景詠一 先生の「第8回集英社ライトノベル新人賞・銀賞」受賞作。天涯孤独となる少年が
「盲目の吸血鬼が住む」という屋敷に引き取られ、人外との絆を深めていくラブコメです。
(イラスト:みきさい 先生)
【 http://dash.shueisha.co.jp/bookDetail/index/978-4-08-631365-0 】
両親を事故で失い、祖父も亡くなり、遺書が示す屋敷に住む“セナ”と家族になることを
決めた少年“日向”。曰く彼女は噂どおりの吸血鬼だと言い、その屋敷には硝子みたいな
虫や牛の頭をした配達人が現れたりと驚きの連続。実は彼の血筋に理由があるようで──。
今や人に認識されなくなった幻想種。それらと人とを仲介する幻想管理人。昔その役割を
担い英雄とも呼ばれる“セナ”。彼女と“日向”を結ぶ家の関係。身近な人物も幻想種で
その悩みを受け止める過程で彼が成長し、役割を引き継ぐと決意する顛末に魅せられます。
“日向”のお姉さんとして振る舞う“セナ”が彼に対し過剰なまでにグイグイくる世話の
焼き具合が微笑ましいのも見どころ。そこに人ならざる者ゆえの理由を添えてある点にも
ニヤリとする要素があり、心温まる読了感が味わえます。オススメできる一作と言えます。
2020年06月23日
2020年06月22日
『俺の妹がこんなに可愛いわけがない(14) あやせif 下』
伏見つかさ 先生が贈る大人気シリーズ。PSPゲームの「あやせルート」をノベライズした
「新垣あやせifルート」を結ぶ第14巻は交際を始める2人が行く愛と苦難の道を描きます。
(イラスト:かんざきひろ 先生)
【 https://dengekibunko.jp/product/oreimo/321907000708.html 】
“京介”セクハラ発言をしてもこれまでとは反応が異なっていたり、体の距離を探り探り
詰め寄ろうとする言動を見せたり、とにかく“あやせ”が可愛い。それは彼も心が浮つく
というものです。キスシーンも初々しくて挿絵もこそばゆいの何の。まさに幸せいっぱい。
そんな恋仲となった“京介”と“あやせ”の関係を“桐乃”には秘密にしている、という
心に棘を刺すかの如き現実から目を背け続けられるか。兄妹という関係がそれを許すはず
もなく。闇に堕ちた“黒猫”や、全てを俯瞰する「彼女」が事の重大さを再認識させます。
「選択肢」という形で悩む心の内を、そして選ぶ決意を示す演出は「ifルート」らしさを
感じさせて良かったですし、エピローグも見事な大団円でお腹いっぱい。満足な展開かと。
「黒猫if」「加奈子if」の刊行も決定、ということでまだまだ楽しませてもらえそうです。
「新垣あやせifルート」を結ぶ第14巻は交際を始める2人が行く愛と苦難の道を描きます。
(イラスト:かんざきひろ 先生)
【 https://dengekibunko.jp/product/oreimo/321907000708.html 】
“京介”セクハラ発言をしてもこれまでとは反応が異なっていたり、体の距離を探り探り
詰め寄ろうとする言動を見せたり、とにかく“あやせ”が可愛い。それは彼も心が浮つく
というものです。キスシーンも初々しくて挿絵もこそばゆいの何の。まさに幸せいっぱい。
そんな恋仲となった“京介”と“あやせ”の関係を“桐乃”には秘密にしている、という
心に棘を刺すかの如き現実から目を背け続けられるか。兄妹という関係がそれを許すはず
もなく。闇に堕ちた“黒猫”や、全てを俯瞰する「彼女」が事の重大さを再認識させます。
「選択肢」という形で悩む心の内を、そして選ぶ決意を示す演出は「ifルート」らしさを
感じさせて良かったですし、エピローグも見事な大団円でお腹いっぱい。満足な展開かと。
「黒猫if」「加奈子if」の刊行も決定、ということでまだまだ楽しませてもらえそうです。
2020年06月19日
『ちびっこ賢者、Lv.1から異世界でがんばります!5』
彩戸ゆめ 先生が贈るちびっこ賢者の無双ファンタジー。第5巻は魔の氾濫による異世界の
崩壊を食い止めるべく“ユーリ”が最大難易度のクエスト、「賢者の塔」へ再び挑みます。
(イラスト:竹花ノート 先生)
【 https://famitsubunko.jp/product/chibiken/322002000297.html 】
魔石の盗難、結界の消失、そして迫る災厄はまさかの神獣たる“朱雀”。皆で力を合わせ
王都の危機を何とか乗り越えた“ユーリ”が目にしたある人物たちの願望、もしくは悲願。
恐れるべきは魔物ではなくヒトなのではないかと思わせる業の深さを垣間見た気がします。
失敗が許されない連続クエストを今まで以上の無双を繰り広げてこなしていく“ユーリ”。
“アンデッドキング”が倒れる間際に伝えた予想外の懇願、邪神が明かす魔の氾濫の真相、
彼女自身の秘密を語る者の登場と、畳みかける驚きに愛しさと切なさがこみ上げてきます。
本作において「エリュシアオンライン」でなければならなかった意味づけも、タイトルが
示す“ユーリ”の前向きで挫けない心意気も、綺麗にまとめてきたように感じられました。
番外編も心温まる内容で最後まで楽しませてもらいました。完結をお祝い申し上げます。
崩壊を食い止めるべく“ユーリ”が最大難易度のクエスト、「賢者の塔」へ再び挑みます。
(イラスト:竹花ノート 先生)
【 https://famitsubunko.jp/product/chibiken/322002000297.html 】
魔石の盗難、結界の消失、そして迫る災厄はまさかの神獣たる“朱雀”。皆で力を合わせ
王都の危機を何とか乗り越えた“ユーリ”が目にしたある人物たちの願望、もしくは悲願。
恐れるべきは魔物ではなくヒトなのではないかと思わせる業の深さを垣間見た気がします。
失敗が許されない連続クエストを今まで以上の無双を繰り広げてこなしていく“ユーリ”。
“アンデッドキング”が倒れる間際に伝えた予想外の懇願、邪神が明かす魔の氾濫の真相、
彼女自身の秘密を語る者の登場と、畳みかける驚きに愛しさと切なさがこみ上げてきます。
本作において「エリュシアオンライン」でなければならなかった意味づけも、タイトルが
示す“ユーリ”の前向きで挫けない心意気も、綺麗にまとめてきたように感じられました。
番外編も心温まる内容で最後まで楽しませてもらいました。完結をお祝い申し上げます。
2020年06月18日
『田中〜年齢イコール彼女いない歴の魔法使い〜 11』
ぶんころり先生が贈る王道異世界ファンタジー。第11巻は「チェリー王国」の学園に通う
貧乏貴族に召喚獣として召喚された“田中”が、思わぬ国際問題に巻き込まれていきます。
(イラスト:МだSたろう 先生)
【 https://gcnovels.jp/book/b641.html 】
“クリス”たちがあてどなく“田中”捜索の旅を続ける中、渦中の彼は訳あって男装する
少女“メイスフィールド”に何度も裸を晒し、諦めの果てに従者として認められる顛末は
実に滑稽で。その彼女が召喚魔法にこだわる理由は悲壮さを印象づけてこれまた愛らしい。
“メイスフィールド”の祖国も巻き込まれる南部諸国の統一への動向。弱気を挫く流れに
抗うも及ばぬ彼女の虚しさに同情しつつ、暗躍する者たちの存在認めた“田中”がそれを
引っくり返していく展開がまた爽快で。彼への印象を反転させていく彼女の機微も面白い。
“田中”が呼び寄せた鳥さんや、“クリスティーナ”の街づくりに対する愛情に助けられ
