2020年12月03日

『放課後の嘘つきたち』

『ジャナ研の憂鬱な事件簿』の 酒井田寛太郎 先生が「ハヤカワ文庫JA」で上梓する新作。
部活同士の問題を解決する男女を通じて日常に潜む謎と嘘を描く青春ミステリ連作集です。
(イラスト:佐原ミズ 先生)

https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014681/shurui_3/page1/order/


部活動に力を入れる英印高校にスポーツ特待生として入学した“修”はワケあって休部中。
時間を持て余す彼を見て幼馴染の“麻琴”は忙しい「部活連絡会」の手伝いをお願いする。
早速、演劇部員に掛けられたカンニング疑惑に対して皮肉屋の部長が怪しいと睨むが──。

様々な部活動が行われる放課後を舞台に繰り広げられる推理劇と明かされる学校生活の闇。
仏頂面の“修”に“御堂”も加わりトラブルが続く局面を“麻琴”が抑え役に回る構図に
微笑ましさを感じつつ、3人にも少しずつ暗部を窺わせる描写があり緊張感を募らせます。

“修”がボクシングを続ける理由。“御堂”がある雑誌を集め続ける理由。共に衝撃的な、
彼らにとって致命的な秘密が明らかになった上で“麻琴”にも日常を守るための「嘘」が
あると知ってからの、まるで共犯者のような振舞いが印象深い。良き青春ミステリでした。

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2020年12月02日

『結婚が前提のラブコメ3』

栗ノ原草介 先生が贈る婚活ラブコメ。第3巻は“駿河野”と別れてしまった“牡丹”から
仕事と婚活を両立させる難しさに触れつつ、“縁太郎”自身の結婚にも言及していきます。
(イラスト:吉田ばな 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518719


“縁太郎”に対する恩返し、の体で彼の心を掴みにかかる“カレン”。そのあからさまな
攻めの姿勢に気が気でない“結衣”。そんな2人の想いに気付かないのは仲人という立場
だからか。そんな機微を察した“誠”の一手が結婚と向き合い直す鍵になるのは要注目で。

その陰で、“牡丹”が納得のいく漫画を描くために婚活の優先度を下げてしまった心情が、
彼女の価値観を受け止めきれなかった“駿河野”の反応が、婚活経験者として共に分かる
だけに心苦しかった。正しいとか間違っているとか、二元論で済まないだけに刺さります。

究極の選択を何度も迫らせるのが婚活。悩みが抱えきれなくなったら気の置けない相手へ
相談できるのが「結婚相談所」のお世話になる利点であることを再認識させてくれました。
女性陣の機微の変化に加え“黒峰”の腹黒い思惑がどう話を動かすか、続きが楽しみです。

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2020年12月01日

『ぼくたちのリメイク8 橋場恭也』

2021年にTVアニメ放映予定が決定した、木緒なち 先生が贈る青春作り直しストーリー。
通算10冊目となる第8巻は“恭也”が自分の立場と未来を見据え、改めて動き出します。
(イラスト:えれっと 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/bokutachi-remake/322007000687.html


“貫之”はラノベ作家、“ナナコ”は歌手、“シノアキ”はイラストレーター、そして
“恭也”はプロデューサーとして皆とゲームを作る夢を追う。「Ver.β」を読んだことで
“河瀬川”が見せる言動一つ一つ、“九路田”の動向についついニヤリとしてしまいます。

「サクシードソフト」というキーワードについてもそう。“恭也”の先輩にあたる“茉平”
に含みがある点、そう思った経緯、会社の背景を「Ver.β」と交えて読み進めるとすごく
得心のいく展開でした。“竹那珂”の存在が“恭也”に対する良い刺激であるのも絶妙で。

それぞれがシェアハウスを巣立つであろう、そんな寂しさを醸し出しながら“シノアキ”
にだけは積もり続ける不安要素。それを汲みきれなかった“恭也”は彼女に何ができるか。
女性陣の思慕と絡めてフォローの顛末に興味津々。アニメの動向と共に注視したい所です。

posted by 秋野ソラ at 01:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル