斜線堂有紀 先生が異色の青春ミステリー。「死体埋め部」“織賀”と“祝部”の2人が
青春の一幕と、分岐した未来をそれぞれ描いた二つの小編も収録した青春の補遺集です。
(イラスト:とろっち 先生)
【 http://www.shinkigensha.co.jp/book/978-4-7753-1858-4/ 】
“祝部”が死体の謎を推理して“織賀”が承認する。今や「死体埋め部」過ごす日常に、
それは旅行中という非日常においても変わらない。けれどそれは“織賀”との関係から
“祝部”が逃れられないことの裏返しなのかも知れない、と本作では痛感させられます。
「追想リコレクション」で、不本意ながら“織賀”のジャガーを譲り受けた“祝部”が
一人でバイトを続け、一人で死体に推理を巡らせ、一人で身も心も崩して生きていく。
痛々しいその姿は人を殺めた、足を踏み外した人間であることを見せつけてきて切ない。
読み終えて出これが分岐した未来の一つであることが救いなのかも知れないと思いつつ
もう1つの小編「再興と展開」ではどうにかいつも通りの2人の様子を見届けられて
思わず安堵。終わることなく続く2人の関係をつい期待したくなる1冊だと感じました。