2020年06月16日

『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術13』

むらさきゆきや 先生が贈る異世界冒険譚。TVアニメ第2期への準備が進む中で刊行となる
第13巻は“ディアヴロ”ですら手を焼く強敵を前に自分の道を貫くかどうかが問われます。
(イラスト:鶴崎貴大 先生)

http://lanove.kodansha.co.jp/books/2020/6/#bk9784065194454


一歩間違えれば“レム”を永遠に失うことになったかも知れない、という現実に直面して
“ディアヴロ”が溢れる気持ちを抑えきれず自ら「求めた」という事実。孤高を貫く彼の
信念をも覆しかねない、けれど前向きな変化の現れに物語の大きな転換点を予感させます。

思いがけない生存者の証言から判明していく魔導機兵の謎、そして“ゲルメド”帝の示す
《器の少女》への執着の意味。“ディアヴロ”ですら叶わぬ現人神を前に“ノア”が提案
してきた「協調」。頭では分かっていても受け入れられない彼の頑なな姿勢がもどかしい。

ソロプレイで事を治めようとする無謀な“ディアヴロ”を止めるため“ノア”が明かした
衝撃の真相には読み手としても驚かされるばかり。そして譲歩の道を選択した彼の勇気に
拍手を送りたいと思います。対する“アリシア”はどう動くか、注目の展開が続きます。

posted by 秋野ソラ at 00:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年06月15日

『魔王学園の反逆者3 〜人類初の魔王候補、眷属少女と王座を目指して成り上がる〜』

久慈マサムネ 先生が贈るちょっぴりHな学園魔術ファンタジー。第3巻は魔王候補たちが
同盟を結び暗躍する中、“れいな”の正体と窮地を知った“ユート”が対策に奔走します。
(イラスト:kakao 先生)

https://sneakerbunko.jp/product/maogaku/322003000335.html


魔族だからこその親子関係、ゆえに“ユート”のカードになることを選んだ“れいな”の
悲愴な心情は計り知れず。彼女の身上がもたらす、明日をも知れぬ命の灯火を彼が、更に
彼の家族が救ってくれる展開は、彼女の願いが少しでも報われてくれて嬉しいと思えます。

個性的な能力ゆえに相性が悪い相手との戦いを補おうと魔王候補たちに同盟を持ち掛ける
“ロスト”。とは言え力ずくでねじ伏せられた“マリオス”の顛末を見れば怪しさ全開な
「死神」の、それこそ悪魔のような囁きが“ユート”陣営を揺さぶる流れはお見事な手腕。

そんな悪意あふれる筋書きに、安易に乗ることのない“ユート”の男気もさることながら
彼なりの方法で覆していく結末がまた爽快感あふれる内容で。喜びいっぱいのエピローグ、
かと思えば“ロスト”が彼に示した本心は物語を騒がせそうで続きが気になるところです。

posted by 秋野ソラ at 00:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年06月12日

『本山らの文庫公式アンソロジー「本山らのが○○になったら?」』

本山らの さんが「エアコミケ(コミックマーケット98)」で頒布した小説アンソロジー。
「女子大生狐巫女ではなかったら」というテーマで人気作家たちが思いの丈を綴ります。
(イラスト:名取さな さん)

https://motoyama-rano.booth.pm/items/1979489
https://www.youtube.com/watch?v=IKg5j70jyqU


掲載順に神田夏生、古宮九時、八目迷、海津ゆたか、あまさきみりと、羽場楽人、涼暮皐、
藤井論理、モノカキ・アエル、岬鷺宮、以上敬称略が寄稿する豪華な一冊。様々な作風を
同時に味わえるアンソロジーが商業にも流れを築けないかとまず思わずにはいられません。

物語と出会ったり、物語に囲まれたり、物語でつまずいたり、物語を嫌いになったり──。
ふとした瞬間に“本山らの”という「概念」が登場する人物たちにどう影響を及ぼすのか。
読み進める度に「そう演出してくるか!」と驚かされるばかりでまさに十人十色の短編集。

苦い思い出の夏、朽ちた都市、禁じられた世界、輝かしい舞台、公園の隅、継がれる宇宙、
まぼろしの感情、絶望と希望、解禁された酒の席、あらまほしき先達。どの小編にも必ず
ライトノベルを愛し、推していく心が感じられるのがまた素晴らしい、素敵な一冊でした。

posted by 秋野ソラ at 00:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌

2020年06月11日

『物理的に孤立している俺の高校生活8』

森田季節 先生が贈る青春未満ラブコメ。第8巻は“えんじゅ”がココロオープンで無意識
に示した感情を前に“業平”が、もしくは周囲の残念系異能力者たちが想いを巡らせます。
(イラスト:Mika Pikazo 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518481


異能力がもたらす負の要素が、人研で培ってきた人間関係が、踏み出す一歩を鈍らせる。
それは“えんじゅ”に限らず“業平”にも言えること。「俺が好きなのは、愛河だ」と
嘯く彼の気持ちは恋心、というよりは心を縛るための足枷のような気がして実に切ない。

意を決して動物園デートに“愛河”を誘った“業平”の姿を見“えんじゅ”てが断言した
あの一言が、“愛河”との話の端々に出てくる“えんじゅ”のイメージが、いい雰囲気を
見せる2人の仲が迎える結末を予感させるだけに、ページをめくる手も鈍るというもの。

それにしても“エリアス”が流すあの涙の訳は突然でした。全てを見通す“明星”元会長
だからこその仕業とはいえ。同じく「相手」の想いを知る“愛河”があの決断をしたのも
無理はないだけに切なさは増すばかり。拗れた恋愛模様が向かう先を興味深く見守ります。

posted by 秋野ソラ at 00:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年06月10日

『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?9』

三河ごーすと 先生が贈る学園ゲーム系頭脳バトル。第9巻は“紅蓮”との勝負に固執する
“透夜”の生き様に触れながら、策謀が渦巻く《獣王遊戯祭》第二幕の幕開けを描きます。
(イラスト:ねこめたる 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/f-rank/322001000933.html


幼い頃から卓越した才能を持ちながらも、大人ですら並ぶ者なくそれを持て余す“透夜”。
若くして生きる意味さえ失いつつある彼を別の道へ導けなかったのかと思う反面、愛とも
憎しみとも違う、執着する対象を得られた幸せを祝うべきなのかも、と感じる彼の昔語り。

“透夜”が眼帯をつけた理由、そこに彼の思い描く未来へ突き進む覚悟を魅せつけられる
気がして、“エーギル”の気が抜けない心境も同情に値するというもの。“紅蓮”の前へ
舞い戻った彼が臨む「ディベート・ゲーム」に送り出された“フラヴィア”も同じように。

「絶対幸運」の“クリステラ”に勝つ策を「絶対不運」の“フラヴィア”に託す“紅蓮”。
その読みは興味深い展開と、彼すら驚く結末をもたらしてきました。覚醒の兆しを見せる
彼の変化に気付き始めた“可憐”は抑止力となるか否か。次巻も楽しみな展開と言えます。

posted by 秋野ソラ at 00:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル