2021年01月28日

『彼女は僕の「顔」を知らない。』

古宮九時 先生が贈る新作は青春ライトミステリ。放火事件の生存者である少年少女たちが
高校生となり、再会し、改めてその真相を探る内に互いの隠してきた感情と向き合います。
(イラスト:shimano 先生)

https://mwbunko.com/product/321812000049.html


他人のマイナス感情に同期する異常体質を負った10年前の夏、火事に巻き込まれた“良”。
同じくその炎の中にいた“静葉”を忘れずにいた彼は、転校してきた彼女と再び巡り合う。
人付き合いは苦手だが直す気はない、という彼女は彼のことに気付かない。何故なら──。

失貌症、人の顔が認知できなくなっていた“静葉”があの火事の犯人を捜しているという
ことを知り、身体的制約に苦しめられつつも限られた情報を頼りに「黒服の男」の正体に
目星をつけて事件を解決に結びつけていく・・・なんて流れを軸にしていかないのが古宮流。

冒頭で“良”が言及した「贖罪」とは何か。彼が“静葉”をどう「特別」と捉えていたか。
“静葉”と彼女の兄とのメールの送受信にも彼の本質を探る鍵があり、その演出もお見事。
「怒ってます?」と聞いたあの言葉と反応に救済と未来を感じました。お薦めの一作です。

posted by 秋野ソラ at 00:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル