2020年06月30日

『後宮妃の管理人 三 〜寵臣夫婦は繋ぎとめる〜』

廣本シヲリ 先生によるコミックス1巻も発売を迎えた、しきみ彰 先生が贈る後宮物語。
第3巻は陛下との離縁を示す賢妃“明貴”の真意を“優蘭”が探り、対策に乗り出します。
(イラスト:Izumi 先生)

https://lbunko.kadokawa.co.jp/product/kanrinin/322002001181.html
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_FL00201451010000_68/


“明貴”にどす黒い感情を向けられる“優蘭”にとってはとばっちりでしかないこの案件。
「何やってんの“劉亮”!?」と言いたくなる夫婦喧嘩の背景に思わず“優蘭”を応援する
感情に一層の熱が入るというもの。彼女を気遣う“皓月”の男前ぶりも磨きが掛かります。

反旗を翻す勢いの“皓月”から、これまた精神的被害を被る“慶木”も陛下に近い考えを
見せたため“優蘭”たちからしっぺ返しを食らう顛末も興味深い。“明貴”にも非はある
ため「雨降って地固まる」形にどう持っていくのか、読み進めるにつれ期待が膨らみます。

離縁騒動に加えて難題が重なる中、“優蘭”のアイデアが見事に嵌まっていく結末は胸が
すくというもの。見ていてこそばゆくも、着実に仲を深めていく夫婦の行く末は見届ける
甲斐がありますし、“玄曽”が“皓月”を評したあの意味も見極めていきたいところです。

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2020年06月29日

『Unnamed Memory V 祈りへと至る沈黙』

越水ナオキ 先生によるマンガ化が決定した、古宮九時 先生が贈る愛と呪いの一大叙事詩。
第5巻は“オスカー”の呪いを解いた“ティナーシャ”が女王に即位する顛末を描きます。
(イラスト:chibi 先生)

https://dengekibunko.jp/product/unnamed/321906000053.html


“ティナーシャ”が明かした「一年間だけの女王」という真意。“オスカー”がその心を
汲んでいの一番に提案したあの潔さに報われる思いがしました。精霊たちの反応も素敵で。
抱き寄せて安堵する顏、抱きしめられて恥じらう顏、chibi 先生の挿絵に萌え転がります。

邪神を招き敵意を露にする「セザル」、その中で暗躍する“ヴァルト”が言及する魔法球。
“オスカー”に呪いをかけた“沈黙の魔女”、彼女が明らかにする彼に纏わる過去の改竄。
「苗床事件」においても世界の外からの意志を感じさせるだけに嫌な予感が胸に残ります。

“トラヴィス”に付きまとう“ファイドラ”への対応に巻き込まれる“ティナーシャ”が
“オスカー”と夫婦喧嘩? を繰り広げる顛末は世界の修正力を見せつけられる気がして。
尊厳、いや、人の心に問いかける「最後の変革」とは何か。最終巻からも目が離せません。

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2020年06月26日

『声優ラジオのウラオモテ #02 夕陽とやすみは諦めきれない?』

二月公 先生が贈る青春声優エンタメ。第2巻は“夕陽”と“やすみ”を執拗に叱咤する
先輩声優や学校にまで付きまとってくるファンによって2人の声優生命が窮地を迎えます。
(イラスト:さばみぞれ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/sayyouradio/322002000158.html


裏営業疑惑に決着をつけたがアイドル声優として経歴に傷をつけた“由美子”と“千佳”。
首一枚つながった彼女たちの安堵感に、執拗に釘を刺す“柚日咲”の言葉一つ一つが正論
であるだけに、腹は立つがぐうの音も出ないのが読者としてももどかしい展開が続きます。

“柚日咲”が“千佳”たちに怒り続ける理由。そこに「声優を好きになる」という一種の
業のようなものを、矛盾を抱えた感情のウラオモテを感じて“柚日咲”が憎めない存在へ
変わっていくのが興味深い。とは言え、そんな不安定さに親が口を出すのも自然な流れで。

今一度、声優人生を懸けて臨む通学路。良くも悪くもファンの熱量をぶつけられる2人が
声優となった責務を果たす決意を示すかのように声を張り上げ、号泣しながら走り抜ける
あの場面は挿絵を含めて圧巻の一言。次はどんなラジオで魅せてくれるのか、楽しみです。

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2020年06月25日

『天才王子の赤字国家再生術7〜そうだ、売国しよう〜』

鳥羽徹 先生が贈る弱小国家運営譚。第7巻は帝国で3人の皇子が後継者争いを繰り広げる
最中に、“ロウェルミナ”と“ウェイン”が機先を制するべく表に裏にと策を巡らせます。
(イラスト:ファルまろ 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4815607098.html


皇帝に即位する野望に燃える第一皇子“ディメトリオ”。勢力は削られ、必要な洗礼式を
行う場所は第二皇子“バルドロッシュ”に押さえられ、戴冠式を行う帝都付近は第三皇子
“マンフレッド”に押さえられて打つ手なしの彼を何故か“ウェイン”が助力する破目に。

女王を目指す“ロウェルミナ”の策に嵌められた“ウェイン”が、彼女と繰り広げる目に
見えない駆け引きの連続が今巻も面白い。それでも思い通りに動かないのが人間の定めと
いうことで、誰が2人の意に反した行動をとるのか想像しながら読む楽しさを味わえます。

“ディメトリオ”の野望を「呪い」と評した“ウェイン”の目利きも見事と言うばかりで。
当事者は皇子たちだけではない。そんなお家騒動の果てに迎える結末と共に、舞台の裏で
“フラーニャ”が選んだ選択肢が歴史にどんな作用をもたらすか。次巻も目が離せません。

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2020年06月24日

『幼なじみが絶対に負けないラブコメ4』

二丸修一 先生が贈る大人気ヒロインレース。第4巻はドラマ「チャイルド・キング」で
芸能界から身を引き、今またそれを契機に新たな躍進を図る“末晴”の覚悟を描きます。
(イラスト:しぐれうい 先生)

https://dengekibunko.jp/product/osamake/322002000168.html


“末晴”の過去と今を結ぶドキュメンタリーとドラマの真エンディングを制作することで
“瞬”社長からの悪意をぶっ潰す。そう決めた彼を後押しする“哲彦”が密かにあざとく
目標に向かって動く中、「彼」からの推理に激昂してしまう点は不安要素が拭えない印象。

“真理愛”も転校してきて、ますます悪目立ちする群青同盟メンバー。三すくみの状況下、
秘策を胸に臨む“白草”が“末晴”との関係を押しきれなかったのが惜しい。“紫苑”の
あの一言が彼に予防線を張らせたのは今後にも響きそう。それにしても面白い子ですな。

パートナとして“末晴”との地位を確保した“真理愛”に安定感を覚えた後、“黒羽”が
ようやく本心をぶつけつつ提案してきた彼との「新しい関係」。これがまた狡猾というか、
揺さぶりを掛けられる方も羨ましくて実にけしからん訳で。次巻も目が離せない展開です。

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2020年06月23日

『吸血鬼は僕のために姉になる』

景詠一 先生の「第8回集英社ライトノベル新人賞・銀賞」受賞作。天涯孤独となる少年が
「盲目の吸血鬼が住む」という屋敷に引き取られ、人外との絆を深めていくラブコメです。
(イラスト:みきさい 先生)

http://dash.shueisha.co.jp/bookDetail/index/978-4-08-631365-0


両親を事故で失い、祖父も亡くなり、遺書が示す屋敷に住む“セナ”と家族になることを
決めた少年“日向”。曰く彼女は噂どおりの吸血鬼だと言い、その屋敷には硝子みたいな
虫や牛の頭をした配達人が現れたりと驚きの連続。実は彼の血筋に理由があるようで──。

今や人に認識されなくなった幻想種。それらと人とを仲介する幻想管理人。昔その役割を
担い英雄とも呼ばれる“セナ”。彼女と“日向”を結ぶ家の関係。身近な人物も幻想種で
その悩みを受け止める過程で彼が成長し、役割を引き継ぐと決意する顛末に魅せられます。

“日向”のお姉さんとして振る舞う“セナ”が彼に対し過剰なまでにグイグイくる世話の
焼き具合が微笑ましいのも見どころ。そこに人ならざる者ゆえの理由を添えてある点にも
ニヤリとする要素があり、心温まる読了感が味わえます。オススメできる一作と言えます。

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2020年06月22日

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない(14) あやせif 下』

伏見つかさ 先生が贈る大人気シリーズ。PSPゲームの「あやせルート」をノベライズした
「新垣あやせifルート」を結ぶ第14巻は交際を始める2人が行く愛と苦難の道を描きます。
(イラスト:かんざきひろ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/oreimo/321907000708.html


“京介”セクハラ発言をしてもこれまでとは反応が異なっていたり、体の距離を探り探り
詰め寄ろうとする言動を見せたり、とにかく“あやせ”が可愛い。それは彼も心が浮つく
というものです。キスシーンも初々しくて挿絵もこそばゆいの何の。まさに幸せいっぱい。

そんな恋仲となった“京介”と“あやせ”の関係を“桐乃”には秘密にしている、という
心に棘を刺すかの如き現実から目を背け続けられるか。兄妹という関係がそれを許すはず
もなく。闇に堕ちた“黒猫”や、全てを俯瞰する「彼女」が事の重大さを再認識させます。

「選択肢」という形で悩む心の内を、そして選ぶ決意を示す演出は「ifルート」らしさを
感じさせて良かったですし、エピローグも見事な大団円でお腹いっぱい。満足な展開かと。
「黒猫if」「加奈子if」の刊行も決定、ということでまだまだ楽しませてもらえそうです。

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2020年06月19日

『ちびっこ賢者、Lv.1から異世界でがんばります!5』

彩戸ゆめ 先生が贈るちびっこ賢者の無双ファンタジー。第5巻は魔の氾濫による異世界の
崩壊を食い止めるべく“ユーリ”が最大難易度のクエスト、「賢者の塔」へ再び挑みます。
(イラスト:竹花ノート 先生)

https://famitsubunko.jp/product/chibiken/322002000297.html


魔石の盗難、結界の消失、そして迫る災厄はまさかの神獣たる“朱雀”。皆で力を合わせ
王都の危機を何とか乗り越えた“ユーリ”が目にしたある人物たちの願望、もしくは悲願。
恐れるべきは魔物ではなくヒトなのではないかと思わせる業の深さを垣間見た気がします。

失敗が許されない連続クエストを今まで以上の無双を繰り広げてこなしていく“ユーリ”。
“アンデッドキング”が倒れる間際に伝えた予想外の懇願、邪神が明かす魔の氾濫の真相、
彼女自身の秘密を語る者の登場と、畳みかける驚きに愛しさと切なさがこみ上げてきます。

本作において「エリュシアオンライン」でなければならなかった意味づけも、タイトルが
示す“ユーリ”の前向きで挫けない心意気も、綺麗にまとめてきたように感じられました。
番外編も心温まる内容で最後まで楽しませてもらいました。完結をお祝い申し上げます。

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2020年06月18日

『田中〜年齢イコール彼女いない歴の魔法使い〜 11』

ぶんころり先生が贈る王道異世界ファンタジー。第11巻は「チェリー王国」の学園に通う
貧乏貴族に召喚獣として召喚された“田中”が、思わぬ国際問題に巻き込まれていきます。
(イラスト:МだSたろう 先生)

https://gcnovels.jp/book/b641.html


“クリス”たちがあてどなく“田中”捜索の旅を続ける中、渦中の彼は訳あって男装する
少女“メイスフィールド”に何度も裸を晒し、諦めの果てに従者として認められる顛末は
実に滑稽で。その彼女が召喚魔法にこだわる理由は悲壮さを印象づけてこれまた愛らしい。

“メイスフィールド”の祖国も巻き込まれる南部諸国の統一への動向。弱気を挫く流れに
抗うも及ばぬ彼女の虚しさに同情しつつ、暗躍する者たちの存在認めた“田中”がそれを
引っくり返していく展開がまた爽快で。彼への印象を反転させていく彼女の機微も面白い。

“田中”が呼び寄せた鳥さんや、“クリスティーナ”の街づくりに対する愛情に助けられ
“メイスフィールド”も大団円を迎えた・・・かと思えばいよいよ牙を剥いてきたあの大国。
今巻で辱めを受けた「彼女」の報復とも言える悪意に勝てるか、彼の振舞いに注目です。

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2020年06月17日

『不殺の不死王の済世記』

笹木さくま 先生が贈る新作は、不殺の縛りを己に課して世界征服を目指す骸骨の不死王と
彼に命を救われた少女が魔法の才能があることが分かり同じ道を歩む世界救済の物語です。
(イラスト:葉山えいし 先生)

https://famitsubunko.jp/product/husatsu/322001000104.html


罹患すれば死は免れない伝染病。頼りの治癒魔術師もいない小国、更に辺鄙な村に住む娘
“ミラ”がその病で死の淵を迎える間際、彼女の前に現れたのはローブを羽織る動く骸骨。
まさに死神かと思う彼が出した鎌ではなく、病を癒す秘薬。彼女を助ける彼の意図は──。

残された“ミラ”たちに食事を与え、外敵から守り、勉強まで教える不死王“テリオス”。
茶々を入れる相棒の黒猫との交流も含め、彼に絆されていく彼女たちの様子は微笑ましく。
彼の「計画」を訝しむ国王により差し向ける聖騎士“ディーネ”が直面する現実は虚しく。

“テリオス”指導の下、魔法の才能を開花させていく“ミラ”が見せる可愛らしい笑顔は
“ディーネ”ですら怒りを露にする悪意を前にしても陰ることなく残すことが出来るのか。
悲願達成に向けた彼の気概を垣間見た話の結び方が好感触で、続きが楽しみな作品です。

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2020年06月16日

『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術13』

むらさきゆきや 先生が贈る異世界冒険譚。TVアニメ第2期への準備が進む中で刊行となる
第13巻は“ディアヴロ”ですら手を焼く強敵を前に自分の道を貫くかどうかが問われます。
(イラスト:鶴崎貴大 先生)

http://lanove.kodansha.co.jp/books/2020/6/#bk9784065194454


一歩間違えれば“レム”を永遠に失うことになったかも知れない、という現実に直面して
“ディアヴロ”が溢れる気持ちを抑えきれず自ら「求めた」という事実。孤高を貫く彼の
信念をも覆しかねない、けれど前向きな変化の現れに物語の大きな転換点を予感させます。

思いがけない生存者の証言から判明していく魔導機兵の謎、そして“ゲルメド”帝の示す
《器の少女》への執着の意味。“ディアヴロ”ですら叶わぬ現人神を前に“ノア”が提案
してきた「協調」。頭では分かっていても受け入れられない彼の頑なな姿勢がもどかしい。

ソロプレイで事を治めようとする無謀な“ディアヴロ”を止めるため“ノア”が明かした
衝撃の真相には読み手としても驚かされるばかり。そして譲歩の道を選択した彼の勇気に
拍手を送りたいと思います。対する“アリシア”はどう動くか、注目の展開が続きます。

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2020年06月15日

『魔王学園の反逆者3 〜人類初の魔王候補、眷属少女と王座を目指して成り上がる〜』

久慈マサムネ 先生が贈るちょっぴりHな学園魔術ファンタジー。第3巻は魔王候補たちが
同盟を結び暗躍する中、“れいな”の正体と窮地を知った“ユート”が対策に奔走します。
(イラスト:kakao 先生)

https://sneakerbunko.jp/product/maogaku/322003000335.html


魔族だからこその親子関係、ゆえに“ユート”のカードになることを選んだ“れいな”の
悲愴な心情は計り知れず。彼女の身上がもたらす、明日をも知れぬ命の灯火を彼が、更に
彼の家族が救ってくれる展開は、彼女の願いが少しでも報われてくれて嬉しいと思えます。

個性的な能力ゆえに相性が悪い相手との戦いを補おうと魔王候補たちに同盟を持ち掛ける
“ロスト”。とは言え力ずくでねじ伏せられた“マリオス”の顛末を見れば怪しさ全開な
「死神」の、それこそ悪魔のような囁きが“ユート”陣営を揺さぶる流れはお見事な手腕。

そんな悪意あふれる筋書きに、安易に乗ることのない“ユート”の男気もさることながら
彼なりの方法で覆していく結末がまた爽快感あふれる内容で。喜びいっぱいのエピローグ、
かと思えば“ロスト”が彼に示した本心は物語を騒がせそうで続きが気になるところです。

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2020年06月12日

『本山らの文庫公式アンソロジー「本山らのが○○になったら?」』

本山らの さんが「エアコミケ(コミックマーケット98)」で頒布した小説アンソロジー。
「女子大生狐巫女ではなかったら」というテーマで人気作家たちが思いの丈を綴ります。
(イラスト:名取さな さん)

https://motoyama-rano.booth.pm/items/1979489
https://www.youtube.com/watch?v=IKg5j70jyqU


掲載順に神田夏生、古宮九時、八目迷、海津ゆたか、あまさきみりと、羽場楽人、涼暮皐、
藤井論理、モノカキ・アエル、岬鷺宮、以上敬称略が寄稿する豪華な一冊。様々な作風を
同時に味わえるアンソロジーが商業にも流れを築けないかとまず思わずにはいられません。

物語と出会ったり、物語に囲まれたり、物語でつまずいたり、物語を嫌いになったり──。
ふとした瞬間に“本山らの”という「概念」が登場する人物たちにどう影響を及ぼすのか。
読み進める度に「そう演出してくるか!」と驚かされるばかりでまさに十人十色の短編集。

苦い思い出の夏、朽ちた都市、禁じられた世界、輝かしい舞台、公園の隅、継がれる宇宙、
まぼろしの感情、絶望と希望、解禁された酒の席、あらまほしき先達。どの小編にも必ず
ライトノベルを愛し、推していく心が感じられるのがまた素晴らしい、素敵な一冊でした。

posted by 秋野ソラ at 00:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌

2020年06月11日

『物理的に孤立している俺の高校生活8』

森田季節 先生が贈る青春未満ラブコメ。第8巻は“えんじゅ”がココロオープンで無意識
に示した感情を前に“業平”が、もしくは周囲の残念系異能力者たちが想いを巡らせます。
(イラスト:Mika Pikazo 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518481


異能力がもたらす負の要素が、人研で培ってきた人間関係が、踏み出す一歩を鈍らせる。
それは“えんじゅ”に限らず“業平”にも言えること。「俺が好きなのは、愛河だ」と
嘯く彼の気持ちは恋心、というよりは心を縛るための足枷のような気がして実に切ない。

意を決して動物園デートに“愛河”を誘った“業平”の姿を見“えんじゅ”てが断言した
あの一言が、“愛河”との話の端々に出てくる“えんじゅ”のイメージが、いい雰囲気を
見せる2人の仲が迎える結末を予感させるだけに、ページをめくる手も鈍るというもの。

それにしても“エリアス”が流すあの涙の訳は突然でした。全てを見通す“明星”元会長
だからこその仕業とはいえ。同じく「相手」の想いを知る“愛河”があの決断をしたのも
無理はないだけに切なさは増すばかり。拗れた恋愛模様が向かう先を興味深く見守ります。

posted by 秋野ソラ at 00:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年06月10日

『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?9』

三河ごーすと 先生が贈る学園ゲーム系頭脳バトル。第9巻は“紅蓮”との勝負に固執する
“透夜”の生き様に触れながら、策謀が渦巻く《獣王遊戯祭》第二幕の幕開けを描きます。
(イラスト:ねこめたる 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/f-rank/322001000933.html


幼い頃から卓越した才能を持ちながらも、大人ですら並ぶ者なくそれを持て余す“透夜”。
若くして生きる意味さえ失いつつある彼を別の道へ導けなかったのかと思う反面、愛とも
憎しみとも違う、執着する対象を得られた幸せを祝うべきなのかも、と感じる彼の昔語り。

“透夜”が眼帯をつけた理由、そこに彼の思い描く未来へ突き進む覚悟を魅せつけられる
気がして、“エーギル”の気が抜けない心境も同情に値するというもの。“紅蓮”の前へ
舞い戻った彼が臨む「ディベート・ゲーム」に送り出された“フラヴィア”も同じように。

「絶対幸運」の“クリステラ”に勝つ策を「絶対不運」の“フラヴィア”に託す“紅蓮”。
その読みは興味深い展開と、彼すら驚く結末をもたらしてきました。覚醒の兆しを見せる
彼の変化に気付き始めた“可憐”は抑止力となるか否か。次巻も楽しみな展開と言えます。

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2020年06月09日

『友人キャラは大変ですか?9』

伊達康 先生が贈る最強助演ラブコメ。第9巻は母親から告げられる衝撃の事実に加えて
意外な縁で結ばれていた人間関係に頭を悩ませる“一郎”へ更なる難題が降りかかります。
(イラスト:紅緒 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518498


“一郎”が何故ここまで色々できるのか。母親の登場でようやく腑に落ちる事実が明らか
となっただけでなく、一連の騒動に彼の家系にまつわる事情も見えてきて、話を演出する
立場から、いよいよその主役を担う存在に否も応もなく祭り上げられていく進行が面白い。

今回、悪魔憑きとして登場する人物も“一郎”の陣営に深くかかわってくるだけに一筋縄
では退けられない・・・といった緊迫した状況でもコミカルな演出を忘れないあたりは流石。
その中でも“忌綺”が思い上がる「あの人」へ容赦なく叱咤激励するやり取りが印象的で。

次々と数を減らす悪魔憑きに目もくれず、むしろ歓迎の色すら見せる“阿義斗”を横目に
いよいよ迎える“シズマ”の母“麗斐堕”との再会。大団円まっしぐら・・・かと思いきや
エピローグでとんでもない反撃を食らう“一郎”。彼がどう動くか、次巻も要注目です。

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2020年06月08日

『探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる』

玩具堂 先生が「MF文庫J」からは初刊行となる新作は学園ミステリーラブコメ。親が探偵
というだけで学校内のトラブル解決に巻き込まれる少年と双子姉妹たちの逸話を綴ります。
(イラスト:悠理なゆた 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/yamadasan/322001000934.html


自身は探偵でもないのに女子グループのリーダーから彼氏の浮気調査を依頼され、断れず
頭を抱える“戸村”。そんな彼の様子を気に掛ける山田姉妹、チャラそうな姉の“雪音”
と真面目な“雨恵”、2人と共になし崩し的に解決に向けた奇妙な関係を築いていく──。

“雪音”の閃きと“雨恵”の知識に助けられ“戸村”が謎解きをする。それを短編構成で
小気味よく進めていく展開が読んでいてまず楽しい。彼が2人と少しずつ良い関係を築く
様子も微笑ましくて好感触。悠理なゆた 先生の挿絵も作風に合致して演出も申し分ない。

予想はつくけど明らかにしない“雨恵”の秘密、こういった絶妙な描写の仕方も実に見事。
過去の秀作を踏まえ、その期待にしっかりと応えてきた、と感じられるお薦めの一作かと。
往年の「富士見ミステリー文庫」作品に想いを馳せながら次巻の刊行を待望する次第です。

