鴨志田一 先生が贈る青春ストーリー。シリーズ第11冊目はミニスカサンタ姿の“透子”が
思春期症候群をプレゼントした相手の一人、中学の級友“赤城”に纏わる逸話に触れます。
(イラスト:溝口ケージ 先生)
【 https://dengekibunko.jp/product/aobuta/321907000725.html 】
大学生となって変わらず“麻衣”との恋人生活を謳歌している“咲太”の姿を見ていると
思春期症候群も過去の話か、なんてことにはならないと“赤城”が行動で示してくれます。
SNSで流行する「#夢見る」のタグが関わる都市伝説も表層でしかない、というのも驚きで。
中学が同じだった。“咲太”とあの時間を共に過ごした。それだけで級友たちの生き方に
影を落としていたことが、ナース姿で人助けに明け暮れる“赤城”の秘めた胸の内からも
痛感させられます。見極める彼の気概を見守る“麻衣”の分かってくれている感もすごい。
「もう一つの可能性の世界」、基盤となる思春期症候群。その影響力を乗り越えてきた
“咲太”と“麻衣”の日常がひどく愛おしいと余韻を噛みしめる・・・間もなく“赤城”を
介して伝えられたメッセージの不穏さに気が抜けません。次巻の刊行を座して待ちます。
2020年12月31日
2020年12月30日
『プロペラオペラ3』
犬村小六 先生が贈る恋と空戦のファンタジー。第3巻は「ガメリア合衆国」の圧倒的な
国力の差を目にしてもなお“クロト”は“イザヤ”と「日之雄」を守る戦いに臨みます。
(イラスト:雫綺一生 先生)
【 http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518733 】
無からカネを生む魔法を元に艦隊で空を埋め尽くし、大統領の座を目前とする“カイル”。
未だ残る空虚さを埋めるべく“イザヤ”を求める彼に対し彼女の裸に劣情する“クロト”。
「……表紙の彼女は何者?」という疑問も2人の機微を示す証左に昇華させる展開が秀逸。
容赦なく日之雄へ物量作戦を展開する合衆国へ対抗するには“クロト”の存在が不可欠と
認めた“鹿狩瀬”の存在に嬉しさを覚えつつ、合衆国の油断を誘い、隙を突くために命を
賭して「迅一号作戦」に臨む軍人たちの振舞い。その熱さ、そして切なさに胸が震えます。
“イザヤ”が抱いた「直感」。それは“速夫”が覚悟を決めた「あの時」から蓄積された
運命の片鱗であったのかも知れません。ソロモン海空戦で彼女の名声が世に知れ渡る一方、
“クロト”が“カイル”に勝つための切り札に迫る窮地の行方。続きが待ち遠しいです。
国力の差を目にしてもなお“クロト”は“イザヤ”と「日之雄」を守る戦いに臨みます。
(イラスト:雫綺一生 先生)
【 http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518733 】
無からカネを生む魔法を元に艦隊で空を埋め尽くし、大統領の座を目前とする“カイル”。
未だ残る空虚さを埋めるべく“イザヤ”を求める彼に対し彼女の裸に劣情する“クロト”。
「……表紙の彼女は何者?」という疑問も2人の機微を示す証左に昇華させる展開が秀逸。
容赦なく日之雄へ物量作戦を展開する合衆国へ対抗するには“クロト”の存在が不可欠と
認めた“鹿狩瀬”の存在に嬉しさを覚えつつ、合衆国の油断を誘い、隙を突くために命を
賭して「迅一号作戦」に臨む軍人たちの振舞い。その熱さ、そして切なさに胸が震えます。
“イザヤ”が抱いた「直感」。それは“速夫”が覚悟を決めた「あの時」から蓄積された
運命の片鱗であったのかも知れません。ソロモン海空戦で彼女の名声が世に知れ渡る一方、
“クロト”が“カイル”に勝つための切り札に迫る窮地の行方。続きが待ち遠しいです。
2020年12月29日
『ソードアート・オンライン25 ユナイタル・リングIV』
川原礫 先生が贈る大人気シリーズ。第25巻は《ユナイタル・リング》で窮地に立ち向かう
“キリト”たちを描きつつ、《アンダーワールド》で驚きの邂逅を果たす顛末に触れます。
(イラスト:abec 先生)
【 https://dengekibunko.jp/product/sao/322008000007.html 】
《忌まわしき者の絞輪》を楯に大集団を仕向けてくる「仮想研究会」の“ムタシーナ”。
憎たらしい上に、二重三重の策を弄する相手でも“キリト”なら何とかしてくれるという
安心感が凄い。“ユイ”の着眼点、“アルゴ”の情報、“アスナ”の力など見所も満載で。
それでも「仮想研究会」にまだ及ばない何かがある、というもどかしさが尾を引くものの
町の発展にこぎ着けたこと、《極光の指し示す地》を目指す算段が整ったことが救いです。
《アンダーワールド》に視点を切り替えると、こちらは宇宙を目指す展開に驚かされます。
“エオライン”から語られる「星王」に纏わるエピソードの数々に興味を覚えつつ、次々
見えてくる二百年後の世界、“キリト”と共にその変遷がもつ可能性へ想いを馳せる次第。
思い出と現実が交錯するその時、物語がどう動き、繋がっていくのかを見守りたい所です。
“キリト”たちを描きつつ、《アンダーワールド》で驚きの邂逅を果たす顛末に触れます。
(イラスト:abec 先生)
【 https://dengekibunko.jp/product/sao/322008000007.html 】
《忌まわしき者の絞輪》を楯に大集団を仕向けてくる「仮想研究会」の“ムタシーナ”。
憎たらしい上に、二重三重の策を弄する相手でも“キリト”なら何とかしてくれるという
安心感が凄い。“ユイ”の着眼点、“アルゴ”の情報、“アスナ”の力など見所も満載で。
それでも「仮想研究会」にまだ及ばない何かがある、というもどかしさが尾を引くものの
町の発展にこぎ着けたこと、《極光の指し示す地》を目指す算段が整ったことが救いです。
《アンダーワールド》に視点を切り替えると、こちらは宇宙を目指す展開に驚かされます。
“エオライン”から語られる「星王」に纏わるエピソードの数々に興味を覚えつつ、次々
見えてくる二百年後の世界、“キリト”と共にその変遷がもつ可能性へ想いを馳せる次第。
思い出と現実が交錯するその時、物語がどう動き、繋がっていくのかを見守りたい所です。
2020年12月28日
『スパイ教室04 《夢語》のティア』
竹町 先生が贈る痛快スパイファンタジー。第4巻は要人たちが集う会議が行われる合衆国
にスパイチーム「蛇」の一員“紫蟻”が現れると聞き「灯」の面々が総出で乗り込みます。
(イラスト:トマリ 先生)
【 https://fantasiabunko.jp/product/202001spy/322003001190.html 】
“リリィ”たちの血気盛んな姿とは裏腹に、その様子を見て自信を失いかける“ティア”。
更には冒頭に意味深長な場面が差し込まれたりして、戦いが始まる前から不安要素が満載。
“ローランド”の予言に対し“クラウス”がやり込めるのも焼け石に水のような気がして。
合衆国へ潜入してから「灯」メンバーが個々人の成長した姿、絶妙なコンビネーションを
魅せてピンチを切り抜けては追い詰められていく状況を見てもなお司令塔として無力感に
苛まれる“ティア”。そして満を持しての登場となる“紫蟻”。絶望感と緊張が走ります。
ミータリオの地に張り巡らされた、まるで蜘蛛の巣の如き“紫蟻”の罠。同じくかの地で
広がり続けてきた噂が現実の世に像を結んだ瞬間、“紫蟻”が陥落していくまでの展開は
