2021年02月26日

『GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン NEXT BOX HDDD英国編〈中〉』

川上稔 先生が贈る大人気戦国学園ファンタジー。3冊目となるアーサー王伝説編・中巻は
武蔵勢が「湖の精霊」としてアーサー王候補と関わることで英国を正す方針を模索します。
(イラスト:さとやす 先生(TENKY))

https://dengekibunko.jp/product/horizon/321910000103.html


武蔵の食糧事情、という想定外の問題から過去の英国に居ることの難しさが露呈する展開。
“御広敷”が提案する解決策、それを評定する“大久保”とのやり取りがとても印象深い。
焦りある状況でも騒々しい武蔵勢を目にして尊死しそうになる“豊”の言動も見所の一つ。

「補正」の鍵となるこの世界の成り立ち。あの「運命」が選んだ選択肢の意味すら繋がる
設定の深みに驚かされることしきり。まさに記録と記憶の狭間にある英国、と言えるかも。
“ネシンバラ”が誇示する知識に対するツッコミの数々も力が入っていたように感じます。

問題解決の一手として、英国でありながらあの歴史再現を仕込むあたりは本作のらしさが
表れています。得意満面に「商武」で相対する“ロット王”に苦い思いをさせられるかと
思えば“シロジロ”が言い返してくれてスッキリ。風雲急を告げる下巻の刊行を待ちます。

posted by 秋野ソラ at 00:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年02月25日

『泥酔彼女 「弟クンだいしゅきー」「帰れ」』

串木野たんぼ 先生が贈る新作は、酒癖の悪い姉をもつ少年が同じく大酒飲みな姉の知人に
家に入り浸られて、穏やかな日常を侵食される様子を描いていく青春宅飲みラブコメです。
(イラスト:加川壱互 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815609320/


芸能事務所のマネージャーとして辣腕を振るう姉“雫”の家に居候する高校生の“穂澄”。
姉の言いつけで泥酔した“七瀬”を介抱してから、彼女の酒の席に付き合わされる破目に。
キャラの強い彼女を見て、頼まれていた脚本のモデルにしようと彼は観察を始めるが──。

“穂澄”の手を煩わせる“七瀬”の振舞いに、感情移入できないまま話が進んでいく中で
彼女の立場や酒飲みである必要性などが明らかになるにつれそれが少しずつ見直されます。
演劇に、中でも脚本に興味がある彼を印象づける存在になっているところも興味深い点で。

ある意味、共同生活をしているような“穂澄”と“七瀬”に思う所ある“洋子”ですけど、
取り越し苦労でしかないと思いたいですし、「届けその想い」と応援したい注目の女の子。
そんな人の気も知らないで突如現れる「伏兵」に彼の心はどう揺れるのか、気になります。

posted by 秋野ソラ at 00:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年02月24日

『声優ラジオのウラオモテ #04 夕陽とやすみは力になりたい?』

二月公 先生が贈る青春声優エンタメ。第4巻は口喧嘩の絶えない“夕陽”と“やすみ”が
番組存続のために関係を見つめ直しつつ、“乙女”が陥る危機を目にして力を合わせます。
(イラスト:さばみぞれ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/sayyouradio/322007000101.html


“めくる”と“花火”、仲良しコンビの2人を巻き込んで行われる一泊二日の番組ロケ。
ケンカしたままでいいことなんて何もない、と“朝加”が仕掛けた思いやりのあるワナに
“夕陽”と“やすみ”が気づけるかをもどかしくも温かく見守るのが今巻の話の軸の一つ。

そんな中、スケジュール過密が祟って活動を一時中断して静養に入ることとなる“乙女”。
なのにすぐ復帰しようとする彼女の言動から声優業の闇というか、人気商売であることを
改めて突きつけられます。取り乱す彼女の姿を見せられる度に心苦しい思いが募る一方で。

“乙女”を救う鍵となる人物と接触し、告げられる厳しい現実に“夕陽”と“やすみ”が
どう向き合い結論を出すのか。そして“乙女”を救うことはできるのか。最高のライバル
として、最高のパートナーとして足りない何かを求め続ける2人の関係を見届けたいです。

posted by 秋野ソラ at 00:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年02月23日

『ホラー女優が天才子役に転生しました2〜今度こそハリウッドを目指します!〜』

鉄箱 先生が贈る未来転生型サクセスストーリー。第2巻は“つぐみ”に心を揺さぶられる
“美海”たち少女の、取り巻く大人たちの機微に触れながら彼女の快進撃ぶりを描きます。
(イラスト:きのこ姫 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518924
https://ncode.syosetu.com/n0230fu/


“鶫”の後釜、と世間に見られて辛酸をなめてきた“珠里阿”の母。良い子でいるように
言い聞かせることが娘のためと思い込ませる、生き様すら変えてしまう“鶫”の存在感。
その狂気に巻き込まれる“珠里阿”を救うのが“つぐみ”というのが運命的な巡り合わせ。

“珠里阿”だけでなく“凛”の気を惹く“つぐみ”の存在が面白くない“美海”に芽吹く
負の感情。そこに気付かぬ“つぐみ”が招いた危機が“美海”の成長を促すのも因果な話。
ここで選んだ“つぐみ”の一手が、彼女自身“鶫”に引っ張られていく契機だったのかも。

“つぐみ”の何気ない変化を見抜きながらも手が出せず、今回は兄に頼った“凛”もまた
何か事情を抱えていそうで気になる所。ドラマでもCMでも注目を集め続ける“つぐみ”の
躍進が楽しみな一方、“鶫”に人生を狂わされたまだ見ぬ大人がどう関係するか注目です。

posted by 秋野ソラ at 01:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2021年02月22日

『塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い4』

鉄山かや 先生によるコミックス2巻が同時刊行となる、猿渡かざみ 先生の青春ラブコメ。
第4巻は友だち作りに力を入れる“こはる”を巡る人間関係に“颯太”が頭を悩ませます。
(イラスト:Aちき 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518832


“こはる”に対して嫌悪感を丸出しにする演劇同好会の会長“澪”を見て戸惑う“颯太”。
そんな事情も知らず“澪”と友だちになろうと勇気を出す“こはる”を見て責任を感じる
上に「SSF」なる異常集団に目をつけられたり、と悩みの種が山盛りな彼には同情しかない。

同好会仲間の“樋端”や“丸山”からすれば“澪”の言動は筋違いの逆恨みでしかないと
認識した上で“こはる”と先に仲良くなってくれるのが救い。一方で「SSF」からの執拗な
嫌がらせに疲弊しつつも“こはる”を心配させまいと気丈に振る舞う“颯太”が痛ましい。

色々と詰んだ状況を“こはる”たちが乗り越えるためのアイデア。その鍵を握るのがまた
“こはる”と“颯太”の「今」を象徴しているかのようで興味深く、見事だと思うところ。
彼女のためを思うあまり自分の感情に気づかない彼の意地が報われて安堵するばかりです。

posted by 秋野ソラ at 00:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル