2020年12月25日

『Babel III 鳥籠より出ずる妖姫』

古宮九時 先生がWebサイトに公開していた珠玉の異世界ロードファンタジー。Web版加筆後
「電撃の新文芸」で再書籍化した第3巻は言語障害の対処法に“雫”が命懸けで挑みます。
(イラスト:森沢晴行 先生)

https://dengekibunko.jp/product/babel/322008000015.html


“キスク”へ攫われようとも、その王妹“オルティア”の理不尽な扱いに晒されてもなお
個人の尊厳を貫く“雫”。単身で抗い続ける彼女が王妹に粘り勝ち、良き理解者として
並び立つその様子には、険しい過程と家庭を経ているだけに、胸を熱くさせられました。

“雫”を口煩く思う“オルティア”が民草に示す容赦の無い言動。それもまた仕組まれた
ものだと分かった時の驚き、迂遠な陰謀もさることながらそれに毅然と立ち向かう王妹の
決意や過去と向き合い人の上に立つ者として大きく成長を見せた姿は称賛するしかなく。

流行り病としての言語障害を前に全力で対応にあたる姿勢を褒める一方で、場の雰囲気に
流されやすい“雫”の悪癖を諭すのはやはりあの男しかいない、という話運びもお見事で。
油断した彼女が悶絶する様子に思わず苦笑しつつ、最終巻でどう話を結ぶのか楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 00:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル