2021年02月05日

『剣と魔法の税金対策』

SOW 先生が贈る新作は、自身の体験を元にした異世界税制コメディ。金に執着する勇者が
天使から税を徴収されるのを免れるため、魔王と偽装結婚するなど様々な手を尽くします。
(イラスト:三弥カズトモ 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518825


「我の配下となれば、世界の半分をくれてやろう!」「え、マジ!? わかった!」「え!?」
魔王“ブルー”と勇者“メイ”の談合成立、かと思いきや突如現れた天使“ゼオス”から
贈与税を払えと宣告される。なぜなら絶対神に税を納める制度に縛られた世界だから──。

少なくとも日本で生活するからには老若男女問わず、切るに切れない「税金」との関わり。
ネーミングも捻らずド直球で思わず「ネタか」と思いつつ読み進めると、税制度の必要性
について感情で分からせる話運びで、公的な啓蒙活動に推薦できそうな印象すらあります。

“メイ”が「銭ゲバ」な勇者となった背景にも税にまつわる迂遠な陰謀が関係していたり、
“ブルー”との偽装結婚も思いがけない昔話に繋がっていたり、と2人の気持ちの変化も
見どころとして挙げられます。ためになる上に面白い、二度おいしい感のある作品です。

posted by 秋野ソラ at 00:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年02月04日

『薬屋のひとりごと 10』

日向夏 先生が贈るシリーズ累計1200万部の大人気ミステリー。第10巻は西都に到着した
“壬氏”の難しい立場を描きつつ、その裏で“猫猫”が大蝗害に潜む歴史を紐解きます。
(イラスト:しのとうこ 先生)

https://herobunko.com/books/hero14/12670/


西都に蝗害はないのか。まずは「“馬閃”がんばれ」と応援したくなる一面を堪能しつつ
“陸遜”も訪れたという村を訪れる“猫猫”がその真相にどう迫るか。意味深長な言動を
見せる“雀”や“天祐”が気になり、何度もあれこれと予想が崩されて翻弄されました。

芋の普及に向けて白羽の矢が立つ“羅半兄”。その呼ばれ方からして実に不憫な方ですが
そんな彼が今巻の鍵を握ることになるとは。風の民とは何か。戌の一族はなぜ滅んだのか。
飛頭蛮の謎すら巻き込んで示された「ある可能性」は点を線で結ぶかのような内容で驚愕。

ある手段を用いて届けられた文がもたらす凶兆。高まる緊張感。“猫猫”すら身の危険を
覚える展開にヒヤヒヤして、それを心配する“壬氏”の対応にニヤニヤして。“玉葉”が
その顛末を知ってなお、自身の戦に臨む一幕がどんな話に繋がるか、続きが気になります。

posted by 秋野ソラ at 00:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年02月03日

『義妹生活』

突然、兄妹となってしまった同級生の男女を天ア滉平さん、中島由貴さんの声で演出する
アニメ・マンガ動画。企画・原作・脚本担当の 三河ごーすと 先生が自らノベライズです。
(イラスト:Hiten 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/gimaiseikatsu/322002002162.html
https://www.youtube.com/channel/UCOQyW7GmCyTKwjCJEaTBWRw


喧嘩ばかりしていた両親の姿を見て育ち、今は離婚後の父と暮らす高校2年生の“悠太”。
その父から突如再婚を告げられた上に同年代・同学校の“沙季”が義妹となることが判明。
これから始まる共同生活を前にどういう方針で臨むか探るとある共通点が見つかって──。

互いに期待せず、ドライな関係で恋愛要素も皆無な“悠太”と“沙季”。自立を目指して
高額バイトを探す彼女、そのアテを探す彼。少なからず相手のことが分かっていくごとに
共に「良き理解者」であることを認めていく、そこに恋愛要素が芽生えていくのが楽しい。

“悠太”のバイト仲間である“読売”先輩からの異性とは思えないセクハラ発言の連発や
“沙季”の数少ない友人である“真綾”からの猛烈なウザ絡みなども面白く、話を動かす
手助けにもなっているのも見所。1週間でここまで変化して、この先どうなるか注目です。

posted by 秋野ソラ at 00:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年02月02日

『転生王女と天才令嬢の魔法革命3』

鴉ぴえろ 先生が贈る王宮百合ファンタジー。第3巻は弟に引導を渡した“アニスフィア”
自らが王位を継ぐ流れを目にした“ユフィリア”は彼女のために、と一大決心をします。
(イラスト:きさらぎゆり 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/202001mahoukakumei/322008000689.html
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_AM01201792010000_68/
https://ncode.syosetu.com/n8558fh/


“アニスフィア”が王位を継ぐ。しかし魔法の才能がない彼女を魔法省や貴族らが敵視し
国が荒れるのは目に見えている。しかも魔学を極める彼女の才能を摘むことにも繋がる。
全て承知の上で“ユフィリア”が彼女を王にすべき立場と矛盾に悩む様子がもどかしい。

“ユフィリア”が王女を止める。だけどその実現には自身の存在すら懸ける必要がある。
けれど「王女」であることに異常なこだわりを示す“アニスフィア”からは拒否される。
分かっているようで知らなかった互いの感情がぶつかってしまう展開が何とも歯がゆい。

力ずくで我を通した“ユフィリア”に肉体的な成長を感じて心を打つものを覚えると共に
“アニスフィア”に強気で迫っていくベッドシーンには肉食的な変化すら見えて感慨深い。
完結かな、と思える綺麗な終わり方を魅せたら次は第二幕、ということで次巻を待ちます。

posted by 秋野ソラ at 01:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年02月01日

『神は遊戯に飢えている。1 神々に挑む少年の究極頭脳戦』

細音啓 先生が贈る新作は、人類と神々が繰り広げる至高のファンタジー頭脳戦。元女神と
期待のルーキー少年が難解なゲームの完全攻略に挑みます。すでに漫画化が決定してます。
(イラスト:智瀬といろ 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/kami_to_game/322010000011.html
https://kakuyomu.jp/works/1177354054919146074


神々が設定したルールに翻弄され人の連敗が続く、人と神々の頭脳ゲーム「神々の遊び」。
ある日、隠れんぼで三千年も寝過ごした元女神“レオレーシェ”が発掘される。彼女は
ゲームが一番上手い人間を連れてきて、と言うので無敗の“フェイ”に声が掛かるが──。

暇を持て余した神が設けた、勝利条件や敗北条件が明確になっておらず隠しルールもある
ゲームに対して挑戦者たる人々は勝つことに躍起で切羽詰まっている、その傍らでクリア
するためにとことんゲームを楽しもうとする“フェイ”たちの姿が対称的で驚かされます。

その驚きの極めつきなのが、極限状態の中で神のルールを暴き、ゲームをクリアする過程。
これはぜひ読んで味わってほしい爽快感です。“フェイ”がゲームを完全攻略する目的が
“レオレーシェ”に結びつくのかどうかも気になりますし、続きが楽しみなシリーズです。

posted by 秋野ソラ at 00:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル