2021年06月16日

『隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった』

シナリオライターとしても活躍を続ける 雪仁 先生が「電撃文庫」から贈るデビュー作。
お隣さんで世間知らずの留学生少女を手助けする少年が信頼されていく過程を描きます。
(イラスト:かがちさく 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322005000029.html


特待生として高校へ進学し一人暮らしをする“夏臣”。彼の隣室、そしてクラスへと転入
してきた留学生の“ユイ”は美少女だが中々喋らないことから「クーデレラ」と評される。
そんな彼女を助けたり、褒めたりすると見せる優しい笑顔に彼は微笑ましさを感じて──。

日頃のお礼にクッキーを作ってみたり、携帯電話で連絡先を最初に交換したり、友だちの
証として名前で呼び合ったり。何かと世話を焼いてくれる“夏臣”に対してだけ少しずつ
心絆されていく“ユイ”が、その雰囲気の変遷にも表れていて可愛らしいことこの上ない。

そんな微笑ましい状況も“ユイ”の姉が訪れることで一気に緊張感を帯びてきます。なぜ
彼女は一人で日本に来たのか、なぜ人前であの美しい歌声を披露しないのか。新天地にて
変わろうと決意した彼女の背景も描かれているのは好感が持てます。続きに興味深々です。

posted by 秋野ソラ at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年06月15日

『男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 1. じゃあ、30になっても独身だったらアタシにしときなよ?』

発売後に即大重版が決まった 七菜なな 先生の青春〈友情〉ラブコメディ。夢に一直線の
男子と親友の仲でいることを誓った女子が「男女の友情」という永遠の命題に挑みます。
(イラスト:Parum 先生)

https://dengekibunko.jp/product/danjoru/322005000019.html


モテすぎて初恋が未経験の“日葵”。フラワーアクセサリー作りに余念がない“悠宇”。
彼女があるきっかけで彼のアクセサリー販売を手伝ったことから運命を、「友情に落ちた」
瞬間を味わう。ずっと親友のまま過ごすと思った高校2年の春、互いに転機を迎える──。

「男女の友情は成立する?」「するでしょ」と余裕を見せる“日葵”が、あの日の黒髪の
少女“榎本”の登場で“悠宇”との関係を「うぬぼれていた」と思い返す過程が興味深い。
彼女の兄と交わした「一生のお願い」が思いがけず物語の鍵を握る展開も見逃せない点で。

対する“悠宇”も“榎本”と張り合う“日葵”の姿を、そしてまさかの切り札を使う所を
目にして彼女に抱く感情をアクセサリーで、そして花言葉で整理しようとするあたりに
彼なりの気概を感じます。2人が親友という関係からどう幸せを掴むのか、要注目です。

posted by 秋野ソラ at 01:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年06月14日

『キミの青春、私のキスはいらないの?』

うさぎやすぽん 先生が「電撃文庫」から贈る新作は、医師を目指す完璧主義者の男子が
「誰とでもキスする」と噂される女子との交流を通じて青春を拗らせていくラブコメです。
(イラスト:あまな 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322009000003.html


「高校生で、キスしたことないなんて病気じゃない?」バズったツイートを見て動揺する
“光太郎”。それでも恋愛は無駄なものと嘯く彼に、そんな無駄なものを楽しませるべく
勝負を挑む“日野”が現れる。男性経験が豊富と噂される彼女が付きまとう理由とは──。

ドラマ『キスキュン』に沸く教室の雰囲気を嫌がっていた“光太郎”が“日野”を見返す
ためにキスをする方法を模索し、いつしかデートの参考としてそのドラマに影響されたり。
振り回される彼が滑稽に映る展開は、壊れたギターで曲を披露した彼女の姿で一変します。

幼い頃の失恋を引きずって、ストーカーとして逃げ続けて、完璧だと虚勢を張り続けて。
青春という奇病に冒されたと認める“光太郎”たちが、生きることを無意味と諦観する
“日野”を戒める場面は印象深く、先生だからこそ描ける青春の拗らせ具合が抜群です。

posted by 秋野ソラ at 00:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年06月11日

『失業賢者の成り上がり 〜嫌われた才能は世界最強でした〜』

三河ごーすと 先生が原作を務める累計25万部突破の人気漫画シリーズを自らノベライズ。
賢者の天啓を受け、死霊術の才能に恵まれた少年が挫折と逆転人生を辿る顛末を描きます。
(イラスト:ごくげつ 先生 キャラクター原案:おおみね 先生)

http://dash.shueisha.co.jp/bookDetail/index/978-4-08-631423-7


儀式を経て人々に適切な才能と職業を刻印として与えられる世界。特に優れた刻印を持つ
“カルナ”は輝かしい未来が約束されていたはずなのに、今や世間から爪弾きにされる身。
彼の人生にケチが付いたすべての始まりは、あの勇者パーティに雇われてからだった──。

“カルナ”を引き立て役とするためだけに雇った勇者“ノリス”及びお付きの美女2名の
下衆っぷりがすでに悪役レベル。後で“カルナ”に復讐を遂げられても情状酌量の余地が
ないくらいで、むしろ勇者を生かして帰すほどに優しい彼の善良なる気概が際立つばかり。

そんな“カルナ”が持つ能力の稀有さ、未知なる可能性に目をつけた魔王“セシリア”が
一枚岩ではない魔王軍にどう干渉していくか、無双する彼の秘密もさることながら勇者を
倒された人族は大丈夫なのか、など気にしつつ次巻でどう魅せてくるか注視したい所です。

posted by 秋野ソラ at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年06月10日

『失恋後、険悪だった幼なじみが砂糖菓子みたいに甘い2 〜七夕のち幻影〜』

七烏未奏 先生が贈る、失恋男子と幼馴染女子のじれったくて甘くてちょっと切ない恋物語。
第2巻は“悠”が失恋した先輩によく似た少女と出会い、残る想いと改めて向き合います。
(イラスト:うなさか 先生)

http://lanove.kodansha.co.jp/books/2021/6/2.html


体育祭に纏わるジンクス。試験期間の御守り。七夕の短冊に込めた願い。お見舞いと看病。
“心愛”から受け続ける好意に、“悠”自身も彼女のことを好きなのだと認めかけた刹那、
“玲子”に似た後輩“玲香”が2人の間に割って入る勢いを見せ始めてからが今巻の本番。

「あたしじゃ、その先輩の代わりになれませんか?」“玲香”の言葉を胸に棘として残し、
“心愛”を好きになることが“玲子”を好きでいたことの代用なのではと認識する“悠”。
前に進むため、と言いつつ彼女を泣かせるあたりに彼を攻略する難易度の高さが窺えます。

宮沢賢治が好きな“悠”が、太宰治を好きという“玲子”と自身とを比べて気づいたこと。
彼女が出てくる夢での後押し、“玲香”からの励ましの言葉、そして“心愛”からの脅迫。
「悠の、未来になりたい」と祈る“心愛”が報われることを読者としても願うばかりです。

posted by 秋野ソラ at 00:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル