、
“絵里花”が彼に懐くに至った苦い昔話によって描かれていく人間模様に驚かされます。

三親等にあたる叔父と姪の結婚は法律で許されていない、という大前提を踏まえて互いを
思う感情はどこへ向かうのか。一歩踏み出した“絵里花”にとって明と暗、エピローグを
二つに分けて予感させる引き具合は何を意味するのか。続きが妙に気になるシリーズです。

posted by 秋野ソラ at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル