神田夏生 先生が贈る新作は、他人への厳しい言動でクラスでも浮いた存在の少女と周りの
反応が気になり本当の自分を出せずにいる少年が出会い、機微を変化させていく物語です。
(イラスト:Aちき 先生)
【 https://dengekibunko.jp/product/322009000004.html 】
嫌がらせされた過去を置き土産に、隠れオタクとして転校先で陽キャの座を掴む“夜船”。
いじめはないにしても言葉がキツくて周囲から敬遠される“蒼月”。「嫌い」と言われた
ことはあるが、彼女の言動に優しさを感じる彼は何か事情がありそうだと勘繰るが──。
そんな“夜船”も「絶対に俺にはデレないで」と“蒼月”に告げる訳ありぶり。彼自身の
戒めに似た感情をやがて知ることとなる彼女の、それでも言いたいことがと言えない苦悩。
もどかしい彼女の機微を察して寄り添い続ける彼の意志に他者を想える優しさを感じます。
文化祭の劇を2人で乗り越え、そして吹っ切れた姿に安堵するも未だ“蒼月”に残る憂い。
邂逅した事が奇跡であり、呪いであり、唯一の例外でもあると示す縁の妙に魅せられます。
ラストのあの一文、そして挿絵にすべてが報われたような気がします。ステキなお話です。