“メイスフィールド”も大団円を迎えた・・・かと思えばいよいよ牙を剥いてきたあの大国。
今巻で辱めを受けた「彼女」の報復とも言える悪意に勝てるか、彼の振舞いに注目です。
貧乏貴族に召喚獣として召喚された“田中”が、思わぬ国際問題に巻き込まれていきます。
(イラスト:МだSたろう 先生)
【 https://gcnovels.jp/book/b641.html 】
“クリス”たちがあてどなく“田中”捜索の旅を続ける中、渦中の彼は訳あって男装する
少女“メイスフィールド”に何度も裸を晒し、諦めの果てに従者として認められる顛末は
実に滑稽で。その彼女が召喚魔法にこだわる理由は悲壮さを印象づけてこれまた愛らしい。
“メイスフィールド”の祖国も巻き込まれる南部諸国の統一への動向。弱気を挫く流れに
抗うも及ばぬ彼女の虚しさに同情しつつ、暗躍する者たちの存在認めた“田中”がそれを
引っくり返していく展開がまた爽快で。彼への印象を反転させていく彼女の機微も面白い。
“田中”が呼び寄せた鳥さんや、“クリスティーナ”の街づくりに対する愛情に助けられ
“メイスフィールド”も大団円を迎えた・・・かと思えばいよいよ牙を剥いてきたあの大国。
今巻で辱めを受けた「彼女」の報復とも言える悪意に勝てるか、彼の振舞いに注目です。
2020年06月17日
『不殺の不死王の済世記』
笹木さくま 先生が贈る新作は、不殺の縛りを己に課して世界征服を目指す骸骨の不死王と
彼に命を救われた少女が魔法の才能があることが分かり同じ道を歩む世界救済の物語です。
(イラスト:葉山えいし 先生)
【 https://famitsubunko.jp/product/husatsu/322001000104.html 】
罹患すれば死は免れない伝染病。頼りの治癒魔術師もいない小国、更に辺鄙な村に住む娘
“ミラ”がその病で死の淵を迎える間際、彼女の前に現れたのはローブを羽織る動く骸骨。
まさに死神かと思う彼が出した鎌ではなく、病を癒す秘薬。彼女を助ける彼の意図は──。
残された“ミラ”たちに食事を与え、外敵から守り、勉強まで教える不死王“テリオス”。
茶々を入れる相棒の黒猫との交流も含め、彼に絆されていく彼女たちの様子は微笑ましく。
彼の「計画」を訝しむ国王により差し向ける聖騎士“ディーネ”が直面する現実は虚しく。
“テリオス”指導の下、魔法の才能を開花させていく“ミラ”が見せる可愛らしい笑顔は
“ディーネ”ですら怒りを露にする悪意を前にしても陰ることなく残すことが出来るのか。
悲願達成に向けた彼の気概を垣間見た話の結び方が好感触で、続きが楽しみな作品です。
彼に命を救われた少女が魔法の才能があることが分かり同じ道を歩む世界救済の物語です。
(イラスト:葉山えいし 先生)
【 https://famitsubunko.jp/product/husatsu/322001000104.html 】
罹患すれば死は免れない伝染病。頼りの治癒魔術師もいない小国、更に辺鄙な村に住む娘
“ミラ”がその病で死の淵を迎える間際、彼女の前に現れたのはローブを羽織る動く骸骨。
まさに死神かと思う彼が出した鎌ではなく、病を癒す秘薬。彼女を助ける彼の意図は──。
残された“ミラ”たちに食事を与え、外敵から守り、勉強まで教える不死王“テリオス”。
茶々を入れる相棒の黒猫との交流も含め、彼に絆されていく彼女たちの様子は微笑ましく。
彼の「計画」を訝しむ国王により差し向ける聖騎士“ディーネ”が直面する現実は虚しく。
“テリオス”指導の下、魔法の才能を開花させていく“ミラ”が見せる可愛らしい笑顔は
“ディーネ”ですら怒りを露にする悪意を前にしても陰ることなく残すことが出来るのか。
悲願達成に向けた彼の気概を垣間見た話の結び方が好感触で、続きが楽しみな作品です。