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2020年06月05日

『エリスの聖杯2』

常磐くじら 先生が贈る貴族社会クライムサスペンス。第2巻は“リリィ”が残した遺言を
もとに“コニー”が「エリスの聖杯」と“スカーレット”処刑の意外な繋がりに迫ります。
(イラスト:夕薙 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4815605612.html
https://ncode.syosetu.com/n1230ei/


“リリィ”が持っていた鍵。悪い奴らを見破る呪文。太陽の入れ墨を持つ犯罪者。そこへ
10年前の幻覚剤と、それを上回る効果を持つ幻覚剤が流行する兆し。すべてを結びつける
巨大な犯罪組織が「アデルバイド」を弱体化させるべく暗躍していたというのだから驚き。

その謀略に楔を打てるのが“スカーレット”の処刑であったと吐露する「仕向けた」側の
思惑も見えてきて複雑な想いがこみ上げます。“アイシャ”の一件を教訓に、今また鍵を
握る“アビゲイル”を救うべく、手段を選ばず“コニー”たちが勝ちを握る展開が爽快で。

闇に迫る“コニー”の危なっかしさを見守る“ランドルフ”が婚約者としてデートするも
頓珍漢な振舞いを見せたり、あるいは彼のさりげないそぶりに頬を染める彼女の様子には
微笑ましさを感じるばかり。謎解きも恋愛も前に進むことを願いつつ次巻刊行を待ちます。

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2020年06月04日

『竜と祭礼2 ―伝承する魔女―』

筑紫一明 先生が贈る、杖職人たちの物語。第2巻は王都の城壁に導入された特殊な魔法杖
を破った犯人とされる「魔女」を巡って“イクス”たちがその謎を追う使命を任されます。
(イラスト:Enji 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4815603977.html


“ユーイ”とその学友“ノバ”を連れ、魔女が出没する村へと向かう“イクス”。いわく
「魔女は収穫祭の晩に現れる」「魔女は人間を喰う」「魔女は死なない」と眉唾な噂話を
吟味していく過程はさながらミステリを読むかのよう。今巻でもその面白さが味わえます。

魔女に纏わる逸話から自身の「魔力がない」という特徴に結びつけるあたりは“イクス”
ならではですが、そんな彼に告げられた真実がこれまたシビアで。それでもかの師が彼に
何を見い出していたのかは、彼が手を掛けた杖やそれに至る考え方が示しているのかも。

城壁に纏わる騒動の犯人は。そもそも「魔女」とは何か。全てを推し量る“イクス”が
目にしたあの涙からは蓄えた智慧をもってしても全能ではない「彼女」の悲哀が溢れます。
一つの別れを迎えた“イクス”が迎える冬景色、傍らに誰がいるのかも気になる次巻です。

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2020年06月03日

『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる14』

約二年半の刊行となる、裕時悠示 先生の甘修羅らぶコメ。第14巻は「偽彼氏」の関係を
打ち明ける“真涼”に対して“愛衣”や“千和”がどう反応するか、注目の修羅場です。
(イラスト:るろお 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4815606213.html


雑誌「パチレモン」の復刊プロデュースに気負う“真涼”の本質を見定める父親のテスト。
奇しくもこれが彼女の未だ抱える心の弱さを露呈することになる訳ですが、そこから更に
“愛衣”や“千和”との関係を結び直す契機にも繋がるのだから何が起こるか分からない。

仲間からの叱咤激励を受け、ジョナサンの言葉を胸に、大粒の涙を乗り越え、余裕綽々な
父親に一矢報いる。「サマーリバー真涼」として復活を遂げるその姿、いかにも“真涼”
らしい復活劇に喜びが胸に湧くのを覚えました。一時はどうなることやら、な話でしたが。

“姫香”以外の「自演乙」メンバーにも、それこそ世界中から注目が集まって血気盛んな
状況の中、“鋭太”はハーレムルートという結末を、居場所を築き上げることが出来るか。
いよいよ牙を剥く「あの人」の存在にその命運は掛かっています。次巻へ大いに期待です。

posted by 秋野ソラ at 00:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル