2020年12月17日

『桃瀬さん家の百鬼目録2』

日日日 先生、ゆずはらとしゆき 先生共著で綴る現代の御伽噺。夷狄が絡む事件に弟と
共に臨む“みろく”がその集団、そして「夷狄の姫」に狙われる理由に触れていきます。
(イラスト:吠L 先生)

https://dengekibunko.jp/product/fakelore/322004000041.html


「猿蟹合戦」の件では「女子中高生連続とろける征服バブル通り魔事件」なる猥談的な
ノリで進むかと思えば、夷狄に憑かれた顕現者のえげつなさに思わず慄いてしまうほど。
夷狄と顕現者、そして「夷狄の姫」と登場人物との縁と、話の繋がりも見えてくる展開。

「かぐや姫」の件では「夷狄の姫」にみんな唆され意のままに話が進んでいってしまう
緊迫した流れを“みろく”と“小太郎”の守護者が絶妙なタイミングで食い止めにいく
小気味良い構成で魅せてくれます。色々と設定も明らかになって得心がいく点も面白い。

“みろく”に出し抜かれる結果となった小太郎ガールズに同情したり、“姜”の意外な
一面に驚かされたり、「終章」も一癖ある纏め方で、本作らしさを感じさせてくれます。
「創作ノート」そして「あとがき」の内容も実に興味深く見届けさせていただきました。

posted by 秋野ソラ at 00:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年12月16日

『桃瀬さん家の百鬼目録』

日日日 先生、ゆずはらとしゆき 先生、SOW 先生、森崎亮人 先生共著で綴る現代の御伽噺。
物語の英雄として顕現したはずの無力・無能・無職な女性が悪鬼妖怪と対峙していきます。
(イラスト:吠L 先生)

https://dengekibunko.jp/product/fakelore/322004000040.html


「夷狄」、世界を脅かす悪いものたち。幼少の折から怪異を視て、感じることのできる
“みろく”は自身が「桃太郎」と自覚し顕在者となった・・・はずがその力は弟“小太郎”に
発露し若くして夢破れる。今や大学も休学し赤貧の身となった彼女は風前の灯火だが──。

「一寸法師」の件では“師匠”にしごかれて他の権限者と迷惑な夷狄の存在を目にして、
「ものぐさ太郎」の件では顕在者とは選ばれし者という誤解を実体験を通じて崩されて、
「浦島太郎」の件では心霊現象の類と本物の夷狄との違いを否が応でも見せつけられて。

“小太郎”と小太郎ガールズが見せる明るさと、“みろく”がにじませる暗さとの対比。
そこに意味があるのでは、と匂わせる描写に彼女の存在意義が見い出せることに期待し、
あとがき代わりの「創作ノート」に驚きながら、続く次巻の刊行を待ちたいと思います。

posted by 秋野ソラ at 00:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年12月15日

『公女殿下の家庭教師7 先導の聖女と北方決戦』

七野りく 先生が贈る魔法革命ファンタジー。死地に残り行方知れずの“アレン”を捜す
間もなく迫る帝国軍に、残された者たちが王国でそれぞれの想いを胸に行動を起こします。
(イラスト:cura 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/201812koujodenka/322006000822.html
https://fantasiabunko.jp/special/201812koujodenka/


“ティナ”たちが“アレン”の教えを活かし、健気に自分たちの役割を全うしていく中、
“剣姫”ならぬ“炎姫”として敵味方に畏怖される自暴自棄っぷりを見せる“リディヤ”。
見ていて居たたまれない彼女、手がかりの掴めない彼、読み手としても焦りが募ります。

そして不在だからこそ分かる、これまでに残してきた“アレン”の功績。そして生き様。
更に、彼すら知らないかも知れない古から残る大切な絆が人々の心を突き動かしていく
展開に胸が熱くなる思いで。「情けは人のためならず」とはまさにこれと言わんばかり。

渦中の人である“アレン”は、と言うと“リディヤ”に上手く申し開きできるか不安な
出来事に直面していたり、埒外の強敵と対峙することになったりと色々お忙しいご様子。
いよいよ「王国動乱編」の締め括りに向けて準備は整ったようで次巻刊行が楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 00:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年12月14日

『〆切前には百合が捗る』

平坂読 先生が「GA文庫」にて上梓する新作は日常系ガールズラブコメ。ずぼらな美人作家
とその世話役を務める家出少女、2人の目を通じて普通に生きることの難しさを描きます。
(イラスト:U35 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4815608088.html


レズビアンだと自覚し、高校2年を迎えてクラスメイトにカミングアウトした“愛結”は
友人に偏見や忌避の目に晒され、親にも理解されず、怒りに身をまかせて単身で上京する。
出版社に勤める従姉妹の“京”に助けられ、ある作家の世話係兼監視役を依頼されて──。

「ガガガ文庫」から刊行された『妹さえいればいい。』シリーズの世界観を受け継ぎつつ
新たな登場人物“優佳理”の自由奔放ぶりと、彼女に振り回される“愛結”という構図で
突如はじまった2人の縁が段々と深まっていく様子がコミカルに描かれていて実に楽しい。

そんな中、“優佳理”がどんな意志を持って作家で在り続けているのか、暗い影を落とす
機微が垣間見えたその瞬間、ガルコメとして大きく舵を切った展開に続きが気になること
うけあい。“優佳理”が“愛結”との関係をどう整理するのかを含め注目したい作品です。

posted by 秋野ソラ at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年12月11日

『友人キャラは大変ですか?10』

伊達康 先生が贈る最強助演ラブコメ。第10巻は能力を封じられた“龍牙”の代役として
ハーレムラブコメ主人公の立ち位置に置かれた“一郎”が“阿義斗”との決戦に臨みます。
(イラスト:紅緒 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518702


相対する「悪魔憑き」が誰も彼もコメディ要素に溢れている点に不満を募らせる“一郎”。
倒すほどに力を増す“阿義斗”が奈落城すら奪う埒外の展開に加えて、四神ヒロインズと
奈落の三姫がとっくの昔に“一郎”と仲睦まじいことになっていたこともバレてさあ大変。

“龍牙”に主人公役を押し付けていた、と懺悔する“一郎”。一歩間違えれば一触即発な
展開を「最高の友人キャラ」と認めた彼女の一言が、全てを繋ぎ止めてくれた気がします。
それでも残る苦境を打破する鍵が「窃吻」とは、これまた史上最高の当て字かと思います。

“阿義斗”が“一郎”との対決にこだわる本当の理由を見抜き、友人キャラとして行動を
貫く“バエル”の助演ぶりも光る最終決戦でありました。最後まで自分のことを一般人と
言い切る“一郎”と、できれば“龍牙”に幸あれ、ということで無事完結を祝う次第です。

posted by 秋野ソラ at 00:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル