2021年04月16日

『君が、仲間を殺した数II ‐魔塔に挑む者たちの痕‐』

有象利路 先生が贈るダークファンタジー。第2巻は単身で塔に挑み続ける“スカイツ”に
拒まれ、残された“シア”が悩み、苦しみながら決断した一点に突き進む顛末を描きます。
(イラスト:叶世べんち 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322012000009.html


“スカイツ”とのつながり。俯瞰する者“ファロス”との因縁。1巻とは異なり“シア”
に視点を移して進んでいく「その後」の物語。そのまま引き籠るのが彼女のためなのか、
両者の想いを知る“クロヤ”の厳しい問いに思い遣りすら感じて格好良いことこの上ない。

理外の力で強くなった“スカイツ”に追いつくため、“クロヤ”に鍛えられつつ再び挑む
塔の中で助けた“パロマ”がどう絡んでくるか。その時、周囲を覆っていた白い霧の謎は。
商人“ミンジュ”の気付き、渡したアイテムがそれを埋めていく話運びにはお見事の一言。

“シア”と決別した弱さを追及する“クロヤ”が“スカイツ”と繰り広げる死闘。それを
見届ける彼女が想いを告げ、“スカイツ”がその気持ちに、自身の弱さにどう向き合うか。
塔に翻弄されたとしても前を向いて生きていく者たちの生き様、見届けるに足る作品です。

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2021年04月15日

『幼なじみが絶対に負けないラブコメ7』

遂にTVアニメが放映開始を迎えた、二丸修一 先生が贈る大人気ヒロインレース。第7巻は
“朱音”が恋愛トラブルに巻き込まれていると聞いた「群青同盟」が解決に乗り出します。
(イラスト:しぐれうい 先生)

https://dengekibunko.jp/product/osamake/322012000014.html
https://osamake.com/


他人に興味関心の薄い“朱音”が“末晴”に妹としか見てもらえないことに、恋愛に対し
思い悩む中、風評のあまり良くない“間島”からの告白を保留した油断から始まるネット
関係の騒動。彼女が間違いに気付き、他者との関係を見直していく過程が興味深いところ。

“朱音”の問題解決に臨む“末晴”が“真理愛”に対しても恋愛意識を強めていることに
非難の言葉を投げかけてしまう“蒼依”。その裏に姉たちのヒロインレースが共倒れする
仄かな期待を乗せてしまう後ろめたさに葛藤を続ける様子が痛ましくて、いじらしくて。

あからさまな容疑者に対するフェイクの仕掛け方も面白く、その顛末が“末晴”に対して
あの決断を下す契機にもなるというのが印象的。“碧”が抱く想いの行方も気になります。
彼に対し“白草”や“黒羽”、“真理愛”がアレで対抗するという予告も目が離せません。

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2021年04月14日

『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』

菊石まれほ 先生の「第27回電撃大賞・大賞」受賞作。頭に仕込む縫い糸を模した情報端末
に記録される情報を探索し電子犯罪の解決に臨む少女とヒト型ロボットの活躍を描きます。
(イラスト:野崎つばた 先生)

https://dengekibunko.jp/product/yourforma/322011000154.html


“エチカ”は脳の縫い糸、ユア・フォルマに残された「機憶」を辿る電索能力に長けるが
相棒の脳に負荷を掛けて何度も病院送りにする問題児。ヒト型のロボット「アミクス」を
新たなパートナーとした彼女はそのトラウマに耐えつつ謎のウイルス感染源を探るが──。

電索官ながら相棒の存在を軽視し、憎まれ役を買って出るような言動を見せる“エチカ”。
そんな彼女の思惑を知りながら、訳知り顔で思考を先回りする小憎たらしい“ハロルド”。
互いの因縁が交錯し、反発しながら認め合う過程がバディものの真骨頂を発揮しています。

“エチカ”の親が関わったプロジェクト。ユア・フォルマが作られた本来の目的。友情と
裏切り。姉とのある思い出がフラッシュバックする、彼女自身の想像を超えた事件の真相。
“ハロルド”が見つけられない「答え」を彼女と突き止められる日が来るのを期待します。

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2021年04月13日

『インフルエンス・インシデント Case:01 男の娘配信者・神村まゆの場合』

駿馬京 先生の「第27回電撃小説大賞・銀賞」受賞作。女装動画配信で人気を博す少年が
ストーカー被害に遭う事件へ能力も性格も非凡な大学教授とその助手が解決に臨みます。
(イラスト:竹花ノート 先生)

https://dengekibunko.jp/product/influence/322011000153.html


メディア社会のコミュニティ形成などを専門に、若くして大学教授の任に就く“玲華”。
彼女のゼミに所属し助手を務める“ひまり”は注目の動画投稿者が更新停止中なことを
心配していると「僕を助けてくれませんか?」と中性的な男の子が突然訪ねてきて──。

ふとしたことでネット上で注目を集める存在になる。それによって人生の明暗を分けた
人々の機微を描く、社会派小説のような側面を持つ内容に考えさせられる点もしばしば。
高校生の“真雪”に熱が入ってポンコツに見える“ひまり”が話の鍵を握るのも注目で。

“真雪”が身の危険を覚える契機となる簡易ブログ型SNS「RootSpeak」。その使い方に
問題を投げかける一方で、その運営自体に謎を仕込む大掛かりな物語は読めば気を惹く
ことうけあい。新感覚ミステリーの流れ、良い形で続いてくれることを切に期待します。

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2021年04月12日

『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います』

香坂マト 先生の「第27回電撃小説大賞・金賞」受賞作。安定した生活を夢見て受付嬢と
なった女の子が定時帰りを脅かす要因を力でねじ伏せていく、痛快異世界コメディです。
(イラスト:がおう 先生)

https://dengekibunko.jp/product/uketsukejo/322011000156.html


積み上がる書類の山、押し付けられた集計業務。理想とは程遠い、目の前に広がる現実を
作り出す冒険者たちの無能ぶり、いや、立ちはだかるフロアボスへの怒りが頂点に達した
受付嬢“アリナ”は一級冒険者の証と力を手に今日も一人、ダンジョンへ潜り込むが──。

あとがきにもあるように「残業も何もかもを、物理で殴り倒す」しかも女の子が、という
爽快感がまず凄い。それが軽妙に描かれる読みやすさもあって圧倒的に面白い。あくまで
自分の理想ために、過去に抱いた感情も含めて力を振るう“アリナ”に好感が持てます。

迂闊な所もある“アリナ”が「処刑人」であるとバレる場面もしばしば。“ジェイド”も
そうですが、正体を知ってどう動くか、彼女がどう反応するか、そのあたりの駆け引きが
見ていて楽しいですし、見所の一つでもあるかと思います。今回イチ押しの受賞作です。

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