ファーストシーズンの締め括りとしてまさに極上。次節にも期待が高まるというものです。
にスパイチーム「蛇」の一員“紫蟻”が現れると聞き「灯」の面々が総出で乗り込みます。
(イラスト:トマリ 先生)
【 https://fantasiabunko.jp/product/202001spy/322003001190.html 】
“リリィ”たちの血気盛んな姿とは裏腹に、その様子を見て自信を失いかける“ティア”。
更には冒頭に意味深長な場面が差し込まれたりして、戦いが始まる前から不安要素が満載。
“ローランド”の予言に対し“クラウス”がやり込めるのも焼け石に水のような気がして。
合衆国へ潜入してから「灯」メンバーが個々人の成長した姿、絶妙なコンビネーションを
魅せてピンチを切り抜けては追い詰められていく状況を見てもなお司令塔として無力感に
苛まれる“ティア”。そして満を持しての登場となる“紫蟻”。絶望感と緊張が走ります。
ミータリオの地に張り巡らされた、まるで蜘蛛の巣の如き“紫蟻”の罠。同じくかの地で
広がり続けてきた噂が現実の世に像を結んだ瞬間、“紫蟻”が陥落していくまでの展開は
ファーストシーズンの締め括りとしてまさに極上。次節にも期待が高まるというものです。
2020年12月25日
『Babel III 鳥籠より出ずる妖姫』
古宮九時 先生がWebサイトに公開していた珠玉の異世界ロードファンタジー。Web版加筆後
「電撃の新文芸」で再書籍化した第3巻は言語障害の対処法に“雫”が命懸けで挑みます。
(イラスト:森沢晴行 先生)
【 https://dengekibunko.jp/product/babel/322008000015.html 】
“キスク”へ攫われようとも、その王妹“オルティア”の理不尽な扱いに晒されてもなお
個人の尊厳を貫く“雫”。単身で抗い続ける彼女が王妹に粘り勝ち、良き理解者として
並び立つその様子には、険しい過程と家庭を経ているだけに、胸を熱くさせられました。
“雫”を口煩く思う“オルティア”が民草に示す容赦の無い言動。それもまた仕組まれた
ものだと分かった時の驚き、迂遠な陰謀もさることながらそれに毅然と立ち向かう王妹の
決意や過去と向き合い人の上に立つ者として大きく成長を見せた姿は称賛するしかなく。
流行り病としての言語障害を前に全力で対応にあたる姿勢を褒める一方で、場の雰囲気に
流されやすい“雫”の悪癖を諭すのはやはりあの男しかいない、という話運びもお見事で。
油断した彼女が悶絶する様子に思わず苦笑しつつ、最終巻でどう話を結ぶのか楽しみです。
「電撃の新文芸」で再書籍化した第3巻は言語障害の対処法に“雫”が命懸けで挑みます。
(イラスト:森沢晴行 先生)
【 https://dengekibunko.jp/product/babel/322008000015.html 】
“キスク”へ攫われようとも、その王妹“オルティア”の理不尽な扱いに晒されてもなお
個人の尊厳を貫く“雫”。単身で抗い続ける彼女が王妹に粘り勝ち、良き理解者として
並び立つその様子には、険しい過程と家庭を経ているだけに、胸を熱くさせられました。
“雫”を口煩く思う“オルティア”が民草に示す容赦の無い言動。それもまた仕組まれた
ものだと分かった時の驚き、迂遠な陰謀もさることながらそれに毅然と立ち向かう王妹の
決意や過去と向き合い人の上に立つ者として大きく成長を見せた姿は称賛するしかなく。
流行り病としての言語障害を前に全力で対応にあたる姿勢を褒める一方で、場の雰囲気に
流されやすい“雫”の悪癖を諭すのはやはりあの男しかいない、という話運びもお見事で。
油断した彼女が悶絶する様子に思わず苦笑しつつ、最終巻でどう話を結ぶのか楽しみです。