2020年09月16日

『あなたのことならなんでも知ってる私が彼女になるべきだよね』

藍月要 先生が贈る新作は、人の感情を色で把握できる少年が「愛されることがつらい」
と感じる苦悩に対し、彼を好きになったハイスペックな少女が恋愛下手ながら挑みます。
(イラスト:Aちき 先生)

https://famitsubunko.jp/product/anatanokoto/322005000140.html


気になる相手の「脈アリ判定」ができると評判の“空也”。今日も友人“勇治”の頼みを
聞いていると、天才美少女で人間嫌いと揶揄される“紅”から隣席で色々と指摘を受ける。
彼は「彼女が自分に恋心を抱いている」と気付いているだけに謎多き人物なのだが──。

言い出せず、募るばかりの想いを、持てる力と文明の利器を活用して“空也”の情報収集
にあてる“紅”の振舞いが終始徹底されていて、思わず引くくらいなのがまた面白い所で。
そんな彼女が要注意と見る彼の幼馴染“翠香”には恋愛感情の色が見えないのが謎多き点。

超人的な身体能力を持つ“翠香”が、時に体を壊してまで絵を描く“空也”を陰に日向に
支える献身的な姿は恋人のそれそのものなのに恋愛感情はないのか。その種明かしがまた
実に印象的で、だからこそ何らかの形で彼の生き様が報われてほしいと願いたくなります。

posted by 秋野ソラ at 01:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年09月15日

『小悪魔だけど恋愛音痴なセンパイが今日も可愛い 1』

遊歩新夢 先生が贈る新作は、吹奏楽部を舞台に繰り広げるイチャラブコメディ。初心者
である少年に個別指導を行うことになった大学の先輩が恋の音色を奏でる努力を重ねます。
(イラスト/ひつじたかこ 先生)

https://over-lap.co.jp/Form/Product/ProductDetail.aspx?pid=9784865546958


独学で楽器を弄ってきた“拓斗”は、全国大会常連校の吹奏楽部を訪れてそのレベルの
高さに圧倒される。珍しい経歴の彼に目をつけたOGの“恵理那”は吹かせた管楽器の音
に惚れ込み個人指導を買って出るが、彼女には「小悪魔」と称される悪癖があって──。

小学生6年生の“リュシー”に恋愛相談にのってもらう“恵理那”もアレなんですけど
彼女の助言を鵜呑みにして“拓斗”へ何度もサービスシーンを提供する姿が微笑ましい。
そんな彼女に鍛えられてトランペット奏者として実力をつけていく彼の成長ぶりも見所。

同じく“拓斗”の奏でる音に惚れ込む“波音”の追っかけぶり、物語の軸を担っていく
“リュシー”を加え、“恵理那”が抱えるコンプレックスをカルテットで払拭しようと
試みる“拓斗”の気概は実に熱い。恋の音色は誰のために奏でるのか注目したい所です。

posted by 秋野ソラ at 01:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年09月14日

『継母の連れ子が元カノだった5 あなたはこの世にただ一人』

紙城境介 先生が贈る同棲ラブコメ。ドラマCD付き特装版と同時刊行を迎える第5巻は
“結女”と“水斗”が互いを意識し始める中で“いさな”が自然と外堀を埋めていきます。
(イラスト:たかやKi 先生)

https://sneakerbunko.jp/product/motokano/321911000109.html


前巻のバランスを崩した勢いで、そのまま攻めきれれば“結女”の勝ちなのでしょうけど
それが出来ればここまで“水斗”との関係を拗らせていないワケで。そんな複雑な彼女の
胸中を知ってもなお背中を後押ししてくれる“いさな”の考え方が驚異であり脅威であり。

その“いさな”を物の弾みとは言え押し倒し、母“由仁”に見られる失態を犯す“水斗”。
さらに「世話になっているから」と“いさな”の母“凪虎”に気風のいい挨拶を受けつつ
娘の隙がありすぎる姿を見て推察された上で気に入られるあたり、彼も中々の難物です。

誤解が誤解を招く勢いは止まらず、“いさな”を困惑させる事態に直面するその姿を見て
つい「みんな」との違いに悩む女の子であることを忘れている、と再認識させられます。
益々興味深い立ち位置にいる彼女が“水斗”と“結女”の仲をどうかき回すか注目です。

posted by 秋野ソラ at 00:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年09月11日

『リアデイルの大地にて5』

Ceez 先生が贈る大人気エルフファンタジー。第5巻は王都に迫る魔物の群れに対処しつつ
託された妖精を頼りに“オプス”を探し続ける“ケーナ”が遂にその所在を突き止めます。
(イラスト:てんまそ 先生)

https://famitsubunko.jp/product/leadale/322005000146.html
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_AM19201033010000_68/
https://ncode.syosetu.com/n1247p/


“ケーナ”のネーミングセンスに今さら期待できるワケもなく名付けられた妖精“クー”。
“ルカ”とも仲良く愛らしい存在な妖精と共に「夜の神殿」の手がかりを掴む“ケーナ”。
ここにも彼女が「リアデイル」で過ごしてきた因縁が絡んでくるあたりは実に面白い展開。

王都の外で力を振るう“ケーナ”の強さは言うまでもなく、その間に現れた謎の大きな亀
に挑むこととなった“クオルケ”と“エクシズ”。2人が出会った謎の老爺の出した条件
には色々思わせるところがあり、今後もお世話になりたいと思う存在感にあふれた方かと。

“オプス”の拠点に挑む“ケーナ”に同行した“クロフィア”が彼女の人となりを知って
ギクシャクするのも無理はなく。それを戻そうと彼女にかけた「女王すら怒る」という声
には自由気ままな生き様が窺えます。鉄拳制裁のその先に何が起こるのか、興味津々です。

posted by 秋野ソラ at 00:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年09月10日

『いつか僕らが消えても、この物語が先輩の本棚にあったなら』

永菜葉一 先生が「MF文庫J」から贈る新作は、小説に魅せられた少年少女の青春創作活劇。
文芸部部長に導かれ、苦学生の少年と恋する少年が小説家でプロデビューを目指します。
(イラスト:なび 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/itsukabokuraga/322003001224.html


無職の父に暴力を振るわれ、妹を庇いながら新聞配達で日銭を稼ぐ中学2年生の“海人”。
報われぬ日々に疲れ、自暴自棄な彼に救いの手を差し伸べる少女“朱音”。文芸部部長
と名乗る彼女は「死にたいのなら小説を書け!」と言い、彼はそこに光を見い出す──。

物語を書く手法も、小説投稿サイトの存在も知らない“海人”が“朱音”指導のもとで
作家として実力をつけ、ライバル“浩太”と切磋琢磨する展開がサクセスストーリーを
演出しつつ、未来の描写を挟むことで先の読めない展開から緊張感を高めるのが上手い。

「物書きは読者の存在に生かされている」と作中で話に出る通り、技術論を語るよりは
作家になるしかない、という生き様を描くところに軸を置いている機微の描写が面白く
プロデビューを目指す勝負の行方も落とし所が興味深いお話。オススメできる内容です。

posted by 秋野ソラ at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル