2020年07月31日

『やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく』

霜野おつかい先生が別名義、ふか田さめたろうとして「小説家になろう」に投稿していた
ラブコメディが書籍化。察しのいい少年が毒舌美少女に抱く感情を突き詰めていきます。
(イラスト:ふーみ 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4815606268.html
https://ncode.syosetu.com/n0674fu


「猛毒の白雪姫」とあだ名される美少女“小雪”をタチの悪いナンパから救った“直哉”。
案の定、助けたはずの彼女から毒舌を浴びせられるが、寝たきりとなった母親を看病する
際に身につけた察しの良さで彼はその本音を見破る。彼女は羞恥のあまり逃げ出すが──。

吊り橋効果さながらに“小雪”が抱く恋心を砕くフラグブレイカーかと思えば、それでも
怯まない彼女に興味を抱き、その感情がどういう意味の「好き」か見極めるため積極的に
絡んでいく“直哉”。グイグイくる要素を男側に持たせたのが功を奏していて面白いです。

“小雪”が見せる様々な表情を描く ふーみ 先生の挿絵が見事に適合していてまたお見事。
彼女の妹“朔夜”やその両親が“直哉”の人となりを判断する過程も楽しく、サクサクと
読み進めることができます。大団円が確定するのを見届けるその時を待ち望みたい所です。

posted by 秋野ソラ at 00:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年07月30日

『ちっちゃくてかわいい先輩が大好きなので一日三回照れさせたい』

『乃木坂明日夏の秘密』と同時刊行を迎える 五十嵐雄策 先生の新作は、美少女ボイスを
持つ先輩を一日三回褒めるノルマを課した少年の努力と葛藤を描く照れかわラブコメです。
(イラスト:はねこと 先生)

https://dengekibunko.jp/product/322002000164.html


毎日お昼に行われる、ソプラノ掛かった大人びた声の校内放送。“龍之介”は知っている。
その声の持ち主が放送部に在籍する華奢な先輩“花梨”で、普段はアニメ声であることを。
そんな彼女に対して一日三回喜んでもらおうと、心に決めていることが彼にはあって──。

先輩に対して真摯に、嫌味に感じることなく、正直な気持ちを伝える“龍之介”の姿勢は
実に好感が持てます。その言葉を受け止める“花梨”のバリエーション豊かな照れ具合に
思わずニヨニヨしてしまいます。それを描く はねこと 先生の挿絵がまた絶妙なもので。

“龍之介”の言動が周囲にも波及していく様子も注目しつつ、彼がその行動に至った理由
も理に適ったものがあるのであわせて見てもらいたい点です。実は“花梨”にもある悩み
と決意があります。これがまた印象深くエピローグで心温まること間違いなしの一作です。

posted by 秋野ソラ at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年07月29日

『はじらいサキュバスがドヤ顔かわいい。(4) ……だいすき。』

旭蓑雄 先生が贈る恋に悶えるサキュバスラブコメ。第4巻は“夜美”が管轄するという
夢見の街で行われる、嘘を後で無しにできる「欺瞞祭」にて“ヤス”が本音を晒します。
(イラスト:なたーしゃ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/hajirai/322001000036.html


男が苦手なサキュバスを集めた「対面搾欲苦手科」の子たちに、新しい搾欲方法を教える
立場となった“夜美”。その教材の一つとしてフィギュアを用意するために頼った原型師
“腐れユニコーン”が良い立ち位置で振る舞ってくれました。まさしくいい仕事してます。

「欺瞞祭」を口実にイチャつく“夜美”と“ヤス”の様子がこそばゆい。それでも2人が
好き合っていると認めない様子を見かねた“グリム”や“リリィ”、そして“アキラ”が
彼に対して思い思いに指摘する内容が優しさにあふれていて実に心温まるものがあります。

「怠惰の悪魔」言及するくだりがあったり、百合要素を取り入れていたりと押さえる所を
逃さないあたりもポイントが高い。素直じゃない“夜美”と“ヤス”、共に好転の兆しが
窺えるエピローグからどう展開していくのか。“オトギ”の思惑も含めて注目したいです。

posted by 秋野ソラ at 00:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年07月28日

『悪役令嬢(ところてん式) 1』

なみあと先生の「第1回ノベルアップ+小説大賞・ノベラ賞」受賞作。乙女ゲームの悪役
令嬢となったゲーマー大学生と主人公キャラへ押し出された元令嬢の受難の話を綴ります。
(イラスト/志田 先生)

http://hobbyjapan.co.jp/hjnovels/lineup/detail/251.html
https://novelup.plus/story/967027280


サークルの後輩に勧められた乙女ゲームを始めたらその悪役令嬢となっていた“コノミ”。
作中の主人公「オリバー」の中の人となった“アイリーン”に詰め寄られるが理由は不明。
“コノミ”はゲームクリアが鍵と信じ「オリバー」のハッピーエンドを目指すのだが──。

困惑する“アイリーン”を他所に、効率厨ゲーマーである“コノミ”が色々と画策するも
豪快に予定調和を崩していく展開がまず面白い。協力者である“ウィン”の肝が据わった
言動もお気に入り。ミステリー要素を織り交ぜてくる辺りも先生らしい構成で見所の一つ。

“コノミ”に振り回されながらも次第に機微の変化を見せる“アイリーン”に愛着も湧き
ますし、ゲーム世界と現実世界との距離感が「いつか来る終幕」を見事に演出して思わず
ホロリとする所も。ナンバリングしたからには次巻もお願いしますね! HJノベルスさん。

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2020年07月27日

『うちの作家は推理ができない』

『宝石吐きのおんなのこ』シリーズの なみあと 先生が「二見サラ文庫」から贈る新作は
現役大学生ミステリ作家が書く作品の解決パートを推理する担当編集者の苦労を描きます。
(イラスト:いつか 先生)

https://www.futami.co.jp/book/index.php?isbn=9784576201023

大学生と作家を掛持ちする“花壇”には悪癖がある。推理小説の解決パートを忘れる癖が。
担当編集“真琴”からすれば、毎度悪びれずに嘯く彼は売れっ子作家でも憎たらしい存在。
〆切を目前に控えた彼女は止む無く起承転結の「結」が抜けた物語の再構築を試みる──。

まずは なみあと 先生の新たな旅立ちをお祝い申し上げます。“花壇”が残した「起承転」
までのヒント、モデルになった人物や場所、そして何より彼の思考を読んで解決パートを
導き出す“真琴”には同情するばかり。そんな彼女と一緒に推理に挑む楽しさがあります。

なぜ“花壇”は忘れるのか。そこにある可能性を見い出すと憎たらしい彼の言動がやがて
微笑ましく思えるから不思議。“高山”が両者の関係を再評価する内容に愛すら感じます。
ほどよく謎解きを楽しんだ後に心温まる読了感が味わえる本作、オススメしておきます。

posted by 秋野ソラ at 00:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル