2020年05月29日

『EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩のウハウハザブーン〈上〉』

川上稔 先生が贈る、とある惑星の天地創造物語。2話上巻は自転と地軸が定まった惑星へ
水の確保するべく動く“住良木”たちの前に彼のことをよく知る謎の巨乳美女が現れます。
(イラスト:さとやす 先生(TENKY))

https://dengekibunko.jp/product/kamigami/321910000104.html


「日本の形が世界全体の形状に似ている」というシリーズの結びつきに重要な事実を語る
“木戸”の思わせぶりな発言の数々。“住良木”たちと縁を切るつもりの彼女がいつしか
ゲーム部の面々と想いを交わし、彼らの活動に巻き込まれていくチョロさが絶妙な配役で。

巻き込まれる、と言えば“先輩”も“住良木”の振舞いにすっかり毒されてきてポンコツ
要素が高まっているのも可愛らしい。“桑尻”や“バランサー”のツッコミが追いつかず
同情の念を禁じ得ませんが、脱線する話を戻す重要な役割を担うため耐えてもらいたい所。

いきなりゲーム部の面々とバトルを繰り広げた「水妖」という存在が、思いがけず彼らの
テラフォーム作業をも左右する新たな関係を導いていく展開。神話や精霊の関わり方など
興味深く見守りたくなる要素がどう繋がるのか、奥多摩のキャンプを描く下巻を待ちます。

posted by 秋野ソラ at 00:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年05月28日

『リベリオ・マキナ4 ―《白檀式改》紫陽花の永遠性―』

ミサキナギ 先生が贈る正義と反抗の バトル・ファンタジー。第4巻は“水無月”を失い
気落ちする“カノン”たちが吸血鬼王と手を組み“ハウエルズ”との徹底抗戦に臨みます。
(イラスト:れい亜 先生)

https://dengekibunko.jp/product/machina/321907000710.html


強硬策に異を唱える者も現れ、綻びが見える“ハウエルズ”陣営。その隙を逃さず人間と
吸血鬼が共に暮らせる「ヘルヴァイツ新共和国」を興すため“ロード”が目をつけたのが
失意の涙を流す“カノン”。運命の過酷さを呪わずにはいられない、辛い展開が続きます。

“カノン”もへこたれたままではいられない、ということで“水無月”に似た“紫陽花”
を独自に作り上げ、胸に残る熱量を彼に向け直す健気さがいじらしい。その姿を見つめる
「彼」が秘密を抱えながら、過去の自分を振り返って悶える転がっているとも知らずに。

“リタ”も知らず知らずのうちに「彼」に本心をひけらかしてしまう展開も微笑ましい。
“ハウエルズ”との決戦を経て、“ユーリ”だけが知っていた秘密も明らかとなった時に
迎える大団円に胸をなでおろしつつ、新たな物語の幕が開くことをただ願うばかりです。

posted by 秋野ソラ at 00:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年05月27日

『三角の距離は限りないゼロ5』

岬鷺宮 先生が贈る不思議な三角関係恋物語。第5巻は“秋玻”と“春珂”、2人一緒に
いられるかも知れない、という可能性が“四季”の心をもう一段、追い込んでいきます。
(イラスト:Hiten 先生)

https://dengekibunko.jp/product/zerokyori/322002000074.html


同じように恋して、平等に愛してほしい。“秋玻”と“春珂”が恋人に対し求めるものが
一線を超えないにしても煽情的になっていくことに困惑する“四季”。そこへ進路という
将来への悩みと重なって立ち往生する彼を、大人たちが見守ってくれる構図が良いですね。

失恋探偵とその助手、という面倒くさい関係が作家と編集者、もしくは夫婦として綿々と
続けることができている“千代田”と“野々村”だからこそ“四季”が抱える悩みに対し
より親身になってアドバイスすることができたのかな、と思うと感慨深いものがあります。

二重人格が発生したきっかけを未だ明かさない“春珂”も、結局はどちらが好きなのかを
選んでほしいと望む“春珂”も“四季”にとってはどこか卑怯で、面倒な存在でしかない
ように見える同情を禁じ得ない展開の中、彼がどう決断を下すのか見届けたいと思います。

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2020年05月26日

『日和ちゃんのお願いは絶対』

岬鷺宮 先生が贈る新作は、紛争が絶えない世界で、どんな人も逆らえない「お願い」が
できる能力をもつ少女と、その恋人となる少年の数奇な運命を描くセカイ系の恋物語です。
(イラスト:堀泉インコ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/hiyori_onegai/322002000075.html


高校で隠れファンも多い級友“日和”から感じる好意を、告白という形で受ける“深春”。
気持ちは嬉しいが断るつもりでいた彼だが、彼女が落とした「お願い帳」を拾い目にした
文面からある可能性を思い浮かべるが、それを超える秘密を彼女から打ち明けられる──。

普通の少女に見える“日和”が、今や世界を密かに左右する要人であるということ、命の
やり取りする覚悟すら持つという立場であるということを、恋人という距離感で目にする
“深春”。彼が彼女を好きでい続けられるか、を問い詰めていく緊迫感が見どころの一つ。

2人の絆を結ぶ鍵を握る“深春”の幼なじみ“卜部”がもうホントにいい子で、隣にいる
ことが自然すぎるのがネックになるのはもったいないと思える存在。彼女に後押しされた
彼が“日和”の「お願い」とどう向き合うか決心した、その顛末に仄かな救いを見ました。

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2020年05月25日

『楽園ノイズ』

約2年ぶりとなる 杉井光 先生の電撃文庫新作はボーイ・ミーツ・ガールズ・ストーリー。
女装して演奏した動画をきっかけにして高校生活が活気づいていく少年の青春を描きます。
(イラスト:春夏冬ゆう 先生)

https://dengekibunko.jp/product/paradise_noise/322001000035.html


演奏動画の閲覧数を上げるため女装していることを知られた弱みから音楽教諭の手伝いを
する羽目になった“真琴”。その教諭に嫌がらせ満載の編曲をした譜面を渡そうとしたら
それを完璧に弾いてしまう少女と出会う。プロ級の技量をもつ彼女は訳アリのようで──。

“凛子”を始めとして、技巧を持ちながらもその音を楽しめない悩みを抱える少女たちを
手助けする“真琴”。“詩月”や“朱音”も交え「Musa男」として世に送り出す彼の曲に
惚れ込み、衝突しながら心を通わせる展開は懐かしくも新しい、先生ならではの青春物語。

音楽好きが集まれば自然と向かっていく流れ。プレイヤーとして彼女らをリスペクトする
彼の振舞い、その心情を知りながら活を入れる“美沙緒”の本音、そしてQRコードの演出。
読んで心震わせる先生の音楽青春モノに再び出会えた幸運に感謝を。オススメの一作です。

posted by 秋野ソラ at 00:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル